老人福祉法では,老人福祉施設として
〇老人デイサービスセンター
〇老人短期入所施設
〇養護老人ホーム
〇特別養護老人ホーム
〇軽費老人ホーム
〇老人福祉センター
〇老人介護支援センター
が規定されています。
その中で,養護老人ホームは,ほかの老人福祉施設と少し変わったあゆみをしてきました。
もともとは,救護法で「養老院」,旧生活保護法で「養老施設」,そして老人福祉法で「養護老人ホーム」となりました。
この変遷をみると,老人福祉法が成立する前は,高齢者に対する施策は,貧困対策だったことがうかがわれます。
現在でも,養護老人ホームの入所要件は「環境上の理由及び経済的理由」となります。
高齢者福祉の発展過程にかかわる出題の場合,かなりの確率で養護老人ホームを絡めて出題してくるので,しっかり押さえておきたいです。
それでは今日の問題です。
第24回・問題119 介護保険法が公布(平成9年12月17日)された時点での老人福祉法による高齢者福祉制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 65歳以上の者についての養護老人ホームや特別養護老人ホームへの入所又は入所の委託の措置は,都道府県が採っていた。
2 特別養護老人ホームに入所又は入所の委託の措置が採られるのは,低所得の者に限られていた。
3 特別養護老人ホームは,無料又は低額な料金で65歳以上の者を入所させ,常時の介護等を供与することを目的とする施設だった。
4 養護老人ホームは,65歳以上の者であって,身体上若しくは精神上又は環境上の理由及び経済的理由により居宅での養護が困難な者を入所させた。
5 65歳以上の者についての養護老人ホームや特別養護老人ホームへの入所又は入所の委託の措置に要する費用の8割は,国が負担していた。
とてもユニークな出題だと思います。
そんな昔のことは知らないよ,と思う人もいたでしょう。
勉強しなかった,と自分を責める人もいたでしょう。
しかし,それはほとんどの受験者は同じことです。
難易度は高い問題は,多くの人が解けないので,正解できなくも合否にはそれほど関係しません。
なぜなら,難易度が高い問題が多かった場合は,合格基準点が下がるからです。
とは言うものの,正解できた方が良いので,しっかり思考して正解確率を高めましょう。
選択肢を一つでも多く消去できたら,正解確率が上がります。
さて,問題に戻ります。
正解は,
4 養護老人ホームは,65歳以上の者であって,身体上若しくは精神上又は環境上の理由及び経済的理由により居宅での養護が困難な者を入所させた。
養護老人ホームの現在の入所要件は,先述のように「環境上の理由及び経済的理由」です。
しかし,老人福祉法に規定されたときは「身体上若しくは精神上又は環境上の理由及び経済的理由」というように,「身体上若しくは精神上」が規定されていました。
この規定は,2005年改正によって,削除されて現在に至ります。
現在の法制度を知っていると「身体上若しくは精神上」というものが余計に思うので,正解しにくかったと思います。
設問でわざわざ「介護保険法が公布(平成9年12月17日)された時点」と設定しているのは,現在は変更になっている規定について,出題しているからです。
そこにポイントをおいて問題を読むことがくことができたら,この選択肢を選ぶ確率は高まったものと思われます。
他の選択肢も確認しましょう。
1 65歳以上の者についての養護老人ホームや特別養護老人ホームへの入所又は入所の委託の措置は,都道府県が採っていた。
入所の措置は,1990年(平成2年)の福祉関係八法改正で,都道府県から町村に権限移譲されています。
2 特別養護老人ホームに入所又は入所の委託の措置が採られるのは,低所得の者に限られていた。
経済的理由が入所要件に含まれているのは,養護老人ホームです。
3 特別養護老人ホームは,無料又は低額な料金で65歳以上の者を入所させ,常時の介護等を供与することを目的とする施設だった。
無料又は低額な料金で入所させるのは,経費老人ホームです。
5 65歳以上の者についての養護老人ホームや特別養護老人ホームへの入所又は入所の委託の措置に要する費用の8割は,国が負担していた。
この時点では,国は2分の1を負担していました。2005年の改正で,この規定は削除されて,現在は,負担することができるとされているだけです。
<今日の一言>
今日の問題が難しかった理由として,
身体上若しくは精神上又は環境上の理由及び経済的理由
という部分に引っ掛かりを感じてしまうからです。
引っ掛かりを感じる理由は,現在の規定は「環境上の理由及び経済的理由」だからです。
「身体上若しくは精神上」が余計だと感じます。
間違い選択肢を生成する時のポイントを一つ紹介します。
「身体上若しくは精神上」を間違い選択肢を生成するために付け加える処理を加えた場合は,以下のようになるのが一般的です。
環境上の理由及び経済的理由又は身体上若しくは精神上
といったように,正しいものの後に加えます。
このことによって,うっかり者の早とちりさんは,最初の部分を読んで,引っ掛けられる率が高まります。
この逆に余計な部分を正しいものの前に加えて間違い選択肢を生成する処理を行った問題は今まで見たことがありません。
間違い選択肢にするために加えた部分を先に持ってくると,違和感を強く感じてしまうので,引っ掛けられる人が少なくなるからかもしれません。
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