2018年10月1日月曜日

福祉事務所の徹底理解~その1

今日から福祉事務所に取り組んでいきたいと思います。

福祉事務所は,「低所得者に対する支援と生活保護制度」だけではなく,ほかの科目でも出題されます。

福祉事務所は,保護を実施しますが,そのほかの法も取り扱っているからです。

福祉事務所は,社会福祉法では「福祉に関する事務所」と規定されています。

「〇〇福祉事務所」という名称になっている自治体もありますが,多くの自治体は「〇〇課〇〇係」といった名称になっています。


都道府県福祉事務所が取り扱うのは
「生活保護法」「児童福祉法」「母子及び父子並びに寡婦福祉法」の三法です。


市町村福祉事務所が取り扱うのは
「生活保護法」「児童福祉法」「母子及び父子並びに寡婦福祉法」「老人福祉法」「身体障害者福祉法」「知的障害者福祉法」の六法です。


もともとは都道府県も六法を取り扱っていましたが,権限委譲で現在は先述の三法だけを取り扱います。


福祉事務所に置かれる職員は次のとおりです。

所の長
指導監督を行う所員(査察指導員)
現業を行う所員(現業員)
事務を行う所員

このうち,指導監督を行う所員(査察指導員)と現業を行う所員(現業員)は,社会福祉主事でなければなりません。

社会福祉士ではありませんので,注意が必要です。

所の長と事務を行う所員は社会福祉主事である必要はありません。

所の長は,多くの場合「〇〇課長」なので,人事異動で福祉事務所に配置されるので,社会福祉主事でなければならないといろいろ不都合があるからでしょう。

指導監督を行う所員(査察指導員)は,現業を行う所員(現業員)のスーパーバイザーです。

そのため「相談援助の理論と方法」で学ぶスーパービジョンの機能である「教育的機能」「支持的機能」「管理的機能」を発揮して,現業員に関わります。


それでは今日の問題です。


第21回・問題29 生活保護の実施機関である福祉事務所に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 福祉事務所の現業を行う所員の定数については,特に法令上の定めはない。

2 福祉事務所の現業を行う所員,現業事務の指導監督を行う所員,所の長は,社会福祉主事でなければならない。

3 民生委員は,法令上,市町村長,福祉事務所長の生活保護業務の執行を補助することになっている。

4 都道府県,市(特別区を含む)は,条例で,福祉事務所を設置しなければならない。

5 都道府県に設置される福祉事務所は,生活保護法に基づく保護の決定のほか,児童福祉法及び老人福祉法に定める措置を行う。


勉強している人は,そんなに難しくはないと思いますが,勉強していない人は,このような問題でも難しいはずです。でも大丈夫!! 国試までに理解できていれば良いのです。



それでは解説です。


1 福祉事務所の現業を行う所員の定数については,特に法令上の定めはない。

これは内容が分からなくても正解にする人は少ないでしょう。

法令上の定めがないのだったら,わざわざ出題する意味がないからです。

今ならこんな問題は作られないはずです。

現業員の定数は,社会福祉法で「標準数」が定められています。

都道府県事務所は,被保護世帯数65世帯につき1人。
市町村福祉事務所は,被保護世帯数80世帯につき1人。

現業員の定数は,この基準を標準として,条例で定めます。

国が定めて,自治体が条例で定める場合,拘束力の強弱で3つの種類に分けることができます。

<基準として> 

最も拘束力が強く,国が定める基準から外れることは基本的に認められません。
職員配置数,施設建築基準などに用いられます。


<基準を標準として> 

拘束力は中くらいで,自治体の状況によって多少変えることができます。現業員のほかには,児童相談所に配置される児童福祉司も同様です。
施設の入所定員,通所定員などに用いられます。


<基準を参酌として> 

拘束力は最も弱く,標準を参考にして,自治体の状況によって変えることができます。
民生委員がこのスタイルを用いています。

参酌とは,「参考にして」という意味です。


話は戻って,現業員は社会福祉法によって標準数が定められているので間違いです。


2 福祉事務所の現業を行う所員,現業事務の指導監督を行う所員,所の長は,社会福祉主事でなければならない。

これも間違いです。

社会福祉主事でなければならないのは,現業を行う所員と指導監督を行う所員です。

所の長は社会福祉主事である必要はありません。


3 民生委員は,法令上,市町村長,福祉事務所長の生活保護業務の執行を補助することになっている。

民生委員は,1918年に大阪で作られた方面委員制度が戦後民生委員に変更されたものです。

★救護法では 方面委員は補助機関

★旧生活保護法では,民生委員は補助機関

★現生活保護法では,民生委員は協力機関

 ➡ 民生委員は,協力機関なので間違いです。


現行法では,民生委員に変わって,社会福祉主事が補助機関となっています。


4 都道府県,市(特別区を含む)は,条例で,福祉事務所を設置しなければならない。

これが正解です。

福祉事務所を設置しなければならないのは,都道府県と市です。町村は任意で設置することができます。


5 都道府県に設置される福祉事務所は,生活保護法に基づく保護の決定のほか,児童福祉法及び老人福祉法に定める措置を行う。

これも間違いです。都道府県福祉事務所の取り扱う法は,「生活保護法」「児童福祉法」「母子及び父子並びに寡婦福祉法」の三法です。

老人福祉法は1990年の福祉関係八法改正で,入所措置が町村に移譲されたことで都道府県では取り扱いません。身体障害者福祉法も同様です。



<今日の一言>

試験にはケアレスミスはつきものです。

しかし,ケアレスミスは,問題を見るときのポイントをしっかりもつことで減らすことができます。

国試では,変えてくるポイントは,あまり変わらないので,そこをケアすればよいのです。

ケアすべきポイントが分かっていないと,ケアレスミスを犯します。
ケアすべきポイントが分かっていれば,ケアレスミスを防ぐことができます。

例えば・・・

現業員の定数は「標準として」。

ここが「基準として」となっていれば間違いです。

たった一文字「標」と「基」の違いだけです。


民生委員は「協力」。

ここが「補助」となっていれば間違いです。

協力機関,補助機関とは出題してくれません。


福祉事務所の設置が義務付けられているのは「都道府県」と「市」です。

ここが「市町村」となれば間違いです。


ほかの科目ではNPO法人を設立があります。


NPO法人設立には所轄庁の「認定」を受ける必要があります。

「認可」となっていれば間違いです。

たった一文字「定」と「可」が違うだけです。


ケアレスミスは命取りになります。

どのように出題されているのか,分かってもらうために,このブロクでは丁寧に過去問を紹介しています。

敵を知って,戦いに臨めば,有利に立てるのは,国試も一緒です。

私たちチームfukufuku21と一緒にそれらを見つけていきましょう。

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