2019年9月17日火曜日

イージーミスをしない問題の読み方

社会福祉士の国試は,現時点(2019年9月)では,31回実施されています。

今までの推移は,以下の通りです。

受験者数
合格者数
合格率
ボーダー
得点率
1
1,033
180
17.4
 
 
2
1,617
378
23.4
 
 
3
2,565
528
20.6
 
 
4
3,309
874
26.4
 
 
5
3,886
924
23.8
 
 
6
4,698
1,049
22.3
 
 
7
5,887
1,560
26.5
 
 
8
7,633
2,291
30.0
 
 
9
9,649
2,832
29.4
 
 
10
12,535
3,460
27.6
 
 
11
16,206
4,774
29.5
 
 
12
19,812
5,749
29.0
 
 
13
22,962
6,074
26.5
 
 
14
28,329
8,343
29.5
 
 
15
33,452
10,501
31.4
91
60.7
16
37,657
10,733
28.5
85
56.7
17
41,044
12,241
29.8
83
55.3
18
43,701
12,222
28.0
80
53.3
19
45,022
12,345
27.5
81
54.0
20
45,324
13,865
30.6
87
58.0
21
46,099
13,436
29.1
85
56.7
22
43,631
11,989
27.5
84
56.0
23
43,568
12,255
28.1
81
54.0
24
42,882
11,282
26.3
81
54.0
25
42,841
8,058
18.8
72
48.8
26
45,578
12,540
27.5
84
56.0
27
45,187
12,181
27.0
88
58.7
28
44,735
11,735
26.2
88
58.7
29
45,828
11,828
25.8
86
57.3
30
43,937
13,288
30.2
99
66.0
31
41,639
12,456
29.9
89
59.3
合計
872,246
241,971
26.9
84.9
56.7


合格率の最大値は31.4%(第15回),最小値は18.8%(第25回),平均は,26.9%です。

決して楽に合格できる資格ではないことがわかることでしょう。
しかし,合格率ほどには実は難しい問題が出題されているわけではありません。

得点できる問題をミスせず確実に正解できることが何よりも大切です。

さて,今日の問題です。

第25回・問題125 労働契約や就業規則に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 事業所の規模に関係なく,使用者は就業規則を作成し,所轄の労働基準監督署に届け出なければならない。

2 使用者は就業規則を,労働者に対して周知する必要がある。

3 労働契約が就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める場合は,労働契約で定める基準が有効になる。

4 使用者は時間外労働や休日労働について,就業規則に規定しておくことで,労働者に命令することができる。

5 使用者は就業規則の変更によって労働条件を変更しようとする場合,労働者に不利益な内容であっても,労働者の過半数の合意をとれば変更できる。


この問題は,以前に一度取り上げているので,解説等はそちらを参考にしてみてください。
https://fukufuku21.blogspot.com/2017/11/blog-post.html

今回は,問題の読み方を考えてみたいと思います。

正解は,

2 使用者は就業規則を,労働者に対して周知する必要がある。

極めて当たり前のことでしよう。

しかし,実際には,ほかの選択肢があるために,この選択肢を素直に正解にすることができません。国試問題の恐ろしさを感じます。

国試は,実はそれほどひねったりしていません。
それにもかかわらず,変な勘繰りをすると正解から遠ざかってしまいます。

問題文の読み方に着目して解説します。


1 事業所の規模に関係なく,使用者は就業規則を作成し,所轄の労働基準監督署に届け出なければならない。

この文章が正しければ,

使用者は就業規則を作成し,所轄の労働基準監督署に届け出なければならない。

で良いはずです。

それをわざわざ

事業所の規模に関係なく

を付け加えていることで,事業所の規模に関係がありそうだと見当をつけることができます。


3 労働契約が就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める場合は,労働契約で定める基準が有効になる。

これは柔らか頭が必要となります。

労働契約と就業規則の関係性で考えた場合,就業規則で定める基準に達しない労働条件を定めたとき,労働契約が優先されるのであれば,就業規則を定める意味がなくなります。


4 使用者は時間外労働や休日労働について,就業規則に規定しておくことで,労働者に命令することができる。

労働基準法は,労働者の権利を保障するものです。
そんなに簡単には命令することはできません。
36協定と呼ばれるものが必要です。
内容までは詳しく覚える必要はありません。


5 使用者は就業規則の変更によって労働条件を変更しようとする場合,労働者に不利益な内容であっても,労働者の過半数の合意をとれば変更できる。

労働法規は,労働者の権利を保障するためのものです。
労働者は,法で守らないとブースやラウントリーが明らかにしたような貧困を生じる可能性があるほど弱い存在です。

労働者に不利益な内容に変更することは認められるものではありません。


<今日の一言>

今日の問題と,問題のつくり方がそっくりなものが第31回国試に出題されています。

第31回・問題31 日本の最低賃金制度に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 地域別最低賃金額は,特定最低賃金額を上回るものでなければならない。
2 地域別最低賃金額は,労働者の生計費を考慮せずに決定される。
3 地域別最低賃金額は,労使が行う賃金交渉によって決定される。
4 最低賃金の適用を受ける使用者は,労働者にその概要を周知しなければならない。
5 支払能力のない事業者は,地域別最低賃金の減額適用を受けることができる。

正解は,選択肢4です。
2つの問題の正解を並べてみると・・・

4 最低賃金の適用を受ける使用者は,労働者にその概要を周知しなければならない。
2 使用者は就業規則を,労働者に対して周知する必要がある。

内容は違っても,文章はほとんど同じです。

答えがわかると「あぁ,なるほど」だと思うでしょう。

しかし,今日の問題のように,簡単に正解できるようには作られません。
なぜなら,王将を守る将棋の駒のように,間違い選択肢が正解選択肢を守っているからです。

こういったタイプの問題は,これからも出題されるでしょう。
正解自体は,それほど難しくはありません。

それだけを取り上げると,至極当たり前の内容です。

間違い選択肢が巧妙に配置されているので,正解にたどり着くのは,決して簡単ではありません。
勉強をしたことがないものが出題されたことに驚き,慌てふためく人は,正解にたどり着くことが難しいと言えます。

どんなに勉強しても,勉強したことがない問題は出題されます。
しかし,決して慌てることなく,落ち着いて問題を読むことができれば,正解にたどり着くことができます。

この時に,変に勘繰って,こんなに単純なものが正解になるわけがない,と思う人は正解にたどり着くことはできないでしょう。

変に勘繰らないことが大切です。
こういった問題の場合は,正解選択肢を正解にできないと,消去法がうまく使えないものもあるため,注意が必要です。

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