国試問題を見れば一目瞭然ですが,同じ問題は存在しません。
勉強法はいろいろあると思いますが,国家試験は思考力を求めているので,勉強も思考することが必要です。
国試に合格するのに知識が必要十分条件ではないのは,思考力が必要だからです。
知識で解ける問題なら,記憶力が物を言います。
しかし,ソーシャルワーカーには,場面に合わせて臨機応変に対応できるしなやかさが必要です。
国試にも,そういった力を養う問題が出題されています。
別な言い方をすれば,「知恵」が問われると言えるでしょう。
さて,今回もグループワークです。
グルーブワークの援助過程
プロセス
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段階
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注意点
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準備期
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ワーカーがグループワークを行う準備を行う段階
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この段階には「波長合わせ」と呼ばれるクライエントの抱える問題,環境,行動特性をワーカーが事前に把握する段階が含まれます。波長合わせは,準備期に行うので注意が必要です。
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開始期
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メンバーが集まって,グループワークを始める前までの段階
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この段階には「契約」と呼ばれるワーカーの役割などをメンバーに説明する段階が含まれます。グループワークでの約束事などを確認し,援助関係をつくります。
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作業期
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ワーカーとメンバーが課題解決に向けて,活動を行う段階
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この段階では,グルーブの仲間意識が生じたり,対立したりすることもあります。しかし,これらはグルーブダイナミクス(集団力学)を活用したグループワークでは重要な意味を持ちます。
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終結期
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グループワークを終える段階
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振り返りや反省などを行い,次の段階へつなげます。そのため,移行期とも言われます。
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参考書等には,このように書かれているでしょう。
具体的にどのようなものなのか,理解しておくと問題は解きやすくなります。
同じことの繰り返しになりますが,これらを暗記するだけでは国試で得点するのは難しいと言えます。
それでは,今日の問題です。
第25回・問題114 グループワークの作業期における援助者の役割に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。
1 プログラム活動を順調に進めていくことが必要な時期であることから,できるだけ具体的な指示を出しながら,グループ全体の力量を高める。
2 サブグループができた場合には,グループ全体の仲間意識の構築やグループ運営に良い影響を与えるかどうかを見極めて対応する。
3 メンバー同士の衝突や摩擦が起こると,グループ活動による効果が得られなくなるので,できるだけ事前に回避するように働きかける。
4 孤立するメンバーが現れたときには,仲間意識を高めるチャンスとして,そのメンバーに個別にアプローチするよりも,対応はグループの主体性にゆだねる。
5 メンバー同士の交流が深まった時期なので,グループ内の役割分担をいったん解消して,メンバーのグループからの自立を促すように働きかける。
明らかにグループワークではないのは,
3 メンバー同士の衝突や摩擦が起こると,グループ活動による効果が得られなくなるので,できるだけ事前に回避するように働きかける。
5 メンバー同士の交流が深まった時期なので,グループ内の役割分担をいったん解消して,メンバーのグループからの自立を促すように働きかける。
グループワークは,集団を活用した援助技術です。
それらを考えると以下は排除できるでしょう。
1 プログラム活動を順調に進めていくことが必要な時期であることから,できるだけ具体的な指示を出しながら,グループ全体の力量を高める。
4 孤立するメンバーが現れたときには,仲間意識を高めるチャンスとして,そのメンバーに個別にアプローチするよりも,対応はグループの主体性にゆだねる。
結果として,以下が残りました。
2 サブグループができた場合には,グループ全体の仲間意識の構築やグループ運営に良い影響を与えるかどうかを見極めて対応する。
グループワーカーとしての対応だと思います。これが正解です。
それぞれ詳しい解説はしませんが,グループワークの基本形である
グループワークは,集団を活用した援助技術
を押さえることが必要です。
ここを軸に思考を働かせることになります。
<今日の一言>
今日の問題は,決して難しい問題ではありません。
しかし正解するのは,決して簡単なものではありません。
知識に思考を加えることで,ようやく正解できるからです。
過去問は,使い方次第です。
答えを覚えることを主眼にした勉強は,きっと良い結果は得られないように思います。
なぜなら,同じ問題は存在しないからです。
知識はあっても,正解できない人はたくさんいます。
暗記で得られた知識は,思考力(つまり知恵)が伴って初めて得点力になります。