答え以外は,確実に間違いの文章にする必要があります。
しかし,間違った文章を作成するのは,簡単ではありません。
下手な作り方をすると,文章が不自然となります。
ラッキーなことに,第30回と第31回国試を比べると第31回国試問題は4,000字も増えています。
この傾向は,第32回も続くと考えています。
勉強が足りない人にとっては,文章が長くても短くても関係なく難しいですが,長くなったほうが文章のほころびが出やすくなります。
そこに着目してみましょう。
それでは,今日の問題です。
第24回・問題118 メンタルヘルス対策や組織としての衛生管理体制に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 労働者数が一定数以上になると,衛生管理者,産業医を選任する必要があり,両者は,事業場内産業保健スタッフとして,メンタルヘルス対策を担うこととされている。
2 労働安全衛生法に定める衛生委員会で,メンタルヘルス対策に関することを審議するかどうかは任意である。
3 事業場におけるメンタルヘルス対策には,受け入れている派遣労働者は対象としなくてよい。
4 一般に,メンタルヘルス不調の原因が業務に起因するかどうかは不明確であることから,精神障害は労災保険の支給対象とはならない。
5 メンタルヘルス不調により休業した労働者の職場復帰支援は,主治医の意見で行うので,事業者は支援してはならない。
聞いたことがないようなものが並んでいるかもしれませんが,そこでひるんではなりません。
この問題の文末に着目してみましょう。
1 担うこととされている。
2 審議するかどうかは任意である。
3 派遣労働者は対象としなくてよい。
4 支給対象とはならない。
5 支援してはならない。
実に下手な文章だと思いませんか?
この中で,少しニュアンスの違うのは
1 担うこととされている。
それ以外は,任意である,しなくてよい,ならない,ならない,というこれらが正しければ,ほとんど出題する意味を持たないものになります。
法は,適用範囲を明確にします。
そのために,制度のはざまで対象とならない人が生じます。
国試は,法の内容が問われます。
対象にならないものを出題するよりも,対象になっているものを出題することの方が良い問題です。
しかし,それでは正解の文章になってしまうので,困ってしまいます。
そのため,否定形にしたり,義務を任意にしたり,様々な処理を行います。
第32回国試は,試験委員がガラッと変わりました。
作問に慣れないために,上手に作れないのではないかと予測しています。
学問のエキスパートの先生方ですが,国試問題を作ることは専門ではありません。
第32回は,確実に付け入るスキが生まれることでしょう。チャンスです!!
今日の問題の正解は,
1 労働者数が一定数以上になると,衛生管理者,産業医を選任する必要があり,両者は,事業場内産業保健スタッフとして,メンタルヘルス対策を担うこととされている。
この問題を間違いにするときは,一定以上の部分を「規模にかかわらず」といった処理が行われます。
<今日の一言>
国試問題は,人が作ります。
問題を解く練習をするとき,試験委員になったつもりで読んでみてください。
そうすると,たくさんのものの気が付きます。
間違い文章を作るのは,ことのほか大変です。
たくさんの気づきを得ておくと,国試でのつまらないミスをすることを減らすことができます。