2019年9月23日月曜日

高齢者福祉の発展過程の出題確率は70%!!

今回から「高齢者に対する支援と介護保険制度」を取り上げています。

この科目は,10問もある科目です。

法制度の科目は,「福祉サービスの組織と経営」のような理論を学ぶ科目よりも覚えやすいという印象があるかもしれません。

しかし,覚えやすさと得点は直結しないことに注意が必要です。

理論は覚えるのは大変かもしれませんが,知識がなくても解ける問題が存在します。

問題を前にして,ひるまなければ答えを引き出すことができる可能性があります。

それに対して,法制度は,きっちり覚えることで正解に結び付くので,実は結構ハードルが高いと言えます。あいまいな知識は許されないからです。

法制度の中に入る前に,歴史から入っていきたいと思います。

福祉の歴史と言っても,太古のものはありません。さかのぼったとしても,せいぜい近世であり,多くは近代です。大昔の出来事ではありせん。

高齢者福祉の発展過程に関する出題確率は・・・

なんと70%!!

驚異的な出題確率です。

現行カリキュラムでの国試となった第22回以降の出題は,

第22・24・26・28・29・30・31回です。

出題されなかったのは,第23・25・27回のわずか3回です。

しかも第28回以降は必ず出題されています。

苦手だと思うにはもったない領域です。

法制度の中でも,歴史は現在のトピックに左右されないこともあり,出題内容は安定しています。

つまり過去問を使っての対策が効果的だと言える領域です。

それでは,前説なしに問題です。

第31回・問題126 日本における高齢者の保健・福祉に係る政策に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 老人福祉法制定前の施策として,生活保護法に基づく特別養護老人ホームでの保護が実施されていた。

2 老人福祉法の一部改正により実施された老人医療費支給制度では,65歳以上の高齢者の医療費負担が無料化された。

3 老人医療費支給制度による老人医療費の急増等に対応するため,老人保健法が制定された。

4 高齢者保健福祉推進十か年戦略(ゴールドプラン)の中で,老人保健福祉計画の策定が各地方自治体に義務づけられた。

5 介護保険法の制定により,それまで医療保険制度が担っていた高齢者医療部分は全て介護保険法に移行した。


歴史が苦手だと思う人にとっては,いやだと思う問題かもしれません。

しかし,ここに出題されている部分の多くは,過去に出題された内容の繰り返しです。
ちゃんと手を打つことができるものです。


正解は,選択肢3


3 老人医療費支給制度による老人医療費の急増等に対応するため,老人保健法が制定された。

1973年(昭和48年)の老人福祉法の改正によって,70歳以上の高齢者の医療費が無料となりました。

老人医療費を含む社会保障費が高くなってもそれに見合う歳入があれば,問題はありません。

しかし,その後2回のオイルショックを経験し,時代は低成長時代となりました。日本は欧米に比べると早期に立ち直ったと言えますが,高度経済成長のような成長は見込まれません。

そこで,1982年(昭和57年)に老人保健法を制定し,老人医療費の一部負担を規定しました。

ここでもう一つ覚えておきたいことは,65歳以上の健康診査などの老人保健は,もともと老人福祉法に規定されていましたが,老人保健法によって,老人保健は老人福祉から独立した領域として確立されたことです。

老人保健法は,その後2008年に改正されて,「高齢者の医療を確保する法律」に改称されています。


それでは,ほかの選択肢もどのように間違っているのかを確認していきましょう。


1 老人福祉法制定前の施策として,生活保護法に基づく特別養護老人ホームでの保護が実施されていた。

特別養護老人ホームは,老人福祉法で創設されたものです。

老人福祉法ができる前に,生活保護法に規定される保護施設だったのは,養護老人ホームです。

そのために,現在でも養護老人ホームの入所要件には,「経済的理由」が規定されています。

養護老人ホームの出題は多いので,しっかり覚えておきたいです。

養護老人ホームの歴史を紐解くと

1929年(昭和4年)の救護法で「養老院」が規定されたことに始まります。旧生活保護法で「養老施設」となり,老人福祉法で「養護老人ホーム」となり,現在に至ります。

養護老人ホームの利用者が介護が必要となった場合は,介護保険法に規定される特定施設入居者生活介護等として介護保険サービスを提供しますが,他の介護保険サービスと違って,利用にあたって契約を締結しないのが特徴です。

そのほかに,養護老人ホームの特徴として,社会復帰の促進及び自立のために必要な指導や訓練を行うが規定されていることが挙げられます。この規定は養護老人ホームがかつて保護施設であったことを物語るものだと言えるでしょう。


2 老人福祉法の一部改正により実施された老人医療費支給制度では,65歳以上の高齢者の医療費負担が無料化された。

先述のように,1973年(昭和48年)の老人福祉法の改正によって,老人医療費が無料化されました。ただし,年齢は65歳以上ではなく70歳以上です。


4 高齢者保健福祉推進十か年戦略(ゴールドプラン)の中で,老人保健福祉計画の策定が各地方自治体に義務づけられた。

ゴールドプランは,老人福祉サービスの整備計画です。

老人保健福祉計画の策定を義務づけたのは,1990年(平成2年)の福祉関係八法改正です。


5 介護保険法の制定により,それまで医療保険制度が担っていた高齢者医療部分は全て介護保険法に移行した。

介護保険法が施行されても,医療療養病床は,介護保険法ではなく,医療保険の制度に規定されています。

「すべて」という記述があるので,この規定が分からなくても,何らかの仕掛けがあることは想像することができるでしょう。


<今日の一言>

高齢者福祉の発展過程で中心テーマとなるのは老人福祉法の制定及び改正についてです。

次回からは,問題を解きながら,それらをしっかり覚えていきましょう。

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