プログラム評価とは,目標を達成するためのプログラムの実施とその結果の因果関係を評価するものです。
プログラム評価の主な構成要素
ニーズ評価 |
プログラムの対象者のニーズを評価する。 |
セオリー評価 |
プログラムが目的を達成するものとして適切に設計されているかを評価する。 |
プロセス評価 |
プログラムを実施したプロセス(過程)を評価する。 |
アウトカム・インパクト評価 |
プログラムのアウトカム(成果)やインパクト(効果)を評価する。 |
効率性評価 |
投入したコスト(費用)に対して十分な成果があったのかを評価する。 |
カタカナは覚えにくいですが,その分,覚えると得点につながります。
それでは今日の問題です。
第32回・問題41
事例を読んで,N市社会福祉協議会の福祉活動専門員(社会福祉士)が行ったアウトカム評価として,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
N市では,近年ひきこもりに関する相談が増加する一方,具体的な支援活動が市内に不足していることが課題となっていた。そのため,ひきこもりの人やその家族に対する支援活動の拡大を目的として,N市社会福祉協議会が行政の補助金を得て,計6回の講義・見学等からなるひきこもりサポーターの養成研修を企画・実施することになった。初めての取組であることから,行政からプログラム評価の枠組みを用いて,研修のアウトカム評価を行うことが求められた。
1 ひきこもりに関する理解度を測る調査票を作成し,養成研修受講前の受講者の理解度を計測する。
2 養成研修終了後に,支援活動に取り組み始めた受講者の人数とその活動内容を把握する。
3 養成研修の実施回数及び内容が,当初企画したとおりに実施されているかを確認する。
4 養成研修終了後に,N市の市民を対象としたアンケート調査により,ひきこもりに関する市民の意識を把握する。
5 養成研修終了後に,N市内でひきこもり状態から就業に至った人数を把握し,就業による経済効果と補助金額との差を計測する。
この問題は,問題のタイプで言えば,2回思考して答えを出すタクソノミーⅢ型に当たります。
アウトカム評価とは何かであるかという知識があることを前提にして,答えを出します。
事例を読んで
各選択肢を読む(1回目の思考)
事例で確認する(2回目の思考)
といったように思考して答えを出します。
アウトカム評価は,プログラムの成果を評価することです。
この知識がなければ絶対に正解できない問題です。
この事例のプログラムの目的は「ひきこもりの人やその家族に対する支援活動の拡大」です。
さあ,一緒にこの目的に合うものを一緒に思考していきましょう。
1 ひきこもりに関する理解度を測る調査票を作成し,養成研修受講前の受講者の理解度を計測する。
プログラムの目的はさておき,受講前の受講者の理解度は,アウトカムではありません。
アウトカムは,受講「後」の受講者の理解度でなければなりません。
しかし,たとえ「受講後」の理解度として出題したとして,理解度が高まってもプログラムの目的である「支援活動の拡大」にはつながるとは言えないので,「最も適切なもの」にはなり得ません。
2 養成研修終了後に,支援活動に取り組み始めた受講者の人数とその活動内容を把握する。
これが正解です。
プログラムの目的である「支援活動の拡大」のアウトカムは,支援活動に取り組み始めた受講者の人数が増えることです。
3 養成研修の実施回数及び内容が,当初企画したとおりに実施されているかを確認する。
養成研修の実施回数及び内容が,当初企画したとおりに実施されているかを確認するのは,プロセス評価にあたります。
この問題の設問が「プロセス評価」であれば,この選択肢が正解となります。
しかし,設問と異なるので正解にはなり得ません。
4 養成研修終了後に,N市の市民を対象としたアンケート調査により,ひきこもりに関する市民の意識を把握する。
ひきこもりに関する市民の意識を把握するのは,アウトカム評価になり得ます。
しかし,それはプログラムの目的が「市民に対するひきこもりの意識を向上させるサポーター育成」である場合です。
この目的によってプログラムされたものなら,養成研修を受講した人が市民に働きかけることによって,市民の意識が向上することがアウトカムになります。
5 養成研修終了後に,N市内でひきこもり状態から就業に至った人数を把握し,就業による経済効果と補助金額との差を計測する。
これは費用対効果分析にあたるものです。
設問が「費用対効果」なら正解になり得ます。
しかしプログラムの目的は,「支援活動の拡大」です。
〈今日の注意ポイント〉
今日の問題は,知識があることを前提として,思考しながら答えるタイプであることがわかりましたね。
アウトカム評価の意味を理解していることで,選択肢1と選択肢3を消去できます。
この問題では,事例でプログラムの目的を確認しておくことが必要です。
今後は,知識だけで答えられるタクソノミーⅠ型に加えて,タクソノミーⅡ型,Ⅲ型の出題が増える予定です。
なかなか手ごわくなることは間違いありません。