グループワークは,集団を活用した援助技術です。
メンバーの相互作用があってこそ,グループワークです。
グループワークに関する出題は,この視点が抜けてしまうと間違えます。
グループワークの作業期では,グループメンバーにぶつかり合いや葛藤などが起きることがあります。
しかしこれは,グループワークでは重要なことであり,適度な葛藤等は避けることなく,それらも活用してグループワークを行います。
それでは今日の問題です。
第22回・問題109 グループワークにおけるメンバー間の葛藤への援助者の対応に関する次の記述のうち,適切なものを一つ選びなさい。
1 グループの健全な成長に向けて,メンバー同士の衝突を避け,葛藤を取り上げないようにする。
2 葛藤が生じた場合,グループ全体にかかわる課題にではなく,メンバー個々の言動に関してコメントするように促す。
3 強く意見を主張するメンバーにリーダーシップをとらせる。
4 葛藤の背後には,他者を理解しようとするエネルギーが隠れており,それを引き出してグループが成長する手助けをする。
5 解決策を見いだすためには,グループ全体の意思決定を優先させ,メンバー個人の心配事やニーズの表出を控えさせる。
集団の相互作用を活用していないのは以下の3つです。
1 グループの健全な成長に向けて,メンバー同士の衝突を避け,葛藤を取り上げないようにする。
2 葛藤が生じた場合,グループ全体にかかわる課題にではなく,メンバー個々の言動に関してコメントするように促す。
5 解決策を見いだすためには,グループ全体の意思決定を優先させ,メンバー個人の心配事やニーズの表出を控えさせる。
正解は
4 葛藤の背後には,他者を理解しようとするエネルギーが隠れており,それを引き出してグループが成長する手助けをする。
改めて注意すると他の選択肢とは,明らかに違うことがわかるでしょう。
3 強く意見を主張するメンバーにリーダーシップをとらせる。
これが間違いなのは,リーダーはメンバーで選ぶものだからです。
そこにも相互作用があります。
<今日の一言>
国試は,丸暗記勉強の知識だけでは正解することができません。
知識があることは必要条件ですが,十分条件ではないからです。
グループワークは,集団を活用した援助技術である。
言葉はわかっても,集団を活用するのはどういったことなのだろう,と考えることがなければ,正解することは難しいと言えます。
何度も受験している方は,勉強の際,こういった視点が抜け落ちていないか,振り返ってみることが大切です。
最新の記事
主な部位別がん死亡数
今回は,主な部位別がん死亡数を学びます。 男女差があります。 最も多いのは, 男性は肺がん 女性は大腸がん 3位までまとめると以下のようになります。 主な部位別がん死亡数 ...
過去一週間でよく読まれている記事
-
ソーシャルワークは,ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークとして発展していきます。 その統合化のきっかけとなったのは,1929年のミルフォード会議報告書です。 その後,全体像をとらえる視座から問題解決に向けたジェネラリスト・アプローチが生まれます。そしてシステム...
-
問題解決アプローチは,「ケースワークは死んだ」と述べたパールマンが提唱したものです。 問題解決アプローチとは, クライエント自身が問題解決者であると捉え,問題を解決できるように援助する方法です。 このアプローチで重要なのは,「ワーカビリティ」という概念です。 ワー...
-
ホリスが提唱した「心理社会的アプローチ」は,「状況の中の人」という概念を用いて,クライエントの課題解決を図るものです。 その時に用いられるのがコミュニケーションです。 コミュニケーションを通してかかわっていくのが特徴です。 いかにも精神分析学に影響を受けている心理社会的ア...
-
今回から,質的調査のデータの整理と分析を取り上げます。 特にしっかり押さえておきたいのは,KJ法とグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)です。 どちらもとてもよく似たまとめ方をします。特徴は,最初に分析軸はもたないことです。 KJ法 川喜多二郎(かわきた・...
-
イギリスCOSを起源とするケースワークは,アメリカで発展していきます。 1920年代にペンシルバニア州のミルフォードで,様々な団体が集まり,ケースワークについて毎年会議を行いました。この会議は通称「ミルフォード会議」と呼ばれます。 1929年に,会議のまとめとして「ミルフ...
-
国試での出題実績のあるアプローチは以下の12種類です。 出題基準に示されているもの ・心理社会的アプローチ ・機能的アプローチ ・問題解決アプローチ ・課題中心アプローチ ・危...
-
今日から新年度です。 気持ちを新たにスタートです。 当学習部屋を開設以来,ほぼ毎日新しい情報を出して来ました。 ずっとご覧になっていた方は,間が空いたことが不思議に思ったでしょう。 実は,今年の国家試験が終わったところから,ペースを変えて,2日に1回にしようと計画していました。 ...
-
グループワークは以下の過程で実施されます。 準備期 ワーカーがグループワークを行う準備を行う段階です。 この段階には「波長合わせ」と呼ばれるクライエントの抱える問題,環境,行動特性をワーカーが事前に把握する段階が含まれます。波長合わせは,準備期に行うので注意が必要です。 ...
-
前回まで, ①役割期待 ②役割距離 を紹介してきました。 そのうちの②役割距離は,ちょっと難しい概念でしたが,理解できましたでしょうか。 役割距離とは, 人は役割期待に対して,ちょっと距離を置いた行動をとること。 理解しきれていない人は,もう一度前回を確...
-
ICFで用いられる用語の定義 健康状態 疾病,変調,傷害など 心身機能 身体系の生理的機能(心理的機能を含む) 身体構造 身体の解剖学的部分 ...