2018年10月2日火曜日

福祉事務所の徹底理解~その2

今回も福祉事務所に取り組んでいきましょう。

まずは,指揮監督について確認しましょう。

都道府県が設置する福祉事務所の長は,都道府県知事の指揮監督を受けて,所務を掌理(福祉事務所の仕事を管理)します。

市町村が設置する福祉事務所の長は,市町村長の指揮監督を受けて,所務を掌理(福祉事務所の仕事を管理)します。

指導監督を行う所員(査察指導員)は,所の長の指揮監督を受けて,現業事務の指導監督をつかさどります。

現業を行う所員(現業員=ケースワーカー)は,所の長の指揮監督を受けて,現業業務をつかさどります。

査察指導員及び現業員の上司は,所の長です。所の長の管理下にあるのは当然です。

同じく,所の長も設置者の管理下にあるのは,当然のことです。

査察指導員及び現業員が指揮監督を受けるのは,所の長であって,都道府県知事あるいは市町村長ではありません。

それを押さえたところで,今日の問題です。

第26回・問題67 福祉事務所に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 福祉事務所の現業を行う所員の定数については,特に法令上の定めはない。

2 指導監督を行う所員,現業を行う所員,事務を行う所員はいずれも社会福祉法で定める社会福祉主事でなければならない。

3 市の設置する福祉事務所の長は,市長の指揮監督を受けて,所務を掌理する。

4 都道府県及び市町村は,福祉事務所を設置しなければならない。

5 福祉事務所に置かれる社会福祉主事は,18歳以上の者でなければならない。

前回の問題と偶然の一致とは思えないくらいにそっくりです。

第21回の選択肢1
福祉事務所の現業を行う所員の定数については,特に法令上の定めはない。

第26回の選択肢1
福祉事務所の現業を行う所員の定数については,特に法令上の定めはない。

まったく一緒です。

第21回の選択肢2
福祉事務所の現業を行う所員,現業事務の指導監督を行う所員,所の長は,社会福祉主事でなければならない。

第26回の選択肢2
指導監督を行う所員,現業を行う所員,事務を行う所員はいずれも社会福祉法で定める社会福祉主事でなければならない。

所の長と,事務を行う所員の部分が違うだけで,内容はほぼ一緒です。


「低所得者に対する支援と生活保護制度」は,同じような出題を繰り返しているとは言え,ここまで一緒なのはとても珍しいことです。

第26回国試は,その前から試験委員長を含めて,試験委員が半分入れ替わったので,作問に慣れていなかったのでしょう。

こういう出題を見ると,試験委員は国試問題を作るのは本当に大変だということがよく分かります。

第31回国試の試験委員は,第30回のメンバーとほとんど入れ替わっていません。

同じように作問すると,第30回と同じようになってしまうので,そのプレッシャーは,第26回とは比べ物にならないことでしょう。

さてさて第31回はどんな作問をしてくることでしょうか。

どのように変化しても,基礎をしっかり身につけておけば,何の問題もないことと言うまでもありません。

それでは,解説です。


1 福祉事務所の現業を行う所員の定数については,特に法令上の定めはない。

前回紹介した通り,間違いです。

基準を標準として,条例で定めます。

標準数は・・・

都道府県福祉事務所 → 被保護世帯数65世帯につき1名。

市町村福祉事務所 →  被保護世帯数80世帯につき1名。


2 指導監督を行う所員,現業を行う所員,事務を行う所員はいずれも社会福祉法で定める社会福祉主事でなければならない。

これも前回紹介したとおりです。

社会福祉主事でなければならないのは,指導監督を行う所員,現業を行う所員です。


3 市の設置する福祉事務所の長は,市長の指揮監督を受けて,所務を掌理する。

これが正解です。

市の設置する福祉事務所の長は,市長の指揮監督を受けます。


4 都道府県及び市町村は,福祉事務所を設置しなければならない。

よく見たら,これも第21回とそっくりですね。


福祉事務所を設置しなければならないのは,都道府県及び市です。

町村は,任意で設置することができます。よって間違いです。


5 福祉事務所に置かれる社会福祉主事は,18歳以上の者でなければならない。

これも間違いです。

これを知らなくても答えは選択肢3なので,何の問題もありませんが,年齢は20歳以上と規定されています。


<今日の一言>

社会福祉士の国試は,今までに30回も実施されています。

まったく同じ表現で出題されることはほとんど見たことがありません。

しかし,出題ポイントはいつもそんなに変わるものではありません。

自動車免許は,今はどうなっているか分かりませんが,かつては出題される問題はいつも同じでした。

たとえば,

「青は進めである」といった出題です。これは間違いです。自動車学校の先生は,何度も「青は進め,ではなく,進むことができる,ですよ」と指導していました。

どのように間違いポイントが作られるか熟知しているので,確実な指導ができるのです。

社会福祉士の国試問題は,表現は違えど,基本はそんなに変わるものではないです。大きく変わってしまっては,合格基準は6割程度を保てなくなります。

基本を押さえたら,合格基準では超えられるように国試問題は作られています。

合格は,ひたすら基本を押さえていくことにほかなりません。

応用が必要な問題は,社会福祉士の国試には存在しません。

基本を押さえたら,合格基準点を超えられます。

合格する実力をつけるのは,実は極めて単純明快なことです。

実際に国試ではどのように出題されるかをよく知ることです。

福祉事務所を設置しなければならないのは,都道府県と市であり,町村は任意である,といったことです。

「市町村」となっていないかどうかに着目して問題文を読みます。

ケアレスミスはかなり減らすことができるでしょう。

応用が必要な問題は,社会福祉士の国試には存在しません。

基本をひたすら覚えていきましょう。

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