生活保護法の目的は,日本国憲法第25条に基づく最低限度の生活保障と自立の助長です。
自立の助長は重要ですが,忘れがちですからしっかり押さえておきましょう。
自立には,就労による経済的自立のみならず,身体や精神の健康を回復・維持して自分で自分の健康・生活管理を行う日常生活自立,社会的なつながりを回復・維持して地域社会の一員として充実した生活を送る社会生活自立があります。
生活保護を受けている人の自立というと,経済的自立というイメージがあるかもしれません。
しかし,保護を受けているのは,高齢者や障害者など稼働能力を有しない世帯もあります。
経済的に自立していないと自立と言わないのではなく,今日の自立の概念は広いので,稼働能力を有しない世帯であっても,自立は可能です。
それでは,早速今日の問題です。
第25回・問題68 事例を読んで,自立支援プログラムによる就労支援の進め方に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
雇用先から解雇されたBさんは,就職先がなかなか見つからず生活に困窮したことから,生活保護の申請をすることになった。生活保護が開始されて間もなく,担当ケースワーカーから自立支援プログラムを使って就労自立を目指すことがBさんに対して提案された。
1 Bさんの就労支援は,生活保護法第27条の被保護者に対する指導・指示に基づいて開始される。
2 Bさんの就労支援は,公共職業安定所(ハローワーク)の就労支援員に委託されて行われる。
3 Bさんの就労支援は,期間を定めて行われ,支援終了時には生活保護も廃止となる。
4 Bさんの就労支援は,福祉事務所長の措置による支援決定によって開始される。
5 Bさんの就労支援は,就労自立に向けて必要な場合には,日常生活自立や社会生活自立のための支援も行われる。
前回の問題と内容が酷似していますが,少し変えて出題されています。
ここが国試の難しいところです。
しかし,基本を押さえておけば,まったく恐れることはありません。
それでは解説です。
1 Bさんの就労支援は,生活保護法第27条の被保護者に対する指導・指示に基づいて開始される。
これは間違いです。
今まで何度も出てきたように,自立支援プログラムへの参加は,被保護者の同意によっ行われます。
指導・指示に基づいて開始されるものではありません。
2 Bさんの就労支援は,公共職業安定所(ハローワーク)の就労支援員に委託されて行われる。
これも間違いです。
被保護者の就労支援は,ハローワークもかかわります。
しかし自立支援プログラムは,あくまで保護の実施機関が実施するものです。
就労による経済的自立を目指す時に,ハローワークが実施している就労支援サービスを活用します。
3 Bさんの就労支援は,期間を定めて行われ,支援終了時には生活保護も廃止となる。
これも間違いです。
自立支援プログラムと保護の停止・廃止は連動しているものではありません。
Bさんの場合,保護が廃止になるとすれば,就労による経済的自立ができたときだと言えるでしょう。
4 Bさんの就労支援は,福祉事務所長の措置による支援決定によって開始される。
これも間違いです。
自立支援プログラムは,保護が決定された後,Bさんに合った自立支援プログラムを選定して,Bさんの同意があった場合に実施されます。
主体はあくまでもBさんにあります。
5 Bさんの就労支援は,就労自立に向けて必要な場合には,日常生活自立や社会生活自立のための支援も行われる。
これが正解です。
解雇されて仕事先がなかなか決まらず,その焦りから自暴自棄になってしまうかもしれません。
もしかするとそんなところが見え隠れして,仕事が見つからないのかもしれません。
日常生活自立や社会生活自立のための支援も必要かもしれません。
経済的自立が常に優先されるものではありません。
<今日の一言>
自立支援プログラムの最重要ポイント
実施は,被保護者の同意によって実施されるもので,拒否したからといって保護が廃止,停止されるものではありません。
なぜなら自立支援プログラムは保護の受給要件ではないからです。
補足すると,自立支援プログラムは被保護者全員に実施されるものではありません。
対象に選ばれた被保護者が自立支援プログラムを受けることを拒否したとき,保護が停止・廃止されるとしたら,被保護者にとって,自立支援プログラムによる支援の対象者に選定されることは,ババ抜きのババを引き当てることようなものです。
自立支援プログラムは,そういったものではないことをしっかり押さえておきましょう。
最新の記事
障害者総合支援法に規定される障害福祉サービスの実施主体
障害者総合支援法に規定される障害福祉サービスの実施主体は,市町村です。 同法における都道府県の役割は,障害福祉計画の作成,地域生活支援事業の実施,障害福祉サービス事業者等の指定などに限られます。 なお,自立支援医療には,育成医療,更生医療,精神通院医療の3種類がありますが,このう...
過去一週間でよく読まれている記事
-
ソーシャルワークは,ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークとして発展していきます。 その統合化のきっかけとなったのは,1929年のミルフォード会議報告書です。 その後,全体像をとらえる視座から問題解決に向けたジェネラリスト・アプローチが生まれます。そしてシステム...
-
1990年(平成2年)の通称「福祉関係八法改正」は,「老人福祉法等の一部を改正する法律」によって,老人福祉法を含む法律を改正したことをいいます。 1989年(平成元年)に今後10年間の高齢者施策の数値目標が掲げたゴールドプランを推進するために改正されたものです。 主だった...
-
ホリスが提唱した「心理社会的アプローチ」は,「状況の中の人」という概念を用いて,クライエントの課題解決を図るものです。 その時に用いられるのがコミュニケーションです。 コミュニケーションを通してかかわっていくのが特徴です。 いかにも精神分析学に影響を受けている心理社会的ア...
-
先日からソーシャルワークの発展過程を取り上げています。 取り上げる順番が逆になってしまいましたが,今回からケースワークの源流について学んでいきたいと思います。 まずは「現代社会と福祉」で学ぶ領域を押さえておきたいと思います。 イギリスでは,領主による「エンクロージャー...
-
問題解決アプローチは,「ケースワークは死んだ」と述べたパールマンが提唱したものです。 問題解決アプローチとは, クライエント自身が問題解決者であると捉え,問題を解決できるように援助する方法です。 このアプローチで重要なのは,「ワーカビリティ」という概念です。 ワー...
-
国試での出題実績のあるアプローチは以下の12種類です。 出題基準に示されているもの ・心理社会的アプローチ ・機能的アプローチ ・問題解決アプローチ ・課題中心アプローチ ・危...
-
今回は,グループワーク(集団援助技術)の主な理論家を学びます。 グループワークの主な理論家 コイル セツルメントやYWCAの実践を基盤とし,グループワークの母と呼ばれた。 また,「グループワーカーの機能に関する定義」( ...
-
様々なアプローチは,毎年必ず出題されています。 しかも3~4問が出題されています。 ようやく出題実績のある12種類が揃いました。 ・心理社会的アプローチ 「 状況の中の人 」を基本概念として,心理社会的に課題のあるクライエントに対して,コミュニケーションを通して関わってい...
-
まずは戦後の社会保障制度の変遷を考えてみたいと思います。 昭和 20 年代 は,国民全体が貧しく,救貧の時代です。救貧の中心的制度は,公的扶助です。 昭和 30 年代 に入ると,高度経済成長の時代になり,防貧の時代になります。防貧の中心的制度は,社会保険で...
-
コミュニティはさまざまな人が定義していますが,ヒラリーの研究によって,それらに共通するものとして ・社会的相互作用 ・空間の限定 ・共通の絆 があることが示されました。 しかし,現代では,空間が限定されないコミュニティが広がっています。それをウェルマンは,「コミュニティ開放論」と...