社会福祉士の国家試験は,「公益財団法人 社会福祉振興・試験センター」が指定を受けて実施しています。
同センターが国家試験の結果のデータを発表しているのは,以下の通りです。
受験者数
合格者数
合格率
合格基準点
都道府県別合格者数
年代別合格者数
都道府県別受験者数と年代別受験者数は発表していません。
都道府県別受験者数はさておき,年代別受験者数は発表していないという事実は押さえておきたいです。
なぜなら,
年代が高くなるにつれて,合格率が下がる
50歳代・60歳代の合格率は,3%以下
といった,間違った情報を信じている人がいるからです。
分母が発表されていないので,年代別の合格率は誰も知ることはできません。
それにもかかわらず,こういったデマをまことしやかに語る人がとても腹立たしいです。
他の国家試験の合格発表を調べたことはありませんが,社会福祉士の国試で考えた場合,20歳代・30歳代の合格率は実はそれほど高くないので,発表することができないのではないかという仮説を立てています。
大学別の合格率が発表されていますが,平均の合格率を下回る大学は数多くあります。
一方,一般養成施設はほとんどが平均を上回っています。
大学等には,私学助成金などの公費が用いられていますが,一般養成施設の運営には,公費は用いられていません。
大学は税金を使って養成しているにもかかわらず,合格率が低いということになると制度自体を根本から見直さなければならなくなるかもしれない危険性をはらんでいます。
国家試験はマーク式なので,記述式よりも社会人には有利です。
社会で得てきた知恵が使えるからです。
間違った情報に踊らされることなく,学習をすすめましょう。
さて,もう一つ試験センターが発表していないのは,受験生の得点分布です。
分かるのは,第31回国試では,約30%の人が89点を上回ったことです。
88点以下の人は,約70%です。
受験生の得点を低い方から順番に並べて,中間になる数値を中央値と言います。
中央値から下の25%,中央値から上の25%を合わせた50%の範囲を四分位範囲と言います。
この四分位範囲は,合格基準点を中心にしてプラスマイナス5点当たりの範囲ではないかと思います。
第31回国試を例にとると,84~94点の範囲に合格者の半数が分布しているということになります。
先に述べたように,試験センターでは,得点分布を発表していないので,推測にすぎません。
しかし,言えることは,合格する人も不合格になる人もほんの少しの違いしかないということです。
一つひとつを確実に覚えることが合格の決め手です。
年齢を言い訳にしても何も得られません。
最新の記事
働者災害補償保険制度
日本の社会保険は,5種類あります。 年金保険制度と医療保険制度は,従来あった制度を利用して,国民皆保険・皆年金を構成しているため,制度が複雑です。 それに比べると,戦後にできた労働保険(労災保険と雇用保険)は,制度がシンブルです。 今回は,そのうちの労災保険(労働者災害補償保険...
過去一週間でよく読まれている記事
-
問題解決アプローチは,「ケースワークは死んだ」と述べたパールマンが提唱したものです。 問題解決アプローチとは, クライエント自身が問題解決者であると捉え,問題を解決できるように援助する方法です。 このアプローチで重要なのは,「ワーカビリティ」という概念です。 ワー...
-
ソーシャルワークは,ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークとして発展していきます。 その統合化のきっかけとなったのは,1929年のミルフォード会議報告書です。 その後,全体像をとらえる視座から問題解決に向けたジェネラリスト・アプローチが生まれます。そしてシステム...
-
ホリスが提唱した「心理社会的アプローチ」は,「状況の中の人」という概念を用いて,クライエントの課題解決を図るものです。 その時に用いられるのがコミュニケーションです。 コミュニケーションを通してかかわっていくのが特徴です。 いかにも精神分析学に影響を受けている心理社会的ア...
-
まずは戦後の社会保障制度の変遷を考えてみたいと思います。 昭和 20 年代 は,国民全体が貧しく,救貧の時代です。救貧の中心的制度は,公的扶助です。 昭和 30 年代 に入ると,高度経済成長の時代になり,防貧の時代になります。防貧の中心的制度は,社会保険で...
-
今回から,質的調査のデータの整理と分析を取り上げます。 特にしっかり押さえておきたいのは,KJ法とグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)です。 どちらもとてもよく似たまとめ方をします。特徴は,最初に分析軸はもたないことです。 KJ法 川喜多二郎(かわきた・...
-
コミュニティはさまざまな人が定義していますが,ヒラリーの研究によって,それらに共通するものとして ・社会的相互作用 ・空間の限定 ・共通の絆 があることが示されました。 しかし,現代では,空間が限定されないコミュニティが広がっています。それをウェルマンは,「コミュニティ開放論」と...
-
システム理論は,「人と環境」を一体のものとしてとらえます。 それをさらにすすめたと言えるのが,「生活モデル」です。 エコロジカルアプローチを提唱したジャーメインとギッターマンが,エコロジカル(生態学)の視点をソーシャルワークに導入したものです。 生活モデルでは,クライエントの...
-
イギリスCOSを起源とするケースワークは,アメリカで発展していきます。 1920年代にペンシルバニア州のミルフォードで,様々な団体が集まり,ケースワークについて毎年会議を行いました。この会議は通称「ミルフォード会議」と呼ばれます。 1929年に,会議のまとめとして「ミルフ...
-
1990年(平成2年)の通称「福祉関係八法改正」は,「老人福祉法等の一部を改正する法律」によって,老人福祉法を含む法律を改正したことをいいます。 1989年(平成元年)に今後10年間の高齢者施策の数値目標が掲げたゴールドプランを推進するために改正されたものです。 主だった...
-
今回は,ベヴァリッジ報告を取り上げたいと思います。 ベヴァリッジは,5大巨悪(5つの巨人)を以下の方法で根絶することを考えました。 窮乏 ➡ 社会保険制度 疾病 ➡ 保健・医療制度 無知 ➡ 教育・科学制度 不潔 ➡ 住...