2023年10月31日火曜日

医療観察法の目的と精神保健観察

医療観察法の目的は,心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の病状の改善及びこれに伴う同様の行為の再発の防止を図り,社会復帰を促進することです。


医療観察法は社会復帰の促進を目的としているのは,一般的なイメージと少し違うと思うので,注意が必要です。


それでは今日の問題です。


第32回・問題62

医療観察制度に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 対象者は,起訴された者に限られており,起訴されていない者は含まれない。

2 保護観察所には,対象者の社会復帰を支援する,精神保健福祉士等の専門家である社会復帰調整官が配置されている。

3 「医療観察法」の目的は,精神障害者の医療及び保護を行い,その自立と社会経済活動への参加の促進のために必要な援助を行い,精神障害者の福祉の増進及び国民の精神保健の向上を図ることである。

4 入院による医療の決定を受けた者に対しては,指定入院医療機関で,専門的な医療の提供が行われるとともに保健所による退院後の生活環境の調整が実施される。

5 通院による医療の決定を受けた者及び退院を許可された者は,処遇の実施計画に基づいて,期間の定めなく,地域の指定医療機関による医療を受ける。

(注) 「医療観察法」とは,「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」のことである。


なかなかの難問です。


それでは解説です。


1 対象者は,起訴された者に限られており,起訴されていない者は含まれない。


起訴されていないものも対象です。


明らかに心身喪失等である場合は,起訴されません。


2 保護観察所には,対象者の社会復帰を支援する,精神保健福祉士等の専門家である社会復帰調整官が配置されている。


これが正解です。


精神保健観察などを実施する社会復帰調整官は,保護観察所に配置されています。


3 「医療観察法」の目的は,精神障害者の医療及び保護を行い,その自立と社会経済活動への参加の促進のために必要な援助を行い,精神障害者の福祉の増進及び国民の精神保健の向上を図ることである。


「国民の」という用語が入っているので医療観察法ではないと判断できます。

この内容は,精神保健福祉法の目的です。


4 入院による医療の決定を受けた者に対しては,指定入院医療機関で,専門的な医療の提供が行われるとともに保健所による退院後の生活環境の調整が実施される。


生活環境の調整は,保護観察所が行います。


5 通院による医療の決定を受けた者及び退院を許可された者は,処遇の実施計画に基づいて,期間の定めなく,地域の指定医療機関による医療を受ける。


地域の指定医療機関による医療を受ける期間は,最長3年間,必要な場合は2年を超えない範囲で延長できます。


〈今日の注意ポイント〉


入院によらない医療を受ける場合,精神保健観察に付されます。


精神保健観察は,保護観察所が実施します。


精神保健観察にかかわるのは,保護観察所に配置される社会復帰調整官です。


保護観察所には,保護観察官も配置されていますが,精神保健観察(つまり医療観察法)には,保護観察官及び保護司はかかわりません。

2023年10月30日月曜日

障害者基本法の注意ポイント

 社会福祉士の国家試験に出題される多くの法制度は,厚生労働省が所管しています。


厚生労働省が所管していない主な法律

・障害者基本法(内閣府)

・子ども・子育て支援法(内閣府)

・こども基本法(こども家庭庁)

・更生保護法(法務省)


注意したいのは,児童福祉法です。


児童福祉法は厚生労働省の所管ですが,児童福祉法の障害児に関する部分は内閣府がかかわります。内閣府が管轄しているこども施策の一環だからでしょう。

こども家庭庁は,内閣総理大臣直属の外局です。


障害者総合支援法では,障害児に関する事項を含むものとして政令で定める事項については,内閣総理大臣及び厚生労働大臣とすると規定されています。


児童福祉法を所管しているのは,厚生労働省ですが,障害児に関するものは内閣総理大臣と厚生労働大臣が主務を担います。


例えば,「障害児通所支援等の提供体制を整備し,障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針」(基本指針)を定めるのは,内閣総理大臣です。


都道府県は,都道府県障害児福祉計画を定め,又は変更したときは,遅滞なく,これを内閣総理大臣に提出しなければならない。


といったように規定されます。


話は戻って,障害者基本法です。


障害者基本法は,障害者に関する権利条約を批准するために2011年(平成23年)に改正されました。


そのために,障害者基本法は,障害者に関する権利条約の理念が色濃く反映されています。


この時の改正では,障害者の定義に「社会的障壁」が加わり,「合理的配慮」が規定されています。


障害者に関する権利条約の理念には,


私たちのことを私たち抜きで決めないで(Nothing About us without us)


があることも合わせて覚えておきたいです。


それでは,今日の問題です。


第32回・問題61 

障害者基本法に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 法の目的では,障害者本人の自立への努力について規定されている。

2 都道府県は,都道府県障害者計画の策定に努めなければならないと規定されている。

3 国及び地方公共団体は,重度の障害者について,終生にわたり必要な保護等を行うよう努めなければならないと規定されている。

4 社会的障壁の定義において,社会における慣行や観念は除外されている。

5 障害者政策委員会の委員に任命される者として,障害者が明記されている。


障害者基本法は,36条で構成されます。


●●基本法は,このように細かい規定はされません。細かいことは,個別法で規定します。


それでは解説です。


1 法の目的では,障害者本人の自立への努力について規定されている。


かつては,この規定がありましたが,2004年(平成16年)の改正で,削除されています。


この時の改正では,障害者差別の禁止が規定されたことも覚えておきたいです。


2 都道府県は,都道府県障害者計画の策定に努めなければならないと規定されている。


障害者計画の策定は義務です。


3 国及び地方公共団体は,重度の障害者について,終生にわたり必要な保護等を行うよう努めなければならないと規定されている。


この規定も2004年(平成16年)の改正で,削除されています。


4 社会的障壁の定義において,社会における慣行や観念は除外されている。


社会的障壁

日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のもの


5 障害者政策委員会の委員に任命される者として,障害者が明記されている。


これが正解です。


障害者政策委員会は,内閣府に設置されます。


障害者基本計画の実施状況を監視し,必要があると認めるときは,内閣総理大臣又は内閣総理大臣を通じて関係各大臣に勧告すること。


などを行います。


〈政策委員会の委員〉

障害者,障害者の自立及び社会参加に関する事業に従事する者並びに学識経験のある者のうちから,内閣総理大臣が任命する。


障害者が含まれるのは,障害者に関する権利条約の理念である

「私たちのことを私たち抜きで決めないで(Nothing About us without us)」

がベースにあるためです。


〈今日の注意ポイント〉


障害者基本法は,障害者施策の方向性を定める理念法です。


障害者基本法を所管しているのは,内閣府です。


また,障害児に関するものは,内閣総理大臣が主務を担います。


障害者に関する施策は「障害者に関する権利条約」,障害児に関する施策は「児童に関する権利条約」が関連します。多くの省庁の連携が必要なので,内閣総理大臣が司令塔となります。

2023年10月29日日曜日

発達障害者支援法に規定される発達障害者の定義と社会的障壁

今回は,発達障害者支援法を取り上げます。

 

国家試験では,出題頻度はあまり高くないですが,重要なダークホース的な法制度です

 

発達障害者の定義 

発達障害がある者であって発達障害及び社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受けるもの。

 

社会的障壁は,2016年(平成28年)の改正によって,加わったものです。

障害者に関する権利条約を受けて改正されたことがよくわかります。


社会的障壁に関する関連情報

https://fukufuku21.blogspot.com/2023/10/blog-post_26.html

 

社会的障壁については,基本理念にも記載があります。

〈基本理念〉

・発達障害者の支援は、全ての発達障害者が社会参加の機会が確保されること及びどこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないことを旨として、行われなければならない。

・発達障害者の支援は、社会的障壁の除去に資することを旨として、行われなければならない。

・発達障害者の支援は、個々の発達障害者の性別、年齢、障害の状態及び生活の実態に応じて、かつ、医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関及び民間団体相互の緊密な連携の下に、その意思決定の支援に配慮しつつ、切れ目なく行われなければならない。

 

社会的障壁とは,

日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物,制度,慣行,観念その他一切のもの

をいいます。

 

物のバリアだけではなく,こころのバリアなども含む広い概念です。

 

なお,発達障害者支援法に規定されている社会資源は,発達障害者支援センターのみです。


〈発達障害者支援センターの業務〉 

・発達障害者及びその家族その他の関係者に対する相談,情報の提供,助言。


・専門的な発達支援・就労支援。


・関係機関及び民間団体,並びにこれに従事する者にする情報提供,研修。


・関係機関及び民間団体との連絡調整。

 

それでは,今日の問題です。

 

32回・問題60

発達障害者支援法の規定に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 市町村は,個々の発達障害者の特性に応じた適切な就労の機会の確保,就労定着のための支援に努めなければならない。

2 都道府県は,支援体制の課題を共有するとともに,関係者の連携の緊密化を図るため,発達障害者支援地域協議会を設置しなければならない。

3 発達障害者とは,発達障害がある者であって発達障害及び社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受けるものをいう。

4 都道府県知事は,発達障害者に対する専門的な就労の支援等を障害者就業・生活支援センターに行わせることができる。

5 都道府県知事は,該当する者に精神障害者保健福祉手帳を交付する。

 

この問題の答えは,すぐわかると思いますが,解説します。

汚い引っ掛けがあります。

 

1 市町村は,個々の発達障害者の特性に応じた適切な就労の機会の確保,就労定着のための支援に努めなければならない。

 

就労の機会の確保,就労定着のための支援に努めなければならないのは,国及び都道府県です。

市町村が発達障害者の就労の機会の確保などを行うのは,かなり困難です。

 

2 都道府県は,支援体制の課題を共有するとともに,関係者の連携の緊密化を図るため,発達障害者支援地域協議会を設置しなければならない。

 

発達障害者支援地域協議会の設置は任意です(都道府県)。

 

●●協議会の設置が義務である法制度があるのかわからないほど,●●協議会の設置は,任意です。

 

3 発達障害者とは,発達障害がある者であって発達障害及び社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受けるものをいう。

 

これが正解です。

 

4 都道府県知事は,発達障害者に対する専門的な就労の支援等を障害者就業・生活支援センターに行わせることができる。

 

発達障害者に対する専門的な就労の支援等を行うのは,発達障害者支援センターです。

 

 

5 都道府県知事は,該当する者に精神障害者保健福祉手帳を交付する。

 

精神障害者保健福祉手帳を交付するのは,都道府県知事です。

 

しかし,精神障害者保健福祉手帳の根拠法は,精神保健福祉法なので,誤りです。

 

〈今日の注意ポイント〉

 

根拠法に注意!

 

社会福祉士の国家試験では,どの法制度に規定されているのかを問う問題はかなりの頻度で出題されます。

 

問われると意外とわからなくなるので注意が必要です。整理して覚えておきたいです。

2023年10月28日土曜日

障害者総合支援法における市町村の役割

市町村は,障害者総合支援法の実施主体です。


支給決定は,基本的に市町村が行います。


しかし,障害者総合支援法に規定されているものでも,都道府県の役割もあります。


都道府県の主な役割


自立支援医療の精神通院医療の支給決定


ただし,申込窓口は市町村です。


障害福祉サービス事業者の指定


ただし,指定特定相談支援事業者の指定は市町村が行います。


地域生活支援事業の一部の実施


地域生活支援事業は,基本的に市町村が実施しますが,専門性の高いものや専門職の育成などの事業は,都道府県が実施します。


それでは,今日の問題です。


第32回・問題59

「障害者総合支援法」に定められている市町村の役割などに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 障害支援区分の認定のための調査を,指定一般相談支援事業者等に委託することができる。

2 障害支援区分の認定に関する審査判定業務を行わせるため,協議会を設置する。

3 市町村障害福祉計画を策定するよう努めなければならない。

4 指定障害福祉サービス事業者の指定を行う。

5 高次脳機能障害に対する支援普及事業などの特に専門性の高い相談支援事業を行う。


市町村と都道府県の役割の違いは,とても複雑に思うかもしれませんが,分野が異なっても,基本的には同じです。


介護保険分野は,地域密着型サービスがあるので,それが普通だと思っていると足元をすくわれます。


市町村が事業者を指定してサービスを提供するするという地域密着型サービスは,社会保障制度全体では,ほかに類似のものがほとんどないタイプのものです。


それでは,解説です。


1 障害支援区分の認定のための調査を,指定一般相談支援事業者等に委託することができる。


これが正解です。

障害支援区分認定は,市町村の役割です。


認定調査は,市町村が実施しますが,指定一般相談支援事業者等に委託することができます。


これを知らずとも,ほかの選択肢を丁寧に考えていけば,結果的にこの選択肢が残ります。


2 障害支援区分の認定に関する審査判定業務を行わせるため,協議会を設置する。


審査判定業務を行うために市町村が設置するのは,市町村審査会です。


3 市町村障害福祉計画を策定するよう努めなければならない。


障害福祉計画は策定の義務があります。


4 指定障害福祉サービス事業者の指定を行う。


サービス提供事業者の指定は,基本的には都道府県の役割です。


市町村が指定するのは,

・特定相談支援事業者

・障害児相談支援事業者

・居宅介護支援事業者


そして,地域密着型サービスなど,ほんの一部しかありません。


これら以外は,基本的には都道府県の役割です。


5 高次脳機能障害に対する支援普及事業などの特に専門性の高い相談支援事業を行う。


地域生活支援事業のうちで,専門性の高いものや専門職の育成などは,都道府県が実施します。


これらは,ほかの分野も共通です。


〈今日の注意ポイント〉


市町村と都道府県の役割は,覚えるのが複雑そうに見えますが,実は極めてシンプルです。


市町村は,基本的な住民サービスを実施します。


都道府県は,市町村では実施できないような専門的なもの,事業者指定などの基盤整備,専門職の育成などを実施します。

2023年10月27日金曜日

同行援護と行動援護

今回は,障害福祉サービスの同行援護と行動援護を取り上げます。

 

同行援護  対象は視覚障害者

外出時に,当該障害者等に同行して移動に必要な情報を提供するとともに,移動の援護その他を行う。

行動援護  対象は知的障害者,精神障害者

当該障害者等が行動する際に生じ得る危険を回避するために必要な援護,外出時における移動中の介護その他を行う。

 

これらは,いずれも障害者総合支援法が規定する障害福祉サービスですが,障害児も利用することができます。

 

児童が利用する場合は,障害支援区分の認定は受けません。

 

それでは,今日の問題です。

 

32回・問題58

事例を読んで,Gさんが利用できる「障害者総合支援法」に基づく障害福祉サービスとして,適切なものを2つ選びなさい。

〔事 例〕

 Gさん(22歳,男性)は20歳の時に脊髄損傷を患い,現在,電動車いすを使用しながら親元で暮らしている。これまで家族から介護を受けて生活をしてきたが,親元を離れ,日中は創作活動などを行いながら自立生活をしていきたいと希望している。一般就労はしておらず,障害支援区分は5で,電動車いすを使って移動が可能だが,手足に麻痺がある。「歩行」,「移乗」,「排尿」,「排便」のいずれも見守りや部分的又は全面的な支援を必要としている。

1 重度訪問介護

2 行動援護

3 生活介護

4 同行援護

5 就労定着支援

 

障害福祉サービスの知識があって,その知識を事例と照らし合わせて考えることが必要な問題です。

 

答えを2つ選ぶ問題は正解するのが難しいので,事例の中にある情報を慎重に整理することが必要です。

 

この事例には,正解を選ぶための情報と消去するための情報がすべて入っています。

 

それでは,解説です。

 

1 重度訪問介護

 

これが2つめの正解です。

 

重度訪問介護の利用対象は,在宅生活者の場合は,障害支援区分4以上です。

 

Gさんは,障害支援区分5,「歩行」,「移乗」,「排尿」,「排便」のいずれも見守りや部分的又は全面的な支援を必要としているという情報から,重度訪問介護は適切です。

 

2 行動援護

 

行動援護は,知的障害者,精神障害者を対象とするものです。

Gさんは,身体障害者です。

 

3 生活介護

 

これが2つめの正解です。

 

生活介護

主として昼間において,障害者支援施設その他の主務省令で定める施設において行われる入浴,排せつ又は食事の介護,創作的活動又は生産活動の機会の提供その他を行う。

 

Gさんは,日中は創作活動などを行いながら自立生活をしていきたいと希望しています。

 

4 同行援護

 

Gさんは,身体障害者です。

同行援護は,視覚障害者を対象とします。

 

5 就労定着支援

 

就労定着支援

就労に向けた支援として主務省令で定めるものを受けて通常の事業所に新たに雇用された障害者に対して,主務省令で定める期間,当該事業所での就労の継続を図るために必要な当該事業所の事業主,障害福祉サービス事業を行う者、医療機関その他の者との連絡調整その他を行う。

 

Gさんは,一般就労していません。

 

〈今日の注意ポイント〉

 

同行援護と行動援護は,名前が似ているので,その違いを確実に押さえることが必要です。

 

同行援護  → 視覚障害者が対象

 

行動援護  → 知的障害者,精神障害者が対象

2023年10月26日木曜日

障害者福祉制度の歴史

今回は,障害者福祉制度の歴史を取り上げます。

 

歴史が好きではない人にとっては苦しいかもしれませんが,そんなに昔の話ではないので,身近な歴史としてとらえたいです。

 

それでは,今日の問題です。

 

32回・問題57 

障害者福祉制度の発展過程に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 1960年(昭和35年)に成立した精神薄弱者福祉法は,ノーマライゼーションを法の理念とし,脱施設化を推進した。

2 1981年(昭和56年)の国際障害者年で主題として掲げられたのは,合理的配慮であった。

3 1995年(平成7年)に精神保健法が精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に改正され,保護者制度が廃止された。

4 2013年(平成25年)に成立した「障害者差別解消法」では,障害者を医学モデルに基づいて定義している。

5 2018年(平成30年)に閣議決定された障害者基本計画(第4次)では,命の重さは障害によって変わることはないという価値観を社会全体で共有できる共生社会の実現に寄与することが期待されている。

(注) 「障害者差別解消法」とは,「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」のことである。

 

重要なポイントを凝縮した問題です。

正解するのは,それほど難しくないかもしれませんが,正解以外のものを確実に覚えていきたいです。

 

それでは解説です。

 

1 1960年(昭和35年)に成立した精神薄弱者福祉法は,ノーマライゼーションを法の理念とし,脱施設化を推進した。

 

精神薄弱者福祉法は,1998年(平成10年)に知的障害者福祉法に名称が変わっています。

 

この法律ができる以前は,知的障害児は児童福祉法の施設しかありませんでした。

そのため,18歳になると退所しなければならず,「親亡き後」の対応を考えて成人が入所できる制度の創設が望まれました。

 

精神薄弱者福祉法によって,精神薄弱者援護施設が規定されます。

 

脱施設化ではなく,施設化の始まりです。

 

脱施設化が進められていくのは,ずっと後の1990年代のことです。

 

2 1981年(昭和56年)の国際障害者年で主題として掲げられたのは,合理的配慮であった。

 

国際障害者年のテーマは,「完全参加と平等」です。

 

この以降に日本でもノーマライゼーションの思想が広がっていきます。

 

合理的配慮は,障害者に関する権利条約で掲げられたものです。

 

3 1995年(平成7年)に精神保健法が精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に改正され,保護者制度が廃止された。

 

保護者制度が廃止されたのは,精神保健福祉法の2013年(平成25年)の改正の時です。

 

 

4 2013年(平成25年)に成立した「障害者差別解消法」では,障害者を医学モデルに基づいて定義している。

 

障害者差別解消法における障害者の定義

身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。

 

障害者に関する権利条約以降に作られたものや改正されたものは,「社会的障壁」という社会モデルに基づいたものになっています。

 

5 2018年(平成30年)に閣議決定された障害者基本計画(第4次)では,命の重さは障害によって変わることはないという価値観を社会全体で共有できる共生社会の実現に寄与することが期待されている。

 

これが正解です。

 

〈今日の注意ポイント〉

 

この問題は,歴史問題のスタイルを取っていますが,正解は,現行(出題当時)の内容となっています。

 

国家試験ではこういったタイプの問題が出題されます。

つまり,歴史問題のスタイルを取りながら,現在の制度などを問います。

 

覚えておきたいです。

2023年10月25日水曜日

生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)

同じデータを何年も続けて出題することはめったにあるものではありませんが,生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)は,


第31回

第32回

第33回

第34回


と4年も続けて出題されました。しかし,しばらくは出題されないように思います。


というのは,令和4年に調査が実施され,そのうち,そのデータが公表されるからです。

厚生労働省
生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)

https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/seikatsu_chousa_list.html


しかし,とりあえず,今日の問題で取り上げます。


知らなくても落ち着いて知っている知識を駆使すると,おそらく道は開けます。


第32回・問題56 

「平成28年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)」(厚生労働省)における障害児・者の実態に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 身体障害者手帳を所持している身体障害児(0~17歳)では,内部障害が最も多い。

2 「障害者手帳所持者等」(65歳未満)で,「障害者総合支援法」に基づく福祉サービスを利用している者は半数を超えている。

3 「障害者手帳所持者等」(65歳未満)で,「今後の暮らしの希望」をみると,「施設で暮らしたい」が最も多い。

4 「障害者手帳所持者等」(65歳未満)で,「困った時の相談相手」をみると,家族が最も多い。

5 「障害者手帳所持者等」(65歳未満)で,「外出の状況」をみると,「1ヶ月に1~2日程度」が最も多い。

(注) 1 「障害者総合支援法」とは,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。

    2 「障害者手帳所持者等」とは,障害者手帳所持者及び障害者手帳非所持でかつ「障害者総合支援法」に基づく自立支援給付等を受けている者のことである。


この問題の正解は,選択肢4です。


4 「障害者手帳所持者等」(65歳未満)で,「困った時の相談相手」をみると,家族が最も多い。


これを正解にした理由が何となくわかるような気がします。


相談相手は,行政機関や障害福祉サービス事業者ではない,ということを知ってもらいたかったのではないかと思います。


ソーシャルワーク専門職にとって,相談は日常です。そのため,クライエントは困っていることがあると話してくれると思うのは大間違いだということを知っていて,ソーシャルワークを行うことが必要であるということではないかと思います。


正解以外のものも解説します。


1 身体障害者手帳を所持している身体障害児(0~17歳)では,内部障害が最も多い。


最も多いのは肢体不自由です。



2 「障害者手帳所持者等」(65歳未満)で,「障害者総合支援法」に基づく福祉サービスを利用している者は半数を超えている。


約3割です。


3 「障害者手帳所持者等」(65歳未満)で,「今後の暮らしの希望」をみると,「施設で暮らしたい」が最も多い。


施設で暮らしたいと答えたのは,ほんのわずかです。


最も多かったのは,「今までと同じように暮らしたい」です。


5 「障害者手帳所持者等」(65歳未満)で,「外出の状況」をみると,「1ヶ月に1~2日程度」が最も多い。


最も多かったのは,「毎日」です。


〈今日の注意ポイント〉


今日の問題で迷うのは,おそらく選択肢2です。


2 「障害者手帳所持者等」(65歳未満)で,「障害者総合支援法」に基づく福祉サービスを利用している者は半数を超えている。


どのくらいの人がサービスを利用しているのかを知らなくても,半数というのは,かなり多い率です。


身体障害者の中には,福祉用具を使うことで日常生活を送れる人も大勢います。

手指の欠損の障害なら,福祉用具を利用することも必要ではないかもしれません。


そういったことを考え合わせると半数まではないだろうと推測できます。

2023年10月24日火曜日

公的年金制度

日本の公的年金制度は,戦時中に被用者を対象とする厚生年金制度が誕生し,戦後に自営業者などを対象とする国民年金制度が誕生して,国民皆年金制度を形成しています。


それぞれに老齢年金,障害年金,遺族年金があり,制度がとても複雑です。


しかも,国民年金の被保険者は,第一号,第二号,第三号まであります。


第二号被保険者は,厚生年金の被保険者,第三号被保険者は,第二号被保険者の被扶養配偶者,第一号被保険者は,第二号,第三号被保険者ではないものです。


それでは,今日の問題です。


第32回・問題55

 事例を読んで,適切なものを2つ選びなさい。

〔事 例〕

 Fさん(65歳女性)は,22歳からアパレル関係の大企業で正社員として働き,厚生年金にも加入していた。その後会社員の夫と結婚し,35歳の時に退職して専業主婦になった。48歳の時に個人事業主として手芸店を開き,現在ではかなりの事業収入を得ている。

1 Fさんが大企業で働いて厚生年金に加入していた時には,給与の額にかかわらず毎月定額の保険料を支払っていた。

2 Fさんは通算して10年以上年金制度に加入しているので,老齢基礎年金を受給できる。

3 Fさんが専業主婦であった期間は,Fさん自身が国民年金の保険料を納付する必要はない。

4 Fさんは,事業収入に応じた年金保険料を支払わなければならない。

5 Fさんは65歳なので老齢厚生年金を受給できるが,事業収入が基準を超える場合は年金額が減額される。


社会保障の事例問題の場合,年齢に着目する必要があります。


この場合は,Fさんは,65歳であることを押さえておきます。


それでは,解説です。


1 Fさんが大企業で働いて厚生年金に加入していた時には,給与の額にかかわらず毎月定額の保険料を支払っていた。


年金保険の保険料は,国民年金と厚生年金では異なります。


国民年金 定額制

厚生年金 報酬比例制(報酬によって保険料率が変わる)


2 Fさんは通算して10年以上年金制度に加入しているので,老齢基礎年金を受給できる。


これが1つめの正解です。


老齢基礎年金は,10年以上加入していることで受給権が生じます。


3 Fさんが専業主婦であった期間は,Fさん自身が国民年金の保険料を納付する必要はない。


これが2つめの正解です。


Fさんの夫は,会社員だったということ,Fさんが専業主婦になれるほどの給与を得ていたということから,Fさんの夫は,厚生年金の被保険者だったと考えられます。


そうすると,Fさんは国民年金の第三号被保険者だったと考えられます。


国民年金の第三号被保険者は,保険料を納付しません。


4 Fさんは,事業収入に応じた年金保険料を支払わなければならない。


収入に応じて,保険料が変わるのは,厚生年金です。


被用者であれば,70歳までは厚生年金に加入します。


しかし,Fさんは,厚生年金の加入者ではありません。


また,国民年金は,20歳から60歳未満の者が加入しますが,60歳以上64歳未満の者は,任意加入することができます。


しかし,Fさんは,65歳なので,国民年金の被保険者でもありません。


65歳の自営業者は,公的年金制度の保険料を払うことはありません。


5 Fさんは65歳なので老齢厚生年金を受給できるが,事業収入が基準を超える場合は年金額が減額される。


厚生年金には,厚生年金加入者の事業収入が基準を超える場合は年金額が減額,あるいは支給停止になる「在職老齢年金」という制度があります。


しかし,Fさんは,厚生年金の被保険者ではありません。



〈今日の注意ポイント〉


国民年金が出題される場合は,第三号被保険者に関連する知識が問われることがよくあります。


第三号被保険者は,第二号被保険者の被扶養配偶者です。保険料の支払いはありません。


近年の改正によって,第三号被保険者の要件に「日本国内に住所を有する者」が加わったことを合わせて覚えておきたいです。

2023年10月23日月曜日

出産育児一時金について

今回のテーマは,出産育児一時金です。

 

医療保険の被保険者が出産した場合の出産費用と出産後にかかる育児費用を給付するものです。

 

実際に給付される金額は,出産費用を賄う程度しかないですが,本来は哺乳瓶,被服費,おむつなどを購入する費用も含んでいるらしいです。そのために「出産一時金」ではなく「出産育児一時金」という名称になっています。

おむつは,今は紙おむつになっているのでずっと購入しなければならないですが,布おむつの時代は,一度購入するとずっと使えたので「一時金」で良かったのでしょう。

 

健康保険の場合は,被保険者の被扶養配偶者が出産した場合にも給付され,その場合は「家族出産育児一時金」となります。

 

似たようなものに「出産手当金」があります。

 

出産手当金は,健康保険の被保険者が出産育児のために仕事を休み,その間に給与の支払いがなかった場合に給付されるものです。

 

健康保険の被保険者が出産した場合,出産育児一時金と出産手当金は,併給できる場合があります。

 

それでは,今日の問題です。

 

32回・問題54

事例を読んで,子育て支援などに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 会社員のDさん(32歳男性)と自営業を営むEさん(30歳女性)の夫婦は,間もなく第1子の出産予定日を迎えようとしている。Dさんは,厚生年金と健康保険の被保険者で,Eさんは国民年金と国民健康保険の被保険者である。

1 Eさんは,「産前産後期間」の間も国民年金の保険料を支払わなければならない。

2 Eさんが出産したときは,国民健康保険から出産育児一時金が支払われる。

3 Dさんが育児休業を取得する場合,健康保険から育児休業給付金が支給される。

4 Dさん夫妻の第1子の医療保険給付の一部負担は,義務教育就学前までは3割である。

5 Dさん夫妻の第1子が3歳に満たない期間については,月額2万円の児童手当が給付される。

(注) 「産前産後期間」とは,出産予定日又は出産日が属する月の前月から4か月間を指す。

 

この問題は「社会保障」で出題されたものです。

 

この科目を苦手としている人は,こういった問題が解けないからでしょう。

正解するためには,確実な知識が必要です。

 

しかし,制度に関する問題は,勉強次第で得点できるので,実力を高めるには見方につけたいです。

 

それでは,解説です。

 

1 Eさんは,「産前産後期間」の間も国民年金の保険料を支払わなければならない。

 

厚生年金も国民年金も産前産後期間は,保険料の納付は免除されます。

 

免除された期間は,納付したものとみなされ,将来,受け取る年金額に反映されます。

 

2 Eさんが出産したときは,国民健康保険から出産育児一時金が支払われる。

 

これが正解です。

 

Eさんは,国民健康保険の被保険者なので,国民健康保険から出産育児一時金が給付されます。

 

Eさんが,Dさんの被扶養者だった場合は,Dさんが加入する健康保険から家族出産育児一時金が給付されます。

 

3 Dさんが育児休業を取得する場合,健康保険から育児休業給付金が支給される。

 

育児休業給付は,雇用保険の制度です。

 

Dさんが受け取る育児休業給付金は,雇用保険から給付されます。

 

4 Dさん夫妻の第1子の医療保険給付の一部負担は,義務教育就学前までは3割である。

 

医療保険の一部負担は,義務教育就学前までは2割です。

 

5 Dさん夫妻の第1子が3歳に満たない期間については,月額2万円の児童手当が給付される。

 

児童手当の支給額が出題されるのはとても珍しいです。

 

児童手当の現時点(202310月)の支給額(月額)は,以下のとおりです。 

0~3歳未満

 一律15,000

3歳~小学校就学前

 第1子・第2子 10,000

 第3子以降 15,000

中学生

 一律10,000

 

児童手当は,以上のように,法で金額が定められています。

 

なお,児童扶養手当は,物価スライド制を取り入れているので,法で金額は定められていません。

 

〈今日の注意ポイント〉

 

この問題では出産手当金は出題されていませんが,出産手当金と出産育児一時金は,名称が似ているために混同しないようにしてください。

 

また,医療保険制度は,「療養の給付」に加えて,現金給付されるものがあります。

 

出産手当と出産育児一時金のほかには,傷病手当金があります。

傷病手当金は,労災保険の休業補償給付と合わせて押さえておくことが必要です。

2023年10月22日日曜日

都道府県が保険者となる社会保険制度

日本の社会保険制度は5つありますが,そのうち,都道府県が保険者なのは国民健康保険だけです。

 

国民健康保険は,2018年(平成30年)改正によって市町村とともに都道府県が保険者となりました。

 

この改正以前には,都道府県が保険者の社会保険制度はありませんでした。

 

国民健康保険は,以前は市町村国保と呼ばれていましたが,現在では,都道府県等が実施する国民健康保険と呼ばれます。

 

国民健康保険には,都道府県等が実施する国民健康保険のほかに,国民健康保険組合(国保組合)があるので,それと区別するからです。

 

医療保険制度は,大きく分けると,健康保険制度と国民健康保険制度がありますが,それぞれに組合が保険者になるものを忘れないようにしておきたいです。

 

それでは,今日の問題です。

 

32回・問題53 

医療保険制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 後期高齢者医療制度には,75歳以上の全国民が加入する。

2 後期高齢者の医療費は,後期高齢者の保険料と公費で折半して負担する。

3 都道府県は,当該都道府県内の市町村とともに国民健康保険を行う。

4 健康保険組合の保険料は,都道府県ごとに一律となっている。

5 協会けんぽ(全国健康保険協会管掌健康保険)の給付費に対し,国は補助を行っていない。

 

答えはすぐ分かると思いますが,解説します。

 

1 後期高齢者医療制度には,75歳以上の全国民が加入する。

 

これは,一読すると正解だと思う人もいると思います。

しかし,大切なことを忘れています。

 

生活保護受給者は,後期高齢者医療制度の対象にはなりません。

生活保護受給者の医療ニーズには,医療扶助が対応するからです。

 

2 後期高齢者の医療費は,後期高齢者の保険料と公費で折半して負担する。

 

〈後期高齢者医療制度の財源割合〉

保険料:1割

後期高齢者支援金:4割

公費:5割

 

後期高齢者医療制度の特徴は,後期高齢者支援金という,現役世代の医療保険者からの拠出金があることです。

 

後期高齢者支援金は忘れがちなので,要注意です。

 

3 都道府県は,当該都道府県内の市町村とともに国民健康保険を行う。

 

これが正解です。

 

4 健康保険組合の保険料は,都道府県ごとに一律となっている。

 

健康保険組合の保険料は,各保険者がそれぞれ独自に定めます。

 

5 協会けんぽ(全国健康保険協会管掌健康保険)の給付費に対し,国は補助を行っていない。

 

医療保険に対しては,国庫補助と国庫負担があります。

ここでは,国庫補助と国庫負担の違いは問われないので,簡単に以下のように整理してみます。

保険者

療養の給付の費用

事務費用

協会けんぽ

あり

あり

健康保険組合

なし

あり

都道府県等が行う国民健康保険

あり

あり

国民健康保険組合

なし

あり

 

 

注意すべき点は,いずれの保険者に対しても事務費用に対する国の負担がありますが,健康保険組合と国民健康保険組合の療養の給付には,国の補助はないことです。

 

 

〈今日の注意ポイント〉

 

日本の社会保険制度は,5つあります。

 

そのうち,都道府県が保険者であるのは,国民健康保険制度のみです。

 

保険者は,意外と抜け落ちがちなので,必ず押さえておきたいです。

2023年10月21日土曜日

遺族年金について

公的年金制度はかなり複雑なので覚えるのが大変ですが,しっかり覚えると自分の生活にも役立ちます。

 

さて,今日のテーマは,遺族年金です。国家試験ではめったに出題されませんが,押さえていきたいと思います。 

 

〈遺族の範囲〉

遺族基礎年金

子のいる配偶者,子。

遺族厚生年金

配偶者,子,父母,孫又は祖父母。


遺族厚生年金のほうが範囲が広くなっています。

 

それでは,今日の問題です。

 

32回・問題52

遺族年金に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 死亡した被保険者の子が受給権を取得した遺族基礎年金は,生計を同じくするその子の父または母がある間は支給停止される。

2 死亡した被保険者の子が受給権を取得した遺族基礎年金は,その子が婚姻した場合でも引き続き受給できる。

3 遺族基礎年金は,死亡した被保険者の孫にも支給される。

4 受給権を取得した時に,30歳未満で子のいない妻には当該遺族厚生年金が10年間支給される。

5 遺族厚生年金の額は,死亡した者の老齢基礎年金の額の2分の1である。

 


この問題が出題された時に受験した人は,とても難しく感じたのではないかと思います。

 

しっかり勉強して国家試験に臨んだ人が難しいと感じる問題は,ほかの受験生も難しいと感じているものです。

 

それを覚えておきたいです。

 

それでは解説です。

 

1 死亡した被保険者の子が受給権を取得した遺族基礎年金は,生計を同じくするその子の父または母がある間は支給停止される。

 

これが正解です。

 

この問題が難しいのは,この選択肢が正解だったからです。

 

ほかの選択肢を消去できないと正解できないタイプの問題です。

 

2 死亡した被保険者の子が受給権を取得した遺族基礎年金は,その子が婚姻した場合でも引き続き受給できる。

 

遺族基礎年金を受給できる子の年齢は,

 

18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか,又は20歳未満であって障害等級に該当する障害の状態にあり,かつ,現に婚姻をしていないこと。

 

となっています。

 

民法の改正によって,婚姻できる年齢は男女ともに18歳以上に引き上げられています。

 

そのため,「婚姻していないこと」という支給条件に当てはまるのは,18歳以上20歳未満の障害者ということになります。

 

いずれにせよ,婚姻している者は支給対象とはなりません。

 

3 遺族基礎年金は,死亡した被保険者の孫にも支給される。

 

遺族基礎年金の支給対象となる遺族は,子あるいは子のある配偶者です。

 

孫が支給対象となるのは,遺族厚生年金です。

 

4 受給権を取得した時に,30歳未満で子のいない妻には当該遺族厚生年金が10年間支給される。

 

遺族厚生年金は,遺族基礎年金と異なり,子のいない配偶者にも支給されます。

 

ただし,受給権を取得した時点で30歳未満だった場合は,5年間の有期支給となります。

 

5 遺族厚生年金の額は,死亡した者の老齢基礎年金の額の2分の1である。

 

遺族厚生年金の額は,死亡した者の「老齢厚生年金」の額の4分の3です。

 


〈今日の注意ポイント〉

 

過去問は,正解するために解くのではありません。出題されているものを覚えるためです。

 

正解することも大切なことですが,正解することを目的に問題を解くのはやめましょう。

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