古くは,答えは相手が持っていると考え,質問の仕方に特徴のあるコーチングがあります。
たくさんの本や研修などがあります。
最近では,メンタリングが注目されています。
メンタリングとは,指導するメンターと指導されるメンティーの対話を通して,メンティーの自発的な成長を促す指導技術です。
コーチングにしても,メンタリングにしても,指導者が一方的に教えるものではありません。
それでは,今日の問題です,
第29回・問題125 組織で働く者の労働意欲やキャリア形成に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 ハーズバーグ(Herzberg,F.)は,仕事に積極的な満足を与える要因として,監督技術,作業条件,給与などの衛生要因を重視した。
2 マズロー(Maslow,A.)は,自己実現の欲求が達成されれば,仕事のやる気は低下すると考えた。
3 コーチングとは,上司からの指示・命令により従業員の労働意欲を向上させる方法のことである。
4 キャリアアンカーとは,組織が個人にふさわしいキャリア展開を前もって計画することをいう。
5 メンタリングは,メンティー(メンタリングの受け手)のキャリア形成の促進を目的とする。
難しい用語が連発しています。
この科目は,こういったものがあるので,苦手とする人が多いですが,落ち着いて問題を読めば,実はそれほど難しいところには答えが設定されないことが多いものです。
この問題の正解は,
5 メンタリングは,メンティー(メンタリングの受け手)のキャリア形成の促進を目的とする。
メンタリングは,この時初めての出題で,そのあともまだ出題されたことがありません。
その中で,この選択肢を正解にしてある程度の人が正解してもらうためには,仕掛けが必要です。
それがこの問題では
メンティー(メンタリングの受け手)
という部分です。
これによって,メンティーは指導を受ける人だとわかります。
カッコ内の言葉で引っ掛けるほどこの試験は意地悪ではありません。
しかも,この選択肢は,メンタリングの内容に言及しないで,正解選択肢を作るという慎重さが見えます。
素直に考えるとこの選択肢は正解だと思えますが,国試問題が難しいと考える人にとっては,こんな文章の中にもどこか引っ掛けがあると疑心暗鬼になり間違えます。
さらには,ほかの選択肢をしっかり消去することで,この選択肢が残るように作られています。
それでは,他の選択肢はどこが間違っているのか,確認してみましょう。
1 ハーズバーグ(Herzberg,F.)は,仕事に積極的な満足を与える要因として,監督技術,作業条件,給与などの衛生要因を重視した。
ハーズバーグの動機付け・衛生理論は,動機付け要因と衛生要因があります。
仕事に積極的な満足を与えるのは,このうちの動機付け要因です。
監督技術,作業条件,給与などの衛生要因は,職務不満足を解消するだけで,モチベーションアップにはつながらないとされます。
2 マズロー(Maslow,A.)は,自己実現の欲求が達成されれば,仕事のやる気は低下すると考えた。
マズローの欲求階層説の最上位の欲求は,自己実現の欲求で,成長動機と呼ばれるものです。
成長動機ですから,成長したいという動機は生まれていきます。
やる気が低下するどころか,やる気は高まります。
3 コーチングとは,上司からの指示・命令により従業員の労働意欲を向上させる方法のことである。
コーチングは,指示・命令のスタイルはとらず,指導者が様々な質問を投げかける教育方法です。
4 キャリアアンカーとは,組織が個人にふさわしいキャリア展開を前もって計画することをいう。
キャリアアンカーは,本当の自己を象徴する能力・動機・価値観が組み合わさったものです。
第27回に引き続き出題されました。
<今日の一言>
今日の問題の難易度は高いものです。
この問題のキーは,ハーズバーグの動機付け・衛生理論を正しく理解していることです。
これで3回目の出題です。
こういったものをしっかりきっちり覚えていることで,今日の問題のような難しい問題でも正解できる可能性が高まります。