今回のテーマは,
グループワークは集団を活用した援助技術
です。
そんなことは今更言われなくても分かっている
そう思う人は要注意です。
さて,早速今日の問題です。
第30回・問題114 事例を読んで,グループワークでのG社会福祉士の対応に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。
〔事 例〕
G社会福祉士は,子どもをがんで亡くした親の集まりの会を開くことにした。最初の集まりで,自己紹介を行った後,メンバーは自分自身が現在気になっていることについて話し始めた。Hさんの順番になったところ,Hさんは涙を浮かべて何か言おうとするが言葉に詰まる様子であった。
1 Hさんに退出を促し,別室で過ごすよう伝える。
2 Hさんの気持ちを受け止め,できる範囲で話をするよう伝える。
3 グループ活動を中断し,Hさんと別室で個人面談を行う。
4 Hさんの思いをメンバーが共有できるように,グループ全体に働き掛ける。
5 Hさんの言葉を待たずに,順番を飛ばして次の人に話をするよう促す。
この問題を事例部分から読んだ人は,
グループワークは集団を活用した援助技術
ということを忘れています。
集団を活用しているものはどれか
という視点で各選択肢を先に読みます。
そうすれば,以下のものは,集団を活用したものではないことは一目瞭然です。
1 Hさんに退出を促し,別室で過ごすよう伝える。
3 グループ活動を中断し,Hさんと別室で個人面談を行う。
5 Hさんの言葉を待たずに,順番を飛ばして次の人に話をするよう促す。
対応がどうなのか,ということではなく,集団を活用していないからです。
この問題は適切なものを2つ選ぶ問題ですから,必然的に以下の選択肢が残ります。
2 Hさんの気持ちを受け止め,できる範囲で話をするよう伝える。
4 Hさんの思いをメンバーが共有できるように,グループ全体に働き掛ける。
これが正解です。
選択肢2を正解にするのは,難しいと思う人は,本当に要注意です。
<今日の一言>
今日の問題は,合格基準点が過去最高の99点となった年のものです。
そのため,難易度はかなり低いです。事例として読んでも正解できることでしょう。
しかし,こういった問題ばかりではありません。
すべては適切な対応ですが,問題の設定では適切ではない,という問題はたくさんあります。
この問題は,集団を活用したもの,つまりメンバーの相互作用を活用したものはどれか,という視点で問題文を読みました。
事例問題を事例だと思って読むと間違える可能性があります。
適切な対応ではないかもしれないけれど,問題の設定(この問題の場合はグループワーク)では,適切だという問題が作られたとしたら,間違えます。
そういった意味で
グループワークは集団を活用した援助技術
そんなことは今更言われなくても分かっている
そう思う人は要注意なのです。十分に気を付けましょう。
正解は確実に正解である。
間違いは確実に間違いである。
国試問題はそのように作られます。
確実に正解するためには,そのポイントを押さえる必要があります。
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