2021年2月28日日曜日

リスクマネジメント(危機管理)について考える

リスクマネジメント(危機管理)とは,リスクの発生防止と事故が発生した時の対応に関する経営手法です。

 

人はミスをする生き物です。そのため事故の発生は,完全にゼロにすることはできませんが,リスクマネジメントによって,限りなくゼロに近づけることができます。

 

重要なのは,「ヒヤリ」や「ハット」したこと(インシデント)をそのままにしておくことなく,その経験を活かして,今後の対策を立てることです。

 

ハインリッヒの法則では,1つの重大なアクシデントの後ろには,29の軽微なアクシデントがあり,さらにその後ろには300のインシデントがあると考えます。

 

それでは今日の問題です。

 

28回・問題124 「福祉サービスにおける危機管理(リスクマネジメント)に関する取り組み指針」(厚生労働省)におけるリスクマネジメントに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 リスクマネジメントの基本は,危機管理体制の確立よりも個別事故への対応である。

2 利用者から苦情が寄せられたときは,迅速に対応しなければならない。

3 事故が発生した場合,職員は周囲に動揺を与えぬよう,事故内容をできる限り秘匿すべきである。

4 事故を防止するためであれば,利用者へのサービスの質が向上しなくてもやむを得ない。

5 重大な事故に至らないものであれば,その内容を記録化し分析する必要はない。

 

この問題を見て「福祉サービスにおける危機管理(リスクマネジメント)に関する取り組み指針」(厚生労働省)」なんて勉強したことがない,と思う人は危険です。

 

国家試験を作成する上で重要なことはいくつかあると思いますが,その中でも特に重要なのは,問題の正確性です。

 

不適切問題を発生させないために,正しいものは確実に正しく,正しくないものは確実に正しくない選択肢で構成しなければなりません。

 

それは実はかなり難しいものです。

 

今回取り上げるのはリスクマネジメントですが,コンサルタントによって,その考え方がまったく違うかもしれません。

 

問題の正確性を高めるために,その根拠を明らかにするのが「福祉サービスにおける危機管理(リスクマネジメント)に関する取り組み指針」ということになります。

 

多くの場合,そういった指針を勉強することなく,それに関連する知識を持っていれば,正解できる問題となっています。

 

そのように問題は設計されています。

 

それでは,解説です。

 

1 リスクマネジメントの基本は,危機管理体制の確立よりも個別事故への対応である。

 

先に述べたように,リスクマネジメントは,リスクの発生防止と事故が発生した時の対応に関する経営手法です。

 

「危機管理体制の確立」(予防策)も「個別事故への対応」(事後対応)もどちらも極めて重要です。

 

2 利用者から苦情が寄せられたときは,迅速に対応しなければならない。

 

これが正解です。

 

極めて当たり前のことです。

 

3 事故が発生した場合,職員は周囲に動揺を与えぬよう,事故内容をできる限り秘匿すべきである。

 

事故が発生した場合,できるだけ早い時点で,そのことを説明することが大切です。

 

そのうえで,今後どのような対応を行うことで同様の事故防止に努めるのかについて,同時に説明します。

 

隠ぺい体質に良いことは何もありません。この事後対応は,事故による損失を最小限にするために必要なことです。

 

4 事故を防止するためであれば,利用者へのサービスの質が向上しなくてもやむを得ない。

 

これは,介護保険が導入する前に,当然のことのように行われていた身体拘束を意味しているものだと思います。

 

身体拘束は,人権侵害です。その意識がなければ「事故を防止するためであれば,利用者へのサービスの質が向上しなくてもやむを得ない」という考えになります。

 

利用者へのサービスの質向上を目指しながら,事故防止策を講ずるのが福祉サービスを提供するプロフェッショナルです。

 

5 重大な事故に至らないものであれば,その内容を記録化し分析する必要はない。

 

ハインリッヒの法則で説明したように,1つの重大な事故の後ろには,数多い軽微な事故や事故にはならなかった「ヒヤリハット」(インシデント)が隠れています。

 

インシデントレポートは,始末書ではありません。

ヒヤリハットしたことをみんなで共有し,そこを気をつけるためのものです。


<今日の一言>


今日の問題はそんなに難しくないものでしょう。しかし,確実に正解にするのはそれほど簡単なものではありません。

こういった問題を確実に正解することが国試合格に必要です。

2021年2月27日土曜日

財務会計の基礎知識

財務会計を苦手としている人は多いようです。


問題で慣れていくのが一番です。


第28回・問題123 会計や経営に関する次の記述のうち正しいものを1つ選びなさい。

1 直接金融とは,銀行などの金融機関から直接借入れることを指す。

2 貸借対照表の借方とは,どこから資金を調達したかを示し貸方とは,どのように資金を使用しているかを示す。

3 減価償却とは,固定資産(土地と建設仮勘定を除く)の取得原価を,その耐用年数にわたって費用化する手続である。

4 社会福祉法人のうち,収益が10億円未満の法人には財務諸表開示の義務がない。

5 会計用語上,収益と利益は同一である。


この問題を見て,「あれっ?」と思う人もいるかもしれません。


第33回国試では,以下のように出題されています。


第33回・問題124 社会福祉法人の会計財務等に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 財務会計は組織内部における管理を目的としているため,通常,組織独自の会計ルールを用いる。

2 貸借対照表の純資産とは,外部から調達した負債である。

3 減価償却とは,固定資産(土地と建設仮勘定を除く)の取得原価をその耐用年数にわたり費用化する手続であり,過去に投下した資金を回収するものである。

4 流動資産とは,通常2年以内に費用化,現金化できるものである。

5 社会福祉充実残額とは,社会福祉法人における事業継続に必要な財産額をいう。


第33回国試問題はいずれ解説することもあるかと思いますが,この2つの問題は,いずれも正解は「減価償却」です。


新しく作られる参考書は,最新の問題を参考にして,その部分を付け足して,改訂されます。

しかし,2年連続で出題されるものは少ないので,加わった部分は次の国試に役立つものは少ないということになります。


だから,本当は毎年改訂する必要はないのですが,改訂しないと本が売れないという本を作っている側の事情もあるのではないでしょうか。

最新の参考書のほうが良いという先生は,何か怪しく感じます。


それでは解説です。


1 直接金融とは,銀行などの金融機関から直接借入れることを指す。


金融機関から借り入れるのは,間接金融といいます。

直接金融は,出資者から直接資金調達するものです。


この問題の場合,間違えるように仕掛けが施されています。


直接金融とは,銀行などの金融機関から直接借入れることを指す。


時々このような仕掛けがなされています。こういうものを見ると,勉強不足の人はまんまと引っ掛かるだろうと思って,おかしくなります。


2 貸借対照表の借方とは,どこから資金を調達したかを示し貸方とは,どのように資金を使用しているかを示す。


貸借対照表の貸方は,表の右側です。

ここには,負債と純資産が計上されています。


表の左側は,借方です。

ここには,資産が計上されています。


貸方と借方の額は,同じものとなります。もし異なっていれば,どこかが間違っていることになります。


3 減価償却とは,固定資産(土地と建設仮勘定を除く)の取得原価を,その耐用年数にわたって費用化する手続である。


先に述べたように,これが正解です。


注意したいのは,(  )で示されているうちの「土地」です。

土地も固定資産ですが,建物のように経年劣化による資産価値の低下はありません。

逆に取得した時よりも,売却した時のほうが上がることさえあります。


こういった理由で,土地は減価償却の対象から省かれています。


4 社会福祉法人のうち,収益が10億円未満の法人には財務諸表開示の義務がない。


これについては,第33回国試では,


4 規模にかかわらず,決算書類を公表する義務がある。(問題119)


と出題されています。規模にかかわらず財務諸表の開示は義務づけられています。


〈開示が義務づけられている財務諸表〉

・貸借対照表

・事業活動計算書

・資金収支計算書


この3種類の書類は,必ず覚えておかなければなりません。


5 会計用語上,収益と利益は同一である。


収益は,事業収入です。事業収入からかかった費用を引くと利益となります。

同一なら,別の用語を使う必要はないでしょう。

2021年2月26日金曜日

コンティンジェンシー理論とは

今回は,リーダーシップ理論を取り上げたいと思います。


そのうちのコンティンジェンシー理論(条件適合理論)は,状況によってリーダーシップのスタイルは変わるとする理論です。


PM理論に代表される行動理論は,優れたリーダーシップのスタイルはこれです,と示しますが,それよりももっと高度化しているように思います。


主なコンティンジェンシー理論には,


・フィードラー理論

・SL理論

・パスゴール理論


などがあります。


フィードラー理論












SL理論













パスゴール理論













それでは,今日の問題です。


第28回・問題122 新設の介護老人福祉施設では,多くの介護職員(以下,「職員」という。)が新人であった。開設当初,職員たちは知識や技術がまだ不十分で,自信もなかった。この段階では,リーダーのFさんは,仕事で何をすべきか明確に伝えて細かく指示を出すようにした。職員たちの意欲は高まったが,知識や技術を状況に合わせて使うには不安のある段階では,Fさんは,なぜある行動が望ましいかといった理由を職員たちに説明し話し合ったか積極的に質問するように促した。さらに,職員たちが十分な知識・技術を身につけ,自信も持てるようになった段階になると,Fさんは職員自身が仕事の進め方について考え,決めるよう促した。

 このように,部下の成熟度に合わせたリーダーシップ行動の変容に関する理論として,次のうちから最も適切なものを1つ選びなさい。

1 リーダーシップの行動理論

2 状況リーダーシップ(ハーシー(Hersey,P.)とブランチャード(Blanchard,K.)による)

3 PM理論(三隅二不二による)

4 変革型リーダーシップ

5 カリスマ的リーダーシップ


5つありますが,このうち,コンティンジェンシー理論であるのは,


2 状況リーダーシップ(ハーシー(Hersey,P.)とブランチャード(Blanchard,K.)による)


しかありません。


状況リーダーシップは,SL理論のことです。


1と3は,行動理論

4と5は,コンセプト理論


コンセプト理論という言葉自体は,国試にはまだ出題されたことがありません。


コンセプト理論は,コンティンジェンシー理論を基礎として,さらに具体化したものです。


・カリスマ型リーダーシップ

・変革型リーダーシップ

・EQ型リーダーシップ

・ファシリテーション型リーダーシップ

・サーバント型リーダーシップ


という5つのタイプが紹介されています。


コンセプト理論は,機会があったらその時に詳しく紹介したいと思います。


2021年2月25日木曜日

動機づけ理論について

今回は,動機づけ理論を取り上げたいと思います。


誤解を恐れず言えば,共産主義国家がうまくいかなかった理由の一つには,国民に対する動機づけがうまく行うことができなかったことがあるように思います。


マズローの欲求階層説によれば,人には自己実現欲求があるとされます。


共産主義では欠乏欲求は満たされても,自尊・承認欲求でとどまり,自己実現欲求を満たすような環境が生まれにくかったのかもしれません。


第33回国家試験では,以下のような問題が出題されています。


第33回・問題122 動機づけに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 ブルーム(Vroom,V.)によれば,上司が部下に対して大きな期待を抱くと,部下の動機づけが高まる。

2 ハーズバーグ(Herzberg,F.)によれば,仕事への満足感につながる要因と仕事への不満足につながる要因とは異なる。

3 マクレガー(McGregor,D.)によれば,X理論では部下は仕事を当然のこととして自律的に目標達成しようとし,責任を率先して引き受ける。

4 デシ(Deci,E.)は,内発的動機によってではなく,むしろ金銭的報酬などの外的報酬によって人は動機づけられるとした。

5 マクレランド(McClelland,D.)は,人間が給与への欲求のために働いていることを示す期待理論を展開した。


この問題の正解は,選択肢2です。


この問題の詳しい解説は別の機会にするとして,この問題の元ネタである問題が,今日の問題です。


第28回・問題121 動機づけに関する理論についての次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 マグレガー(McGregor,D.)のY理論では,従業員の働く意欲が低いのは,組織の管理者側に原因があるとされる。

2,ハーズバーグ(Herzberg,F.)の動機づけ理論では,労働条件への不満を改善することで,職務に対する満足感を高められるとされる。

3 マクレランド(McClelland,D.)の欲求理論では,権力欲求を持つ人に対しては適度なリスクのある仕事を与えることが,高い業績につながるとされる。

4 ブルーム(Vroom,V.)の期待理論では,管理者が従業員に対して大きな期待をしていることを示すことが,従業員の動機づけを高めるとされる。

5 ロック(Lock,E.)の目標設定理論では,「頑張れ」や「前よりも上回る成績を」といった情動的刺激を与えることで,高い意欲を生み出すとされる。


異なるのは,デシとロックだけです。

それ以外はほぼ同じです。


今は,おそらくすべてが参考書などに書かれていると思います。

そのため,それほど難しくないように思うかもしれませんが,この時に解いた人はとてつもなく難しく思ったはずです。


とは言っても,この問題にはさらに元ネタがあるのですが・・・。


それでは,解説です。


1 マグレガー(McGregor,D.)のY理論では,従業員の働く意欲が低いのは,組織の管理者側に原因があるとされる。


これが正解です。


マクレガーの理論は,X理論とY理論があります。


Y理論は,マズローの理論に従って,人には自己実現欲求があるので,そこに向かって努力していく存在だととらえます。


X理論は,その逆です。人は怠け者なので,アメとムチをうまく使って,動機づけを高めることが必要だとする理論です。


Y理論に従うと,従業員のやる気がないのは,従業員本人の問題ではなく,やる気を引き出すことができなかった上司に問題があるととらえます。


2,ハーズバーグ(Herzberg,F.)の動機づけ理論では,労働条件への不満を改善することで,職務に対する満足感を高められるとされる。


ハーズバークの理論は,動機付け要因と衛生要因に分解されて,動機付け要因は,職務満足に関連するもので,衛生要因は職務不満足に関連するものです。



仕事の達成感など動機付け要因が満たされると職務満足が上がります。


それに対して,職場の人間関係や賃金など衛生要因が満たされると職務不満足が解消されるものです。


この2つをバランスよく満たすことで,従業員はいきいきと働くことができると考えられています。


3 マクレランド(McClelland,D.)の欲求理論では,権力欲求を持つ人に対しては適度なリスクのある仕事を与えることが,高い業績につながるとされる。


権力欲求を持つ人に対しては適度なリスクのある仕事を与えることが,高い業績につながるとされるのは,達成欲求を持つ人です。


権力欲求を持つ人は,責任のある仕事を任されると高い業績につながるとされます。


4 ブルーム(Vroom,V.)の期待理論では,管理者が従業員に対して大きな期待をしていることを示すことが,従業員の動機づけを高めるとされる。


ブルームが示した期待理論とは,どのような努力したら目標を達成できるかを示すことが動機づけを高めると考えるものです。


期待するだけで動機づけが高まるのなら,簡単でしょう。


5 ロック(Lock,E.)の目標設定理論では,「頑張れ」や「前よりも上回る成績を」といった情動的刺激を与えることで,高い意欲を生み出すとされる。


ロックの理論は,具体的な目標を設定することが動機づけを高めるとされます。


「頑張れ」や「前よりも上回る成績を」といったもので動機づけが高まるのなら簡単です。


2021年2月24日水曜日

経営ビジョンを考える

経営ビジョンと聞くと,現場職員にとって関係ない,と思う人も多いかもしれません。


しかし,遠いものではなく,すべて現場に関係しています。


それでは,今日の問題です。


第28回・問題120 経営に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 ミッションは,経営戦略という意味である。

2 経営理念について,現場の職員が知っている必要はない。

3 経営理念を,日常の経営上考慮する必要はない。

4 経営戦略を立てる際には,内部組織の強みや弱みを検討する必要はない。

5 経営目標は,経営理念に沿って示されねばならない。


第28回国試をずっと取り上げていますが,近年では第28回国試の問題が最も下手なつくり方をしているように思います。


この問題では,選択肢2・3・4は,何も考えなくても消去できてしまいます。


残るは,以下の2つです。


1 ミッションは,経営戦略という意味である。

5 経営目標は,経営理念に沿って示されねばならない。


ミッションの日本語訳がわからなくても,例えば,映画「ミッションインポッシブル」を聞いたことがあれば,そこに経営戦略をあてはめてみるとおかしなことになることはわかりそうです。


「不可能な経営戦略」となってしまいます。


とても映画になりそうもないテーマだと思いませんか?


ミッションは,使命,任務と訳されます。


ということで正解は,


5 経営目標は,経営理念に沿って示されねばならない。


ということになります。


一応そのほかの選択肢も確認します。


2 経営理念について,現場の職員が知っている必要はない。

3 経営理念を,日常の経営上考慮する必要はない。

4 経営戦略を立てる際には,内部組織の強みや弱みを検討する必要はない。


第28回国試がくだらない選択肢が増えてしまった理由は,正しい文章を正しくない文章にしたからです。


もともとの文章は,それぞれ以下のようになります。


2 経営理念について,現場の職員が知っている必要がある。

3 経営理念を,日常の経営上考慮する必要がある。

4 経営戦略を立てる際には,内部組織の強みや弱みを検討する必要がある。


何て手抜きの問題だと思いませんか?


こういったところに気がつくことができれば,確実に得点力は増します。


<今日の一言>


今日の問題でも,一定数の人は,選択肢2・3・4を選んだ人がいると思います。

激動する今の時代,経営を意識しない福祉実践はあり得ません。

2021年2月23日火曜日

社会福祉法人制度~社会福祉法

今回は,社会福祉法人を取り上げます。

 

社会福祉法人の根拠法を念のために確認しますが社会福祉法です。

 

社会福祉士を目指す人で福祉六法の類いを持たない人はいないと思いますが,もし持っていないという人がいたら,このくらいは購入しましょう。

 

福祉小六法なら安いです。

 

政府のネット検索システムであるe-Govで調べることもできますが,小六法のほうが勉強には向きます。

 

読み物的に使えるからです。

特に社会福祉法は,必ず全体に目を通すようにします。

 

社会福祉の基本法なのが社会福祉法です。どこからでも出題されると言えます。

 

だからと言って,丸暗記することは必要ありません。どんなことが書かれているのかを押さえることをまず優先します。

 

小六法の良いところは,制度改正があったところに線が引いてあることです。

 

ただし,多くの人が言っている「制度改正があったものが出題される」というのは,半分合っていて,半分間違っています。

 

というのは,制度改正があってからすぐは出題されるものはほとんどないからです。

 

特に,4月改正のものが次の年の国試に出題されるものはほとんどありません。多くの場合は,数年後の出題になります。

 

なので,大学生なら,数年分を先輩から後輩へ受け継いでいけばよいことになります。

先輩からもらったものに自分が購入した最新のものを加えて後輩に受け継いでいきます。

 

社会人はそれができませんが,そういったものを必ずしも追いかけることはありません。

基本的には参考書に書かれているものをかっちりきっちり覚えていけば,国家試験では100点以上は必ずねらえます。

 

手を広げることによって,すべてがあいまいな知識になることだけは避けなければなりません。

 

それでは,今日の問題です。

 

28回・問題119 社会福祉法人の制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 社会福祉法人は,社会福祉事業と公益事業以外を行ってはならない。

2 非営利組織である社会福祉法人は,自主的に経営基盤の強化を図る必要はない。

3 社会福祉法人には,出資持分が認められている。

4 社会福祉法人が解散した際の残余財産は,社会福祉法人その他の社会福祉事業を行う者又は国庫に帰属する。

5 1つの市の区域のみを事業の対象とする社会福祉法人の所轄庁は,都道府県知事である。

 

社会福祉法人の解散の出題は,旧カリキュラム時代にはよく出題されていましたが,この時が久しぶりです。

 

以前によく出題されていた利用は,社会福祉法人の体力強化のために合併がすすめられたからです。

 

それにしても国家試験が大変だと思うのは,たくさんたくさん知識を入れても,国試で使われる知識はそのうちのほんの一部です。しかも勉強しなかったものも出題されます。

 

しかし,きっちりかっちり勉強した人は,合格をつかむことができます。

 

近年の国試はそのように出題されています。

 

それでは解説です。

 

1 社会福祉法人は,社会福祉事業と公益事業以外を行ってはならない。

 

社会福祉法人は社会福祉事業を行うための法人ですが,社会福祉事業を主たる事業として,公益事業も収益事業も行うことができるのが特徴です。

 

それに比べると医療法人は,収益事業を行うことができません。医療法人が収益事業を行うためには,社会医療法人に認定される必要があります。

 

2 非営利組織である社会福祉法人は,自主的に経営基盤の強化を図る必要はない。

 

社会福祉法人であっても,自主的に経営基盤の強化を図る必要があります。

 

社会福祉法では,「経営の原則等」として,以下のように規定されます。

 

(経営の原則等)

第二十四条 社会福祉法人は、社会福祉事業の主たる担い手としてふさわしい事業を確実、効果的かつ適正に行うため、自主的にその経営基盤の強化を図るとともに、その提供する福祉サービスの質の向上及び事業経営の透明性の確保を図らなければならない。

2 社会福祉法人は、社会福祉事業及び第二十六条第一項に規定する公益事業を行うに当たつては、日常生活又は社会生活上の支援を必要とする者に対して、無料又は低額な料金で、福祉サービスを積極的に提供するよう努めなければならない。

 

特に重要なのが,平成28年の法改正で加わった第2項です。

 

 

3 社会福祉法人には,出資持分が認められている。

 

出資持分とは,法人に出資したとき,出資分に相当する権利を持つことをいいます。

医療法人社団の中には,出資持分を認める定款を持つ法人もありますが,現在はそのような定款を持つ法人の新規設立は認められていません。

 

社会福祉法人には,出資持分は一切認められていません。

 

社会福祉法人は,誰かが出資して設立されますが,だれの持ち物でもないことを意味しています。

 

そのため,利益が出ても利益を分配することは認められていないのです。

 

4 社会福祉法人が解散した際の残余財産は,社会福祉法人その他の社会福祉事業を行う者又は国庫に帰属する。

 

これが正解です。

 

法では以下のように書かれています。

 

残余財産の帰属

第四十七条 解散した社会福祉法人の残余財産は、合併(合併により当該社会福祉法人が消滅する場合に限る。)及び破産手続開始の決定による解散の場合を除くほか、所轄庁に対する清算結了の届出の時において、定款の定めるところにより、その帰属すべき者に帰属する。

2 前項の規定により処分されない財産は、国庫に帰属する。

 

 

5 1つの市の区域のみを事業の対象とする社会福祉法人の所轄庁は,都道府県知事である。

 

社会福祉法人の所轄庁は,基本的に都道府県です。

 

しかし,現在は権限委譲によって,1つの市の区域の中でしか事業を行わない社会福祉法人の場合,当該市の市長が所轄庁となります。

2021年2月22日月曜日

マッピング~ジェノグラム&エコマップ

クライエントの置かれている状況をアセスメントするために,マッピングと呼ばれる情報の図式化が用いられます。

 

社会福祉士の国家試験で出題されるのは「ジェノグラム」「エコマップ」,そしてそれに加えて「ソシオグラム」などです。

 

ジェノグラムは,世代間の関係を図式化したもの。

エコマップは,クライエントを中心に置いて,その周りにある社会資源を図式化したもの。

ソシオグラムは,人間関係を矢印で図式化したもの。

 

覚えにくいという人は,ネットで調べて実際に書かれたものを見ると良います。

 

百聞は一見に如かず

 

 

ここで,ソーシャルワークで用いられる記録用紙をまとめておきたいと思います。

  

フェイスシート

基本事項を記録する用紙です。インテークでのクライエントとの主訴もこの用紙に記入します。

アセスメントシート

事前評価を記録する用紙です。

プランニングシート

支援計画を記録する用紙です。

プロセスシート

支援過程を記録する用紙です。

モニタリングシート

介入中に行われる経過観察の結果を記録する用紙です。

エバリュエーションシート

事後評価を記録する用紙です。

クロージングシート

支援の終結時に記録する用紙です。

  

このように,ソーシャルワークのプロセスに合わせて,それぞれの記録用紙があります。

 

それでは,今日の問題です。

 

28回・問題118 事例を読んで,記録に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。

〔事 例〕

 地域包括支援センターのC社会福祉士は,D民生委員から連絡を受けて,一人暮らしのEさん宅を訪れた。Eさんは,隣人がお金や大切なものを盗んでいってしまうので困ると訴えた。家の中は,片付けができておらず,食事も十分にできていない様子がうかがわれた。なお,D民生委員によると,Eさんは認知症と診断されており,以前は通所介護(デイサービス)を利用していたが,他の利用者との関係が悪く利用を中断した。1年前に妻を亡くしてからは,近隣とのトラブルが増し周囲の人が困っているのだという。

1 Eさんの話の内容をクロージングシートに記入した。

2 一人暮らしなので,ジェノグラムにはEさんだけを書いた。

3 近隣住民との関係をエコマップに書いた。

4 Eさんの状態について,C社会福祉士の考えをプランニングシートに書いた。

5 Eさんの多面的なニーズを総合的に理解し,アセスメントシートに記入した。

 

ジェノグラムとエコマップを混同しなければ,それほど難しくはない問題でしょう。

 

それでは解説です。

 

1 Eさんの話の内容をクロージングシートに記入した。

 

Eさんの話の内容を記入するのは,フェイスシートです。

 

2 一人暮らしなので,ジェノグラムにはEさんだけを書いた。

 

ジェノグラムは,家族図と訳されますが,同居の家族だけを記入するものではありません。

 

三世代の家族を図式化します。一人っ子であって,自分に子がいなくても,必ず親はいるでしょう。

 

3 近隣住民との関係をエコマップに書いた。

 

これが1つめの正解です。

 

4 Eさんの状態について,C社会福祉士の考えをプランニングシートに書いた。

 

Eさんの状態について,C社会福祉士の考えを書くのは,アセスメントシートです。

 

5 Eさんの多面的なニーズを総合的に理解し,アセスメントシートに記入した。

 

これが2つめの正解です。

 

この問題で,ちょっと慌てるのは「クロージングシート」でしょう。

 

クロージングという言葉は知らなくても「クローズ」なら知っていることでしょう。

クローズという言葉から最後の締めくくりというイメージが湧いてきてくれれば,消去できそうです。

2021年2月21日日曜日

ソーシャルワークの記録形式

社会福祉士の国家試験では,記録形式について出題されます。しかも出題頻度がかなり高いものです。

 

現場に入ったら,自然と覚えるものなので,国家試験でわざわざ出題する必要もないように思いますが,正しい知識を持つことは,受験者を選別できるので,国家試験としては適切なのかもしれません。

 

それでは,今日の問題です。

 

28回・問題117 記録の形式と文体に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 エバリュエーションシートにはソーシャルワーカーとクライエントとの相互作用が時系列に記録される。

2 フェイスシートにはアセスメント結果,目標,計画が一覧で示される。

3 問題志向型記録では,問題ごとにS(主観的情報),O(客観的情報),A(アセスメント),P(計画)の項目に沿って記述する。

4 逐語体は会話の一語一句を聞き取ってその要点をまとめて箇条書きにしたものである。

5 説明体は,事実についてのクライエントによる説明や解釈を記述するものである。

 

この時の国家試験を受験した人は,「何この問題」と思ったことでしょう。

 

国家試験は,一定数は必ずこういった問題を混ぜて出題します。

 

しかし,まったく手が出ない問題ではありません。

 

重要なことは,このような問題であっても焦ることなく,知っている知識を総動員して考えることです。

 

それでは,解説です。

 

1 エバリュエーションシートにはソーシャルワーカーとクライエントとの相互作用が時系列に記録される。

 

エバリュエーションシートは,知らなくても,エバリュエーションは知っているでしょう。

 

そうです。

 

エバリュエーションは,「支援の評価」です。

 

エバリュエーションシートは,支援の評価を記入する記録用紙です。

 

2 フェイスシートにはアセスメント結果,目標,計画が一覧で示される。

 

フェイスシートは,クライエントの基礎情報の記録用紙です。

 

3 問題志向型記録では,問題ごとにS(主観的情報),O(客観的情報),A(アセスメント),P(計画)の項目に沿って記述する。

 

これが最も難関のものでしょう。しかし,これが正解です。そのためにこの問題の難易度は高くなります。

 

問題志向型記録は,POSProblem Oriented System=問題志向型)に基づいて,記録するものです。

 

S(客観的情報) → クライエントの主訴など

O(客観的データ) → 血圧,体温など

A(アセスメント) → SOから考えられること

P(プランニング) → 支援計画

 

これらの項目に沿って,記録していきます。

 

余談ですが,POSを日本に紹介したのは,『生き方上手』で知られる聖路加国際病院の元・理事長の故・日野原重明先生です。

 

これは国家試験には出題されないので,覚える必要はありません。

 

 

4 逐語体は会話の一語一句を聞き取ってその要点をまとめて箇条書きにしたものである。

 

逐語体は,会話をすべて書き取るものです。

 

5 説明体は,事実についてのクライエントによる説明や解釈を記述するものである。

 

説明体は,クライエントの説明を記述するものではなく,事実についてのワーカーの解釈などを記述するものです。

2021年2月20日土曜日

スーパービジョンの出題率は100%

今回は,スーパービジョンを取り上げます。

 

22回国試以降では,ほぼ毎回出題されています。

近接領域であるコンサルテーションを含めると出題されなかったことはありません。

 

つまり過去問を見ると必ず目にするものです。

 

スーパービジョンの出題ポイントは,以下の2つにほぼ集約されます。


スーパービジョンの機能

スーパービジョンの形態

・教育的機能

・支持的機能

・管理的機能

 

 

・個別スーパービジョン

・グループスーパービジョン

・ライブスーパービジョン

・ピアスーパービジョン

・セルフスーパービジョン


それぞれを説明できますか?

スーパービジョンの機能

https://fukufuku21.blogspot.com/2019/06/blog-post_6.html

https://fukufuku21.blogspot.com/2019/06/blog-post_7.html

https://fukufuku21.blogspot.com/2019/06/blog-post_8.html


スーパービジョンの種類

https://fukufuku21.blogspot.com/2019/06/blog-post_11.html https://fukufuku21.blogspot.com/2019/06/blog-post_12.html


国家試験の合格は,正しい勉強を続けていけば必ず合格できます。

正しい勉強とは,勉強量(つまり勉強時間)ではなく,勉強の質(つまり覚え方)です。

 

時間をかけて勉強しても,覚え方をミスすると得点力につながりません。

 

覚え方のミスとは,丸暗記することです。

 

時間がかかるばかりか,適切なアウトプットができない恐れもあります。

 

そうならないためには,本当は福祉の勉強をしたことのない人にわかりやすく説明すると良いです。

 

しかし,それでは付き合ってくれる人がいないとできませんし,そんな人がいたとしても出題範囲が広い社会福祉士・精神保健福祉士の国試の内容すべてに付き合ってもらうわけにはいかないでしょう。

 

そこで,自分の中で,自分に対して説明するようにします。説明する時に「たとえば」といった例示がいできるようになれば完璧です。

 

現時点(2021年2月)時点の直近の国家試験で,出題された問題です。

 

33回・問題114 次のうち,複数のスーパーバイジーがスーパーバイザーの同席なしに行うスーパービジョンの形態として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 ピア・スーパービジョン

2 グループ・スーパービジョン

3 ライブ・スーパービジョン

4 個人スーパービジョン

5 セルフ・スーパービジョン

 

再受験を目指す人に聞きます。

 

この問題を正解することができましたか?

 

スーパービジョンの形態を正しく理解していれば,何のためらいもなく,

 

1 ピア・スーパービジョン

 

を選べるはずです。

 

もし間違っていたとすると,覚え方のミスマッチが起きていたと考えられます。

即刻,覚え方を見直しましょう。


学習戦略を立て直すときのポイント

https://fukufuku21.blogspot.com/2021/02/blog-post_16.html

 

それでは,今日の問題です。

 

28回・問題116 スーパービジョンに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 ソーシャルワークの実践に必要な知識,技術,価値を伝授することは教育的機能である。

2 スーパーバイザーとスーパーバイジーの責任の範囲などを決める契約は,スーパービジョンの展開における終結の時点で行う。

3 共感的な理解や受容を通して,ソーシャルワーカーを精神的に支える機能は管理的機能である。

4 スーパーバイザーは,スーパーバイジーから専門職としてさらに成長していくようにスーパービジョンを受ける。

5 個々のソーシャルワーカーの力量や状況に見合った業務の割当てを行い,適正な業務となるよう調整することは支持的機能である。

 

この問題は,スーパービジョンの機能に関する出題です。

 

社会福祉士で出題されるスーパービジョンは3つしかないので,5つの選択肢を埋めるためには,ほかの2つが必要です。

 

今までの国家試験で,ほかのものが正解になったものとして「パラレルプロセス」があります。

今までに2回出題されています。これも合わせて覚えておきたいです。

 

パラレルプロセスに関する記事

https://fukufuku21.blogspot.com/2019/06/blog-post_10.html

https://fukufuku21.blogspot.com/2017/07/blog-post_20.html

 


さて,今日の問題の解説です。

 

1 ソーシャルワークの実践に必要な知識,技術,価値を伝授することは教育的機能である。

 

これが正解です。

 

何のひねりも引っ掛けもないものですが,国家試験ではそんなに簡単には思えないのが怖いところです。

 

なので,丸暗記勉強は不適切なのです。

 

2 スーパーバイザーとスーパーバイジーの責任の範囲などを決める契約は,スーパービジョンの展開における終結の時点で行う。

 

これと同じ内容の出題があります。

 

31回・問題115

2 スーパービジョンの契約は,スーパービジョンの展開過程の終結段階で行われる。

 

いずれも当然誤りです。

 

3 共感的な理解や受容を通して,ソーシャルワーカーを精神的に支える機能は管理的機能である。

 

これは,指示的機能のことを述べたものです。

 

4 スーパーバイザーは,スーパーバイジーから専門職としてさらに成長していくようにスーパービジョンを受ける。

 

スーパーバイザーとスーパーバイジーを混同させる問題は,これまでに幾度も出題されています。

 

こんなものに引っ掛かる人がいるのか,と思う人は要注意です。

 

見事に引っ掛かります。

 

なぜ引っ掛かるかと言えば,漢字と異なり,カタカナは文字に意味のない表音文字だからです。

 

そのために読み間違いが起きます。

 

特に

スーパーバイ

スーパーバイ

 

はたった一文字違いです。国家試験の緊張した中ではびっくりするような読み間違いが起きます。

 

それが国試の怖いところです。

 

5 個々のソーシャルワーカーの力量や状況に見合った業務の割当てを行い,適正な業務となるよう調整することは支持的機能である。

 

これは,管理的機能のことを述べたものです。

 

<今日の一言>

 

今回は,スーパービジョンを取り上げました。

 

そんなに難しくないよ,と思う人は要注意です。

どんな問題にも落とし穴があります。

 

どんなに勉強しても,エラーは起きます。

 

エラーを極力起こさないように,チームfukufuku21と国試突破を目指して頑張っていきましょう。

 

道は決して平たんではないかもしれませんが,すべての人に道は開かれています。

2021年2月19日金曜日

グループワーク~集団を活用した援助技術

社会福祉士の国家試験は,第22回にカリキュラムが変わり,第37回でまた新しいカリキュラムになります。


大学で最も早く新しいカリキュラムに変わり,その学生が卒業する時に,新しいカリキュラムでの国家試験に移行します。


いよいよ科目にソーシャルワークという名称が入ります。資格創設から30年以上かかって,ようやくです。


ソーシャルワークは,以下のように分かれます。

①ケースワーク

②グループワーク

③コミュニティワーク


今回は,そのうちグループワークを取り上げます。


グループワークは,集団を活用した援助技術です。


この視点を忘れてはなりません。


第28回・問題115 事例を読んで,グループワークにおけるMソーシャルワーカー(社会福祉士・精神保健福祉士)の対応について,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 総合病院の精神科病棟でMソーシャルワーカーは,退院支援の一環としてグループワークを活用した社会生活技能訓練(SST)を行っている。退院後に症状が再発したときに備えて,どんなときに体調不良になるのかをグループで話し合っていたとき,メンバーのAさんが,唐突に「どうせ,そんなこと考えてもしょうがない。悪くなるときは悪くなるんだから」とぶっきらぼうに言った。それを聞いたメンバーのBさんは,「お前みたいなやる気がない奴は居ても仕方ない。出て行けよ」と冷たく言った。Aさんは怒りの表情でBさんをにらみつけた。

1 「Bさん,そんなふうに言わないで,みんな仲良くしましょう」

2 「Aさん,同じことを言ってた人が前にいたけど,グループで変わりましたよ」

3 「二人とも,気が済むまで話してください」

4 「お二人それぞれ思いがあるんですよね」

5 「Aさん,無理にグループに参加しなくてもいいですよ」


グループワークの作業期では,メンバー間の葛藤やぶつかり合いが現れることがあります。


これを避けてはなりません。というか,それを活用するするのがグループワークです。


避けているのは,


1 「Bさん,そんなふうに言わないで,みんな仲良くしましょう」

5 「Aさん,無理にグループに参加しなくてもいいですよ」


これらは絶対に正解になりません。


2 「Aさん,同じことを言ってた人が前にいたけど,グループで変わりましたよ」


これは一般化している返しです。グループワークであっても,個別化の原則は貫かれます。


3 「二人とも,気が済むまで話してください」


これは一見よさそうな対応だと思う人もいるでしょう。

しかし,これも絶対に正解になりません。


なぜなら「気が済むまで話してください」では,グループワーカーの役割を放棄していますし,「気が済むまで」と言っていますが,気が済まなければどうするのでしょう?

先を見通せない,つまり戦略のない対応は,その場しのぎでしかありません。


4 「お二人それぞれ思いがあるんですよね」


これが正解です。

葛藤が起きていることを受け止めて,リフレーミングの技法を使って返しています。


争っていることを「それぞれの思いがあるからだ」と発想を変えています。

このように見方を変えることをリフレーミングと言います。


とても素敵な返しだと思いませんか?


<今日の一言>


グループワークは,集団を活用した援助技術です。

できるグループワーカーは,葛藤が生まれてきたら,うろたえるどころか,「やったー」と思うでしょう。

葛藤は,グループが成長するきっかけとなるからです。

それにもかかわらず,国家試験では「葛藤が起きないようにする」といったような内容で出題されます。

こういったタイプのものは,当然ですがすべて誤りです。

集団を活用しないのなら,ケースワークで良いということになってしまいます。

2021年2月18日木曜日

国家試験に合格する人・しない人

この学習部屋に訪れている人は,社会福祉士の資格を取りたい人だと思います。


私たちが目指しているのは,本気で資格取得を目指している方々がしっかりと資格をつかむことです。


ぜひチームfukufuku21とともに国家試験の合格を目指していきましょう。


さて,今日のテーマは,「国家試験に合格する人・しない人」です。


とても単純です。


結論は・・・

合格基準点に届いた人は,合格します。

合格基準点に届かなかった人は,合格できません。


極めて明確です。


出題基準は,ご存じですか?


国家試験を実施している「社会福祉振興・試験センター」では,どのような内容を出題するのかを示しています。


それが出題基準です。


合格する人は,この範囲をきっちり勉強した人です。

ヤマを張ってもこの範囲を押さえない人は,絶対に合格できません。


その大前提をきっちり守って勉強すれば,必ず合格します。


合格すると思う人は合格します。必ず合格します。


それでは,今日の問題です。


第28回・問題114 ソーシャルサポートネットワークに関する事例を読んで,乳児院のJ家庭支援専門相談員(社会福祉士)の支援について,適切なものを2つ選びなさい。

〔事 例〕

 Kさん(32歳)はLちゃん(2歳)を出産後,親子二人暮らしであった。親類との交流は現在,全くない。Kさんは病気治療の必要があり,半年前から入退院を繰り返していた。このためにLちゃんは乳児院に入所している。Kさんが完治し来月退院予定となったので,家庭に引き取る支援体制を検討するために,J家庭支援専門相談員は,Kさんと面接を行った。その中で,Kさんがひとり親での子育てに不安を抱えていることが伝えられた。

1 インフォーマルな支援を優先して活用するように,Kさんに勧める。

2 ひとり親支援や地域の子育て支援を行うNPO法人の情報を提供する。

3 地域の主任児童委員とKさん母子の関係形成を図る。

4 Kさんのかかりつけの病院は,支援体制から除外する。

5 Lちゃんが入所している乳児院は,今後,関わらないことをKさんに伝える。


今日の問題は事例問題です。


事例問題は,知識なしでも正解することができます。


だからと言って,勉強しない人は間違います。


間違わないとしても,確実に正解することはできません。


この問題を正解するために絶対に忘れてはならないことは何でしょう?


もう一度聞きます。


この問題を正解するために絶対に忘れてはならないことは何でしょう?


事例の内容に気を取られている人は,気をつけなければなりません。


この問題で絶対に忘れてはならないものは,事例の中にはありません。


それではどこにありますか?


答えを言うと,設問の中の「ソーシャルサポートネットワーク」です。


事例問題を事例だと読む人は正解するのは難しいです。


特にこの問題のように,正解を2つ選ぶ問題は,確かな視点がないと得点するのは難しいと言えます。


ソーシャルサポートネットワークは,連携体制です。


そのようになっているのは,


2 ひとり親支援や地域の子育て支援を行うNPO法人の情報を提供する。

3 地域の主任児童委員とKさん母子の関係形成を図る。


の2つしかありません。そして,これらが正解です。


1 インフォーマルな支援を優先して活用するように,Kさんに勧める。

4 Kさんのかかりつけの病院は,支援体制から除外する。

5 Lちゃんが入所している乳児院は,今後,関わらないことをKさんに伝える。


これらに×をつけることはそれほど難しくないでしょう。


そういう面では,難易度はそれほど高くない問題かもしれません。


しかし,国家試験問題は,こんな問題ばかりではありません。


対人援助としては適切だとしても,設問と異なるので正解ではない,と出題される問題もあります。


<今日の一言>


社会福祉士の国家試験の合格基準点(いわゆるボーダーライン)は,問題の難易度によって上下します。

そのため,自己採点でギリギリの人は,合格発表まで悶々として過ごさなくてはなりません。

そのような人に共通するのは,今日の問題のように注意が必要なものに注意せず,ミスをすることです。

得点が積み上がりません。

社会福祉士の国家試験は,すべて1問1点です。難しい問題も簡単な問題もすべて1問1点です。

相談援助の理論と方法は,事例が多いから楽勝だ,と思っている人は,その考えをやめましょう。

事例だって,しっかり勉強しないと確実に得点できないからです。

2021年2月17日水曜日

ソーシャルアクションってなんだ?

ソーシャルワークは,外国生まれです。


これから社会福祉士を目指そうと思う人は,カタカナの言葉が多いので,覚えるのがとても大変だと思うでしょう。


しかし,それらをうまく使いこなすことができれば,とてもかっこよいと思いませんか?


ただし,かっこよいから使うのではありません。専門用語はしっかり覚えると,同じ専門職の共通言語になります。


ソーシャルワークという用語でさえ,正式に使われるのは,令和3年度改正の新しいカリキュラムからです。


社会福祉士が創設された当初は,社会福祉援助技術と呼ばれていました。


平成19年度改正で,相談援助という名称になりました。


現時点(令和3年2月)で,国家試験にチャレンジしている人の多くは,この言葉になじみがあるでしょう。


そして,令和3年度改正で,ようやくソーシャルワークという名称が使われる科目が誕生します。


30年以上かかったということです。


言葉が定着するのは長い年月が必要です。カタカナの用語を覚えるのが大変だと思うのは,至極普通のことだと言えるでしょう。


しかし,国家試験というものを考えたとき,カタカナの用語は,受験生を振り分けるためにとても有効です。


苦手だと悠長なことは言っていられません。

頑張って覚えていくしかありません。


さて,今日のテーマは,ソーシャルアクションです。


カタカナの用語に苦手意識を持つのは,その言葉から意味を推測することが難しいものが多いからでしょう。


ソーシャルアクションを直訳すると

ソーシャル=社会

アクション=行動,活動


合わせて,社会行動,あるいは社会活動という意味となります。


社会行動,あるいは社会活動という言葉からその内容を推測するのはとても難しいことでしょう。


勘のよい人なら,見当をつけることができるかもしれません。


それでは,ソーシャルアクションとは,どのような意味なのでしょうか。


ソーシャルアクションとは,社会問題の解決のために制度の創設などを求める活動のことを言います。


つまり,外向きの活動です。


第33回国試では,民生委員の前身である方面委員が救護法の実施を求めた活動のことが出題されました。


これがまさにソーシャルアクションです。


ソーシャルアクションとは,おおよそどんなことなのか理解できましたか?


社会福祉士の国試は,丸暗記がそのまま使える問題はそれほど多くはありません。大多数は,その意味を知っていることを前提にして正しく答えさせるものが基本です。


それでは,今日の問題です。


第28回・問題113 ソーシャルアクションに関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。

1 目的には,社会参加の促進は含まれない。

2 対象には,個人は含まれない。

3 内容には,ソーシャルアドミニストレーションが含まれる。

4 展開過程には,学習会や調査などによる問題と要求の明確化が含まれる。

5 形態には,自らの課題を克服し要求を実現する組織化は含まれない。


とても美しくない問題です。センスがちょっと足りません。


そのために,勝手に順番を変えます。


第28回・問題113 ソーシャルアクションに関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。

1 対象には,個人は含まれない。

2 目的には,社会参加の促進は含まれない。

3 形態には,自らの課題を克服し要求を実現する組織化は含まれない。

4 内容には,ソーシャルアドミニストレーションが含まれる。

5 展開過程には,学習会や調査などによる問題と要求の明確化が含まれる。


少し美しくなったと思いませんか?


変えたポイントは,「含まれる」と「含まれない」を分類したことです。


もう一つのポイントは,問題の長さがバラバラになっていることを整理したことです。


さて,それであっても「含まれる」と「含まれない」が混在している問題は,あまり良い出来ではありません。


なぜなら,「含まれる」のほうに正解があることが多いからです。


それでは解説です。


1 対象には,個人は含まれない。


ソーシャルアクションは,社会を対象にしていることが多いですが,個人の権利擁護を通して,ソーシャルアクションにつながることはよくあります。


古くは,朝日訴訟で知られる朝日茂さんには,多くの支援者が集まりました。

この活動を通して,生活保護費の給付額の見直しがされるようになったのです。


まさにソーシャルアクションだと思いませんか。


2 目的には,社会参加の促進は含まれない。


これは意味がわかりにくいものかもしれません。

社会参加の促進とは,たとえば,合理的配慮を求めて,会社に交渉することなどです。


それによって,障害があっても働きやすい職場となります。

まさに社会参加の促進です。


3 形態には,自らの課題を克服し要求を実現する組織化は含まれない。


一人では,難しい活動でも支援者を募ることで,社会の関心を集めることができます。



4 内容には,ソーシャルアドミニストレーションが含まれる。


カタカナの用語が出てきました。今日の問題の中で最も手ごわいものでしょう。


言葉を知らないと推測することができません。勉強不足の人は,こういうものに引っ掛けられて間違います。


アドミニストレーションとは,運営管理のことです。


運営管理は,既にある制度を実行する過程なので,ソーシャルアクションとは逆向きです。


この制度が良くないから,法令遵守はしない,なんてことになったら制度の運営ができません。


最悪の場合は,指定取消しもあり得ます。


5 展開過程には,学習会や調査などによる問題と要求の明確化が含まれる。


これが正解です。


学習会や調査などによる問題と要求の明確化は,要求する内容に説得力が生まれることでしょう。


たとえば,LGBTの問題に関して,現在「性的指向又は性自認を理由とする差別の解消等の推進に関する法律案」という法案が提出されています。


この法案を提出してもらうのには,説得力が必要です。


主観(時には情熱)も重要ですが,多くの人を動かすには,客観的に説得力があると良いです。


そのための準備が,勉強会の開催やデータの集積です。


<今日の一言>


今日の問題は,勉強不足の人にとってね少しハードルが高いです。

だからこそ,国家試験で出題されます。誰もが簡単に解ける問題ばかりだと,受験生に差がつかないので,ほんの少しハードルを上げた問題の出題が必要です。

しかし決して難しいものではありません。こういう問題を確実に正解するする力が必要です。

2021年2月16日火曜日

学習戦略を立て直すときのポイント

社会福祉士の国家試験の合格発表は,近年は3月中旬にあります。


現時点(2021年2月16日)は,合格発表のちょうど1か月前だということになります。


受験した人は,国家試験のことは考えたくない時期でしょう。


国家試験のあとにもう一度問題を解いた時,結果として以下の2つがあります。


①90点は超えなかった。


②90点は超えた。


次回の国家試験の受験を考えた場合,どちらが対策を練りやすいと思いますか?


対策を練りやすいのは,①90点は越えなかった。です。


その理由は,合格基準点に到達しなかったのは,単純に勉強不足だからです。


それに比べると

②90点を超えた。


は,読み間違いなどのエラーがあったことが原因です。


このエラーの発生を防止することをしないと同じことを繰り返すことでしょう。


結果が出ないと,参考書を変える人がいますが,どれを使っても,勉強法を変えない過ぎり,おそらく結果が劇的に変わることはないように思います。


②のタイプの人が,勉強不足だと認識することは危険です。


覚え方のミスマッチに気がつかない限り,同じような結果となるおそれがあります。


本当は,この時期に問題を解くことが必要なのですが,多くの人は,新しい参考書を手にして勉強をすすめることでしょう。


そうすると,読み間違いや勘違いや浮足立って混乱したことや隣の人に影響を受けたなど,そういった要因を修正することなく,勉強をひたすら進めることになります。


エラーを引き起こさないための対策は,人によって千差万別です。


みんながそのことに気がついて対策を施すと,合格基準点が大きく上がってしまう恐れがあるので,知らないことは良いことなのかもしれません。


国家試験問題を一問ずつ丁寧にみていくと,それほど難しくないことに気がつくことでしょう。

しかし,それらをコンスタントに正解していくことは,ものすごく難しいことです。人はミスを犯すものだからです。

勉強が足りなかったという思いで購入した新しい参考書をひたすら勉強しても,エラー対策を立てないと,得点は積み上がっていきません。


<今日の一言>


今までに何度か受験して,毎回数点の差で合格をつかめないという人の多くは「② 90点を超えた」なのではないかと思います。

もちろん確実な知識をつけていくことは必要ですが,今までと同じ勉強法では,おそらくまた同じ結果となります。

確実な知識とは,丸暗記することではありません。


短くても良いので,自分の言葉で説明できるような理解を心がけましょう。


自分で考えた言葉なら,ど忘れすることもなく,あいまいになることもありません。

ひと手間がかかりますが,このくらいの荒療治が必要です。言い換えると,自分の言葉で説明できないと本当に理解したとは言えません。

例を考えることも有効です。


※今日の問題は休みます。

2021年2月15日月曜日

社会資源について

社会福祉士の国試に合格するためには,合格基準点を1点でも上回ることが必要です。


今さらですが,その合格基準点とは,150点満点のうち,6割程度です。


6割とは90点ですが,90点が合格基準点ではなく,問題の難易度によって上下するのが難点です。


しかし,このシステムは,実は受験者にとってとても有難いことです。


というのは,国家試験は問題の難易度が年度によって異なるため。合格基準点を90点に固定してしまうと,年度によって不公平が生じてしまうからです。


受験生にとって合格基準点が明確でないのはとても辛いことですが,年度間の公平さを担保するためには,受け入れなければならないことだと思います。


それでは今日の問題です。


第28回・問題112 相談援助における社会資源に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。

1 社会資源の使用目的は,クライエントのニーズを充足させることである。

2 社会資源とは,施設・設備,資金・物品などの有形のものをいう。

3 社会資源の供給主体には,インフォーマルなセクターは含まれない。

4 社会資源には,ソーシャルワーカーの専門的能力は含まれない。

5 社会資源の開発は,生活上のニーズを満たせない個別的なクライエントに対して行われるものであり,一定のクライエント層に対しては行われない。


この中で絶対に正解にならないだろうと思うのは,選択肢5でしょう。


このスタイルの文章の選択肢は,ほぼ正解にはならないからです。

意味を考える前に消去できます。


意味を考えると,一定のクライエント層とは何を指しているのか不明確であることがわかります。


不明確なものが正解になることはあり得ません。


正解は,選択肢1です。

1 社会資源の使用目的は,クライエントのニーズを充足させることである。



何のひねりもありません。


<今日の一言>


国家試験問題は,多くの人が思うほど意地悪ではありません。


それを変に勘繰ると,素直に考えることができなくなり間違える要因となります。


素直に考えることが実は大切なのです。

2021年2月14日日曜日

ケースマネジメントのモデル

社会福祉士の国家試験で怖いのは,平常心を忘れてしまうことです。

この当たり前のことができなくなるのが本当に怖いです。


平常心を忘れてしまうのは,様々なケースがありますが,代表的なものには,「勉強していないものが出題された時」があります。

勉強不足の人が勉強していないものが出て答えられないのは当然のことです。


参考書や過去問を何度も何度も繰り返して勉強した人が勉強していないものを目にすることは,それとは違います。

無力感に苛まれる人もいるでしょう。


しかし,それまで勉強してきた確実な知識があれば,そういった問題が解けなくても合格基準点に届きます。


6割程度のラインというのは,実にうまく作られているように思います。


とは,いうものの勉強したことがないものであっても,実は3分の1から2分の1くらいは正解できます。消去できる選択肢が含まれるからです。


今回は,ケースマネジメントのモデルを取り上げます。


国家試験は,答えがあいまいだといけないので,定説になっているもの,何かの文献に書かれているものから出題します。


ケースマネジメントのモデルもどこかにおそらく書かれているでしょう。


しかし,多くの人は目にしていないはずです。

つまり,勉強したことがないのは,すべての受験生が同じです。


平常心で問題に取り組むことができれば,どこかにヒントを見つけ出すことができます。

考えることをあきらめて適当に答えを選ぶのは,実にもったいないことだと思いませんか?


それでは,今日の問題です。


第28回・問題111 事例を読んで,この場合に適したケースマネジメントのモデルとして,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 高校生のときに統合失調症を発症したHさんは,10年以上の入院生活が続いており,退院して地域で生活することを望んでいる。両親はすでに他界し兄弟は遠隔地在住で,Hさんの退院後の生活を支援してくれる人はいない。Hさんの症状は不安定で,日常的に服薬管理などの医療サービスや生活全般の見守り・助言,リハビリテーション,就労支援など,様々な支援が必要である。

1 ストレングスモデル

2 リハビリテーションモデル

3 臨床型モデル

4 仲介型モデル

5 ACT(包括型地域生活支援プログラム)モデル


ケースマネジメントのモデルは知らないと思うと試験委員の思うつぼです。

多くの人は,惑わされて平常心を見失っていることでしょう。


しかし,国家試験は,日本語で出題されます。

日本語的に答えを見つけ出すことができます。


さて,この問題のポイントは,


Hさんの症状は不安定で,日常的に服薬管理などの医療サービスや生活全般の見守り・助言,リハビリテーション,就労支援など,様々な支援が必要である。


本当に様々な支援が必要です。単一の専門職では対応ができないでしょう。


正解は,選択肢5です。


5 ACT(包括型地域生活支援プログラム)モデル


社会福祉士の国試は,ありがたいなあ,と思います。


この選択肢は,


5 ACT(Assertive Community Treatment)モデル


と出題することも可能です。そうはせず,(  )で,「包括型地域生活支援プログラム」と説明してくれています。


ACTを知らなくても「包括型地域生活支援」という言葉から,様々な支援を行うものであることが推測できます。


ACTは,多職種で24時間365日,訪問を中心したサポートを行うものです。


社会福祉士の国家試験ではこの時に初めて登場していますが,精神保健福祉士の国家試験ではおなじみです。


重度の精神障害者の地域移行のために実践されているだからです。


正解以外の選択肢を簡単に紹介します。


1 ストレングスモデル


ストレングスモデルは,クライエントのもつ強み(ストレングス)に着目して,支援するものです。


2 リハビリテーションモデル


リハビリテーションモデルは,リハビリテーションを中心に行うものです。


3 臨床型モデル


これが言葉から推測しにくいものでしょう。


ケースマネジメントは,もともとアメリカの精神保健分野で発展してきたものです。


精神分野の臨床型というのは,治療を中心に行うものです。


4 仲介型モデル


ケースマネジメントは,日本では介護保険分野ではケアマネジメントとしておなじみです。


サービス調整を中心に行うのが仲介型モデルです。



<今日の一言>


今日の問題の場合,おそらく多くの人は「ストレングスモデル」「リハビリテーションモデル」は,消去できるでしょう。


そうすると3分の1の確率で正解できます。


ACTがわからなくても3分の1の確率で正解できます。


この問題の場合は「包括型地域生活支援プログラム」という言葉から,さらに正解できる確率が高まりました。


社会福祉士の国家試験はマーク式なので,わからないものでも正解できる可能性があります。


合格基準点にあと数点で届かないという人はたくさんいます。


そういった人は,平常心を見失わない強い気持ちをもって,国試に臨むことが必要です。

2021年2月13日土曜日

ケアプラン作成の基本原則

社会福祉士の国家試験で怖いのは,平常心を忘れてしまうことです。


この当たり前のことができなくなるのが本当に怖いです。


受験生みんなが実力通りに力を発揮してしまうと,合格基準点(いわゆるボーダーライン)が上がってしまうので,これはこれで致し方ないでしょう。


それでは,早速今日の問題です。


第28回・問題110 相談援助の方法の一つであるケアマネジメントにおけるケアプラン作成の基本原則に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。

1 フォーマルサービスを主に活用して作成する。

2 費用負担の調整は,作成後に行う。

3 アセスメントに基づいて設定した目標に即して作成する。

4 クライエントや家族の要望どおりに作成する。

5 専門職が連携して最終段階まで練り上げてから,クライエントと家族の同意を得る。


この問題を見て,「ケアプラン作成の基本原則って何だ?」と思って,調べようとする人は要注意です。


国家試験では調べられないからです。


ケアマネジメントを行っている人も「私はケアマネジメントを行っているが,それは基本原則ではないかもしれない」と思うのも危険です。


もしかすると,「ケアマネジメントの基本原則」という有名なものがあるのかもしれませんが,そんなものを知らなくても,この問題は解けます。


再度言います。


社会福祉士の国家試験で怖いのは,平常心を忘れてしまうことです。


過去問を解くときは,少々わからないことがあっても,だいだいわかるようならそれでよいです。


国家試験会場では,調べられないし,誰にも聞くことができません。


改めて,問題を見てみましょう。


1 フォーマルサービスを主に活用して作成する。

2 費用負担の調整は,作成後に行う。

3 アセスメントに基づいて設定した目標に即して作成する。

4 クライエントや家族の要望どおりに作成する。

5 専門職が連携して最終段階まで練り上げてから,クライエントと家族の同意を得る。


落ち着いて読むことができれば,答えは見えてくるはずです。


3 アセスメントに基づいて設定した目標に即して作成する。


プランニングのことを述べているものです。


それ以外はあり得ません。



<今日の一言>


覚えたものがそのまま国試で生かされるなら,実践力がなくても記憶力に優れている人が有利です。


確かに,過去の経験に当てはめることにより,ある程度の実践は可能でしょう。

しかし,現実にはそんなマニュアル通りにいかないこともあります。


その時に必要なのは,今までの経験をもとにして,さまざまなことを工夫して対応することです。


特に対人援助職は,その時間を止めて,誰かに聞きに行くことができません。

しかもソーシャルワーカーは,施設で一人ということもあります。


その時に,機転が利かないワーカーだったらどうなりますか?

そんなワーカーをクライエントは求めていません。


国家試験は,それができるワーカーふるいにかけているとも言えます。


もし,国試で思ったような点数が取れなかったという人は,普段のことを思い起こしてみてください。

おそらく日常業務の中では,普通にそれができていることでしょう。


もし現実の中でも平常心を失う傾向があるとしたら,それを克服することも必要かもしれません。

2021年2月12日金曜日

社会福祉士の国家試験の合格率

社会福祉士の国家試験の合格率を見てみると,高い年でも30%ちょっとです。


第30回国試は,いわゆるボーダーラインを99点に挙げてまで,この合格率を死守しました。


ボーダーラインが問題の難易度によって上下するのは致し方ありませんが,受験生にとっては,迷惑な話です。


ボーダーラインが固定されていれば受験生は安心できるのかもしれませんが,そうなると年度間の公平さに欠けてしまいます。

毎年同じような難易度の問題をつくるのは,実はとても難しいものです。


ボーダーラインがどのようになってもびくともしない点数を取りたいものです。


さて,しばらく今日の問題を休んでいましたが,今回から再開します。


改めてどうぞよろしくお願いします。


それでは早速今日の問題です。


第28回・問題109 事例を読んで,この場面でのF医療ソーシャルワーカーの面接の在り方として,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 Gさん(45歳,男性)は,一人暮らしをしていた。糖尿病があり,通院しているが,主治医や看護師の指示にもかかわらず,服薬や栄養,運動などの生活に問題があった。

 病状が進行し腎障害と糖尿病性網膜症があり,人工透析が必要となった。失明の可能性もあることから,入院・治療を行うこととなり,1週間前に入院した。

 入院当初から,同室の他の入院患者との折り合いが悪く,また,先日,見舞いに来た職場の上司に対して,大声で苛立った話し方をするなどの状況が見られたため,F医療ソーシャルワーカーが面接を行うこととなった。

1 これまでの生活の自己管理の失敗を反省させる。

2 失明状態に備えて,身体障害者手帳を申請するように説得する。

3 問題の原因が服薬管理にあると考え,指導的な働きかけを行う。

4 Gさんの病気と現在の状況に共感し今の課題について話し合う。

5 Gさんの退院後の生活に向けた話合いをする。


相談援助の理論と方法は,例年は21問出題されています。


事例があるので,点数が取りやすいと思って勉強をしないと痛い目に遭います。


正解できて当然であり,ミスすることは命取りになります。


この問題の場合,選択肢1~3は消去できるでしょう。

最も不適切なものは,選択肢2の「説得する」です。

「説得する」はソーシャルワークにはありません。

自己決定できるように,クライエントの側面すら支援するのがソーシャルワークです。


残るのは,


4 Gさんの病気と現在の状況に共感し今の課題について話し合う。

5 Gさんの退院後の生活に向けた話合いをする。


正解は,選択肢4ですが,選択肢5が正解にならないのは「この場面」では不適切だからです。


「選択肢5は間違いなのですか」と聞かれると「不適切ではありません。しかし最も適切なものではありません」と答えるでしょう。


この問題は「この場面で最も適切なもの」を選ぶものです。


この前提を忘れるとミスする原因です。

選択肢4は,障害を負ったGさんの心に寄り添っているため,最も適切だと言えます。

心理的支援を忘れたソーシャルワーカーは,ワーカー失格だと言えるでしょう。

初回面接は,特別なものです。ラポールの形成に努めることが大切です。

2021年2月11日木曜日

第33回国試から考える合格できる勉強法

現時点(2021年2月)で最も新しい国家試験は,第33回です。


国家試験問題を作成する試験委員は,第32回に大きく変わり,第33回ではほとんどが留任しました。


今の問題はプール制と言って,国家試験で使われなかった問題は,また使えることになっています。


しかし人が作った問題を焼き直して試験センターに納品するということは,試験委員の立場になると考えにくいものです。


そのため,試験委員が大きく変わらない限り,問題の傾向はそれほど変わらないものです。


第37回から新しいカリキュラムでの国家試験になるので,今の試験委員チームはその間にノウハウを蓄積して,新しいカリキュラムに備えていくと思われます。


試験委員も人の子です。その領域の専門家であっても,問題を作るプロではありません。そのために慣れがある程度必要です。


さて,今回のテーマは,「第33回国試から考える合格できる勉強法」です。


まずは述べておきたいことは,ヤマを張って合格できるような試験ではないということです。出題範囲に示された内容をひたすら確実に覚えていくことが欠かせません。


もう一つは,3年間の過去問を完璧に覚えても合格できるものではないということです。

国家試験問題を一つひとつ分解してみると,それほど複雑に出題されているものではありません。


合格に必要なことは,過去に出題されたものを中心として,確実にその意味を押さえていくことです。


3年間の過去問を勉強しても,2年連続で出題されるものは少ないので,国試に役立つのは2年分となります。心許ないと思いませんか。


第33回国試では,以下の問題が出題されています。 赤字が正解


第33回・問題98 次の記述のうち,人と環境との関係に関するソーシャルワーク理論として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 リッチモンド(Richmond,M.)は,「人」,「状況」,「人と状況の相互作用」の三重の相互関連性を説いた。

2 ピンカス(Pincus,A.)とミナハン(Minahan,A.)は,生態学的視座に立ち,人が環境の中で生活し,社会的にも機能していると説いた。

3 ホリス(Hollis,F.)は,パーソナリティの変容を目指し,人と環境との間を個別に意識的に調整すると説いた。

4 バートレット(Bartlett,H.)は,人々が試みる対処と環境からの要求との交換や均衡を,社会生活機能という概念で説いた。

5 ジャーメイン(Germain,C.)は,クライエントの環境は,アクション・システムなど,複数のシステムから構成されると説いた。


この問題は,全部入れ替え作問法という方法で作られているので,一つ手がかりがあると芋づる式に答えを見つけ出すことができます。


されはさておき・・・


この問題を目にした時,「しめた,勉強したことのある人たちばかりだ,ラッキー」と思った人は多かったのではないかと思います。


なぜなら,第32回に以下のような問題が出題されているからです。


第32回・問題93 ソーシャルワーク実践理論を発展させた人物に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 ベーム(Boehm,W.)は,人間と環境の交互作用を基本視点とした生態学的アプローチを展開した。

2 ジャーメイン(Germain,C.)は,ソーシャルワークを本質的な観点から検討し,ソーシャルワークの活動を三つの機能に分類して定義化を試みた。

3 シュワルツ(Schwartz,W.)は個人と社会の関係は共生的な相互依存関係であるとし,ソーシャルワーカーの媒介機能を重視する相互作用モデルを展開した。

4 ゴールドシュタイン(Goldstein,H.)は,価値の体系,知識の体系および多様な介入方法の3要素に基づくソーシャルワーク実践の共通基盤を提唱した。

5 バートレット(Bartlett,H.)は,システム理論を指向した一元的アプローチを展開し,後に認知的―人間性尊重アプローチを展開した。


これも全部入れ替え作問法です。おそらくこの2つは同じ試験委員が作成したものだと思われます。


同じ人が作るのですから,2年連続して同じような内容のものを出題するわけがありません。専門家としてのプライドが許さないでしょう。


とはいうもののマニアックな問題を出題するのは,誰も解けなくなるので不適切です。


第33回国試問題の元ネタと言える問題が存在しています。


第27回・問題98 ソーシャルワークが対象としている「人と環境との関係」に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。

1 リッチモンド(Richmond,M.)は,人々と資源システムとの連結や相互作用としてとらえた。

2 パールマン(Perlman,H.)は,人と環境及び両者の相互作用の連関性としてとらえた。

3 ホリス(Hollis,F.)は,他の相互作用によって影響を受けた累積的相互作用としてとらえた。

4 バートレット(Bartlett,H)は,人々が試みる対処と環境からの要求との間で保たれる均衡関係としてとらえた。

5 ジャーメイン(Germain,C)は,社会生活の基本的要求を充足するために,社会成員が社会制度との間に取り結ぶ関係としてとらえた。


この問題の正解も第33回と同じくバートレットです。


これに関連する記事


https://fukufuku21.blogspot.com/2019/04/blog-post_24.html

https://fukufuku21.blogspot.com/2017/09/blog-post_26.html


同じ内容で出題されたのは,第27回ということです。

ここの事実に着目してほしいと思います。


3年間の過去問の範囲ではないということです。


しかし,問われている内容は過去の内容とそっくりです。


第33回 バートレット(Bartlett,H.)は,人々が試みる対処と環境からの要求との交換や均衡を,社会生活機能という概念で説いた。


第27回 バートレット(Bartlett,H)は,人々が試みる対処と環境からの要求との間で保たれる均衡関係としてとらえた。


異なるのは,第27回で出題された時には使われなかった「社会生活機能」ということばが使われていることです。


これに対しては,さらに元ネタと言える問題があります。


第25回・問題101 相談援助における「個人」と「環境」をめぐる諸説に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 ジャーメイン(Germain,C.)らは,生態学の視点を用いて,個人に焦点化した適応概念について説明した。

2 ホリス(Hollis,F.)は,パーソナリティの発達を目指して,個人と社会環境との間を個別に意識的に調整することについて論じた。

3 パールマン(Perlnan,H.)は,役割概念を用いて,役割ネットワークのなかで生成している存在として個人をとらえた。

4 バートレット(Bartlett,H.)は,人間にとってふさわしい場所の質は,その人の願望,能力,自信,環境の資源の機能によって決定されるとした。

5 ゴスチャ(Goscha,R.)らは,社会生活機能の概念を,環境からの要求と個人が試みる対処との交換及び均衡に焦点化してとらえた。


もう分かると思いますが,ゴスチャと出題されているものがバートレットのことです。



参考書は,こういった出題を分析して,最も効率的に学べるように作成されます。

3年間の過去問の知識ではスカスカなので,参考書を使って勉強することは欠かせません。


<今日の一言>


過去問にこだわる人は,さらにさかのぼって過去問を購入すればよいと思う人もいるかもしれません。


しかし,年度が替わる過去問解説は書いている先生が変わるため,年度間の関連は書かれません。


そういった意味で,国試に確実に合格するためには,参考書に書かれている知識は欠かせないと考えます。


過去問を解いて,正解した,間違った,ということを重視する勉強では,ボーダーラインを大きく超えることは難しいと言えるでしょう。


合格発表を余裕を持って迎えたいものですね。

第34回国試に向けた戦いは始まっています。

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