2023年10月2日月曜日

地域共生社会と住民参加型在宅福祉サービス

住民参加型在宅福祉サービスという用語を聞いたことがあるでしょうか。


住民参加型在宅福祉サービスは,地域住民の自発的なものであり,非営利性,有償性,互酬性,会員制等を特徴とした団体が提供するものを総称したものです。


特に何かの法に規定されているものではありません。


1980年代に登場し,法制度にとらわれない独自サービスを提供しています。


現在は,NPO法人などの法人格を取得して,独自サービス以外に介護保険サービスなどを提供する団体もあります。


公定価格である介護保険サービスなどは,団体の収益を支えるものとして重要です。


独自サービスは,法制度のすき間を埋める重要なものですが,安定した収入にするのは簡単なことではありません。


近年,地域共生社会の実現に向けた取り組みがなされていますが,その原型を住民参加型在宅福祉サービスにみることができるように思います。


それでは,今日の問題です。


第32回・問題33 

地域福祉における住民の参加を促進する仕組みや制度に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。

1 1960年代に徳島県社会福祉協議会等に設置された善意銀行は,住民が支援を必要とする個人・団体に対して労力・技術・金品等を提供した場合に,銀行が費用を助成する仕組みである。

2 1970年代に開始された学童・生徒のボランティア活動普及事業は,学童・生徒のボランティア活動の促進を目的として,全国全ての公立小・中学校に助成を行う事業である。

3 1980年代以降全国に広がった住民参加型在宅福祉サービスは,有償性・非営利性・会員制を主な特徴とし,地域で支援を必要とする人々に対して家事援助・外出支援等のサービスを提供する活動である。

4 1990年代に全国で実施されたふれあいのまちづくり事業は,障害者等の社会参加を保障することを目的として,市町村が公共施設などにおけるバリアフリー化を促進するための事業である。

5 2000年代に道路運送法の改正により法制化された福祉有償運送は,社会福祉施設が所有する福祉車両を要援護者等に有償で貸し出す仕組みである。


知らない制度が含まれているので,なかなかの難問です。


国歌試験には,こういったタイプの問題が出題されることがあります。しかし,試験委員は正解できなくても良いと思って出題しているのではないかと思います。


一度出題すると,参考書などで取り上げられることになり,また過去問に取り組む多くの受験生に広がっていきます。


この問題の正解は,選択肢3です。


3 1980年代以降全国に広がった住民参加型在宅福祉サービスは,有償性・非営利性・会員制を主な特徴とし,地域で支援を必要とする人々に対して家事援助・外出支援等のサービスを提供する活動である。


今日のテーマである住民参加型在宅福祉サービスが正解となりましたが,これを正解だと思えるのはとても難しいです。


住民参加型在宅福祉サービスは,1980年代に始まりましたが今は消滅しているものではありません。


今も脈々と受け継がれ,地域の福祉ニーズを支える貴重な社会資源となっています。だからこそ,今の時代に知っておいてもらいたくて,出題したのではないかと思います。


それでは,そのほかも解説します。


1 1960年代に徳島県社会福祉協議会等に設置された善意銀行は,住民が支援を必要とする個人・団体に対して労力・技術・金品等を提供した場合に,銀行が費用を助成する仕組みである。


善意銀行を聞いたことがあった受験生はほとんどいなかったのではないかと思います。


しかし,こういったものが突然正解になることはほとんどないと言えます。

善意銀行は,この時に初めて出題されました。


善意銀行は,金品やボランティアなどを必要とする人に届ける役割を担いました。

現在,ボランティアセンターに変わっています。


2 1970年代に開始された学童・生徒のボランティア活動普及事業は,学童・生徒のボランティア活動の促進を目的として,全国全ての公立小・中学校に助成を行う事業である。


「全て」ではなく「指定した」が適切です。


もし,全ての公立小・中学校に助成されているなら,その時代に小・中学生だった人はボランティアを経験したことがあるように思います。


4 1990年代に全国で実施されたふれあいのまちづくり事業は,障害者等の社会参加を保障することを目的として,市町村が公共施設などにおけるバリアフリー化を促進するための事業である。


ふれあいのまちづくり事業は,平成の初め頃にあった当時の厚生省の補助事業です。


地域に即した創意と工夫によって,住民相互の助け合いや交流の輪を広げて,共に支え合う地域社会づくりに寄与することを目的とした事業でした。


ここにも地域共生社会の原型をみることができます。


この事業によって,市町村社会福祉協議会に地域福祉活動コーディネーターが配置されました。


5 2000年代に道路運送法の改正により法制化された福祉有償運送は,社会福祉施設が所有する福祉車両を要援護者等に有償で貸し出す仕組みである。


福祉有償運送は,現行にも続く制度です。


利用者からお金をもらって運用するには緑ナンバー(営業車)が必要ですが,福祉有償運送は,福祉輸送を行うNPOなどに白ナンバー(自家用車)での営業を例外的に許可する制度です。


〈今日の注意ポイント〉


「善意銀行」と「ふれあいのまち事業」は「●●された」と書かれているため過去のものであることがわかります。


それ以外は「開始された」「広がった」「法制化された」は,過去のものではなく,今も続くものです。


過去のものと今のものが混在している場合は,今も続くものを正解にする傾向があることを覚えておきたいです。


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