2019年6月8日土曜日

スーパービジョンの機能~③支持的機能

社会福祉士の国家試験は,例年は1月末に実施されていましたが,近年は2月最初の日曜日に実施されるようになっています。

現役受験の方はほんのちょっぴり有利になったと言えます。

本当は,最後の追い込みをしなくても良いように勉強したいところですが,実習や卒論などのことを考えると致し方ないのかもしれません。

最後の最後の勉強がどれほどの実力を生み出すのか確かめたことはないですが,ある程度知識がついてきたところでのまとめ的な勉強は,理解が加速しているように感じます。

しかし,やっぱり勉強不足だと,合格基準点まであと数点届かなくて,不合格になります。

実は,これが最も怖いことだと考えています。

勉強不足でもある程度の点数が取れたという自信が気の緩みをもたらします。
そしてまた勉強のスタートが遅くなって,不合格になります。
あと数点の壁は,とても大きいと言えます。

このようなことが発生する理由は,知識は短期間に詰め込むことはできても,問題に慣れるのは,簡単ではないからです。

換言すれば,参考書等で得た知識がそのまま点数を取る実力にはならないということです。

参考書等で得た知識をX(要因=いわゆる独立変数)

得点をY(結果=いわゆる従属変数)

とすると,

Y=aX+b

と表現することができます。

aは,問題を解く力

bは,その年の問題の難易度


この一次関数は様々なことを示唆しています。

合格に必要な勉強時間は,個人差が極めて大きい。

aが人によって異なるからです。

aが0.5の人はaが1の人と比べると,合格するには2倍の勉強時間を必要とします。
aが2の人はaが1の人に比べると,勉強時間は半分で済みます。

去年の点数よりも下がった

勉強した分,知識量はその前の年よりも確実に増えているはずです。

昨年(第30回)は,89点
今年(第31回)は,88点

ということを考えてみます。

勉強したのに,昨年よりも点数が下がっているということにショックがあるかもしれません。

しかし,実力は確実に上がっていることがわかります。

6割程度=90点程度が合格基準です。
その年の難易度によって合格基準点は補正されます。

第30回の合格基準点は,99点です。90点の110%です
第31回の合格基準点は,89点です。90点の98.9%です。

これで補正すると,

昨年の89点は,80.9点
今年の88点は,89.0点

となります。

見た目の点数は,今年の方が下がっていますが,実力は上がっています。
過去最低の合格基準点は「魔の第25回国試」と呼んでいる第25回の72点です。

72点でも合格できた年と揶揄する人がいますが,それは間違っています。
72点の人が第30回を受けていたら,112.5点取れていることになります。

第25回国試は,合格率18.8%でした。これを例年通りの25~30%にしようと思ったら,合格基準点は,60点くらいになっていたかもしれません。

大学別では,その年度によって能力差があるかもしれません。
しかし,国試受験者は約4万人もいるので,年度ごとの受験者の能力差はほとんどないはすです。

第25回国試の時に受験した人がそのほかの年と比べて能力が劣っていたとは思えません。
国試問題には,必ず難易度の差が生じています。

去年よりも何点上がった,下がったは,まず補正することが必要です。

私たちチームfukufuku21は受験される方のaを高めるための覚え方のコツや問題を解くための知恵をお伝えしたいと考えています。


さて,今日もスーパービジョンです。

スーパービジョンの機能

教育的機能 価値・知識・技術を教える機能
支持的機能 スーパーバイジーを支える機能
管理的機能 スーパーバイジーの業務を管理する機能

そのうち,今回は支持的機能を取り上げます。


第23回・問題108 事例を読んで,スーパーバイザーの対応に関する次の記述のうち,最も適切なものを一つ選びなさい。
〔事 例〕
 就労移行支援事業所に勤めるR職員は,利用者Sさん(39歳,男性)が,ここ2か月ほど元気がなく,いつも汚れた服を着ていることが気になっていた。Sさんの家族と話をする必要性を感じ,家族に電話をしたところ,Sさんの父親に「お前に何がわかるのだ」と怒鳴られ,一方的に電話を切られた。R職員は再度電話をしようとしたが,怒鳴られたことがショックで電話がどうしてもできなかった。そのことを上司によるスーパービジョンの場で報告した。
1 早急に心理治療を受けるように促す。
2 R職員に代わって電話をし,父親とR職員との関係を修復する。
3 家族に電話をすることのもつ難しさについて,R職員と話し合う。
4 ピア・スーパービジョンを設定し,R職員の心理的弱さを取り上げる。
5 R職員が適性を欠いていることを所長に報告する。

有能なワーカーの条件の一つには,たくさんの方法論をもっていることがあります。
辛い経験はその時は大変ですが,その時に逃げずに向き合うことができれば,その辛い経験の分,引き出しが増えていきます。
ワーカーの成長を引き出すのが,スーパービジョンの目的です。

上司にとって,経験の少ないワーカーが戸惑っているのはまどろっこしく感じるかもしれません。
だからといって,上司がR職員に変わって対応するのは,R職員の成長につながりません。

正解は,選択肢3です。

そのほかの選択肢も場面によっては,適切になるものでしょう。

だから問題文に「最も適切なもの」という条件がつけられています。

まだスーパービジョンの種類は紹介していませんが,
スーパーバイザーとスーパーバイジーとの関係性から

個別スーパービジョン
グループスーパービジョン
ピアスーパービジョン
セルフスーパービジョン
ライブスーパービジョン

と分類されます。

これは,また別の機会に詳しく学びましょう。

R職員一人では心配だということがあった場合は,スーパーバイザーが同席するライブスーパービジョンという方法が取られます。

スーパービジョンの機能は,3つありますが,どれが優先されるということはありません。

その場面によって変わりますが,底辺には支持的機能がなければなりません。
ストロングタイプの指導方法もありますが,それであっても支持的機能が底辺になければ,スーパーバイジーの信頼は得られないからです。

クライエントを悪者にして,スーパーバイジーを一方的に認めることは「支持的機能」ではありません。それは「人気取り」といいます。


スーパービジョンの支持的機能は,スーパーバイザーの置かれた立場に理解を示すことにほかなりません。

そのうえで,その先の方法が生み出されます。

スーパービジョンを何度も繰り返してそれでもうまくいかなくても,それをもって適性を欠くという判断は不適切です。

咎めることや非難することはスーパービジョンではありません。

スーパービジョンは,スーパーバイザーも成長する大切な機会です。スーパーバイジーが成長できないのは,もしかするとスーパーバイザー自身の能力不足なのかもしれません。


<今日の一言>

有名なリーダーシップ研究として,ミシガン大学研究があります。

チーム力を高めるリーダーは,

スタッフの失敗を成長の機会だととらえる「従業員志向型」だとされています。

チーム力を高められないリーダーは

スタッフの失敗を自分の頑張りでカバーしようとする「生産志向型」だとされています。


今日の問題の選択肢2

R職員に代わって電話をし,父親とR職員との関係を修復する。

は,典型的な生産志向型だと言えます。

「私が変わって対応するから心配しないで」
「あなたの失敗は私の失敗。その埋め合わせは自分の責任として私がします」

といった対応は,リーダーが辛くなるだけで,スタッフが成長しないチームになってしまいます。

ミシガン大学研究は,まさにスーパービジョンの有用性を言い当てた研究とも言えるでしょう。

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