それが「後期高齢者医療制度」です。
老人保健は,社会保障制度の5本柱の一つであり,歴史を紐解くと,1963年の老人福祉法の制定から始まります。
1973年に老人福祉法改正で老人医療費無料が始まり,1983年老人保健法で老人福祉法から老人保健が独立しました。この時に老人医療費の一部負担ができます。
老人保健法は,2008年に改正されて高齢者の医療を確保する法律になり,後期高齢者医療制度が生まれています。
後期高齢者医療制度の成り立ちと概要は,「社会保障」で出題されるので,しっかり押さえておきたいです。
まず前回の復習です。
https://fukufuku21.blogspot.com/2018/10/blog-post_18.html
復習したところで,今日の問題です。
第26回・問題70 事例を読んで,後期高齢者医療制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
長い間農業に従事し,現在無職のDさん(80歳,男性)は,認知症を発症し,その治療のため精神科を,その他に耳鼻科,内科を受診している。Dさんは年金以外の収入はなく,息子夫婦と孫と合わせて5人で生活しており,息子夫婦は共働きの民間企業のサラリーマンで,標準的な所得の家庭である。
1 Dさんは息子夫婦の被扶養者であるから,後期高齢者医療制度の保険料を負担しなくてよい。
2 Dさんが医療機関を受診すると,被扶養者なので一部負担金を3割支払うことになる。
3 Dさんのように治療が多岐にわたるなど,一部負担が一定額を超えた場合,後期高齢者医療制度の一部負担は高額療養費制度の対象となる。
4 Dさんが死亡しても,後期高齡者医療広域連合は葬祭の給付や葬祭費を支給することはない。
5 後期高齢者の療養給付には,食事の提供,光熱費や環境に関する生活療養も含む。
後期高齢者医療制度と高額療養費制度の合わせ技の問題となっています。
法制度に関連する事例問題は,制度を知らないと絶対に解けないものです。
そしてさらに落ち着いて読むことが求められます。
特に年齢には注意しましょう。
それでは解説です。
1 Dさんは息子夫婦の被扶養者であるから,後期高齢者医療制度の保険料を負担しなくてよい。
これは間違いです。
74歳までは,息子夫婦の健康保険の被扶養者となっていれば,保険料負担はありません。
しかし75歳になると,息子夫婦の健康保険の被扶養者から抜けて,後期高齢者医療制度に加入しなければなりません。
後期高齢者医療制度には,国民健康保険と同様に被扶養者というものはなく,加入者は保険料を支払わなければなりません。
保険料納付義務者は世帯主です。
2 Dさんが医療機関を受診すると,被扶養者なので一部負担金を3割支払うことになる。
これも間違いです。
後期高齢者医療制度には,被扶養者というものがありません。
一部負担金は1割です。現役並み所得者は3割です。
3 Dさんのように治療が多岐にわたるなど,一部負担が一定額を超えた場合,後期高齢者医療制度の一部負担は高額療養費制度の対象となる。
これが正解です。
高額療養費制度は,ひと月の一部負担が一定額を超えると,超えた分が償還払いされる制度です。後期高齢者医療制度にも適用されています。
4 Dさんが死亡しても,後期高齡者医療広域連合は葬祭の給付や葬祭費を支給することはない。
これは間違いです。
葬祭を行った者が申請すれば,葬祭費が支給されます。
申請ということは,もちろん時効があります。
5 後期高齢者の療養給付には,食事の提供,光熱費や環境に関する生活療養も含む。
これも間違いです。
食事,光熱費などいわゆるホテルコストと呼ばれる費用は,生活療養費標準負担額を負担します。保険給付はされません。
これは他の医療制度も同様です。