ソーシャルワークは,慈善組織協会(COS)の活動が始まりだとされています。
ソーシャルワークに限らず,始まりは出題されやすいものです。
細かくいうと
COSはケースワーク(個別援助)の源流
セツルメントはグループワーク(集団援助)の源流です。
また,YMCAもグループワークの源流です。
それでは今日の問題です。
第22回・問題86
ソーシャルワークの形成過程に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 慈善組織協会は,慈善活動による救済の偏りを防止するために設立され,貧困の原因を社会の構造に求めて,貧困者に対する救済を社会の義務ととらえていた。
2 セツルメント運動は,大学生たちが貧困地区に住み込むことによって展開され,貧困からの脱出に向けて,勤勉と節制を重視する道徳主義を理念とした。
3 YMCAは,キリスト教の信仰を深める青年運動として始められ,個別面接を繰り返すことによって,心理的な側面を重視した面接技法の体系化を進めた。
4 リッチモンド(Richmond,M.)の提案に基づいて,ニューヨークで6週間に及ぶ博愛事業に関する講習会が初めて開催され,専門教育へと発展していった。
5 フレックスナー(Flexner,A.)によって「ソーシャルワークはすでに専門職である」と結論づけられ,専門性が社会的に認知されるきっかけとなった。
法制度の科目でも,発展過程は出題されます。
歴史が苦手だと思う人はいやだなぁ,と思う分野かもしれません。
しかし,たかだか150年あまりの話です。その間の出来事のほんの一部です。
今年2018年は明治150年です。
歴史の勉強なら150年間の出来事はいくつ覚えなければならないのか分からないくらいに多いですが,社会福祉士で覚えなければならないのは,本当に一部です。
COS
セツルメント
リッチモンド
フレックスナー/グリーンウッド
マイルズ
このくらいでしょう。
それでは詳しく見ていきましょう。
1 慈善組織協会は,慈善活動による救済の偏りを防止するために設立され,貧困の原因を社会の構造に求めて,貧困者に対する救済を社会の義務ととらえていた。
COSが始まったのは19世紀半ばのイギリスです。
貧困は古典的資本主義による社会構造に原因があることを明らかにしたのは,19世紀末のブース,ラウントリーの貧困調査です。
その後,ウェッブ夫妻がナショナルミニマム(国による最低限の生活保障)を提唱したのは20世紀に入ってからのことです。
COSは貧困の原因を個人的な問題だととらえていました。
よって間違いです。
そのため,COSは救済の対象を「救済に値する貧民」として,「救済に値しない貧民」は救済しませんでした。
救済に値しない貧民はどうするの? と思う人もいるでしょう。
エリザベス救貧法を思い出しましょう。同法による救済の対象は,「労働能力のある貧民」「労働能力のない貧民」「養育する者がいない児童」です。
救済に値しない貧民は,労働能力のある貧民に当たります。つまり救貧法が救済することになります。
2 セツルメント運動は,大学生たちが貧困地区に住み込むことによって展開され,貧困からの脱出に向けて,勤勉と節制を重視する道徳主義を理念とした。
セツルメントの特徴は,セツラーが移住し,教育や社会問題を解決することでした。
よって間違いです。
道徳主義も重要ですが,それでは問題の根本的解決にはならないことをセツラーは知っていました。
貧困から脱出するには教育が大切なことは今も昔も変わりません。
3 YMCAは,キリスト教の信仰を深める青年運動として始められ,個別面接を繰り返すことによって,心理的な側面を重視した面接技法の体系化を進めた。
面接技術の体系化を進めたのはCOSの活動です。
よって間違いです。
YMCAはセツルメントとともにグループワークの源流です。
4 リッチモンド(Richmond,M.)の提案に基づいて,ニューヨークで6週間に及ぶ博愛事業に関する講習会が初めて開催され,専門教育へと発展していった。
リッチモンドのことは前説では触れませんでしたが,ケースワークを理論化した人ととして極めて重要です。
彼女に関するものは,すべてしっかり覚えておきたいです。
これが正解です。
リッチモンドの提案で,講習会が開催されました。
これがソーシャルワークの専門教育の始まりです。始まりと聞いたら,しっかり覚えておく習慣を忘れないようにしましょう。
5 フレックスナー(Flexner,A.)によって「ソーシャルワークはすでに専門職である」と結論づけられ,専門性が社会的に認知されるきっかけとなった。
フレックスナーは「専門職ではない」と述べた人です。
「専門職である」と述べたのはグリーンウッドです。
よって間違いです。
<今日の一言>
対になるものがある場合は混乱しやすいです。
フレックスナー ➡ 専門職ではない
グリーンウッド ➡ 専門職である
これを力技で覚えても良いですが,いざという時には間違う率が高くなります。
似たようなものが2つある場合は,1つだけを覚えるのが絶対に間違わないコツです。
どちらを覚えても良いです。自分が覚えやすい方を覚えればよいと思います。
例えば・・・
グリーンウッド ➡ 専門職である
と覚えると
フレックスナー ➡ 専門職ではある
グリーンウッド ➡ 専門職ではない
と出題されたら,どちらも間違いだとすぐ分かります。
覚え方にはコツがあります。
「年で記憶力が落ちた」というのは生理現象です。
しかし,覚え方次第で,記憶力はよみがえります。
社会福祉士の国試は,マーク式。問題文の中に答えが必ずあります。
フレックスナーの方が覚えやすければ,
ない袖は振れない ➡ フレックスナー 専門職ではないと述べた
といった覚え方もあります。
外国人の名前や外国語の用語の方が,このような覚え方はしやすいです。
年齢を言い訳にしても何も生まれません。