新聞などの報道機関では,外国語などの用語は( )をつけて補足しています。
誰にでもわかりやすく伝えるためです。
しかし,試験の場合はわかりやすい問題は受験者に差がつかないので,わざとわかりにくい,混乱しそうなもの,あるいは覚えにくいものをあえて出題します。
外国語は,そういった意味では国試に向いたものだと言えるでしょう。
今日のテーマである「アカウンタビリティ」はソーシャルワークの専門用語ではありません。社会一般でも使われます。
しかし,言葉から意味を推測できないので,「知っていれば解ける」「知らなければいくら考えても解けない」というものとなります。
アカウンタビリティは説明責任のことです。
行ったことに対しての説明をすることを「説明責任を果たす」といった使い方がされます。
それでは今日の問題です。
第24回・問題88 社会福祉士の相談援助におけるアカウンタビリティに関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。
1 援助における判断や介入の根拠,援助の効果やそのための費用についての情報の開示や説明を,関係者や社会に対して行うことである。
2 利用者が自分の権利や生活ニーズを表明できないときに,社会福祉士がサービス提供者や行政機関などに利用者に代わって要求することである。
3 相談援助の終結段階において,援助計画とそれに基づくサービスの提供が十分に実施されたかどうかを自己評価することである。
4 利用者が抱える問題や環境などの情報を収集し,それらをもとに問題状況における相互作用などを分析し,問題状況の全体を把握することである。
5 利用者自身で自分の問題を解決し,自らの目的を達成するための行動ができるように側面から支援することである。
答えは,選択肢1だとすぐわかるでしょう。
説明責任に関連する内容のものはこれ以外にないからです。
選択肢2は,アドボカシーです。「ぼかさないで代弁する」のアドボカシーです。
選択肢3は,自己評価を何と言うのかは分かりませんが,説明責任とは違います。
選択肢4は,アセスメントです。
選択肢5は,側面からクライエントを支援することを何と言うのかわかりませんが,説明責任とは違います。
<今日の一言>
今日の問題の難易度は,勉強した人にとって決して高い難易度ではありません。
言い回しの難解さで煙に巻くような問題は,勉強をした人でも正解するのは大変です。
このような問題は,国試の理想形です。
知っている人は解ける,知らない人は解けない,というものだからです。
出題の中には,消去することで正解選択肢が残るものもたくさんあります。
この場合は難易度が高くなります。しかし勉強不足の人は,明らかに間違いなもの以外は消去することができないために,正解できません。
国家試験に合格するのは,しっかりした知識があれば決して難しくはありません。
しかし,勉強不足の人を合格させてくれるものではありません。
勉強不足の人が解ける問題だということは勉強した人も解けます。
そういった問題が多ければ,第30回国試のように,合格基準点が上がってしまうので,結局勉強不足の人は合格するのが難しくなってしまいます。
勉強不足の人が合格できるチャンスがあるとすれば,難解な言い回しで勉強した人も正解できないような問題が数多く出題される場合でしょう。
しかし現在の国試ではそれはあり得ないと思います。
合格基準点を90点あたりになるような出題がされるからです。
一つひとつを確実に覚えていけば,必ず合格できます。
決して深い知識は求められません。
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