2018年1月31日水曜日

あと1点はここで稼ぐ!!~障害者雇用率

障害者雇用促進法のホットな話題と言えば・・・

これまでは,身体障害者と知的障害者を対象としていたものが,

平成30年4月から,精神障害者が障害者雇用率(いわゆる法定雇用率)の算定基礎に加わり,雇用義務が生まれることです。


それに伴い,今後障害者雇用率が変更される予定です。

それでは,今日の問題です。

第27回・問題146

障害者雇用率制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 「障害者雇用促進法」の改正により,精神障害者が法定雇用率の算定基礎に加えられることになった。

2 障害者雇用納付金を納付すれば,障害者雇用義務が免除される。

3 身体障害者手帳1級を所持する障害者を雇用した場合,1人をもって3人分として実雇用率を算定できる。

4 法定雇用率が未達成の場合には,自動的に企業名が公表される。

5 特例子会社とは,事業内容を勘案して障害者の雇用義務を課さないと認められた子会社のことである。


答えはすぐ分かってしまったと思いますが,詳しく見て行きましょう。



1 「障害者雇用促進法」の改正により,精神障害者が法定雇用率の算定基礎に加えられることになった。

前説どおり,これが正解です。

現時点(2018年1月)では,精神障害者の雇用義務はありませんが,精神障害者保健福祉手帳が交付されている場合は,算定することができます。


2 障害者雇用納付金を納付すれば,障害者雇用義務が免除される。

障害者雇用納付金制度は,101人以上を雇用している企業が法定雇用率を達成できなかった場合のペナルティです。

納付金を納付しても雇用義務が免除されているわけではありません。

なお,障害者雇用義務があるのは,50人以上雇用している企業です。

つまり50~100名の企業は,障害者雇用義務はあるものの障害者雇用納付金制度の対象外だということになります。


3 身体障害者手帳1級を所持する障害者を雇用した場合,1人をもって3人分として実雇用率を算定できる。


重度の身体・知的障害者を常用雇用した場合や短時間の雇用した場合には,1人を2人として数えるダブルカウント,1人を0.5人として数えるハーフカウント,というものがあります。細かく覚える必要はありません。

1人を3人として数えるトリプルカウントというものはない,ということだけ覚えておけば十分です。

よって間違いです。


4 法定雇用率が未達成の場合には,自動的に企業名が公表される。


実際に,企業名が公表されるのは,年にほんの数社です。

公表される企業がない年もあります。

公表に至る前には,指導を受けて,雇い入れ計画を提出して,それでも改善の見込みがない企業です。

よって間違いです。

雇い入れ計画書に関する問題
 ↓   ↓
http://fukufuku21.blogspot.jp/2017/06/blog-post_23.html


法定雇用率を達成している企業は,半数もありませんから,自動的に公表することになれば,何万社にもなってしまいます。というか,日本は法治国家です。

2018年は,明治150年の節目の年です。

生麦事件の下手人をさらし首にしたこと(写真が残っています)で,野蛮な国だと思われました。

自動的に公表されるような国なら,海外から野蛮な国と思われることでしょう。


5 特例子会社とは,事業内容を勘案して障害者の雇用義務を課さないと認められた子会社のことである。


特例子会社とは,グループ内のある子会社が雇用する障害者をグループ全体の法定雇用率として算定できる制度です。

よって間違いです。

グループ各社それぞれでは法定雇用率は満たせなくても,中には障害者を雇用できるような会社はあります。

2017年では,全国で500社くらいが認定を受けています。

2018年1月30日火曜日

国家試験に合格する勉強法~障害者への就労支援

「就労支援サービス」は,最後の方にあるので,勉強する時間をあまりかけない科目だと言えるでしょう。しかしそういった方でも,実は突破口は見い出すことができやすい科目なのです。

なぜなら,「障害者に対する支援と障害者自立支援制度」で学んだことがここでも生きる内容があるからです。

その筆頭は,障害者総合支援法と障害者雇用促進法です。

最初は,障害者総合支援法です。

障害者総合支援法の特徴は,障害種別をなくしたこと,日中活動と生活の場に分けたこと,訓練等給付を整理したことです。

この科目で,しっかり押さえておきたいのは,訓練等給付の就労移行支援と就労継続支援(A型・B型)です。

それまであった福祉工場系などは就労継続支援(A型),授産系などは就労継続支援(B型)に再編成されています。

そのため,同じ就労継続支援でありながら,A型は雇用契約を結ぶスタイル,B型は雇用契約を結ばないスタイル,と性格が異なるサービスとなっています。

就労移行支援は,一般就労に向けたアセスメントを行う事業だととらえることができます。そのため,利用期間が設けられているのが特徴です。就労継続支援は,A型・B型ともに利用期間の定めはありません。

それでは早速今日の問題です。


第22回・問題146


障害者総合支援法に基づく,就労移行支援事業及び就労継続支援事業に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 就労移行支援事業及び就労継続支援事業は,旧制度に基づき障害別に設置されていた福祉工場や授産施設などを,障害種別にかかわらず,目的別に再編成することを意図して制度化されたものである。

2 就労移行支援事業は,就職に向けての訓練を中心とした事業であることから,利用申込みの窓口は,公共職業安定所になっている。

3 就労継続支援A型事業,B型事業とも,利用者は原則として最低賃金法など労働法の適用を受ける。

4 就労継続支援事業についても,利用者の一般就職が最終目標とされることから,利用期間には期限が設けられている。

5 就労継続支援A型事業で雇用されている利用者は,職場適応援助者によるジョブコーチ支援を受けなければならない。


ごちゃごちゃしていて,理解するのが難しいそうだな,と思う人も多いと思います。

絡んだ意図を一つひとつほどいていきましょう。


1 就労移行支援事業及び就労継続支援事業は,旧制度に基づき障害別に設置されていた福祉工場や授産施設などを,障害種別にかかわらず,目的別に再編成することを意図して制度化されたものである。

これは,前説の通り正解です。障害者自立支援法(現・障害者総合支援法)は,介護給付,訓練等給付ともに障害種別をなくしたことが特徴です。

福祉工場 ➡ 就労継続支援(A型)

授産施設 ➡ 就労継続支援(B型)

といったように再編成されました。

「授産」という言葉は今となっては意味が分かりにくいですが,保護施設の授産施設が生業扶助を目的とした施設である,ということからイメージできるように,手に職をつけるための施設です。


2 就労移行支援事業は,就職に向けての訓練を中心とした事業であることから,利用申込みの窓口は,公共職業安定所になっている。

就労移行支援,就労継続支援は,障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスです。

ここでピンときた方もいることでしょう。

市町村の役割 ➡ 高度かつ判断が求められる事務は市町村の役割ではない。

ただし,介護保険証の交付と障害福祉サービス受給者証の交付は,高度かつ専門的な判断を求められますが,例外的に市町村の役割となります。

就労移行支援の利用窓口は,市町村であり,公共職業安定所ではありません。

よって間違いです。

復習:市町村の役割

http://fukufuku21.blogspot.jp/2017/12/blog-post_11.html


3 就労継続支援A型事業,B型事業とも,利用者は原則として最低賃金法など労働法の適用を受ける。


労働法規の適用を受けるのは,雇用契約を結ぶA型です。

よって間違いです。

B型は労働法規の適用は受けません。


4 就労継続支援事業についても,利用者の一般就職が最終目標とされることから,利用期間には期限が設けられている。


就労継続支援は,一般就職は目的としていません。

就労継続支援は,就労移行支援事業を利用して一般就職に結びつかない人などが対象となるからです。

利用期間に期限が設けられているのは就労移行支援だけです。

理由は,アセスメントを行うためだからです。


5 就労継続支援A型事業で雇用されている利用者は,職場適応援助者によるジョブコーチ支援を受けなければならない。


ジョブコーチは,障害者雇用促進法に基づくものです。

地域障害者職業センターに配置される「配置型ジョブコーチ」,社会福祉法人などに配置される「第1号ジョブコーチ」,企業などに配置される「第2号ジョブコーチ」があります。

障害者が職場に適応するための支援を行っていますが,必ず支援を受けなければならない,ということはありません。

よって間違いです。


さて,次は障害者雇用促進法です。

同法は,障害者の一般就労を支援するためのものです。

障害者雇用率(法定雇用率)を定めています。



障害者総合支援法と障害者雇用促進法の整理

就労移行支援,就労継続支援(A型・B型) ➡ 障害者総合支援法

就労移行支援,就労継続支援(A型・B型)以外 ➡ 障害者雇用促進法

すべてを覚えるのは難しいです。整理すればたったこれだけで済みます。


2つの法制度に関する出題

 ↓    ↓

http://fukufuku21.blogspot.jp/2017/09/blog-post_24.html

それでは問題です。


第23回・問題145 

障害者就労支援制度に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 就労移行支援事業は,「障害者雇用促進法」に基づく支援である。 

2 障害者就業・生活支援センターは,障害者総合支援法に基づく支援サービスである。 

3 地域障害者職業センターによる職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業は,発達障害者支援法に基づく支援サービスである。

4 地域障害者職業センターの職業準備訓練は,「障害者雇用促進法」に基づく支援である。

5 就労継続支援A型事業は,「障害者雇用促進法」に基づく支援サービスである。


ごちゃごちゃ書いてある問題ですが,整理すれば非常に簡単だと思います。


1 就労移行支援事業は,「障害者雇用促進法」に基づく支援である。 

就労移行支援,就労継続支援(A型・B型) ➡ 障害者総合支援法

よって間違いです。

2 障害者就業 ・生活支援センターは,障害者総合支援法に基づく支援サービスである。 

就労移行支援,就労継続支援(A型・B型)以外 ➡ 障害者雇用促進法

よって間違いです。

同センターに関する出題は近年続いています。

しっかり押さえておきましょう。


3 地域障害者職業センターによる職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業は,発達障害者支援法に基づく支援サービスである。

就労移行支援,就労継続支援(A型・B型)以外 ➡ 障害者雇用促進法

よって間違いです。


4 地域障害者職業センターの職業準備訓練は,「障害者雇用促進法」に基づく支援である。

就労移行支援,就労継続支援(A型・B型)以外 ➡ 障害者雇用促進法

よって正解です。


5 就労継続支援A型事業は,「障害者雇用促進法」に基づく支援サービスである。

就労移行支援,就労継続支援(A型・B型) ➡ 障害者総合支援法

よって間違いです。

2018年1月29日月曜日

合格をつかむ勉強ポイント~労働法規の徹底理解

「就労支援サービス」は,「更生保護制度」などとともに現行カリキュラムで加わった科目です。

この2つの科目は,4問ずつの科目なので,2科目を1群とみなし,2科目合わせた8問で1点取ることが必要です。

どちらもなじみの少ない科目ですが,この「就労支援サービス」は,障害者,低所得者などほかの科目とつながっているので,比較的点数が取りやすいかもしれません。

さて,今日は労働に関する法制度の問題を取り上げます。


第24回・問題143

日本国憲法が規定する規定に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 憲法は,国民は勤労の義務を負うと規定しているが,勤労の権利を有するとする規定はない。

2 憲法は,賃金,就業時間に関する基準を明記している。

3 憲法が規定する勤労者の権利は,団体交渉権,団体行動権の2つである。

4 憲法は,児童はこれを酷使してはならないと規定している。

5 憲法は,男女同一賃金の原則を明記している。


まずは憲法です。

この科目で出題される内容はだいたい含んでいる問題だと思います。


1 憲法は,国民は勤労の義務を負うと規定しているが,勤労の権利を有するとする規定はない。


憲法第二十七条「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う」

と規定しています。

よって間違いです。

〇〇は●●だが,▲▲ではない

という表現は,間違い選択肢になる率が高いものです。


2 憲法は,賃金,就業時間に関する基準を明記している。


憲法は,最高法規で,細かい規定は,各法規で規定されます。

賃金や就業規則を規定を明記しているは,労働基準法です。

よって間違いです。

憲法第二十七条で規定されています。


3 憲法が規定する勤労者の権利は,団体交渉権,団体行動権の2つである。

労働三権は,中学校の公民で習うものです。

団体交渉権,団体行動権,団結権の3つです。

よって間違いです。

「●●の3つ」といったように,わざわざ数字を示しているのは,間違い選択肢をつくるときの常とう手段「●●のみである」では間違い選択肢であることに気がつかれやすいからです。

こんなところにも試験委員のトラップが仕掛けられているのです。

眉唾をつけて問題を読みましょう。

4 憲法は,児童はこれを酷使してはならないと規定している。

憲法第二十七条3項でこのように規定されています。よって正解です。


5 憲法は,男女同一賃金の原則を明記している。


男女同一賃金をの原則を規定しているのは,労働基準法です。


さて,次は,その労働基準法に関する問題です。

これは,前に取り上げているので,それを見てみましょう。


労働基準法の内容及び問題

  ↓   ↓

http://fukufuku21.blogspot.jp/2017/11/blog-post_13.html



<今日の一言>

法制度は覚えるのは難しく感じるかもしれません。しかし,その規定には必ず意味があります。

国試ではそれを手がかりに正解をあぶり出しましょう。

決して「難しい,分からない」と思考を止めないことが大切です。



2018年1月28日日曜日

あと1点をとるポイント~児童相談所の役割

児童福祉法の2016年改正は,虐待防止の観点から実施されています。

それとともに,児童相談所には,里親支援が新たな業務として加わっています。

さて,今日の問題は,その児童相談所の業務についての問題です。


問題22・第142(改) 

児童相談所の業務内容に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 児童福祉法に基づき,必要があると認めるときは児童の一時保護を行うこと。

2 児童福祉法に基づき,保育所への入所決定を行うこと。

3 児童福祉法に基づき,母子生活支援施設への入所決定を行うこと。

4 障害者総合支援法に基づき,放課後等デイサービスの給付決定を行うこと。 

5 児童福祉法に基づき,児童委員を指揮監督し,業務の遂行に対して必要な指示を行うこと。


児童相談所に関する出題ですが,実はいろいろに要素が入っている問題です。

さすがは現行カリキュラムによる初めての国試の問題だなぁ,と思います。

それでは,詳しく見ていきましょう。


1 児童福祉法に基づき,必要があると認めるときは児童の一時保護を行うこと。


一時保護は,児童相談所の業務です。

よって正解です。

なお一時保護の期間は「2か月を超えてはならない」と規定されています。

<一時保護に関する関連問題>
  ↓     ↓
http://fukufuku21.blogspot.jp/2017/08/blog-post_3.html


2 児童福祉法に基づき,保育所への入所決定を行うこと。

近年話題になる保育所に関する問題です。

保育所の入所決定は,市町村の業務です。

よって間違いです。


3 児童福祉法に基づき,母子生活支援施設への入所決定を行うこと。

母子生活支援施設などの入所施設の措置は,都道府県の役割です。

よって間違いです。


4 障害者総合支援法に基づき,放課後等デイサービスの給付決定を行うこと。 

放課後等デイサービスなどの通所系サービスの給付決定は,市町村の役割です。

よって間違いです。

5 児童福祉法に基づき,児童委員を指揮監督し,業務の遂行に対して必要な指示を行うこと。


児童委員を指揮監督するのは都道府県知事です。

業務の遂行に対して必要な指示を行うのは市町村長です。


<児童委員・民生委員・保護司の整理>

<児童委員>
都道府県知事の指揮監督を受ける。
市町村長は、児童委員に対し,必要な状況の通報及び資料の提供を求め、並びに必要な指示をすることができる。
都道府県知事は、児童委員の研修を実施しなければならない。
任期は3年。

<民生委員>
都道府県知事の指揮監督を受ける。
市町村長は、民生委員に対し、援助を必要とする者に関する必要な資料の作成を依頼し、その他民生委員の職務に関して必要な指導をすることができる。
都道府県知事は、民生委員の研修を実施しなければならない。
任期は3年。

<保護司>
保護観察官で十分でないところを補い、地方更生保護委員会又は保護観察所の長の指揮監督を受けて、保護司法の定めるところに従い、それぞれ地方更生保護委員会又は保護観察所の所掌事務に従事するものとする。
任期は2年。



<今日の一言>

2016年の児童福祉法の改正では,市町村の役割と責務が明確になっています。

施設入所等の措置は都道府県が行っていますが,入所措置に至らなかった場合,児童への在宅支援を行うことを市町村の責務としました。



2018年1月27日土曜日

あと1点を積み上げる方法~こどもに関する手当等の徹底理解

「児童・家庭」は覚える制度が多いのが特徴です。

その割に問題数が少ないので,過去3年間の過去問をメインにした勉強では,かなり対応が難しいと言えます。

もしこの科目が苦手であったとしたら,もう一度今まで使っていた参考書を見てみましょう。必ず新しい発見ができるはずです。

さて,今回はごどもに関する各種手当とサービスについて取り上げます。

まずは,手当から・・・

<児童手当・児童扶養手当・特別児童扶養手当の違いの整理>

児童手当は,児童が15歳に達する日以後の最初の3月31日まで支給されます。

・注意点
児童手当の支給期間 ➡ 児童が15歳に達する日以後の最初の3月31日まで。
同法が定める児童の定義 ➡ 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者。
支給期間と定義では年齢が違っています。要注意です。


児童扶養手当は,一人親等のこどもに対して支給されるものです。
児童扶養手当の支給期間 ➡ 児童が18歳に達する日以後の最初の3月31日まで。障害のある場合は20歳未満まで。
併給禁止 ➡ 公的年金受給者は併給できません。しかし児童扶養手当よりも公的年金額の方が低額であった場合には,差額分が支給されます。

支給制限 ➡ 所得によって,手当の全部又は一部の支給が停止されます。


特別児童扶養手当は,在宅で精神又は身体に障害のある20歳未満の児童を監護している父母または養育者に支給されるものです。在宅が条件なので施設入所している場合には,支給されません。

次に医療です。

育成医療 ➡ 障害者総合支援法による障害児に対する医療です。

養育医療 ➡ 母子保健法による未熟児に対する医療です。



さて,これらを押さえたところで,今日の問題です。


第22回・問題139

子どもに関して給付される手当やサービスに関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 特別児童扶養手当は,障害児の父若しくは母がその障害児を監護するとき,その父若しくは母に対して支給される。

2 自立支援医療とは,未熟児に対しその養育に必要な医療の給付を行い,又はこれに代えて自立支援医療に要する費用を支給することである。

3 児童手当は,父又は母と生計を同じくしていない児童が育成される家庭の生活の安定と自立の促進に寄与するために当該児童に対して支給される。

4 児童扶養手当は,子どもが児童福祉施設に入所している家庭に対して児童扶養手当を支給することにより,次代の社会を担う児童の健全な育成及び資質の向上に資することを目的とする。

5 養育医療とは,障害児等につきその心身の障害の状態の軽減を図り,自立した日常生活又は社会生活を営むために必要な医療のことである。

一つひとつはそんなに難しくないことが分かるのではないでしょうか。

法制度に関するものは,ちょっとしたポイントを押さえることでぐんぐん実力がつくのが特徴です。

さて,それでは詳しく見ていきましょう。

1 特別児童扶養手当は,障害児の父若しくは母がその障害児を監護するとき,その父若しくは母に対して支給される。

障害児に対する手当 ➡ 特別児童扶養手当

よって正解です。

2 自立支援医療とは,未熟児に対しその養育に必要な医療の給付を行い,又はこれに代えて自立支援医療に要する費用を支給することである。

未熟児に対する医療 ➡ 母子保健法の養育医療

よって間違いです。

自立支援医療は,障害者総合支援法に基づく医療で,障害児に対する「育成医療」,身体障害者に対する「更生医療」,精神障害者に対する「精神通院医療」があります。育成医療と更生医療の支給決定の権限は市町村,精神通院医療の支給決定の権限は都道府県です。


3 児童手当は,父又は母と生計を同じくしていない児童が育成される家庭の生活の安定と自立の促進に寄与するために当該児童に対して支給される。


一人親等の児童に支給 ➡ 児童扶養手当

よって間違いです。


4 児童扶養手当は,子どもが児童福祉施設に入所している家庭に対して児童扶養手当を支給することにより,次代の社会を担う児童の健全な育成及び資質の向上に資することを目的とする。


児童扶養手当 ➡ 一人親等の児童に支給

児童福祉施設に入所している家庭に支給されるものではありません。

よって間違いです。


5 養育医療とは,障害児等につきその心身の障害の状態の軽減を図り,自立した日常生活又は社会生活を営むために必要な医療のことである。

障害児に支給 ➡ 育成医療

よって間違いです。


<今日の一言>

第27回には,特別扶養手当で一問出題されています。

今日は,そこは触れていませんが,それも合わせて覚えておくと,ほぼ完璧です。

2018年1月26日金曜日

あと1点をもぎ取る問題の読み方~児童福祉施設の場合

「児童・家庭」は苦手にしている人が多いみたいですね。

0点を恐れている人もいるみたいですが,過去問をしっかりやれば絶対に0点は取りません。

さて,今日は,児童福祉法の中に入っていきます。

今日は前説なしで問題に入ります。


第23回・問題139

児童福祉施設に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 児童心理治療施設に入所できる期間は,原則として2年を限度としている。

2 障害児入所施設に入所した児童は,20歳になると退所しなければならない。

3 乳児院には,保健上,安定した生活環境の確保その他の理由により特に必要な場合,幼児を入所させることができる。

4 児童相談所は,妊産婦から申込みがあったときは,助産施設における助産の実施を決定しなければならない。

5 児童家庭支援センターは,児童福祉施設に附置しなければならない。


さて,あることに気がつきましたか?

それでは,詳しく見て行きましょう。


1 児童心理治療施設に入所できる期間は,原則として2年を限度としている。

児童心理治療施設は,昨年「情緒障害児短期治療施設」という名称から変わったものです。

家庭環境,学校の交友関係,環境上の理由で社会生活への適応が困難となった児童を,短期間,入所又は保護者の下から通わせて,社会に適応するのに必要な心理に関する治療及び生活指導を主として行う。

期間の規定はありません。

よって間違いです。

2 障害児入所施設に入所した児童は,20歳になると退所しなければならない。


言い切り表現に正解少なし

必要な場合は,20歳になっても引き続きに入所できます。よって間違いです。


3 乳児院には,保健上,安定した生活環境の確保その他の理由により特に必要な場合,幼児を入所させることができる。


これが正解です。

2005年の法改正で,必要な場合には,乳児院に幼児,児童養護施設に乳児,を入所させることができるようになっています。

児童に関する制度は,柔軟性を持たせていることが特徴です。


こういうところに気がつけば,得点力が上がります。



4 児童相談所は,妊産婦から申込みがあったときは,助産施設における助産の実施を決定しなければならない。


助産の決定は,都道府県等が行っています。

よって間違いです。


5 児童家庭支援センターは,児童福祉施設に附置しなければならない。

以前はこのような規定がありましたが,現在は緩和でいろいろな主体が設置できます。

よって間違いです。

<今日のまとめ>

法制度に関する問題は,実は言い切り表現に正解少なし,は使えないことが多いのが実状です。

今日の問題のようにぴったり当てはまることは多くはありません。

しかし,答えの見当がつかなかった場合には,こんな視点で問題を見直してみるのも大切でしょう。

焦れば焦るほど,冷静に問題を読むことができなくなります。

過去問題を見て,ある一定のパターンを見つけ出すことができれば,1点どころかかなりの問題で得点することができます。

1つでも2つでも消去できる選択肢があれば,正解に近づくことができます。

2018年1月25日木曜日

合否を分けるあと1点はここで稼ぐ!!~児童・家庭編

「児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度」は,「人体の構造」から順番に勉強していくと最後の方にある科目なので,勉強にかけられる時間は不足がちの方が多いようです。

この科目の基本は「児童福祉法」です。

児童福祉法は,1947(昭和22)年の成立以来,何度も改正を重ねて,現在に至っていますが,大きな改正が行われたことがありません。

高齢者介護の介護保険法のように制度を修正しながら現在に至っているものとは大きく違います。

児童・家庭に関する制度にはなじみがあまりないかもしれませんが,大きな制度改正がないということは,オーソドックスな出題がされやすいことを意味します。


その前に,例のごとく,発展過程を押さえましょう。

歴史が苦手だという人は多いです。

しかし,チームfukufuku21が押さえている中では,児童・家庭の歴史の出題は最もシンプルです。

というか,この科目の国試問題はすべてといってよいほどシンプルです。

シンプルという意味は・・・

知っていれば,すぐ解けるという意味です。おかしな言い回しはゼロです。

児童・家庭の歴史に関するものは,ホワイトハウス会議から児童権利条約まで。そこに日本の児童福祉法の成立と児童憲章を絡めて出題されます。

それプラス児童関係の施設の創設者です。

岡山孤児院
滝乃川学園
家庭学校
二葉幼稚園
近江学園

この5つ以外が出題されたとしても,正解選択肢として出題される可能性は少ないです。




さて,それでは今日の問題です。

28回・問題13

日本の児童福祉の歴史に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 恤救規則では,15歳以下の幼者について,人民相互の情宜に頼らず,国家が対応すると規定した。

2 石井十次は,イギリスのベヴァリッジ(BeveridgeW.)の活動に影響を受けて岡山孤児院を設立した。

3 工場法では,18歳未満の者の労働時間を制限することを規定した。

4 児童虐待防止に関する最初の法律は,第二次世界大戦前につくられた。

5 児童憲章は,児童の権利に関するジュネーブ宣言を受けて制定された。


知っているか,知らないかだけで解けるのが,この科目の特徴です。

歴史が苦手だと思っている人も必見です。



1 恤救規則では,15歳以下の幼者について,人民相互の情宜に頼らず,国家が対応すると規定した。

恤救規則は近代日本の幕開けとなる窮民救済の法制度です。

基本は「人民相互の情誼(じょうぎ)」です。児童の対象は13歳以下の孤児です。15歳以下ではなく,13歳以下,人民相互の情宜に頼らず,ではなく「人民相互の情宜」が基本です。よって間違いです。

この問題は・・・

人は嘘をつくとき,饒舌になる

です。

もし,国家が対応すると規定した。が正しいとしたら,

恤救規則では,15歳以下の幼者について,国家が対応すると規定した。

で良いと思います。

「人民相互の情宜に頼らず」は余計です。

間違い選択肢を作るのは極めて難しい作業です。



2 石井十次は,イギリスのベヴァリッジ(BeveridgeW.)の活動に影響を受けて岡山孤児院を設立した。


石井十次=岡山孤児院

という単純図式では解けないことが分かるでしょう。岡山孤児院もう一つ必要な知識として,バーナードがあります。

この問題の場合は,バーナードではなく,べヴァリッジと書かれているので,間違いだと分かるでしょう。


3 工場法では,18歳未満の者の労働時間を制限することを規定した。


労働時間を制限したのは,15歳未満です。よって間違いです。

工場法は明治の末期です。その時代の18歳は大人です。そう思えば,正しい年齢は分からずとも18歳は違うだろうと思えるでしょう。

同法では,12 歳未満の児童の労働を禁止しています。。


4 児童虐待防止に関する最初の法律は,第二次世界大戦前につくられた。


1929年に発生した世界大恐慌は,日本にも大きな影響を与えました。その中で,1933(昭和8)年に児童虐待防止法ができました。

よって正解です。

昭和8年と言えば,今の天皇陛下がご誕生になった年です。

日本国中では皇太子誕生に大きく沸いていた中,庶民の生活はどん底にありました。そんな中,同法ができました。

5 児童憲章は,児童の権利に関するジュネーブ宣言を受けて制定された。



児童憲章は,ジュネーブ宣言を受けて成立したものではなく,日本の児童問題が解決されない中,作られたものです。

よって間違いです。


 <今日のまとめ>

歴史関係の出題は,この科目に限らず,「〇〇初」が重要です。

2018年1月24日水曜日

あと2・3点アップさせるコツ~基本を押さえていこう!!

この時期になると,分からないことがあると「あれも覚えていない」,「これも覚えていない」と本当に焦りが増します。

しかし,国試は6割程度が取れれば十分です。

細かいものを覚えるよりも,重要なポイントを押さえたほうが,間違いなく得点力は上がります。

さて,今日は老人福祉法を押さえたいと思います。

高齢者福祉の発展過程でも,老人福祉法は取り上げました。

http://fukufuku21.blogspot.jp/2018/01/blog-post_21.html

同法は過去のものではなく,現在も脈々と流れるものです。

先日も紹介しましたが,介護保険は大多数を対象とする社会保険制度です。

老人福祉法は,特定のニーズがある人を対象とします。

社会福祉士が社会福祉の使い手だとすると,老人福祉法は極めて重要です。

それでは,今日は前説なしに問題に入ります。

第24回・問題127

老人福祉法の規定に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 有料老人ホームとは,介護等の供与をする事業を行う施設であって,老人福祉施設や認知症対応型老人共同生活援助事業を行う住居等の施設でないものをいう。

2 介護保険法施行により,老人福祉法における特別養護老人ホームの入所措置の条項は廃止され,契約制度に移行した。

3 市町村の老人福祉センターは,老人の福祉に関し,必要な実情把握に努めつつ,必要な情報の提供,相談,調査及び指導,並びにこれらに付随する業務を行う。

4 老人介護支援センターは,無料又は低額な料金で各種相談に応ずるとともに健康増進,教養の向上及びレクリエーションの便宜を老人に総合的に供与する施設である。

5 市町村老人福祉計画は,老人の福祉に関する事項を定める市町村介護保険事業計画及び市町村地域福祉計画と調和が保たれたものでなければならない。

老人福祉法は,社会保険である介護保険に隠れがちですが,高齢者福祉の基本法です。
しっかり押さえておきたいです。
それでは詳しくみていきましょう。

1 有料老人ホームとは,介護等の供与をする事業を行う施設であって,老人福祉施設や認知症対応型老人共同生活援助事業を行う住居等の施設でないものをいう。

有料老人ホームは,老人福祉法が成立した時にできたものです。

同法では有料老人ホームは,「老人福祉施設、認知症対応型老人共同生活援助事業を行う住居その他厚生労働省令で定める施設でないものをいう」と規定されています。

よって正解です。


2 介護保険法施行により,老人福祉法における特別養護老人ホームの入所措置の条項は廃止され,契約制度に移行した。


特別養護老人ホームは,老人福祉法ができた時,有料老人ホームなどとともにできた施設です。
これで分かるように,特別養護老人ホームの根拠法は,老人福祉法です。

老人福祉法は介護保険法の陰に隠れた存在ですが,脈々と受け継がれて,現在も残ります。

特別養護老人ホームは,介護保険上は,指定介護老人福祉施設という名称です。

特別養護老人ホーム(老人福祉法) ➡ 措置制度

指定介護老人福祉施設(介護保険法) ➡ 契約制度

となります。介護保険法ができても,老人福祉法による入所措置は残っています。

よって間違いです。


3 市町村の老人福祉センターは,老人の福祉に関し,必要な実情把握に努めつつ,必要な情報の提供,相談,調査及び指導,並びにこれらに付随する業務を行う。


老人の福祉に関し,必要な実情把握に努めつつ,必要な情報の提供,相談,調査及び指導,並びにこれらに付随する業務を行うのは,市町村です。

老人福祉センターではありません。よって間違いです。

老人福祉センターは,無料又は低額な料金で各種相談に応ずるとともに健康増進,教養の向上及びレクリエーションの便宜を老人に総合的に供与する施設です。


4 老人介護支援センターは,無料又は低額な料金で各種相談に応ずるとともに健康増進,教養の向上及びレクリエーションの便宜を老人に総合的に供与する施設である。


前述のように,無料又は低額な料金で各種相談に応ずるとともに健康増進,教養の向上及びレクリエーションの便宜を老人に総合的に供与する施設は,老人福祉センターです。


5 市町村老人福祉計画は,老人の福祉に関する事項を定める市町村介護保険事業計画及び市町村地域福祉計画と調和が保たれたものでなければならない。



一体で策定しなければならないのは,現在のところ,「介護保険事業(支援)計画」と「老人福祉計画」です。

よって間違いです。

<今日の一言>

社会福祉士にとって,老人福祉法は極めて重要です。なじみがないかもしれませんが,しっかり基礎を覚えておきたいです。
介護保険制度が高齢者介護の中心てすが,社会福祉制度による高齢者介護は中心は老人福祉法です。

介護保険の訪問介護系のサービスは,老人福祉法上の名称は「老人居宅介護等事業」です。
「居宅介護」と聞いてピンと来た人もいるのではないでしょうか。

介護保険の訪問介護は,障害者総合支援法による障害福祉サービスでは「居宅介護」です。

なぜ同じサービスなのに,サービスの名称が違う理由は,おそらく老人福祉法の「老人居宅介護等事業」にならって,障害者福祉でもその名称をそのまま使用したのではないでしょうか。

2018年1月23日火曜日

あと数点をアップさせるポイント~要介護認定の仕組み

都道府県と市町村の役割を整理すると・・・

市町村は, 高度かつ専門的な業務は行わない。

というものがあります。

基本をしっかり覚えておきましょう。

その中の例外事項として,介護保険の要介護認定と障害者福祉の障害支援区分判定があります。
これらは極めて,高度かつ専門的なものですが,市町村の役割です。

さて,今日はその要介護認定を取り上げます。
意外ですが,実はほとんど出題されたことはありません。
しかし,今日は基本なので押さえておきたいと思います。

それでは今日の問題です。

第27回・問題127

要介護認定に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 認定調査に使用する認定調査票の「基本調査」の調査項目は,身体機能・起居動作,生活機能,認知機能,精神・行動障害の4群から構成されている。

2 二次判定では,一次判定を基礎として,主治医の意見書や特記事項に基づき,どの区分に該当するかの審査・判定が行われる。

3 二次判定では,一次判定よりも要介護度を下げてはならない。

4 第1号被保険者の認定に当たっては,要介護状態などの原因である障害が特定疾病に起因するものであるかを確認する上で,主治医の意見書が必要となる。

5 認定結果に対して不服がある場合は,認定調査を行った市町村の介護認定審査会に対して申立てを行う。

高齢者分野にいる人なら,難しくはない問題だと思います。しかし,それ以外の人にとっては,難しい選択肢もあるでしょう。

それでも何とかなります。

それでは詳しく見て行きましょう。

1 認定調査に使用する認定調査票の「基本調査」の調査項目は,身体機能・起居動作,生活機能,認知機能,精神・行動障害の4群から構成されている。


調査項目は,体機能・起居動作,生活機能,認知機能,精神・行動障害に加えて,社会生活への適応,の5群となっています。

よって間違いです。知らない人にとっては難しい問題でしょう。

しかしヒントがあります。

このように「数字」で数を限定している場合は,一つ多かったり,一つ少なかったり,といったことが行われることが時々あります。


正解なら・・・

認定調査に使用する認定調査票の「基本調査」の調査項目は,身体機能・起居動作,生活機能,認知機能,精神・行動障害で構成されている。

で良いはずです。それをわざわざ「4群」を付け加えているのは,「4群ではない」と思えます。

このような出題はそんなに多くはありませんが,もし出題されたときは,「眉唾もの」で問題を読むと良いと思います。

模擬試験では,この辺りのロジックはちょっと違うことがあります。そういう面で過去問で国試問題に慣れることは,とても大切なことだと言えます。


2 二次判定では,一次判定を基礎として,主治医の意見書や特記事項に基づき,どの区分に該当するかの審査・判定が行われる。


これが正解です。ケアマネ試験でも超頻出,基本中の基本です。しっかり覚えておきましょう。

3 二次判定では,一次判定よりも要介護度を下げてはならない。

もちろん,状況によっては下がることもあります。よって間違いです。

それよりも・・・

言い切り表現に正解少なし


に気がつくことが大切です。


4 第1号被保険者の認定に当たっては,要介護状態などの原因である障害が特定疾病に起因するものであるかを確認する上で,主治医の意見書が必要となる。

第2号被保険者が介護保険サービスを利用するためには,障害の原因が特定疾病に起因するものでなければなりません。

よって間違いです。


5 認定結果に対して不服がある場合は,認定調査を行った市町村の介護認定審査会に対して申立てを行う。


介護認定審査会は,都道府県に必置です。市町村ではありません。よって間違いです。


<今日のまとめ>

ついでに,ほかの領域の不服申し立て制度も押さえておきましょう。

 ↓  ↓

http://fukufuku21.blogspot.jp/2017/11/blog-post_22.html

共通点,相違点が見えてくることでしょう。

2018年1月22日月曜日

あと数点をアップさせるポイント~介護保険制度の押さえ方

介護保険は「社会保障」ではほとんど出題されていません。

それは,「高齢者に対する支援と介護保険制度」で出題されるからでしょう。

出題数が他の科目が基本的に7問なのに対し,この科目は10問です。そのため,ほかの科目より出題に余裕があります。

さて,今日の問題は,介護保険の保険料の問題です。

介護保険は当たり前ですが社会保険制度です。

社会保険には,ある一定の共通した仕組みがあります。

 社会保険制度の整理

  ↓   ↓

国試に合格する勉強方法~社会保険の整理法 (まずはここを見て!)

それでは,今日の問題です。


第24回・問題124

介護保険法の保険料に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 第1号被保険者の保険料の特別徴収の対象となる年金には,老齢基礎年金,遺族基礎年金及び障害基礎年金が含まれる。

2 第1号被保険者の普通徴収される保険料の納付義務は,その被保険者本人が負い,その属する世帯の世帯主は負わない。

3 第1号被保険者の保険料率は,全国どこの保険者においても第4段階を基準額として,6段階に統一的に設定されている。

4 第2号被保険者の保険料は,医療保険者が徴収し,社会保険診療報酬支払基金を通じてその被保険者が居住する市町村に交付される。

5 第2号被保険者の保険料は,介護給付及び予防給付の財源に充てられ,地域支援事業の財源には充てられない。

「社会保障」で出題するよりも,ちょっと細かく出題されています。

しかし,問題文には,国試特有の癖があります。

それらに気がつけば,いくつかの選択肢は消去できることでしょう。

それでは,詳しく見ていきましょう。


1 第1号被保険者の保険料の特別徴収の対象となる年金には,老齢基礎年金,遺族基礎年金及び障害基礎年金が含まれる。

第1号被保険者の保険料の徴収方法には,普通徴収と特別徴収の方法があります。

このシステムを見るたびに,国の役人は頭がいいなぁ,と思います。

本来は,保険料は,保険者が徴収します。

介護保険の保険者は,市町村(あるいは広域連合)です。

市町村が保険者になっているものには,市町村国保があります。しかしその対象は一部です。

介護保険の被保険者は,65歳以上の第1号被保険者と40歳以上の第2号被保険者(生活保護受給者を除く)なので,対象人数が極めて多いこととなります。

そこで,第2号被保険者の保険料は,医療保険の保険料と一緒に徴収することを考えました。これで第2号被保険者問題はクリアされます。

さて,第1号被保険者の保険料を効率よく徴収するために,年金からの天引きすることを考えました。これが特別徴収です。絶対に取りはぐれることがありません。

年金額が年18万円以上を特別徴収することにしました。

大部分が年18万円以上です。それ未満は市町村が徴収する普通徴収です。普通徴収の対象はかなり少数派です。

この方式を考えたことで,市町村の事務はかなりシンプルになります。これで第1号被保険者の保険料徴収問題も解決です。

さて,問題に戻ります。

年金保険の種類

国民年金(基礎年金)の老齢基礎年金,障害基礎年金,遺族基礎年金。

被用者には,それに上乗せして,厚生年金の老齢厚生年金,障害厚生年金,遺族厚生年金があります。

これらの,年金額が年18万円以上の第1号被保険者の保険料は,年金からの天引きである「特別徴収」されます。

よって正解です。


2 第1号被保険者の普通徴収される保険料の納付義務は,その被保険者本人が負い,その属する世帯の世帯主は負わない。

間違い選択肢をつくるときの常とう手段

〇〇は▲▲だが,■■ではない。

というスタイルです。

この表現をしている出題は,実にたくさんあります。

別の言い方をすれば・・・

人は嘘をつくとき饒舌になる

答えが分からなくても,ほとんどの場合は消去できます。

もし,正解選択肢なら・・・

第1号被保険者の普通徴収される保険料の納付義務は,被保険者の属する世帯の世帯主は負わない。

という文章で十分だと思います。

これをわざわざ「その被保険者本人が負い,その属する世帯の世帯主は負わない」といったように,条件から除外しているのは,不自然さがあります。

第1号被保険者の普通徴収される保険料の納付義務は,被保険者の属する世帯の世帯主は「保険料連帯納付義務者」です。よって間違いです。

ここで,「あれっ?」と思った人もいるでしょう。

国民健康保険と年金保険(第1号被保険者)の仕組みと一緒です。

これが最初に述べた,社会保険の共通した仕組みの意味です。


3 第1号被保険者の保険料率は,全国どこの保険者においても第4段階を基準額として,6段階に統一的に設定されている。

これは,ちょっと難しいですね。現在は9段階が基準です。

しかし,市町村が条例で独自に細分化できます。よって間違いです。

ここでまた注意すべき用語が出てきています。

「統一的に」

介護保険は,国の制度ですが,法定受託事務ではなく,自治事務です。

そのため,市町村が独自に展開できるような仕組みがあります。

それが,

第1号被保険者の保険料率は,第9段階を基準額として,条例でさらに細分化できる,というものです。

それよりも,この問題のもともとの文章は論理的に破たんしていることにお気づきでしょうか。

第1号被保険者の保険料率は,全国どこの保険者においても第4段階を基準額として,6段階に統一的に設定されている。

6段階に統一されているのであれば,第4段階の基準は必要ではありません。

もし6段階に統一されているのが正解なら・・・

第1号被保険者の保険料率は,全国どこの保険者においても6段階に統一的に設定されている。

という文章でなければ論理的に正しくはありません。

ほかに注意したいものには「一律に」があります。


4 第2号被保険者の保険料は,医療保険者が徴収し,社会保険診療報酬支払基金を通じてその被保険者が居住する市町村に交付される。


第2号被保険者の保険料は,各医療保険の保険者が徴収して,社会保険診療報酬支払基金に納付します。

基金は,それを市町村等に介護給付費交付金及び地域支援事業支援交付金として交付します。交付金の金額は,市町村等からの交付申請に基づいて交付金の金額を決定します。

このように,第2号被保険者の保険料は,その居住する市町村に交付される仕組みではありません。

よって間違いです。


5 第2号被保険者の保険料は,介護給付及び予防給付の財源に充てられ,地域支援事業の財源には充てられない。

先述のように,第2号被保険者の保険料は,市町村等に介護給付費交付金及び地域支援事業支援交付金として交付します。

地域支援事業の財源として使われます。

よって間違いです。

第2号被保険者の保険料が使われないものには,市町村特別給付などがあります。


<今日の一言>

間違い選択肢を作るのは,とても難しい作業です。

そのために,今日紹介したような常とう手段を用いることがよくあります。

また,下手な試験委員が作ると,今日の問題のように,論旨矛盾(あるいは破たん)している文章になることもあります。


国試勉強の一環として,過去問を解いて覚えている人は多いと思います。

覚えるだけではなく,これらのポイントにいかに気がつき,慣れていくかが,とても重要な意味をもちます。

別な言い方をすれば,それを意識しない勉強法は実にもったいないです。

これができたら,あと数点をアップさせることができるでしょう。

2018年1月21日日曜日

あと数点アップさせるコツ~歴史の押さえ方~高齢者福祉の発展過程

「歴史と人名を覚えられない」

という声を聞きます。

しかし覚えなければならないものはほんの少し。

覚えても覚えられなくても,1点は1点。

問題数が多い社会福祉士の国試の特徴です。

入試などの1問の配点は,14点くらいまでばらつきがあります。

1問できないことが,とても大きな差となってしまいます。

しかし社会福祉士の国試は,1問1点です。解けても解けなくてもその差はわずか1点です。

もし,この時点(2018/01/21)でも,ぜんぜん覚えられなかったとしたら捨てましょう。

もっと早い時点なら,しっかり覚えていきましょう,と言います。

しかし,限られた時間では,苦手なところにあまり時間はかけたくはないのが本音のところです。

バランスよく学ぶことが大切です。

国試全体では,法制度に関する問題が大半を占めます。

しかも法制度の方が覚えやすいです。言い回しを変えて出題されないからです。

しかし,その分,言い回しの不自然さが生まれないので,しっかり覚えておかないと「あれっ,これって,これで良かったのかな~」と思うことも多々あります。

そのため本当は法制度にすべての力を注ぎ込みたいところです。

しかし,それでは取れる問題も解けない,ということが生まれてしまうので,最低限のところは押さえておきましょう。


さて,今日は高齢者福祉の発展過程です。

現代社会や地域福祉のように外国の発展過程は出題されたことはありません。

高齢者の発展過程は,

老人福祉法に絡むものがほとんどです。


まずは,現在の養護老人ホームの変遷です。

救護法の一つの「養老院」という名称で設置されたのが始まりです。

古い人は,今でも老人ホームのことを養老院と呼ぶ人がいるのはこのためです。

その後,旧・生活保護法で,養老施設となり,老人福祉法によって,現在の養護老人ホームとなりました。

養護老人ホームは,救護施設の一つとして設置されたので,今でもその名残りで,老人福祉法による入所要件には「環境上の理由及び経済的理由」という「経済的理由」があります。

ただし,老人福祉法制定時には「身体上若しくは精神上又は環境上の理由及び経済的理由」でした。

国試では,何度も「経済的理由が入所要件になっているのは,特別養護老人ホームである」と出題されていますが,特養ではなく,養護老人ホームです。しっかり覚えておきましょう。

特別養護老人ホームの入所要件は,「身体上又は精神上著しい障害があるため」となっています。

さて,老人福祉法は,昭和381963)年に成立しました。

国試では,老人福祉法は,日本が高齢化社会になったことで作られた,といった問題が出題されたことがありますが,日本が高齢化社会になったのは,昭和451970)年です。

老人福祉法は,高齢化社会になったからできたものではありません。

老人福祉法が成立した時に新たに規定されたのは,「特別養護老人ホーム」「軽費老人ホーム」「有料老人ホーム」「老人福祉センター」です。

さて,その後,昭和481973)年に,法改正で老人医療費が無料となり,昭和571982)年に,老人保健法によって,老人医療費の一部負担が導入されました。

1990年の福祉関係八法改正で,在宅福祉サービスが第二種社会福祉事業に規定され,施設から在宅へという流れができます。

また入所施設の措置は,都道府県から市町村に権限移譲されています。

同時に身体障害者の入所措置も市町村に移譲されました。

2000年には介護保険法が導入され,高齢者福祉は,介護保険サービスに変わりました。

ここで,社会保障制度審議会の1962年勧告を思い出しましょう。

この勧告では社会保障制度を,

社会保険制度は,一般所得階層に対する施策

社会福祉制度は,低所得階層に対する施策

生活保護制度は,貧困階層に対する施策

と提言しています。つまり,1999年までの高齢者介護は,主に低所得者層といった特定層に対する福祉制度であったわけです。

それが社会保険制度になったことは,高齢者介護は,特定層に対する制度ではなく,一般層に対する制度(社会保険制度)となったことを意味します。

高齢者介護は,社会保険制度で行われていますが,老人福祉法による措置は,現在でも残ります。

介護保険法による介護保険制度の利用は契約制度
老人福祉法による老人福祉制度の利用は措置制度

しっかり覚えておきましょう。

さて,これらをもとにして,今日の問題です。


22回・問題119

第二次世界大戦後の我が国の高齢者保健医療福祉制度の発展過程に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 経済的に困窮した高齢者を対象とする入所施設として,「旧生活保護法」で保護施設,「新生活保護法」では養護老人ホームが設けられた。

2 特別養護老人ホームは,高齢者への経済的援助と介護を行う施設として,老人福祉法(昭和38)に規定された。

3 デイサービス,ショートステイサービス等は,福祉関係八法改正(平成2年)によって,それまでの措置事業から契約対象の事業に位置づけられた。

4 老人医療費の無料化は,国の制度としては老人福祉法の改正(昭和48)により行われたが,老人保健法の制定(昭和57)により一部自己負担が導入された。

5 「ゴールドプラン21」は,介護保険制度が始まった2000(平成12)年度から10か年計画でスタートし,サービス基盤の整備目標や今後の方向性を明らかにした。


わが国の高齢者福祉は,老人福祉法の変遷とともにあります。

さて,それでは詳しく見ていきましょう。

1 経済的に困窮した高齢者を対象とする入所施設として,「旧生活保護法」で保護施設,「新生活保護法」では養護老人ホームが設けられた。

旧・生活保護法では,保護施設の一つとして「養老施設」が規定され,老人福祉法によって,「養護老人ホーム」が規定されました。

よって間違いです。

ここでは出題されていませんが,もう一つさかのぼると,救護法で救護施設の一つとして養老院が規定されています。


2 特別養護老人ホームは,高齢者への経済的援助と介護を行う施設として,老人福祉法(昭和38)に規定された。


入所要件に,「経済的理由」があるのは,養護老人ホームです。よって間違いです。

経済的理由は今も残ります。


3 デイサービス,ショートステイサービス等は,福祉関係八法改正(平成2年)によって,それまでの措置事業から契約対象の事業に位置づけられた。

デイサービス等は,福祉関係八法改正で,第二種社会福祉事業と規定されました。

しかしまだ措置制度の時代です。

高齢者介護に契約制度が導入されたのは,2000年の介護保険法です。

よって間違いです。

先述のように,老人福祉法による措置制度は今も続いています。


4 老人医療費の無料化は,国の制度としては老人福祉法の改正(昭和48)により行われたが,老人保健法の制定(昭和57)により一部自己負担が導入された。


これが正解です。老人医療費無料化は福祉元年と呼ばれた昭和481973)年に導入されました。

しかし奇しくも同年に第一次オイルショックが起こり,その後第二次オイルショックにも見舞われて,昭和571982)年に老人医療費無料化は終焉を迎えます。

よって正解です。


5 「ゴールドプラン21」は,介護保険制度が始まった2000(平成12)年度から10か年計画でスタートし,サービス基盤の整備目標や今後の方向性を明らかにした。

平成元(1989)年のゴールドプランは,1か年戦略でした。

しかし,ゴールドプラン21は,5か年計画です。

よって間違いです。

ちょっと難しめに感じるかもしれません。

しかし,介護保険が導入される時代に10か年計画は難しいです。

国による整備計画は,ゴールドプラン21が最後となりました。

3年を一期として,市町村介護保険事業計画と市町村老人福祉計画,都道府県介護保険事業支援計画と都道府県老人福祉計画はそれぞれ一体で策定されています。

こんな時代に,国が10か年の計画を立てるのは,想定期間が長すぎます。


今日は,もう一問いきます。


24回・問題119

介護保険法が公布(平成91217)された時点での老人福祉法による高齢者福祉制度に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。


1 65歳以上の者についての養護老人ホームや特別養護老人ホームへの入所又は入所の委託の措置は,都道府県が採っていた。


2 特別養護老人ホームに入所又は入所の委託の措置が採られるのは,低所得の者に限られていた。
3 特別養護老人ホームは,無料又は低額な料金で65歳以上の者を入所させ,常時の介護等を供与することを目的とする施設だった。


4 養護老人ホームは,65歳以上の者であって,身体上若しくは精神上又は環境上の理由及び経済的理由により居宅での養護が困難な者を入所させた。


5 65歳以上の者についての養護老人ホームや特別養護老人ホームへの入所又は入所の委託の措置に要する費用の8割は,国が負担していた。


分からない選択肢もありますが,正解は分かるでしょう。

それでは詳しく見ていきましょう。


1 65歳以上の者についての養護老人ホームや特別養護老人ホームへの入所又は入所の委託の措置は,都道府県が採っていた。


1990年の福祉関係八法改正によって,高齢者及び身体障害者の施設入所の措置は,市町村に権限移譲されています。

都道府県ではありません。

よって間違いです。


2 特別養護老人ホームに入所又は入所の委託の措置が採られるのは,低所得の者に限られていた。


特別養護老人ホームの入所要件は,「身体上又は精神上著しい障害があるため」です。

低所得者に限られません。

よって間違いです。

低所得者は養護老人ホームでは? と思う人もいるでしょう。経済的理由は養護老人ホームですが,身体上又は精神上著しい障害がある低所得者は,特別養護老人ホームの利用となります。


3 特別養護老人ホームは,無料又は低額な料金で65歳以上の者を入所させ,常時の介護等を供与することを目的とする施設だった。


特別養護老人ホームの利用料は,応能負担(負担能力に応じて支払う方式)です。

軽費老人ホームが「無料又は低額の料金」です。

よって間違いです。

4 養護老人ホームは,65歳以上の者であって,身体上若しくは精神上又は環境上の理由及び経済的理由により居宅での養護が困難な者を入所させた。


これが正解です。

ただし,現在は,「身体上若しくは精神上」の部分は削除されて,「環境上の理由及び経済的理由」となっています。


5 65歳以上の者についての養護老人ホームや特別養護老人ホームへの入所又は入所の委託の措置に要する費用の8割は,国が負担していた。


これは難しかったでしょう。国の負担は8割ではなく2分の1でした。

よって間違いです。現在は削除され,費用の一部を補助することができる,とされています。



老人福祉法がかかわる高齢者福祉の発展過程の問題

 ↓    ↓



これも押さえておきましょう。

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