現時点(4月)で,国家試験の勉強をしている人はそれほど多くないことでしょう。
今年度の参考書が発売されるのは,6月以降です。
多くの受験予定者はそれ以降に勉強を開始することでしょう。
それでも合格できる人はできます。
しかし国家試験の合格率は,25~30%です。
大多数の人は,不合格になります。
他の人と同じ勉強では不合格組になる可能性が高いということです。
実際には,勉強をあまりしないで受験する,いわゆる「記念受験組」もいるので,実質上の合格可能性はもう少し高いですが,それでも不合格者の方が多い試験であることは間違いないです。
国試に合格するためには,最低限の知識は必要です。
しかし,国試の文字数がまた多くなる傾向が続けば,以前のように問題を読む力が必要になってくるでしょう。
知識は詰め込むことができます。
しかし問題を読む力は,一朝一夕には身につきません。
問題を読む力があれば,足りない知識を埋めることができるので,得点力は確実に上がります。
別な言い方をすると,問題を読む力がなければ,得点は伸びないと言えます。
何度も受験されている方は,なぜ合格できないのだろう,と思っているのではないでしょうか。
「なぜ」の理由は明確です。
問題を解くことに精いっぱいで,頭ががちがちになっているからです。
それでは,今日の問題です。
第25回・問題93 ブトゥリム(Butym,Z.)が示したソーシャルワークの3つの価値前提(「人間尊重」「人間の社会性」「人間の変化の可能性」)に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 この3つの価値前提は,それら自体がソーシャルワークの実践から生まれたソーシャルワークに独自かつ固有の価値であり,不可欠なものである。
2 この3つの価値前提は,相互に等しい道徳的価値である。
3 「人間尊重」は,個別的自由と普遍的自由との統合を図る人倫概念を示したヘーゲル学派の哲学による考え方を基盤とする。
4 「人間の社会性」は,人間がそれぞれにその独自性の貫徹のために他者に依存する存在であることを示す。
5 「人間の変化の可能性」は,環境の変化と人間の変化及び成長との因果関係に基づく決定論的な人生観に依拠する。
「魔の第25回国試」の問題なので,格別に難しい問題です。
第25回国試は,合格基準点は過去最低の72点になった年です。
しかも合格率は20%を割り込んだ年です。
72点を超えた人は,20%もいなかったという極めて過酷な国試となりました。
この後,合格基準点90点,合格率30%を目指した国試問題づくりに取り組んでいくことになります。
現在の国試では,ここまで難解な言い回しは出題されることはありません。
しかし,問題を解く力をつける訓練のためには,うってつけの問題です。
こういった問題は,知識ではなく,日本語的に解けます。
それでは解説です。
1 この3つの価値前提は,それら自体がソーシャルワークの実践から生まれたソーシャルワークに独自かつ固有の価値であり,不可欠なものである。
これは間違いです。
「人間尊重」「人間の社会性」「人間の変化の可能性」は,いずれもソーシャルワーク独自のものではありません。
「人間の社会性」「人間の変化の可能性」は,よくわからなくても「人間尊重」はソーシャルワーク独自の価値ではないことはわかるはずです。
2 この3つの価値前提は,相互に等しい道徳的価値である。
これも間違いです。
「相互に等しい」が極めて怪しいです。
実際に国試では,落ち着いて問題を読むことは難しいですが,違和感があるものはたいてい間違いです。
結果的には,等しいものではなく,人間尊重が上位にあります。
3 「人間尊重」は,個別的自由と普遍的自由との統合を図る人倫概念を示したヘーゲル学派の哲学による考え方を基盤とする。
これも間違いです。
「ヘーゲル学派の哲学」というわけのわからないもので煙に巻く問題です。
こういったものはまず正解にならないです。
もう二度と出題されるものではないので,詳しく解説しませんが,人間尊重は「カント哲学」によると言えます。
4 「人間の社会性」は,人間がそれぞれにその独自性の貫徹のために他者に依存する存在であることを示す。
これが正解です。
ここで「人間の社会性」についての説明が出てきました。
この文章も難しいですが,人間は独自性はあるものの,周りの人との関係があってこそ成り立つものである,といったことを述べています。
5 「人間の変化の可能性」は,環境の変化と人間の変化及び成長との因果関係に基づく決定論的な人生観に依拠する。
これも間違いです。
「決定論」というのは,未来は過去によって決まっているものだ,というものです。
これでは,新しい未来を描くことができません。
<今日の一言>
現在は,ここまで難解な問題は出題されません。
なぜなら,勉強した人でも解けない。
勉強が足りない人でも正解できる可能性がある。
という資格試験に向かない問題になってしまうからです。
知識の差がつかないためです。
しかし,覚えておきたいことは,
国試では,不適切問題にしたくないので,
正解は確実に正解に・・・
間違いは確実に間違いに・・・
という問題のつくり方がなされることです。
今日の問題の中では「ヘーゲル学派」「決定論」といったものが確実に間違いにするためのワードです。
内容がわからなくて,焦ってしまい,こういったものを選んでしまうことをねらって出題しています。
問題を読む力をつけるには,問題をつくる側の思いに心を寄せてみることも必要だと言えるかもしれません。