保健医療サービスはその時に加わった科目です。
国民医療費に関する問題は,毎年欠かさず出題されます。
しかし内容は決して簡単ではありません。過去3年間の過去問をかじったくらいでは得点できません。
しっかりその範囲を押さえることが基本です。
それでは今日も問題を解きながら,覚えていきましょう!!
第23回・問題63 平成19年度の国民医療費(34兆円)の負担・分配・費用に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 患者が病院や診療所,調剤薬局で支払う一部負担は,国民医療費全体の約3割を占めている。
2 国民医療費は,入院・入院外・歯科診療・薬局調剤などの医療費に分配されるが,このうち入院医療費は全体の約6割を占めている。
3 医療機関の運営に関する費用のうち,最も大きいのは医師や看護師など医療サービス従事者の人件費であり,全体の約5割を占めている。
4 国民医療費の財源には,一部負担,保険料,公費負担があり,このうち公費負担は国民医療費全体の約2割を占めている。
5 国民医療費は,病院・一般診療所・歯科診療などの医療費に分配されるが,このうち病院の医療費は全体の約7割を占めている。
現在の国民医療費は,約42兆円ですが,わずか9年前は34兆円だったことにちょっとした驚きを感じます。
国民医療費に関する出題は,今まで9回出題されていますが,そのうち,人件費に関する出題があったのは,この時のたった1回です。
まだカリキュラムが始まって2回目のこの年は,出題内容がまだこなれていなかったのでしょう。
多くの場合は,正解選択肢に使われたものは,その後には何度も使われるものだからです。それが使われていないというのは,正解選択肢としてふさわしくなかったものだと考えられます。
それでは解説です。
1 患者が病院や診療所,調剤薬局で支払う一部負担は,国民医療費全体の約3割を占めている。
これは間違いです。
もしかすると,これを正解と人も多かったのではないでしょうか。
知らないものが出題されたら,自分の知っている知識を総動員して考えなければなりません。
知らないことがあったら調べるのは悪いことではありません。
しかし国試会場では知らないことがあっても調べることができません。
勉強の時は,知らないものに出会ったときは,まずは自分で考えてみることです。その推論が正しければ正解できます。それでどうしても理解できない,分からない時は調べてみます。推測して推論を導き出すことは,国試で得点力を上げるためには欠かせないのです。
第30回国試は,これをしなくても解ける問題が多かったために,多くの人が高い得点を挙げました。しかし,第31回も同じようになるとは限りません,というか,そうはならないでしょう。
必ず自分で考えてみること。これが大切です。
問題に戻ります。
推論です。被用者や被扶養者,国民健康保険の加入者は,基本的に3割負担です。
しかし,小学校就学前と70~74歳までは2割負担,75歳以上は1割負担であることを考え合わせれば,全体で3割にはならないと推論を導き出せます。
実際には1割程度です。
<ここで覚えておくべき数字>
患者の支払う一部負担金は,国民医療費の約1割である。
2 国民医療費は,入院・入院外・歯科診療・薬局調剤などの医療費に分配されるが,このうち入院医療費は全体の約6割を占めている。
これも間違いです。
<ここで覚えておくべき数字>
入院 4割 入院外 4割 その他 2割
本当はその他は約3割ですが,そこまで細かくは出題されないので,この理解だけで十分です。
3 医療機関の運営に関する費用のうち,最も大きいのは医師や看護師など医療サービス従事者の人件費であり,全体の約5割を占めている。
これが正解でした。
正解選択肢になったにもかかわらず,その後出題されない理由はいろいろ考えられますが,医療機関の人件費は,厚生労働省の「国民医療費の概況」には示されていないものだからかもしれません。
その後出題されていないとは言え,正解選択肢に一度は選ばれたものです。しっかり押さえておきましょう。
<ここで覚えておくべき数字>
医療機関の費用のうち,人件費は5割を超える。
4 国民医療費の財源には,一部負担,保険料,公費負担があり,このうち公費負担は国民医療費全体の約2割を占めている。
これも間違いです。
国民医療費の財源は,
公費 4割
保険料 5割
その他 1割
この割合はずっと変わりません。
<ここで覚えておくべき数字>
国民医療費の財源は,公費 4割,保険料 5割,その他1割である。
公費の内訳がその後出題されています。国:地方は2:1です。合わせて覚えておきましょう。
国と地方が同じ負担構造になっているものはありますが,地方が国よりも多いというのはめったにありません。
5 国民医療費は,病院・一般診療所・歯科診療などの医療費に分配されるが,このうち病院の医療費は全体の約7割を占めている。
これも間違いです。
前回は,入院4割,入院外4割,その他2割を覚えました。
今回の出題は,それを別に算定したものです。
入院約4割(約40%)の内訳は,病院約35%,診療所約1%
入院外約4割(約40%)内訳は,病院約15%,診療所約20%
となっています。
病院は,合わせて約50%(約5割)です。
この傾向は,今も変わりません。
<ここで覚えておくべき数字>
国民医療費のうち,病院が約5割を占める。