福祉サービス組織の管理は
①サービスの質の管理
②人の管理
に大別することができます。
今回は,そのうちの「②人の管理」を取り上げたいと思います。
一般的には,人事管理,労務管理と呼ばれるものです。
組織のパフォーマンスを最大限に発揮するために,現在の人材(あるいは人財)を伸ばすための組織戦略だと言えるでしょう。
現場レベルでの人事管理で大きな意味を持つのは,職務満足に関する「動機付け要因」につながるものです。
不適切な人間関係などを解消しても,職務不満足を解消するものに過ぎないからです。
これらは,ハーズバーグの動機付け・衛生理論で学びました。
https://fukufuku21.blogspot.com/2019/08/20190808.html
重要なことは,やりがいを持って仕事ができる環境づくりであることが分かります。
それでは今日の問題です。
第24回・問題116 人事管理に関する次の記述のうち,適切なものを一つ選びなさい。
1 ドラッカー(Drucker,P.)が提唱した「目標による管理」は,目標の設定と結果に基づく評価とのシステム化により,従業員満足ではなく組織業績向上を目的とした管理手法である。
2 人材を評価する場合の評価基準としては,個々の法人が求める人材像を基準とする。
3 人材を評価する場合,評価者が陥りやすいエラーとして対比誤差があるが,これは職員同士を対比し評価してしまうエラーである。
4 考課者訓練とは,考課する職員が考課される職員に対して行う訓練をいう。
5 360度評価(多面評価制度)は,評価者である上司が職員の能力や業績だけでなく性格,志向,特技などを多面的に評価することである。
この問題では,人事管理の中でも評価に関したものです。
評価を誤ると,やりがいは一気に下がります。
正解は,
2 人材を評価する場合の評価基準としては,個々の法人が求める人材像を基準とする。
人事採用では,組織の理念に合致した人材を採用していきます。
法人が求める人材像とは,組織の理念を具現化するだと言い換えることができます。
面談などを通して,理念を確認することは欠かせません。
そうしないと少しずつずれていき,気づいたときには,修正できないところまで行きついてしまいます。
ほかの選択肢も見てみましょう。
1 ドラッカー(Drucker,P.)が提唱した「目標による管理」は,目標の設定と結果に基づく評価とのシステム化により,従業員満足ではなく組織業績向上を目的とした管理手法である。
ドラッカーの「目標による管理」を知らなくても,従業員満足(ES)を高めることをしない管理は,必ず破綻します。
3 人材を評価する場合,評価者が陥りやすいエラーとして対比誤差があるが,これは職員同士を対比し評価してしまうエラーである。
対比誤差は,評価者自身と職員を対比してしまうエラーです。
自分と違う人を低く評価してしまう,逆に高く評価してしまうことなどが知られています。
4 考課者訓練とは,考課する職員が考課される職員に対して行う訓練をいう。
考課者訓練は,考課する職員に対して行う訓練です。
対比誤差やハロー効果などを発生させず,正しい評価を行うために行われます。
5 360度評価(多面評価制度)は,評価者である上司が職員の能力や業績だけでなく性格,志向,特技などを多面的に評価することである。
360度評価は,上司だけではなく,同僚,関係する人などによって多面的に評価するものです。
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