2019年6月27日木曜日

グループワークの援助過程~柔軟な対応の裏にあるもの

ケースワークと比べると,集団力学(グループダイナミクス)が働くので,ワーカーはより柔軟に対応する必要があります。

それでは今日の問題です。

第28回・問題115 事例を読んで,グループワークにおけるMソーシャルワーカー(社会福祉士・精神保健福祉士)の対応について,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕

 総合病院の精神科病棟でMソーシャルワーカーは,退院支援の一環としてグループワークを活用した社会生活技能訓練(SST)を行っている。退院後に症状が再発したときに備えて,どんなときに体調不良になるのかをグループで話し合っていたとき,メンバーのAさんが,唐突に「どうせ,そんなこと考えてもしょうがない。悪くなるときは悪くなるんだから」とぶっきらぼうに言った。それを聞いたメンバーのBさんは,「お前みたいなやる気がない奴は居ても仕方ない。出て行けよ」と冷たく言った。Aさんは怒りの表情でBさんをにらみつけた。

1 「Bさん,そんなふうに言わないで,みんな仲良くしましょう」
2 「Aさん,同じことを言ってた人が前にいたけど,グループで変わりましたよ」
3 「二人とも,気が済むまで話してください」
4 「お二人それぞれ思いがあるんですよね」
5 「Aさん,無理にグループに参加しなくてもいいですよ」

経験の少ないワーカーなら,この緊迫した場面から一刻も逃げ出したくなるかもしれません。

逃げることはしなくても,少しでも早くこの場を切り抜けたいと思うことでしょう。
しかし,そう考えるのは,事前に様々なことを想定していなかったからだと言えると思います。


リッチモンドは

ソーシャル・ケース・ワークを「人と環境の間を,個別に意識的に調整することを通して,パーソナリティを発達させる諸過程である」

と定義しています。


リッチモンドは,ケースワーク(個別援助技術)についてこのように述べていますが,グループワーク(集団援助技術)も同じです。

人と環境はグループメンバーということになります。

正解は

4 「お二人それぞれ思いがあるんですよね」

AさんとBさんの対立と葛藤は,グループダイナミクスが働き始めたことを示します。
この変化を活かすことがグループワークの醍醐味だと言えるでしょう。

準備をしっかりしたワーカーなら,心の中で「にやり」と思うかもしれません。


これ以外の選択肢は,個別化していないもの,集団力学を活用していないものばかりです。

1 「Bさん,そんなふうに言わないで,みんな仲良くしましょう」
2 「Aさん,同じことを言ってた人が前にいたけど,グループで変わりましたよ」
3 「二人とも,気が済むまで話してください」
5 「Aさん,無理にグループに参加しなくてもいいですよ」


<今日の一言>

誤解を恐れずに言うと,優秀なワーカーとは,より多くの方法論を持っていることだと考えます。

グループワークの場合は,集団力学を期待しているわけですから,集団に変化が現れたとき,あわててしまうのはあまりにも不適切な対応です。

柔軟に対応すること,つまり臨機応変さは,事前準備にかかっていると言えるでしょう。
今日の問題の場合,選択肢3は一見適切な言動だと思うかもしれません。

しかし,「気が済むまで」という対応は極めて無責任です。
気が済むことがなかったらどうするつもりなのでしょうか。

緊迫した場面は,避けたくなるかもしれません。

だからといって,小手先でかわすような取り繕いは,どこかで破たんします。
というよりもグループワークの意味を理解していないと言えるでしょう。

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