現行カリキュラムは,第22回から実施されており,国民医療費は毎年必ず出題されています。
何と出題確率100%!!
おそらく出題確率100%なのは,そのほかには「心理学理論と心理的支援」の「心理療法」,「相談援助の理論と方法」の「さまざまなアプローチ」のみだと思います。
国民医療費は,年々数字が変わります。しかし金額が巨大なので,傾向はほとんど変わりません。
細かい数字は絶対に絶対に出題されない!!
受験せいが悩むことの一つに「どの年度のものを覚えたらよいか?」があります。
しかし社会福祉士の国試では,国民医療費も含めて,違った年度のものを覚えたからといって答えられない問題は存在しません。
もちろん知識は常にアップデートしなければならないものですが,数字に関しては,ざっくりした覚え方が重要です。
覚える数字の元データは,8.91%でも9.10%でも良いです。
大事なのは,
元データを次の段階のものに置き換えて覚えること!!
つまり,約〇割である,という覚え方です。
先述の例で言えば「1割には達していない」といったことです。
細かい数字を覚えるのは大変ですが,このような覚え方ならイメージで頭に残りやすいです。しかも,覚える時間が短縮できます。
傾向は,ほとんど変わらないことが分かる問題を今日の問題として取り上げたいと思います。
前説なしで行きます。
第22回・問題64 平成18年度の国民医療費に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 国民医療費は約26兆円であり,国民所得に対する比率は7.2%となっている。
2 国民医療費の財源別構成割合を大きい順序に並べると,公費,保険料,その他(患者負担等)となる。
3 国民医療費の診療種類別構成割合はおおよそ,一般診療費(入院)4割,一般費(入院外)4割,歯科診療費その他2割となっている。
4 国民医療費の傷病別一般診療医療費の構成割合上位3つは,順に循環器系の疾患,新生物,精神及び行動の障害である。
5 国民医療費の年齢階級別構成割合のうち,65歳以上の高齢者分は約7割を占めている。
ずいぶんと古い問題だと思うことでしょう。
それでは,当時の数字と現在の数字を合わせて解説していきましょう。
1 国民医療費は約26兆円であり,国民所得に対する比率は7.2%となっている。
これは間違いです。
平成18年度の国民医療費は,約33兆円でした。平成28年は,42兆円です。
10年で9兆円増えていることが分かります。
驚異的な伸びです。
もう一つの対国民所得比(対NI比)は,平成18年度は8.88%。平成28年度は10.76%です。国民医療費が増えているので,対NI比も伸びていることが分かります。
<ここで覚えておくべき数字>
国民医療費 ➡ 40兆円を超えている。
対NI比 ➡ 10%を超えている。
因みに40兆円を超えたのは,平成25年度です。わずか3年で2兆円も増えています。
生活保護給付費は,約3兆8千億円です。この規模の半分がわずか3年で増加しているのです。
平成12年以降のデータを見ると,国民医療費は,平成12年,平成14年,平成18年,平成28年に前年を下回っています。
国民医療費は,増加を続けていますが,毎年増加しているわけではありません。
平成12年が減少したのは,老人医療費の一部が介護保険に移行したこと,それ以外は診療報酬の引き下げが理由です。
数字が大きいので,国民医療費の増加を食い止めるには制度的な対応が最も効果的であることが分かると思います。
2 国民医療費の財源別構成割合を大きい順序に並べると,公費,保険料,その他(患者負担等)となる。
これは間違いです。
( )内の数字は平成28年度 以下同じ。
公費 36.6%(38.6%)
保険料 49.0%(49.1%)
その他 14.4%(12.2%)
10年経ってもほとんど変わっていないことが分かるでしょう。
<ここで覚えておくべき数字>
公費が保険料を超えることはない!!
数字ではなくてすみません。
しかし,この理解で十分です。
日本の医療保障は,社会保険制度です。
日本は社会保険に公費を投入していますが,基本は社会保険料によって運営されるものです。
そのため公費が保険料を超えることはあり得ないのです。
介護保険は,公費50%,保険料50%で制度設計されていますが,やっぱり公費は保険料を超えません。
社会保障給付費を見ても,やっぱり公費は保険料を超えません。
日本の社会保障制度は,社会保険制度が中心だからです。
3 国民医療費の診療種類別構成割合はおおよそ,一般診療費(入院)4割,一般費(入院外)4割,歯科診療費その他2割となっている。
これが正解です。
一般診療費(入院) 37.0%(37.5%)
一般費(入院外) 38.6%(34.2%)
歯科診療費その他 24.4%(28.3%)
入院外が若干減った分,その他の比率が上がっていますが,おおよそは変化していません。
<ここで覚えておくべき数字>
入院 4割 入院外 4割 その他 2割
正確に言うとその他は約3割に近いですが,そんな細かな出題はされません。
だからこれで良いのです。
4 国民医療費の傷病別一般診療医療費の構成割合上位3つは,順に循環器系の疾患,新生物,精神及び行動の障害である。
これは間違いです。
第3位まで
第1位 循環器系の疾患(同じ)
第2位 新生物(同じ)
第3位 呼吸器系の疾患(筋骨格系及び結合組織の疾患)
精神及び行動の疾患は,いずれも第3位まで入っていません。
<ここで覚えておくべき数字>
最も多いのは「循環器系の疾患」
このような出題があると「第3位まで覚えなければならない」と思うかもしれません。
しかし,第3位を変えて出題されたのは,たった1回だけです。
さらには,現在は問題の文字数が少なくなっていることで,第3位まで問う余裕はないと思われます。
この後の出題は,ずっと第1位を問う出題に変わってきています。
余談ですが,正解選択肢よりも間違い選択肢の方を選ぶ率が高い問題は,良い問題とは言えません。この問題はそうだった問題だったと考えられます。
ということで,最も多いのは「循環器系の疾患」である,という覚え方で良いのです。
一般的には,新生物が多いように思うかもしれませんが,新生物は多くの場合,短期間の
治療で終わるからです。悲しい現実です。
それに対して,循環器系の疾患の治療は一生にわたります。
5 国民医療費の年齢階級別構成割合のうち,65歳以上の高齢者分は約7割を占めている。
これも間違いです。
65歳以上の医療費 51.7%(57.4%)
<ここで覚えておくべき数字>
65歳以上の医療費は約6割。
つまり65歳未満の医療費と比べると65歳以上の医療費が大きいということです。
次の数字もついでに覚えておきましょう!!
70歳以上 約5割 75歳以上 約3割
<今日の一言>
10年前と比べても,国民医療費で覚えるべき数字は,国民医療費自体以外は,ほとんど傾向が変わっていないことが分かるでしょう。
数字はざっくり覚えることが何よりも大切なのです。
細かい数字は問われることがないからです。
それにしても,第3位を変えて出題するなんて,いじわるにも程が過ぎますね(怒)。