「歴史と人名を覚えられない」
という声を聞きます。
しかし覚えなければならないものはほんの少し。
覚えても覚えられなくても,1点は1点。
問題数が多い社会福祉士の国試の特徴です。
入試などの1問の配点は,1~4点くらいまでばらつきがあります。
1問できないことが,とても大きな差となってしまいます。
しかし社会福祉士の国試は,1問1点です。解けても解けなくてもその差はわずか1点です。
しかし社会福祉士の国試は,1問1点です。解けても解けなくてもその差はわずか1点です。
もし,この時点(2018/01/21)でも,ぜんぜん覚えられなかったとしたら捨てましょう。
もっと早い時点なら,しっかり覚えていきましょう,と言います。
しかし,限られた時間では,苦手なところにあまり時間はかけたくはないのが本音のところです。
バランスよく学ぶことが大切です。
国試全体では,法制度に関する問題が大半を占めます。
しかも法制度の方が覚えやすいです。言い回しを変えて出題されないからです。
しかし,その分,言い回しの不自然さが生まれないので,しっかり覚えておかないと「あれっ,これって,これで良かったのかな~」と思うことも多々あります。
そのため本当は法制度にすべての力を注ぎ込みたいところです。
しかし,それでは取れる問題も解けない,ということが生まれてしまうので,最低限のところは押さえておきましょう。
さて,今日は高齢者福祉の発展過程です。
現代社会や地域福祉のように外国の発展過程は出題されたことはありません。
高齢者の発展過程は,
老人福祉法に絡むものがほとんどです。
まずは,現在の養護老人ホームの変遷です。
救護法の一つの「養老院」という名称で設置されたのが始まりです。
古い人は,今でも老人ホームのことを養老院と呼ぶ人がいるのはこのためです。
その後,旧・生活保護法で,養老施設となり,老人福祉法によって,現在の養護老人ホームとなりました。
養護老人ホームは,救護施設の一つとして設置されたので,今でもその名残りで,老人福祉法による入所要件には「環境上の理由及び経済的理由」という「経済的理由」があります。
ただし,老人福祉法制定時には「身体上若しくは精神上又は環境上の理由及び経済的理由」でした。
国試では,何度も「経済的理由が入所要件になっているのは,特別養護老人ホームである」と出題されていますが,特養ではなく,養護老人ホームです。しっかり覚えておきましょう。
特別養護老人ホームの入所要件は,「身体上又は精神上著しい障害があるため」となっています。
さて,老人福祉法は,昭和38(1963)年に成立しました。
国試では,老人福祉法は,日本が高齢化社会になったことで作られた,といった問題が出題されたことがありますが,日本が高齢化社会になったのは,昭和45(1970)年です。
老人福祉法は,高齢化社会になったからできたものではありません。
老人福祉法が成立した時に新たに規定されたのは,「特別養護老人ホーム」「軽費老人ホーム」「有料老人ホーム」「老人福祉センター」です。
さて,その後,昭和48(1973)年に,法改正で老人医療費が無料となり,昭和57(1982)年に,老人保健法によって,老人医療費の一部負担が導入されました。
1990年の福祉関係八法改正で,在宅福祉サービスが第二種社会福祉事業に規定され,施設から在宅へという流れができます。
また入所施設の措置は,都道府県から市町村に権限移譲されています。
同時に身体障害者の入所措置も市町村に移譲されました。
2000年には介護保険法が導入され,高齢者福祉は,介護保険サービスに変わりました。
ここで,社会保障制度審議会の1962年勧告を思い出しましょう。
この勧告では社会保障制度を,
社会保険制度は,一般所得階層に対する施策
社会福祉制度は,低所得階層に対する施策
生活保護制度は,貧困階層に対する施策
と提言しています。つまり,1999年までの高齢者介護は,主に低所得者層といった特定層に対する福祉制度であったわけです。
それが社会保険制度になったことは,高齢者介護は,特定層に対する制度ではなく,一般層に対する制度(社会保険制度)となったことを意味します。
高齢者介護は,社会保険制度で行われていますが,老人福祉法による措置は,現在でも残ります。
介護保険法による介護保険制度の利用は契約制度
老人福祉法による老人福祉制度の利用は措置制度
しっかり覚えておきましょう。
さて,これらをもとにして,今日の問題です。
第22回・問題119
第二次世界大戦後の我が国の高齢者保健医療福祉制度の発展過程に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 経済的に困窮した高齢者を対象とする入所施設として,「旧生活保護法」で保護施設,「新生活保護法」では養護老人ホームが設けられた。
2 特別養護老人ホームは,高齢者への経済的援助と介護を行う施設として,老人福祉法(昭和38年)に規定された。
3 デイサービス,ショートステイサービス等は,福祉関係八法改正(平成2年)によって,それまでの措置事業から契約対象の事業に位置づけられた。
4 老人医療費の無料化は,国の制度としては老人福祉法の改正(昭和48年)により行われたが,老人保健法の制定(昭和57年)により一部自己負担が導入された。
5 「ゴールドプラン21」は,介護保険制度が始まった2000(平成12)年度から10か年計画でスタートし,サービス基盤の整備目標や今後の方向性を明らかにした。
わが国の高齢者福祉は,老人福祉法の変遷とともにあります。
さて,それでは詳しく見ていきましょう。
1 経済的に困窮した高齢者を対象とする入所施設として,「旧生活保護法」で保護施設,「新生活保護法」では養護老人ホームが設けられた。
旧・生活保護法では,保護施設の一つとして「養老施設」が規定され,老人福祉法によって,「養護老人ホーム」が規定されました。
よって間違いです。
よって間違いです。
ここでは出題されていませんが,もう一つさかのぼると,救護法で救護施設の一つとして養老院が規定されています。
2 特別養護老人ホームは,高齢者への経済的援助と介護を行う施設として,老人福祉法(昭和38年)に規定された。
入所要件に,「経済的理由」があるのは,養護老人ホームです。よって間違いです。
経済的理由は今も残ります。
経済的理由は今も残ります。
3 デイサービス,ショートステイサービス等は,福祉関係八法改正(平成2年)によって,それまでの措置事業から契約対象の事業に位置づけられた。
デイサービス等は,福祉関係八法改正で,第二種社会福祉事業と規定されました。
しかしまだ措置制度の時代です。
高齢者介護に契約制度が導入されたのは,2000年の介護保険法です。
よって間違いです。
先述のように,老人福祉法による措置制度は今も続いています。
しかしまだ措置制度の時代です。
高齢者介護に契約制度が導入されたのは,2000年の介護保険法です。
よって間違いです。
先述のように,老人福祉法による措置制度は今も続いています。
4 老人医療費の無料化は,国の制度としては老人福祉法の改正(昭和48年)により行われたが,老人保健法の制定(昭和57年)により一部自己負担が導入された。
これが正解です。老人医療費無料化は福祉元年と呼ばれた昭和48(1973)年に導入されました。
しかし奇しくも同年に第一次オイルショックが起こり,その後第二次オイルショックにも見舞われて,昭和57(1982)年に老人医療費無料化は終焉を迎えます。
よって正解です。
しかし奇しくも同年に第一次オイルショックが起こり,その後第二次オイルショックにも見舞われて,昭和57(1982)年に老人医療費無料化は終焉を迎えます。
よって正解です。
5 「ゴールドプラン21」は,介護保険制度が始まった2000(平成12)年度から10か年計画でスタートし,サービス基盤の整備目標や今後の方向性を明らかにした。
平成元(1989)年のゴールドプランは,1か年戦略でした。
しかし,ゴールドプラン21は,5か年計画です。
よって間違いです。
しかし,ゴールドプラン21は,5か年計画です。
よって間違いです。
ちょっと難しめに感じるかもしれません。
しかし,介護保険が導入される時代に10か年計画は難しいです。
国による整備計画は,ゴールドプラン21が最後となりました。
3年を一期として,市町村介護保険事業計画と市町村老人福祉計画,都道府県介護保険事業支援計画と都道府県老人福祉計画はそれぞれ一体で策定されています。
こんな時代に,国が10か年の計画を立てるのは,想定期間が長すぎます。
こんな時代に,国が10か年の計画を立てるのは,想定期間が長すぎます。
今日は,もう一問いきます。
第24回・問題119
介護保険法が公布(平成9年12月17日)された時点での老人福祉法による高齢者福祉制度に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 65歳以上の者についての養護老人ホームや特別養護老人ホームへの入所又は入所の委託の措置は,都道府県が採っていた。
2 特別養護老人ホームに入所又は入所の委託の措置が採られるのは,低所得の者に限られていた。
3 特別養護老人ホームは,無料又は低額な料金で65歳以上の者を入所させ,常時の介護等を供与することを目的とする施設だった。
4 養護老人ホームは,65歳以上の者であって,身体上若しくは精神上又は環境上の理由及び経済的理由により居宅での養護が困難な者を入所させた。
5 65歳以上の者についての養護老人ホームや特別養護老人ホームへの入所又は入所の委託の措置に要する費用の8割は,国が負担していた。
分からない選択肢もありますが,正解は分かるでしょう。
それでは詳しく見ていきましょう。
1 65歳以上の者についての養護老人ホームや特別養護老人ホームへの入所又は入所の委託の措置は,都道府県が採っていた。
1990年の福祉関係八法改正によって,高齢者及び身体障害者の施設入所の措置は,市町村に権限移譲されています。
都道府県ではありません。
よって間違いです。
都道府県ではありません。
よって間違いです。
2 特別養護老人ホームに入所又は入所の委託の措置が採られるのは,低所得の者に限られていた。
特別養護老人ホームの入所要件は,「身体上又は精神上著しい障害があるため」です。
低所得者に限られません。
よって間違いです。
低所得者は養護老人ホームでは? と思う人もいるでしょう。経済的理由は養護老人ホームですが,身体上又は精神上著しい障害がある低所得者は,特別養護老人ホームの利用となります。
低所得者に限られません。
よって間違いです。
低所得者は養護老人ホームでは? と思う人もいるでしょう。経済的理由は養護老人ホームですが,身体上又は精神上著しい障害がある低所得者は,特別養護老人ホームの利用となります。
3 特別養護老人ホームは,無料又は低額な料金で65歳以上の者を入所させ,常時の介護等を供与することを目的とする施設だった。
特別養護老人ホームの利用料は,応能負担(負担能力に応じて支払う方式)です。
軽費老人ホームが「無料又は低額の料金」です。
よって間違いです。
よって間違いです。
4 養護老人ホームは,65歳以上の者であって,身体上若しくは精神上又は環境上の理由及び経済的理由により居宅での養護が困難な者を入所させた。
これが正解です。
ただし,現在は,「身体上若しくは精神上」の部分は削除されて,「環境上の理由及び経済的理由」となっています。
ただし,現在は,「身体上若しくは精神上」の部分は削除されて,「環境上の理由及び経済的理由」となっています。
5 65歳以上の者についての養護老人ホームや特別養護老人ホームへの入所又は入所の委託の措置に要する費用の8割は,国が負担していた。
これは難しかったでしょう。国の負担は8割ではなく2分の1でした。
よって間違いです。現在は削除され,費用の一部を補助することができる,とされています。
よって間違いです。現在は削除され,費用の一部を補助することができる,とされています。
老人福祉法がかかわる高齢者福祉の発展過程の問題
↓ ↓
これも押さえておきましょう。