「児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度」は,「人体の構造」から順番に勉強していくと最後の方にある科目なので,勉強にかけられる時間は不足がちの方が多いようです。
この科目の基本は「児童福祉法」です。
児童福祉法は,1947(昭和22)年の成立以来,何度も改正を重ねて,現在に至っていますが,大きな改正が行われたことがありません。
高齢者介護の介護保険法のように制度を修正しながら現在に至っているものとは大きく違います。
児童・家庭に関する制度にはなじみがあまりないかもしれませんが,大きな制度改正がないということは,オーソドックスな出題がされやすいことを意味します。
その前に,例のごとく,発展過程を押さえましょう。
歴史が苦手だという人は多いです。
しかし,チームfukufuku21が押さえている中では,児童・家庭の歴史の出題は最もシンプルです。
というか,この科目の国試問題はすべてといってよいほどシンプルです。
シンプルという意味は・・・
知っていれば,すぐ解けるという意味です。おかしな言い回しはゼロです。
児童・家庭の歴史に関するものは,ホワイトハウス会議から児童権利条約まで。そこに日本の児童福祉法の成立と児童憲章を絡めて出題されます。
それプラス児童関係の施設の創設者です。
岡山孤児院
滝乃川学園
家庭学校
二葉幼稚園
近江学園
この5つ以外が出題されたとしても,正解選択肢として出題される可能性は少ないです。
さて,それでは今日の問題です。
第28回・問題13
日本の児童福祉の歴史に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 恤救規則では,15歳以下の幼者について,人民相互の情宜に頼らず,国家が対応すると規定した。
2 石井十次は,イギリスのベヴァリッジ(Beveridge,W.)の活動に影響を受けて岡山孤児院を設立した。
3 工場法では,18歳未満の者の労働時間を制限することを規定した。
4 児童虐待防止に関する最初の法律は,第二次世界大戦前につくられた。
5 児童憲章は,児童の権利に関するジュネーブ宣言を受けて制定された。
知っているか,知らないかだけで解けるのが,この科目の特徴です。
歴史が苦手だと思っている人も必見です。
1 恤救規則では,15歳以下の幼者について,人民相互の情宜に頼らず,国家が対応すると規定した。
恤救規則は近代日本の幕開けとなる窮民救済の法制度です。
基本は「人民相互の情誼(じょうぎ)」です。児童の対象は13歳以下の孤児です。15歳以下ではなく,13歳以下,人民相互の情宜に頼らず,ではなく「人民相互の情宜」が基本です。よって間違いです。
この問題は・・・
人は嘘をつくとき,饒舌になる
です。
もし,国家が対応すると規定した。が正しいとしたら,
恤救規則では,15歳以下の幼者について,国家が対応すると規定した。
で良いと思います。
「人民相互の情宜に頼らず」は余計です。
間違い選択肢を作るのは極めて難しい作業です。
2 石井十次は,イギリスのベヴァリッジ(Beveridge,W.)の活動に影響を受けて岡山孤児院を設立した。
石井十次=岡山孤児院
という単純図式では解けないことが分かるでしょう。岡山孤児院もう一つ必要な知識として,バーナードがあります。
この問題の場合は,バーナードではなく,べヴァリッジと書かれているので,間違いだと分かるでしょう。
3 工場法では,18歳未満の者の労働時間を制限することを規定した。
労働時間を制限したのは,15歳未満です。よって間違いです。
工場法は明治の末期です。その時代の18歳は大人です。そう思えば,正しい年齢は分からずとも18歳は違うだろうと思えるでしょう。
同法では,12 歳未満の児童の労働を禁止しています。。
4 児童虐待防止に関する最初の法律は,第二次世界大戦前につくられた。
1929年に発生した世界大恐慌は,日本にも大きな影響を与えました。その中で,1933(昭和8)年に児童虐待防止法ができました。
よって正解です。
昭和8年と言えば,今の天皇陛下がご誕生になった年です。
日本国中では皇太子誕生に大きく沸いていた中,庶民の生活はどん底にありました。そんな中,同法ができました。
5 児童憲章は,児童の権利に関するジュネーブ宣言を受けて制定された。
児童憲章は,ジュネーブ宣言を受けて成立したものではなく,日本の児童問題が解決されない中,作られたものです。
よって間違いです。
<今日のまとめ>
歴史関係の出題は,この科目に限らず,「〇〇初」が重要です。