2018年10月15日月曜日

生活困窮者自立支援法の徹底理解

「低所得者に対する支援と生活保護制度」は,約1か月半にわたって紹介してきました。
いよいよ今回が最終回です。

この科目の中心の法制度は,生活保護法ですが,平成25年に成立した「生活困窮者自立支援法」は,もう一つの柱になるべき重要な法制度です。

生活緊急者自立支援法とは,

目的 生活困窮者の自立支援体制を構築と自立促進

実施主体 福祉事務所を設置する自治体

必須事業
・自立相談支援事業
・住居確保給付金の支給

任意事業
・就労準備支援事業
・一時生活支援事業
・家計相談支援事業
・学習支援事業 その他

国の負担率 3/4

なお,これらの事業は,民間等に委託することができます。

事業はたくさんありますが,絶対に覚えておかなければならないものは,必須事業です。

自立相談支援事業
生活困窮者等からの相談を受けて,自立プランの作成支援等。

住居確保給付金の支給
離職などにより住居を失った者などに対する一定期間の家賃相当額の支給。

生活困窮者自立支援法は,本格的に出題されたのは第30回国試が初めてです。

そのため,制度を周知するため,まだまだ基本的な出題が続くことと思われます。

それでは今日の問題です。

第30回・問題63 生活困窮者自立支援法に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 住居の確保を目的とした給付金を支給する制度が設けられている。

2 一時生活支援事業とは,住居を有する生活困窮者に対して食事の提供を行う事業である。

3 自立相談支援事業は,相談支援を通して生活困窮者に就職のあっせんを行う事業である。

4 就労準備支援事業は,3年を限度として訓練を提供する事業である。

5 家計相談支援事業は,生活困窮者の家計に関する問題につき生活困窮者からの相談に応じ,必要な資金の貸付けをする事業である。

任意事業がいろいろ出題されていますが,任意事業よりも重要ななのは,まず必須事業です。

それでは解説です。


1 住居の確保を目的とした給付金を支給する制度が設けられている。

これが正解です。住居確保給付金の支給は必須事業です。


2 一時生活支援事業とは,住居を有する生活困窮者に対して食事の提供を行う事業である

これは間違いです。

事業を知らなければ引っ掛けられてしまいそうになると思いますが,住居を有しない生活困窮者に対して,衣食住等の提供を行うものです。


3 自立相談支援事業は,相談支援を通して生活困窮者に就職のあっせんを行う事業である。

これも間違いです。

就職のあっせんなら,わざわざ新しい制度を設けなくてもハローワークが実施しています。

相談支援は相談支援。就職のあっせんは就職のあっせんです。

自立相談支援事業では,自立プランを作成して,必要な場合は,任意事業である就労準備支援事業等のあっせんを行います。


4 就労準備支援事業は,3年を限度として訓練を提供する事業である。

これも間違いです。

就労準備支援事業が分からなくても,3年間は長すぎると感じるでしょう。正解は1年が限度です。


5 家計相談支援事業は,生活困窮者の家計に関する問題につき生活困窮者からの相談に応じ,必要な資金の貸付けをする事業である。

これも間違いです。

必要な資金を貸し付けるなら,生活福祉資金貸付制度があります。

新しい法制度がつくられるのは,今までの制度ではカバーできないものをカバーするためです。

家計相談支援事業は,家計を自ら設計できるようにするための相談支援です。


<今日の一言>

生活困窮者自立支援法に基づく必須事業は,自立相談支援事業と住居確保給付金の支給です。

今回は,住居確保給付金の支給が正解選択肢となりました。

次回は,自立相談支援事業が選択肢に選ばれる可能性は高いです。

しっかり押さえておきましょう。

最新の記事

子ども・子育て支援法

  子ども・子育て支援法は,これまでにも出題されてきましたが,正式に出題基準に含まれたのは,第37回国家試験です。 子ども・子育て支援制度は,市町村が実施主体になっています。 支給申請は,市町村に対して行います。 児童福祉法には,入所系があるので都道府県の役割がありますが,子ども...

過去一週間でよく読まれている記事