2018年10月11日木曜日

自立支援プログラムの徹底理解~その3

社会福祉士の国家試験は,一問一答式の問題と事例問題があります。

事例問題は,旧カリキュラムの時は,現在も精神保健福祉士にある長文事例問題として出題されていました。

現在のカリキュラムになって,長文事例問題はなくなり,短文事例問題となりました。

さて,その短文事例問題には,2種類あります。

1つは,相談援助や高齢者などにみられる対人援助に関連する事例問題です。

これは,事例を丁寧に読んで考えると解けます。


もう1つは,法制度の知識を問う事例問題です。

これは事例のスタイルですが,法制度を知らなければ解けません。

今回は,自立支援プログラムに関する短文事例問題を取り上げてみたいと思います。

知っていれば解けますし,知らなければ解けません。

知っていれば,難易度は高くない問題だと言えるでしょう。

それでは今日の問題です。

第24回・問題61 事例を読んで,次の記述のうち,生活保護を受給しているEさんに対する自立支援プログラムに基づく支援として,最も適切なものを一つ選びなさい。

〔事 例〕
 Eさん(39歳)は,自動車工場の製造ラインで派遣社員として働いていた。しかし,いわゆる「派遣切り」で職場と住居を失い,ワンストップサービスの相談窓口を介して生活保護の受給に至った。Eさんは,以前に痛めた腰痛が再発して医療機関を受診しており,すぐに仕事を探すことには拒否的な様子がみられた。

1 Eさんの自立支援プログラムの導入に際して,担当ケースワーカーの個人的な努力や経験に基づき必要な支援を行う。

2 Eさんの実情を把握し,個別支援プログラムを選定して説明する。

3 Eさんの状況から判断して,就労による経済的自立に焦点化した自立支援プログラムを行う。

4 Eさんの主体性を引き出すために,自立支援プログラムに参加するよう積極的に生活保護法に基づく指導又は指示を行う。

5 Eさんに対して自立支援プログラムに基づき検診命令を行い,嘱託医に対して就労が可能であるかどうかを相談する。


まずは,自立支援プログラムのおさらいです。


自立支援プログラムとは・・・
生活保護受給者の自立を阻害する要因を分析して自立支援を行うためのプログラムです。プログラムは,個別に作られるものではなく,類型化したもので,それに合う被保護者を選定し,本人の承諾のもとに実施されます。
自立とは,就労による経済的自立だけではなく,自分で自分の健康・生活管理を行うなど日常生活において自立した生活を送ることができる日常生活自立,地域社会の一員として充実した生活を送ることができる社会生活自立があります。

おさらいしたところで解説です。

1 Eさんの自立支援プログラムの導入に際して,担当ケースワーカーの個人的な努力や経験に基づき必要な支援を行う。

これは間違いです。

前回紹介したように,自立支援プログラムを導入した背景にはこういったものがあります。

「実施機関においてはこれまでも担当職員が被保護世帯の自立支援に取り組んできたところであるが、被保護世帯の抱える問題の複雑化と被保護世帯数の増加により、担当職員個人の努力や経験等に依存した取組だけでは、十分な支援が行えない状況となっている」。(指針より)

ここから,組織的に取り組むことになったのです。


2 Eさんの実情を把握し,個別支援プログラムを選定して説明する。

これが正解です。

個別支援プログラムは,個別に作られているものではなく,類型化したプログラムの中から被保護者の実情に合ったものを選定して,説明し,同意したうえで実施されます。


3 Eさんの状況から判断して,就労による経済的自立に焦点化した自立支援プログラムを行う。

これは間違いです。

自立には,経済的自立,日常生活自立,社会生活自立があります。

どれが優先されるというものはなく,被保護者の実情に合わせて支援します。

Eさんの場合,すぐ仕事を探すことを拒否しているのは,仕事をしたくないからではなく,痛めた腰のためです。腰の痛みが癒えることで,経済的自立は果たせるので,この時点では経済的自立を目指すのは適切ではないでしょう。

むしろ日常生活自立の方が優先されると言えるでしょう。


4 Eさんの主体性を引き出すために,自立支援プログラムに参加するよう積極的に生活保護法に基づく指導又は指示を行う。

これも間違いです。

自立支援プログラムは,生活保護法に基づく指導又は指示によって実施されるものではなく,あくまでも被保護者の同意によって実施されるものです。

主体性を引き出すのであれば,自立支援プログラムに参加しなくても,生活保護法に基づく指導又は指示によって行えるでしょう。まさにそこに,「担当ケースワーカーの個人的な努力や経験」が生かされることでしょう。


5 Eさんに対して自立支援プログラムに基づき検診命令を行い,嘱託医に対して就労が可能であるかどうかを相談する。

これも間違いです。

健診命令は,保護の決定の際に行われるものです。Eさんの場合は,健診命令がなくても,既に医療機関を受診しています。


<今日のまとめ>

自立支援プログラムに関する出題は,実施は被保護者の同意によって行われる,というところに集約されます。

最新の記事

ノーマライゼーションの国家試験問題

 今回は,ノーマライゼーションに取り組みます。 前説なしで,今日の問題です。 第26回・問題93 ノーマライゼーションの理念に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。 1 すべての人間とすべての国とが達成すべき共通の基準を宣言した世界人権宣言の理念として採用された。 2...

過去一週間でよく読まれている記事