質的調査のデータは,観察法,インタビュー(面接),記録類(ドキュメント)などがあります。
前回までは,質的調査のデータの収集のしかたを紹介してきました。
いよいよ今回は,得られたデータの分析を紹介します。
国試に出題されるのは,KJ法とグラウンデッドセオリーです。
KJ法は,メイドインジャパン。川喜田二郎先生のイニシャルを取ってKJ法と名付けられています。
社会調査に限らず,外国生まれの理論が多い中,メイドインジャパンのものは出題される率が高くなります。
思いついたものをカードに書きだし,類似のものをカテゴリー化することで分析しています。
グラウンデッドセオリーは外国生まれの理論です。
グラウンデッドセオリーはうまい訳語がありません。
なぜなら,もともとあった「グラウンドセオリー」を皮肉った名称だからです。
グラウンドセオリーは「セオリー(理論)を下敷きにして」という意味です。
グラウンデッドセオリーはセオリーなしに,分析の中から新たなセオリーを発見するといった意味となります。
データ収集とオープン・コーディング(似たデータをカテゴリー化すること),軸足コーディング(カテゴリー化されたものをまとめること)を繰り返して,これ以上は新しいカテゴリーが出てこない理論的飽和という状態になったら出来上がりです。
これらを押さえて今日の問題です。
第22回・問題83
質的データの分析に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 グラウンデッド・セオリー・アプローチでは,データの収集と分析が一体となり,繰り返し実施されるのが,その特徴の一つである。
2 KJ法を利用して質的データを分類するには,理論的枠組みに基づいてあらかじめ設定された分類軸が必要である。
3 ドキュメント分析を行う際,公的機関の統計や文書あるいは新聞・雑誌などのメディア文書は分析の対象となるが,日記や手記などの個人的記録は分析の対象とはならない。
4 グラウンデッド・セオリー・アプローチにおける軸足コーディングは,単一の事象に対して,複数のコードをはり付けていくことである。
5 KJ法は,質的データの分析において,主として仮説の検証を試みる際に活用される。
前回と違ってちょっと難しいかもしれません。
しかし,KJ法,グラウンデッドセオリーが分かっていれば何とかなるでしょう。
それでは詳しく見ていきましょう。
1 グラウンデッド・セオリー・アプローチでは,データの収集と分析が一体となり,繰り返し実施されるのが,その特徴の一つである。
これが正解ですね。グラウンデッドセオリーの本質の部分をしっかりまとめていると思います。
2 KJ法を利用して質的データを分類するには,理論的枠組みに基づいてあらかじめ設定された分類軸が必要である。
グラウンデッドセオリーもそうですが,KJ法も既成の理論に基づいて分析することは求められていません。よって間違いです。
3 ドキュメント分析を行う際,公的機関の統計や文書あるいは新聞・雑誌などのメディア文書は分析の対象となるが,日記や手記などの個人的記録は分析の対象とはならない。
「〇〇は●●だが,○○は●●ではない」のパターンですね。
もちろん個人的記録も対象となります。よって間違いです。
4 グラウンデッド・セオリー・アプローチにおける軸足コーディングは,単一の事象に対して,複数のコードをはり付けていくことである。
軸足コーディングは,複数にカテゴリー化されたものを一つのカテゴリーにまとめることです。
よって間違いです。
5 KJ法は,質的データの分析において,主として仮説の検証を試みる際に活用される。
質的調査は,仮説の検証というより新たな発見のために行われることが多いです。
多くの場合,仮説の検証に用いられるのは量的調査だと言えます。