約2か月にわたって「福祉サービスの組織の経営」の国試問題について紹介してきました。
社会福祉士の国試は,難しいと思えば難しいですし,簡単だと思えば簡単です。
「福祉サービスの組織と経営」は,多くの人が難しいと思う科目だと思います。
その理由は,日常生活でなじみのない内容だからでしょう。
逆に比較的簡単だと思う科目は,相談援助の理論と方法でしょう。
事例があるからです。
しかし,しっかり知識をつけなければ,どちらの科目も得点することができないのは,同じです。
つまり,難しい,簡単は主観に過ぎないということです。
すべては主観です。
主観は,考え方次第で変えることができます。
多くの人に知っておいていただきたいのは,国試問題は一つひとつを分解してみると,それほど複雑に作られていないということです。
国試の文字数は,第30回と第31回から比べると若干長くなりましたが,それでも最も分量が多かった第24・25回から比べると,15,000字以上短くなっています。
引っ掛けポイントは,その分少なくなりますので,しっかり勉強した人は得点しやすくなっています。
短くなれば,余計な言い回しがなくなるので,正解選択肢は驚くほどストレートな表現となります。
前回の問題をもう一度紹介します。
第30回・問題124 福祉・介護サービス提供体制の確保に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 福祉サービス第三者評価事業は,福祉サービスの質の向上を目的に創設された。
2 介護サービス情報の公表制度では,介護保険事業を行う全事業所への調査が義務づけられている。
3 社会福祉事業の経営者は,利用者等からの苦情の解決を所在地の市町村に委ねなくてはならない。
4 市町村は,社会福祉法に基づき,運営適正化委員会を設けなければならない。
5 個人データは,利用する必要がなくなった場合でも,電子データとして保存するよう努めなければならない。
この中で,絶対に覚えておかなければならないのは,選択肢4
4 市町村は,社会福祉法に基づき,運営適正化委員会を設けなければならない。
この文章は,どこの科目でも出題されるかなり出現度が高いものです。
おそらく勉強不足の人は判断できないでしょう。
運営適正化委員会が設置されるのは,都道府県社会福祉協議会です。
この問題では,おそらくこの選択肢を避けることができれば,正解できる可能性が高まります。
しかし,正解選択肢
1 福祉サービス第三者評価事業は,福祉サービスの質の向上を目的に創設された。
は,あまりにもひねりがない文章のため,本当に正解なのか,と不安に思う人もいます。
国試合格には,確かな知識が必要です。
そしてもう一つ必要なのは,確かな知識に培われる自信です。
最後の最後は,実はそんなところの差が表れるものです。
今やっている勉強は辛いと思いますが,それは国試当日に力を発揮するために必要なことです。
覚えても覚えても忘れてしまうというのは,誰もが経験する試練です。
しかし,国試はマーク式。
底力をつけた人は,必ず答えにたどり着くことができます。
これから,国試までは国試に対してネガティブな言葉を口に出すことは禁止です。
ネガティブな言葉は,百害あって一利なし。
ポジティブな言葉は,主観を変えます。
合格した自分をイメージしましょう。
私は国試に合格できた。
ポジティブな言葉は,明るい明日を拓きます。
「福祉サービスの組織と経営」は今回で終わります。
次回からは,「高齢者に対する支援と介護保険制度」に取り組んでいきたいと思います。
最新の記事
子ども・子育て支援法
子ども・子育て支援法は,これまでにも出題されてきましたが,正式に出題基準に含まれたのは,第37回国家試験です。 子ども・子育て支援制度は,市町村が実施主体になっています。 支給申請は,市町村に対して行います。 児童福祉法には,入所系があるので都道府県の役割がありますが,子ども...
過去一週間でよく読まれている記事
-
ソーシャルワークは,ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークとして発展していきます。 その統合化のきっかけとなったのは,1929年のミルフォード会議報告書です。 その後,全体像をとらえる視座から問題解決に向けたジェネラリスト・アプローチが生まれます。そしてシステム...
-
今回から,質的調査のデータの整理と分析を取り上げます。 特にしっかり押さえておきたいのは,KJ法とグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)です。 どちらもとてもよく似たまとめ方をします。特徴は,最初に分析軸はもたないことです。 KJ法 川喜多二郎(かわきた・...
-
問題解決アプローチは,「ケースワークは死んだ」と述べたパールマンが提唱したものです。 問題解決アプローチとは, クライエント自身が問題解決者であると捉え,問題を解決できるように援助する方法です。 このアプローチで重要なのは,「ワーカビリティ」という概念です。 ワー...
-
ホリスが提唱した「心理社会的アプローチ」は,「状況の中の人」という概念を用いて,クライエントの課題解決を図るものです。 その時に用いられるのがコミュニケーションです。 コミュニケーションを通してかかわっていくのが特徴です。 いかにも精神分析学に影響を受けている心理社会的ア...
-
質的調査では,インタビューや観察などでデータを収集します。 その際にとる記録をフィールドノーツといいます。 一般的には,野外活動をフィールドワーク,野外活動記録をフィールドノーツといいます。 こんなところからも,質的調査は,文化人類学から生まれてきたものであることがう...
-
イギリスCOSを起源とするケースワークは,アメリカで発展していきます。 1920年代にペンシルバニア州のミルフォードで,様々な団体が集まり,ケースワークについて毎年会議を行いました。この会議は通称「ミルフォード会議」と呼ばれます。 1929年に,会議のまとめとして「ミルフ...
-
19世紀は,各国で産業革命が起こります。 この産業革命とは,工業化を意味しています。 大量の労働力を必要としましたが,現在と異なり,労働者を保護するような施策はほとんど行われることはありませんでした。 そこに風穴を開けたのがブース,ラウントリーらによって行われた貧困調査です。 こ...
-
ヒラリーという人は,さまざまに定義される「コミュニティ」を整理しました。 その結果,コミュニティの定義に共通するものとして ・社会的相互作用 ・空間の限定 ・共通の絆 があることが明らかとなりました。 ところが,現代社会は,交通手段が発達し,SNSやインターネットなどによって,人...
-
今回は,ソーシャルワークにおけるエンゲージメントを取り上げます。 第30回の国試で出題されるまでは,あまり知られていなかったものです。 エンゲージメントは,インテーク(受理面接)とほぼ同義語です。 それにもかかわらず,インテークのほかにエンゲージメントが使われるようになった理由は...
-
絶対に覚えておきたい社会的役割は, 第1位 役割期待 第2位 役割距離 第3位 役割取得 第4位 役割葛藤 の4つです。 今回は,役割葛藤を紹介します。 役割葛藤とは 役割に対して葛藤すること 役割葛藤を細かく分けると 役割内葛藤と役割間葛藤があ...