2018年10月10日水曜日

自立支援プログラムの徹底理解~その2

今回も「自立支援プログラム」を取り上げます。

前回の問題の答えは,

自立支援プログラムの支援対象は,被保護者である。

でした。

潔いと言うべきか,ひねりがないと言うべきか,いずれにしても,実にストレートなものが答えでした。

しかし,これが解けるのはちゃんと勉強した人です。

勉強が足りない人はこんな問題でさえ間違えます。

誰もが苦手とする歴史や人名などではなく,誰もが解ける問題で確実に正解できることが合格をつかみます。

一応,復習しておいてください。
https://fukufuku21.blogspot.com/2018/10/1.html


それでは今日の問題です。


第30回・問題68 生活保護の自立支援プログラムの「基本方針」に示される内容に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 各自治体の地域の実情に応じて設定されるものではない。

2 民間事業者等への外部委託は想定されていない。

3 組織的支援ではなく,現業員の個人の努力や経験により支援を行うことにしている。

4 就労による経済的自立のみならず,日常生活自立,社会生活自立など多様な課題に対応するものである。

5 被保護世帯の自立阻害要因の把握は求められていない。

(注) 「基本方針」とは,「平成17年度における自立支援プログラムの基本方針について」(平成17年3月31日社援発第0331003号厚生労働省社会・援護局長通知)のことである。


聴き慣れない「基本指針」という言葉に怖気づく人もいたかと思いますが,内容は超簡単です。


「平成17年度における自立支援プログラムの基本方針について」(平成17年3月31日社援発第0331003号厚生労働省社会・援護局長通知)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb2918&dataType=1&pageNo=1


自立支援プログラムとはどういうものなのか分からなくても,今日の問題の正解は選択肢3であろうと想像がつきます。

このように,勉強した人も解けて,勉強しない人も解ける問題は,国家試験にはふさわしくないと考えます。

そういった面では悪問だと言えます。

このような問題が,第30回の国家試験の合格基準点を上げたとも言えます。

勉強した人が解ける
勉強が足りない人は解けない

そうでなければ,またまた合格基準点が上がってしまうことになります。

合格基準点が上がったとしても,基本を押さえておけば十分クリアできますが,そうなると本当にサバイバルゲームのように,ケアレスミスをした人が脱落するといったかなり過酷なものとなってしまいます。

それでは解説です。


1 各自治体の地域の実情に応じて設定されるものではない。

通知では

自立支援プログラムとは、実施機関が管内の被保護世帯全体の状況を把握した上で、被保護者の状況や自立阻害要因について類型化を図り、それぞれの類型ごとに取り組むべき自立支援の具体的内容及び実施手順等を定め、これに基づき個々の被保護者に必要な支援を組織的に実施するものである。

ということで,地域の実状に応じて設定されます。間違いです。


2 民間事業者等への外部委託は想定されていない。

通知では

他の実施機関における取組事例等を積極的に参考とするほか、専門的知識を有する者の非常勤職員や嘱託職員等としての雇用、地域の適切な社会資源(民生委員、社会福祉協議会、社会福祉法人、民間事業者等)への外部委託(アウトソーシング)等により、実施体制の充実を積極的に図るとともに、セーフティネット支援対策等事業費補助金や生業扶助を積極的に活用する。

ということで,外部委託は想定されています。間違いです。


3 組織的支援ではなく,現業員の個人の努力や経験により支援を行うことにしている。

通知では

個々の担当職員の努力により培われた経験や他の実施機関での取組の事例等を具体的な自立支援の内容や手順等に反映させていくことにより、こうした経験等を組織全体として共有することが可能となり、自立支援の組織的対応や効率化につながるものと考えられる。

自立支援プログラムは組織的支援です。間違いです。

組織的に取り組むことの背景にはこういったものがあります。

(通知から)

実施機関においてはこれまでも担当職員が被保護世帯の自立支援に取り組んできたところであるが、被保護世帯の抱える問題の複雑化と被保護世帯数の増加により、担当職員個人の努力や経験等に依存した取組だけでは、十分な支援が行えない状況となっている。


4 就労による経済的自立のみならず,日常生活自立,社会生活自立など多様な課題に対応するものである。

これが正解です。

自立には,経済的自立,日常生活自立,社会生活自立があり,それらはどれが優先するというものはありません。


5 被保護世帯の自立阻害要因の把握は求められていない。

選択肢1に書いたように

実施機関が管内の被保護世帯全体の状況を把握した上で、被保護者の状況や自立阻害要因について類型化を図り・・・

ということで間違いです。

自立支援プログラムの問題は,なぜかいつも難しくないのです。

不思議です。


<今日のおまけ>

この問題がなぜ誰でも解ける問題になってしまったのか?

理由は簡単です。

間違い選択肢に書き換える前の文章

1 各自治体の地域の実情に応じて設定される。
2 民間事業者等への外部委託は想定されている。
3 現業員の個人の努力や経験ではなく,組織的支援により支援を行うことにしている。
5 被保護世帯の自立阻害要因の把握が求められている。

選択肢1,2,5は,否定形に変えることで間違い選択肢にしています。

選択肢3は,前半と後半を入れ替えることで間違い選択肢にしています。

自分で問題を作ってみると分かりますが,間違い選択肢をそれっぽく見せるのは,とても難しいものです。

今日の問題のようなものは,もうほとんど出題されないとは思いますが,もし間違い選択肢をつくるときの常とう手段を用いている問題があったら・・・

試験委員さん,ご苦労さん!!

と思いましょう。

心に余裕をもてる人が,国試で普段通りの実力を発揮します。

しかし,答えが簡単に分かる問題は,はっきり言って悪問です!!














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