「相談援助の基盤と専門職」は7問
「相談援助の理論と方法」は21問
2科目合わせると28問もあります。
社会福祉士の国試の中核をなす2科目の割に,重視している人は少ないのが現実です。
事例問題が一定数含まれるので,勉強していなくてもそこそこの点数が取れることで力を入れないのではないかと考えています。
不合格になる人は2科目合わせて,15点も取れていない傾向にあります。
逆に合格する人は,20点を超えます。
この2科目でいかに点数を取れるかが大きな分かれ目となっているのです。
さて,今日から科目は,相談援助の2科目めである「相談援助の理論と方法」に入ります。
21問もある最もボリュームのある科目であり,そして内容も重要な科目です。
ソーシャルワークは外国生まれです。
そのために,専門用語のカタカナ語が多いために,その部分を避けたい気持ちがあるように思います。
しかしポイントが理解できれば決して難しくないです。
まずは,出題基準の最初に示されている「人と環境の交互作用」に取り組んでいきます。
ここで必要な理解は「システム理論」です。
システム理論というととても難しく感じるのではないでしょうか。
「相談援助の基盤と専門職」では,ソーシャルワークの統合化にシステム理論の影響があったことを学びました。
「システム」と聞くと一般の人は「機械の仕組み」といったイメージを抱くことでしょう。
システム理論は,社会学でも学びますが,システムの構造が発展していくものととらえます。
ソーシャルワークでのシステム理論で最も分かりやすいのは,エコロジカルアプローチです。
人と環境の接点に介入していくアプローチ方法です。
環境とは,クライエントにかかわりをもつすべてのものです。
人と環境には影響を与え,影響を受ける交互作用があります。
システムは,機械の仕組みのように,どこかが壊れれば,その部分を交換すればよいというものではありません。システムの構成要素は,関連し合っていると考えます。
クライエント単体で存在しているわけではないのです。
これを押さえて,今日の問題です。
第31回・問題98 ケンプ(Kemp,S.)らによる「人―環境のソーシャルワーク実践」に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 環境を「知覚された環境」,「自然的・人工的・物理的環境」など5種に分類した。
2 ソーシャルネットワークの活用に対し,一定の制限を加えた。
3 クライエントが抱える欠損の修正による問題解決に主眼を置いた。
4 クライエントの環境よりもクライエント自身のアセスメントを強調した。
5 支援者とクライエントは,それぞれ異なる基盤に存在するものと捉えた。
システム理論がわからなければ正解するのは,とても難しい問題です。
逆にシステム理論がわかっていれば正解できます。
それでは解説です。
1 環境を「知覚された環境」,「自然的・人工的・物理的環境」など5種に分類した。
これは正解なのか間違いなのかわかりません。
この選択肢で要注意なのは「5種に分類した」という部分です。
多くの場合,このタイプの問題は正解になりません。
5種を6種,あるいは4種に変えることで間違い選択肢ができるためです。
とりあえず,冷静に△をつけます。
2 ソーシャルネットワークの活用に対し,一定の制限を加えた。
これは間違いです。
クライエントを取り巻くネットワークは,極めて重要な社会資源です。
システム理論ではもちろん重要視されますが,システム理論に限らなくても,重要です。
更には「一定の制限を加えた」ということに必然性がありません。
3 クライエントが抱える欠損の修正による問題解決に主眼を置いた。
これも間違いです。
システム理論は,問題を抱える人=IPに直接働きかけなくても,環境を変えることでIPも変化すると考えます。
4 クライエントの環境よりもクライエント自身のアセスメントを強調した。
これも間違いです。
システム理論ですから,クライエントの環境が重要です。クライエントを重視するなら,システム理論ではないです。
5 支援者とクライエントは,それぞれ異なる基盤に存在するものと捉えた。
これも間違いです。
支援者もクライエントにとっては環境です。別の基盤に存在するものではありません。
ということで,△をつけた選択肢1が正解ということになります。
<今日の一言>
今日の問題は,ケンプは知らなくてもシステム理論を理解していれば,正解できます。
しかし,勘では正解できません。
そういった面では,実によい問題だったのではないかと思います。