2019年9月25日水曜日

福祉関係八法改正で何が変わったのか?

1990年(平成2年)の通称「福祉関係八法改正」は,「老人福祉法等の一部を改正する法律」によって,老人福祉法を含む法律を改正したことをいいます。

1989年(平成元年)に今後10年間の高齢者施策の数値目標が掲げたゴールドプランを推進するために改正されたものです。

主だった改正点は,

老人福祉法では,老人福祉計画の策定義務。特別養護老人ホームなど入所にかかわる措置権限を都道府県から町村への移譲。この権限移譲は,身体障害者福祉法でも実施されています。

老人保健法では,老人保健計画の策定義務。老人福祉計画と老人保健計画の2つ合わせて老人保健福祉計画といいます。

社会福祉事業法では,デイサービスなど居宅支援サービスを第二種社会福祉事業に追加。

などです。

実際には,市町村が策定した老人保健福祉計画の数値を積み上げるとゴールドプランの数値よりも上回ったため,1994年(平成6年)に数値目標を引き上げた新ゴールドプランを策定しなおしています。


さて,それでは今日の問題です。


第29回・問題127 老人福祉法の展開に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 老人福祉法制定時(1963年(昭和38年))には,特別養護老人ホームは経済的理由により居宅において養護を受けることが困難な老人を収容するものとされていた。

2 65歳以上の者に対する健康診査事業は,老人医療費支給制度の導入時(1972年(昭和47年))に法定化された。

3 高齢者保健福祉推進十か年戦略(1989年(平成元年))を円滑に実施するため,老人福祉計画の法定化を含む老人福祉法の改正(1990年(平成2年))が行われた。

4 老人家庭奉仕員派遺制度は,老人福祉法改正時(1990年(平成2年))に,デイサービスやショートステイと共に法定化された。

5 介護保険法の全面施行(2000年(平成12年))に合わせて,老人福祉施設等の入所事務が都道府県から町村に権限移譲された。


前回の問題と違い,選択肢の内容が文章問題になっています。

文章問題の方が難易度が高くなります。


正解は,選択肢3です。

3 高齢者保健福祉推進十か年戦略(1989年(平成元年))を円滑に実施するため,老人福祉計画の法定化を含む老人福祉法の改正(1990年(平成2年))が行われた。


1990年の福祉関係八法改正は,高齢者福祉を含めた福祉制度のターニングポイントの一つです。

しっかり覚えておきたいです。

そのほかの選択肢はどこが間違っているのかを解説しましょう。



1 老人福祉法制定時(1963年(昭和38年))には,特別養護老人ホームは経済的理由により居宅において養護を受けることが困難な老人を収容するものとされていた。

入所要件に経済的要件が規定されているのは「養護老人ホーム」です。

養護老人ホームの歴史的発展は,何度も何度も繰り返して出題されています。



2 65歳以上の者に対する健康診査事業は,老人医療費支給制度の導入時(1972年(昭和47年))に法定化された。

65歳以上の者に対する健康診査事業は,老人福祉法が制定された1963年(昭和38年)に法定化されたものです。



4 老人家庭奉仕員派遺制度は,老人福祉法改正時(1990年(平成2年))に,デイサービスやショートステイと共に法定化された。


老人家庭奉仕員派遺制度は,現代のホームヘルプサービス(訪問介護)です。老人福祉法制定時に法定化されました。



5 介護保険法の全面施行(2000年(平成12年))に合わせて,老人福祉施設等の入所事務が都道府県から町村に権限移譲された。

老人福祉施設等の入所事務が都道府県から町村に権限移譲されたのは,1990年(平成2年)の福祉関係八法改正です。


<今日の一言>

歴史を覚えるのは面倒かもしれません。

しかし,歴史は過去のものではなく,現在を形作るものです。

そして未来につながります。

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