2018年1月11日木曜日

国試に合格する勉強法~システム理論とソーシャルワーク

システム理論と聞くといやだなぁ,と思う人も多いことでしょう。

システムは仕組みのことではなく,構造と機能を指します。

構造は,クライエントとそれを取り巻く環境,機能は,クライエントのワーカビリティ,ストレングスなど,変化をもたらすもののことです。

クライエントは,クライエント一人で存在しているものではありません。

環境との交互作用を通して,存在しています。

これらを理解して,ワーカー自身もシステムの構造と機能を果たすことがソーシャルワークにおけるシステム理論の活用につながります。


<システム理論を用いたソーシャルワークとは>

・人と環境を調整すること。

・人の問題解決能力を高めること。

・環境の問題を解決,時には開発すること。

などといったものがあります。

しかし,あくまでも問題解決の主体はクライエントです。ワーカーはそれを側面から支援する存在です。 


さて,今日は,模擬問題などではよく出題されていますが,実は現行カリキュラムではほとんど出題されたことのないピンカスとミナハンのシステム理論を取り上げたいと思います。

要注意の第26回国試では,かすって出題されているので,ここで押さえておきたいです。


<ピンカスとミナハンのシステム理論>

クライエント・システム 
 ➡ 個人,家族,地域社会など,クライエントを包み込む環境すべてのもの。

アクション・システム 
 ➡ クライエントの変革をもたらす人材,資源,援助活動など。

ターゲット・システム 
 ➡ ワーカーが働き掛ける対象。

チェンジ・エージェント・システム 
 ➡ ワーカーとワーカーの所属する機関。

とても難しい表現を使っていますが,システム理論の内容は何となくでもつかめるのではないでしょうか。

さて,これを押さえたところで今日の問題です。


21回・問題119 

ピンカス(Pincus,A.)とミナハン(Minahan,A.)によるソーシャルワーク実践にかかわる理論に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 地縁関係で結ばれたクライエント個々の日常生活上の単位を,クライエント・システムという。

2 ソーシャルワーカーが所属する公私の機関もしくは組織体を,アクション・システムという。

3 ソーシャルワーカーが働き掛け,変化を引き起こす対象を,ターゲット・システムという。

4 ソーシャルワーカーとともに変革努力の目標を達成するために対応していく人材,資源,援助活動などを,チェンジ・エージェント・システムという。

5 特定の課題解決に向けて活用されるソーシャルワーカーのワーカビリティを,リソース・システムという。


気付いた人もいると思いますが,この問題は,現行カリキュラムになる前の第21回国試で出題されたものです。

※現行カリキュラムは,第22回以降です。

ピンカスとミナハンは,先述のように模擬試験などではよく見かけますが,実はピンカスとミナハンそのものが出題されたのは,第11回,第21回のわずか2回だけです。

26回は間違い選択肢,第27回も間違い選択肢,第27回は名前さえ出題されていません。

しかし,第26回でかすって出題されているところから押さえておくべきだと思います。

さて,それでは詳しく見て行きましょう。


1 地縁関係で結ばれたクライエント個々の日常生活上の単位を,クライエント・システムという。

クライエント・システムは,クライエントとクライエントを包み込む環境すべてのことです。

よって間違いです。


2 ソーシャルワーカーが所属する公私の機関もしくは組織体を,アクション・システムという。

アクション・システムは,クライエントの変革をもたらす人材,資源,援助活動などのことです。よって間違いです。

ワーカーが所属するのは,チェンジ・エージェント・システムです。


3 ソーシャルワーカーが働き掛け,変化を引き起こす対象を,ターゲット・システムという。

これが正解です。

ターゲット・システムは,ワーカーが働き掛ける対象です。


4 ソーシャルワーカーとともに変革努力の目標を達成するために対応していく人材,資源,援助活動などを,チェンジ・エージェント・システムという。

チェンジ・エージェント・システムは,ワーカーが所属する機関のことです。

よって間違いです。


5 特定の課題解決に向けて活用されるソーシャルワーカーのワーカビリティを,リソース・システムという。

ワーカビリティはワーカーではなく,クライエントが援助を自分のものにできる問題解決能力のことです。

よって間違いです。

なお,リソースは,資源のことです。リソース・システムは,社会資源すべてのことです。



<今日の補足>

27回国試では,ピンカスとミナハンは以下のように出題されています。

ピンカスとミナハンは「人と環境との関係」に関して,人々と資源システムとの連結や相互作用としてとらえた。(第27回問題98選択肢1



ピンカスとミナハン以外の人も,人と環境について述べています。それらも一応押さえておくと良いと思います。



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