今回は,終結期の段階です。
グループワークのプロセス
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準備期
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↓
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開始期
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↓
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作業期
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↓
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終結期
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グループワークというと,プログラム活動に目が向きですが,グループワークの目的は,プログラム活動ではありません。
プログラム活動は,目的のための手段であることを忘れてはなりません。
プロセス
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段階
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注意点
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準備期
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ワーカーがグループワークを行う準備を行う段階
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この段階には「波長合わせ」と呼ばれるクライエントの抱える問題,環境,行動特性をワーカーが事前に把握する段階が含まれます。波長合わせは,準備期に行うので注意が必要です。
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開始期
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メンバーが集まって,グループワークを始める前までの段階
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この段階には「契約」と呼ばれるワーカーの役割などをメンバーに説明する段階が含まれます。グループワークでの約束事などを確認し,援助関係をつくります。
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作業期
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ワーカーとメンバーが課題解決に向けて,活動を行う段階
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この段階では,グルーブの仲間意識が生じたり,対立したりすることもあります。しかし,これらはグルーブダイナミクス(集団力学)を活用したグループワークでは重要な意味を持ちます。
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終結期
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グループワークを終える段階
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振り返りや反省などを行い,次の段階へつなげます。そのため,移行期とも言われます。
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終結期は,移行期でもあります。
それでは,今日の問題です。
第23回・問題105 事例を読んで,グループワークの終結段階におけるソーシャルワーカーの対応に関する次の記述のうち,最も適切なものを一つ選びなさい。
〔事 例〕
Ⅹ総合病院では,医療相談室の主催で,発達障害のある子どもをもつ家族を対象に6回連続の「子育て教室」を隔週で実施している。各回の前半では,医師や臨床心理士による講義と質疑応答を中心に,障害や子どもへの対応の仕方などについての理解を深めた。後半には,不安や悩みなどを家族同士が話し合うプログラムを提供した。グループのメンバーからは,今後も悩みを話し合えるような場を持ちたいとの声も聞かれた。そこで,このグループのセルフヘルプグループへの移行も視野に入れ,「子育て教室」の最終回の計画を立てた。
1 感情面での評価よりも,教育効果の確認を優先する。
2 メンバーの要望が強い場合には,これまでどおり相談室主催で教室を継続する。
3 メンバー同士のトラブルを避けるため,メンバーへの個別援助を強化する。
4 メンバーに対する肯定的評価を伝達する。
5 地域の家族の会から会員を招いて,活動内容を紹介してもらう。
事例問題は決して簡単ではありません。
事例問題を確実に正解するためには,コツがあります。
先回りをしないこと
現場経験があると,その先がどうなるかわかることもあります。
しかし,決してそこを前提にしては問題を読み間違えます。
事例問題は,必ず問題文の中に答えになるヒントがあります。
この問題の場合は,
このグループのセルフヘルプグループへの移行も視野に入れ,「子育て教室」の最終回の計画を立てた。
ここをヒントに考えると正解は,
5 地域の家族の会から会員を招いて,活動内容を紹介してもらう。
終結期は,移行期でもあります。
次の段階を見通して,計画を立てる必要があります。
1 感情面での評価よりも,教育効果の確認を優先する。
2 メンバーの要望が強い場合には,これまでどおり相談室主催で教室を継続する。
3 メンバー同士のトラブルを避けるため,メンバーへの個別援助を強化する。
4 メンバーに対する肯定的評価を伝達する。
この中で,間違えやすいは,
2 メンバーの要望が強い場合には,これまでどおり相談室主催で教室を継続する。
でしょう。
しかし,「これまでどおり」ということは,これまでどおりのプログラムを進行するということです。
仲良しグループの集まりではなく,グループワークは,目的があって行われるものです。
これまでどおりに行わなければならない,ということはそのプログラム活動は適切ではなかったと言えるでしょう。
それにもかかわらず,「これまでどおり」であるのは,グルーフーワークの目的を忘れてしまっていることになります。
終末期では,
振り返りや反省などを行い,次の段階へつなげます。そのため,移行期とも言われます。
ここを忘れてはなりません。
<今日の一言>
国試問題には,事例問題が含まれます。
先に述べたように,事例問題は決して簡単ではありません。
今日の問題は,終結期であることをしっかり押さえていることです。
結果的には,
肯定的評価を伝える
ということも必要なこともあるかもしれません。
場合によっては,これが適切なこともあるでしょう。
しかし,この問題の設定を考えた場合,優先されるのは,セルフヘルプグループへの移行です。
社会福祉士の国試問題の事例は,事例検討するための材料ではありません。
あくまでも今まで勉強してきたものを事例で表現しているものです。
事例のスタイルでなくても,一問一答式の出題スタイルにも代えることができる内容です。
事例問題は事例検討の材料ではないことをしっかり覚えておきましょう。