2021年10月31日日曜日

居住地が明らかではない人の保護

保護は,要保護者の居住地を管轄している福祉事務所が行います。


それでは,居住地が明らかではない人の保護は,どこが実施するのでしょうか。


その場合は,現在地保護という考え方が適用されます。


現在地とは,簡単に言えば,倒れていた場所です。


第22回・問題61 35歳独身のDさん(本籍地P市)は,Q市の会社で働いていたが,解雇されるまで住んでいたR市のアパート(住所地)を出ざるを得なくなった。新たな仕事は見つからずS市にある公園で野宿を続けていた。ある日公園で倒れていたところを警察官が発見し,通報により救急車で隣県T市の病院に搬送された。Dさんは,病院で肝硬変で当面入院が必要と診断されたが,医療費と生活費の捻出が困難なため生活保護の申請に至った。

 次のうち,Dさんに対して生活保護を実施する福祉事務所の所在地として,適切なものを1つ選びなさい。

1 P市(Dさんの本籍地)

2 Q市(会社の所在地)

3 R市(Dさんの住所地) 

4 S市(野宿をしていた公園の所在地) 

5 T市(搬送された病院の所在地)


Dさんが倒れていた場所は,どこでしょうか。


複数の市が登場するので,混乱しがちですが,このような問題は,倒れていた場所を探すことが大切です。


Dさんが倒れていたのは,S市の公園です。


ということで,正解は,選択肢4だということになります。

2021年10月30日土曜日

生活保護法が規定する基本原理と原則

今回は,生活保護法が規定する基本原理と原則を取り上げます。


この学習部屋では過去に何度も取り上げて来ました。


理由は,わかりますか?


それだけ,出題が多いということです。


それにもかかわらず,覚えるのが面倒だからといった理由で,勉強をおろそかにする人が多いみたいです。


何ともったいないことをするのでしょう。


過去にかなり力を入れて整理した記事があるので,まずはそれを読んでみてください。


そしてここに戻ってきてください。

https://fukufuku21.blogspot.com/2018/09/1_9.html


私たちで分担して作りましたが,とてもわかりやすいのではないかと思います。


かなりの力作です。


それでは,今日の問題です。


第22回・問題60 生活保護法における基本原理及び原則に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 無差別平等の保護とは,生活に困窮した国民は無条件で保護を受ける資格があるという意味である。

2 保護の申請は,要保護者の扶養義務者には認められていない。

3 急迫した事由がある場合には,保護の要件を満たしていなくとも申請を受け付けた上で緊急的に保護を開始することができる。

4 保護は,個人を単位としているが,特別の場合には世帯を単位とすることもできる。

5 民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は,生活保護法による保護に優先して行われる。


こういった問題を見ると,勉強をおろそかにしたくなる気持ちがわかるようです。


合格する人とそうでない人の違いは,このようなものを正解できるかできないかの違いです。


決して難しい問題を正解しなければ合格できないという試験ではありません。


今日の問題のように,出題頻度が高く,そして覚えにくいものを覚えた人は合格し,覚えられなかった人は,残念な結果となります。


悔しい思いをしたくなけれぱ,覚えにくいものこそ覚えるべきではないかと思います。


それでは,解説です。


1 無差別平等の保護とは,生活に困窮した国民は無条件で保護を受ける資格があるという意味である。


無差別平等は,無条件という意味では決してありません。生活保護法が定める要件が必要です。


2 保護の申請は,要保護者の扶養義務者には認められていない。


この選択肢は,国試の癖を考えたとき,とても重要なことを教えてくれます。


国家試験を作成する試験委員は「人」です。


多くの試験委員は,「無」から「有」を作り出すことはしません。


つまり元ネタがあって,そこから問題文を考えます。


この場合は,「要保護者の扶養義務者」も保護の申請をすることができる,という規定が元ネタです。


3 急迫した事由がある場合には,保護の要件を満たしていなくとも申請を受け付けた上で緊急的に保護を開始することができる。


うっかりすると間違ってしまいそうな選択肢です。


急迫,つまり放っておくと生死にかかわるような場合は,職権保護が行われます。


申請を受け付けて保護を開始することができるくらいなら,急迫した状況とは言えないと思いませんか。


急迫している場合は,申請がなくても保護します。


4 保護は,個人を単位としているが,特別の場合には世帯を単位とすることもできる。


世帯単位の原則です。


原則は,世帯単位です。必要な場合に世帯分離を行って,個人単位で保護することもあります。


5 民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は,生活保護法による保護に優先して行われる。


これが正解です。


生活保護制度は,最も下に位置します。


ほかの制度では救済されない場合,最後の最後の切り札として,生活保護制度で救済します。

2021年10月29日金曜日

GHQと旧・生活保護法

 我が国の戦後施策は,GHQの指導によって推し進められました。


福祉政策も同様です。


我が国の救貧制度で覚えるべき法制度は,恤救規則(1874),救護法(1929),旧・生活保護法(1946),現・生活保護法(1950)の4つです。


そのうち,第二次世界大戦後に成立したのは,新旧生活保護法です。


旧・生活保護法は,GHQによる指令書「社会救済に関する覚書」(SCAPIN775)で示された「国家責任」「無差別平等」「公私分離」「救済費用無制限」の4原則に基づいて成立したものです。


人によって「国家責任」「無差別平等」「公私分離」の3原則と解釈する人もいるので,原則の内容を詳しく問われることはありません。


そのためなのか,実際に法に規定されたのは,国家責任と無差別平等で,公私分離と救済費用無制限は反映されていません。


旧・生活保護法が恤救規則と救護法と大きく違う点は,この2つは救済は国家の恩恵であることを強調していたのに対し,旧法では,国家責任であることを明確に示したことです。


新・生活保護法は,日本国憲法が規定する生存権を保障するものとして,成立したものです。


これによって,ようやく保護を受ける権利が認められました。


それでは,今日の問題です。


第22回・問題58 我が国の現行生活保護法が成立する経過に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。


1 生活困窮者緊急生活援護要綱(昭和20年)は,生活援護を要する者のうち失業者は除外した。

2 旧生活保護法(昭和21年)は制定時,民生委員を市町村が行う保護事務の協力機関と定めていた。

3 旧生活保護法(昭和21年)は,その目的を生活の保護を要する状態にある者の生活を国が差別的又は優先的な取扱をなすことなく平等に保護して,社会の福祉を増進するとしていた。

4 連合国軍総司令部(GHQ)は,覚書「社会救済」(昭和21年)によって,日本政府に生活保護の算定基準に関するガイドラインを示した。

5 社会保障制度審議会の「生活保護制度の改善強化に関する件」(昭和24年)では,生活保護制度を社会保険制度へ転換すべきであると提言した。


正解は,前説で述べたように,無差別平等を示している選択肢3です。


3 旧生活保護法(昭和21年)は,その目的を生活の保護を要する状態にある者の生活を国が差別的又は優先的な取扱をなすことなく平等に保護して,社会の福祉を増進するとしていた。


これでわかるように,「社会救済に関する件」で示された無差別平等は,旧・生活保護法に取り入れられています。


とはいっても,実際には,救護法に引き続いて,怠惰な者は保護しないといった欠格条項が設けられていました。


そういったこともあり,のちに新しい生活保護法が作られることになったのです。


現在は,欠格条項のない「無差別平等の原理」が貫かれています。


それでは,ほかの選択肢も確認します。


1 生活困窮者緊急生活援護要綱(昭和20年)は,生活援護を要する者のうち失業者は除外した。


生活困窮者緊急生活援護要綱は,この国試以降は出題されたことはありません。


歴史的には重要なのかもしれませんが,国家試験では重要視されていないようです。


この要綱の特徴は,失業者も対象に含めたことです。


そのあと,旧・生活保護法が作られたことで,この要綱は廃止されています。


2 旧生活保護法(昭和21年)は制定時,民生委員を市町村が行う保護事務の協力機関と定めていた。


民生委員は


旧・生活保護法 → 補助機関


現・生活保護法 → 協力機関


これは,何度も出題されているので,確実に覚えておきたいです。


4 連合国軍総司令部(GHQ)は,覚書「社会救済」(昭和21年)によって,日本政府に生活保護の算定基準に関するガイドラインを示した。


社会救済(社会救済に関する件)が示したのは,


・国家責任

・無差別平等

・公私分離

・救済費用無制限


の4つです。


GHQが国家責任を示したのは,日本国政府とのやり取りの中で,保護は民間が行うもので,政府はそれを援助するという態度を示していたことに対して,灸をすえるためです。


民間に任せるのではなく,国の責任で行うことを示したのです。


GHQの中心はアメリカですが,そのアメリカでさえ行っていないことを日本で実験したとも言えます。


5 社会保障制度審議会の「生活保護制度の改善強化に関する件」(昭和24年)では,生活保護制度を社会保険制度へ転換すべきであると提言した。


「生活保護制度の改善強化に関する件」が提言したのは,生活保護制度を確立することです。


生活保護制度には,社会保険制度は向きません。なぜなら社会保険制度は社会保険料で運営される制度ですが,保護を必要とする人は,社会保険料を負担できないからです。


2021年10月28日木曜日

生活保護の特質

  

生活保護の特質とは・・・

・事前の拠出を前提としない。

・個別のニーズに合わせて給付される。


・救貧的に機能する。


・資力調査(ミーンズテスト)を行う。

 

このようなことに整理することができます。

 

実際には,社会保険と生活保護の特質を比較するように出題されます。

 

知恵が試される問題となります。

 

それでは,今日の問題です。

 

22回・問題57 我が国の社会保険と生活保護の制度概念に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 社会保険は対象を労働者に限定しているのに対し,生活保護は対象を就労困難者に限定している。

2 社会保険は保険料を納付することにより受給資格が生じるのに対し,生活保護は住民税を納付することにより受給資格が生じる。

3 社会保険は資力調査を課すのに対し,生活保護は所得調査を課す。

4 社会保険は特定の保険事故に対して給付を行うのに対し,生活保護は貧困の原因を問わず,困窮の程度に応じ必要な保護を行い,最低限度の生活を保障する。

5 社会保険は救貧的槻能を果たし,生活保護は防貧的機能を果たす。

 

そんなに難しい問題ではないと思いますが,知識偏重の人は,このような考えながら解かなければならない問題は,対応できないでしょう。

 

知識があっても知恵がない社会福祉士は,現場では必要とされません。

 

そういった受験生をふるいにかけるにはとても良い問題だと思います。

 

それでは解説です。

 

1 社会保険は対象を労働者に限定しているのに対し,生活保護は対象を就労困難者に限定している。

 

わが国の社会保険は5つありますが,労働者に限定しているのは,労働者災害補償保険(労災保険)のみです。

 

生活保護は,就労困難者も対象に含みますが,就労していても最低生活を保持できない人は対象となります。

 

2 社会保険は保険料を納付することにより受給資格が生じるのに対し,生活保護は住民税を納付することにより受給資格が生じる。

 

社会保険は,基本的には社会保険料を納付することで受給資格が生じます。

 

基本的というのは,障害基礎年金だけは,保険料を納付せずとも受給できる道があるからです。

 

生活保護は,困窮の事実をもって給付されます。住民税の納付は受給要件ではありません。

 

3 社会保険は資力調査を課すのに対し,生活保護は所得調査を課す。

 

社会保険は,保険事故が生じた場合に給付されます。

 

保険事故とは,例えば,年金保険制度では,65歳になることです。

 

資力調査を課すのは,生活保護です。

 

4 社会保険は特定の保険事故に対して給付を行うのに対し,生活保護は貧困の原因を問わず,困窮の程度に応じ必要な保護を行い,最低限度の生活を保障する。

 

これが正解です。

 

5 社会保険は救貧的槻能を果たし,生活保護は防貧的機能を果たす。

 

社会保険 → 防貧的

 

生活保護 → 救貧的

 

というように整理することができます。

 

社会保険が防貧的というのは,たとえば,65歳になると就労できなくなる可能性があるので,貧困にならないように,保険給付されるためです。

 

生活保護が救貧的というのは最低生活を保持できない場合,その状況から救うために給付するからです。

2021年10月27日水曜日

ブース,ラウントリーの貧困調査

イギリスにおいて,19世紀後半から20世紀にかけてブース,ラウントリーらが行った貧困調査は,極めて重要です。


これらの調査によって,それまで貧困の原因は怠惰などの理由によるものだと考えられていたものを社会の構造や環境によるものであることを明らかにしたからです。


つまり,貧困は,資本主義という構造の欠陥によって生じていたのです。


そのことが明らかになったことで,資本主義各国は,社会保障制度を整えて,資本主義の欠陥を修正したのです。その結果,福祉国家となっていきます。


そのきっかけをつくったのが,貧困調査です。


それでは,今日の問題です。


第22回・問題56 貧困に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 エンゲル(Engel,E.)は,家計調査に基づき,飲食物費が家計支支出に占める割合が高いほど最低生活が充足されているとした。

2 ラウントリー(Rowntree,B.S.)は,貧困調査において,貧困をその程度に応じて第一次貧困と第二次貧困に区分した。

3 ウェッブ夫妻(Webb,S.&B.)は,労働調査を通して「貧困の再発見」をした。

4 ルイス(Lewis,O.)は,貧困の多様性・広汎性・複合性を「相対的剥奪」という概念で整理した。

5 セン(Sen,A.)は,人々の社会への関与が遮断されている状態を指して,「社会的排除」という概念を提唱した。


想像がつくと思いますが,正解は,選択肢2です。


2 ラウントリー(Rowntree,B.S.)は,貧困調査において,貧困をその程度に応じて第一次貧困と第二次貧困に区分した。


ラウントリーがヨーク市で行った貧困調査は,マーケットバスケット方式と呼ばれる化学的な方法を用いて,第一次貧困線(生きることがギリギリできる貧困)と第二次貧困線(賭博や飲酒をしなければ生きることができる貧困)を設定して実施しました。


それでは,ほかの選択肢を確認します。


1 エンゲル(Engel,E.)は,家計調査に基づき,飲食物費が家計支支出に占める割合が高いほど最低生活が充足されているとした。


エンゲルは,エンゲル係数で知られます。


飲食物費が家計支支出に占める割合が高いことは,生活に余裕がないことを示します。


3 ウェッブ夫妻(Webb,S.&B.)は,労働調査を通して「貧困の再発見」をした。


ウェッブ夫妻が提唱したのは「ナショナルミニマム」(国家による最低生活保障)です。


貧困の再発見とは,20世紀中盤,豊かさの中に,貧困にあることを見つけたものです。


4 ルイス(Lewis,O.)は,貧困の多様性・広汎性・複合性を「相対的剥奪」という概念で整理した。


ルイスは,貧困になる人には「貧困の文化」があるということを提唱しました。


貧困の文化とは,貧困者は貧困であることを受け入れているというものです。


相対的剥奪を提唱したのは,タウンゼントです。


5 セン(Sen,A.)は,人々の社会への関与が遮断されている状態を指して,「社会的排除」という概念を提唱した。


センが提唱したのは「ケイパビリティアプローチ」です。

2021年10月26日火曜日

主要各国の社会保障制度~特に医療保障制度の比較

国際比較で出題されるのは

・アメリカ

・イギリス

・フランス

・ドイツ

・スウェーデン

・日本


の6か国です。


それぞれに特徴がありますが,特徴が出やすいのは,医療保障制度です。


イギリス,スウェーデンのように,社会保険制度を取らず税財源で運営されている。

アメリカのように,公的な医療保障制度よりも民間保険が充実している。

ドイツ,フランス,日本のように社会保険制度で運営されている。


といった感じです。


さて,今日の問題は,出題当時,不適切問題となったものです。


第22回・問題55 日本,フランス,ドイツ,イギリス,アメリカ,スウェーデンにおける社会保障制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 国民皆年金政策をとっているのは,日本とドイツである。

2 アメリカは,低所得者・高齢者を対象とした公的医療保障制度しかもっていない。

3 財源を租税とする医療保障制度をもっているのは,フランスとスウェーデンである。

4 GDP(国内総生産)に占める家族関係社会支出の割合が最も高いのは,アメリカである。

5 GDP(国内総生産)に占める私的医療費の割合が最も高いのは,日本である。


この問題が不適切問題となったのは,本当は選択肢2を正解にする予定だったものが,不正確なものになったからです。


アメリカの公的医療保障制度は,


低所得者を対象とするメディケイド

高齢者・障害者等を対象とするメディケア


で運営されています。


つまり,大多数を占める一般の人をカバーする公的医療保障制度は持ちません。


そのため,個別に民間医療保険に加入しています。


それでは,ほかの選択肢も確認します。


1 国民皆年金政策をとっているのは,日本とドイツである。


日本は,皆保険ですが,ドイツは皆保険ではありません。


3 財源を租税とする医療保障制度をもっているのは,フランスとスウェーデンである。


スウェーデンは,税財源で運営されていますが,フランスは社会保険で運営されます。


4 GDP(国内総生産)に占める家族関係社会支出の割合が最も高いのは,アメリカである。


アメリカは,主要各国の中では,最も低い水準になります。


アメリカが取っている政策は,基本的には,自助,それでどうしてもだめな場合は,公助というスタイルを取ります。


そのために,家族だけではなく,社会支出は最も低い国であることが特徴です。


5 GDP(国内総生産)に占める私的医療費の割合が最も高いのは,日本である。


私的医療費が最も高いのは,公的医療保障が充実していないアメリカです。


今日のような問題は,考えて答えを出さなければなりません。

2021年10月25日月曜日

傷病手当金について

医療保険は,医療の現物給付だけではなく,所得補償の制度もあります。


労働力を商品化している労働者にとって,病気で働けなくなることは貧困に直結するからです。


我が国の代表は傷病手当金です。


傷病手当金とは・・・


医療保険の被保険者が,けがや病気のために仕事に就けないために,給与が支払われない場合に給付されるものです。


ただし4日目からという条件があります。


傷病手当金は,健康保険と共済は法定給付で,国民健康保険は任意給付です。


それでは,今日の問題です。


第22回・問題54 事例を読んで,次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 健康保険の被保険者であるCさんは,自動車を誤って電柱にぶつけてしまい,けがをしたので,治療のため病院に行った。

1 Cさん自身の過失でけがをしたのだから,健康保険は通用されず,治療費は全額自分で負担しなければならない。

2 Cさんの交通事故については,自動車損害賠償責任保険(自賠責)が適用され,健康保険は適用できない 。

3 Cさんは,けがのため1週間仕事を休まざるを得なかったが,休んだ間の貸金については健康保険からは何の保障もない。

4 Cさんが会社の業務を行っている最中に自動車を電柱にぶつけてしまったとすれば,健康保険は適用されない。

5 その事故でCさんの眼鏡が壊れてしまったが,眼鏡代も健康保険から支給される。


この事例では,どんな時にけがをしたのかが書かれていません。


業務上のけがであれば,労働者災害補償保険(労災保険)が適用されます。


それ以外のけがには,医療保険が適用されます。


健康保険法では,以下のように規定されています。


〈健康保険法の目的〉

この法律は、労働者又はその被扶養者の業務災害(労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)第七条第一項第一号に規定する業務災害をいう。)以外の疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関して保険給付を行い、もって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。


それでは,解説です。


1 Cさん自身の過失でけがをしたのだから,健康保険は通用されず,治療費は全額自分で負担しなければならない。


健康保険が適用されないのは,犯罪行為によってけがをした場合,故意にけがをした場合です。


過失だったとしても,給付されます。


2 Cさんの交通事故については,自動車損害賠償責任保険(自賠責)が適用され,健康保険は適用できない。


自動車損害賠償責任保険(自賠責)は,民間保険ではありますが,法で規定されている制度です。


自賠責保険が保障するのは,対人保障と対物保障です。


運転者のけが,くるまの修理は,任意保険に加入しなければ給付されません。


3 Cさんは,けがのため1週間仕事を休まざるを得なかったが,休んだ間の貸金については健康保険からは何の保障もない。


これが今日のテーマの「傷病手当金」です。けがによって労務不能になった日から連続した4日目以降の所得を保障します。


4 Cさんが会社の業務を行っている最中に自動車を電柱にぶつけてしまったとすれば,健康保険は適用されない。


これが正解です。業務災害は,労災保険が適用されるので,健康保険は適用されません。


5 その事故でCさんの眼鏡が壊れてしまったが,眼鏡代も健康保険から支給される。


眼鏡代は,保険給付されません。そのくらいは,自分で直しましょう。

2021年10月24日日曜日

制度系の事例問題

さまざまな制度が組み合わさって,社会保障制度を形成しています。

 

社会福祉士がソーシャルワーカーであるとしたら,社会福祉制度には精通していることが求められます。なぜなら,クライエントはそれを期待しているからです。

 

そのため,「社会保障が苦手」などとは言っていられません。

 

それでは,今日の問題です。

 

22回・問題53 事例を読んで,Bさんの考えに関する次の記述のうち,制度的に正しいものを1つ選びなさい

〔事 例〕

 主婦のBさんは,不況のため夫の給料が下がったので,少しでも家計を補おうと思い,パートで働きに出ることにし,新聞の折込み広告で職を探し,X社(法人)かY社(法人)にしようと考えている。求人欄には,X社は「社会保険完備」,Y社は「社会保険応相談」と記載されている。

 この事例において,社会保険とは,健康保険と厚生年金保険のことをいうこととする。

1 X社については,パートでも必ず社会保険に加入できると思った。

2 Y社については,Bさんが希望すれば,その勤務条件にかかわらず,社会保険に加入できると思った。

3 一定の勤務条件を満たせば社会保険に加入できるはずなので,社会保険については特に気にしなかった。

4 Bさんが働いて夫の被扶養配偶者でなくなると,子どもも一緒に被扶養者ではなくなってしまうのが心配だった。

5 パートで働いて自分に少しでも収入があると,夫の被扶養配偶者ではなくなるので,個人で保険料を負担して医療保険制度に加入しなければならないと思った。

 

この問題が出題されたのは,第22回国家試験です。

 

新しいカリキュラムでは,このような問題が出題されるのか,と興味深く問題を読んだことを覚えています。

 

というのは,それまでの国家試験では,事例問題は今と異なり,精神保健福祉士の国試のような長文事例問題であり,このような事例問題で制度を問う問題はなかったからです。

 

さて,社会保険(ここでいう健康保険と厚生年金)の加入要件は,以下のとおりです。

 


・週の所定労働時間が20時間以上あること

・雇用期間が1年以上見込まれること

・賃金の月額が8.8万円以上であること

・学生でないこと

・特定適用事業所または任意特定適用事業所に勤めていること(国、地方公共団体に属する全ての適用事業所を含む)


 

 

加入要件は,会社によって違いはありません。

 

1 X社については,パートでも必ず社会保険に加入できると思った。

2 Y社については,Bさんが希望すれば,その勤務条件にかかわらず,社会保険に加入できると思った。

 

これらはいずれもそんなことはありません。

 

因みに,


社会保険完備」は,適用事業所であることを示しています。

 

社会保険応相談」は,

 

社会保険に加入せず,被扶養者の範囲で働きたい

 

あるいは,

 

社会保険に加入できる程度の時間で働きたい

 

などの要望に応じます,ということを示しています。

 

正解は,選択肢3です。

 

3 一定の勤務条件を満たせば社会保険に加入できるはずなので,社会保険については特に気にしなかった。

 

一定の勤務条件とは,前述のように以下のとおりです。

 

・週の所定労働時間が20時間以上あること

・雇用期間が1年以上見込まれること

・賃金の月額が8.8万円以上であること

 

以前は,9.8万円だったものが,加入しやすいように8.8万円に引き下げられています。

 

4 Bさんが働いて夫の被扶養配偶者でなくなると,子どもも一緒に被扶養者ではなくなってしまうのが心配だった。

 

子どもが被扶養者の要件を満たしていれば,被扶養者から外れることはありません。

 

5 パートで働いて自分に少しでも収入があると,夫の被扶養配偶者ではなくなるので,個人で保険料を負担して医療保険制度に加入しなければならないと思った。

 

加入要件を満たしていなければ,被扶養配偶者のままです。

2021年10月23日土曜日

国民年金制度

我が国の5つある社会保険制度のうち,最も複雑な制度は年金保険制度です。

 

もともとあった制度を生かして,国民皆年金の制度にしたからです。

 

1階部分が国民年金(基礎年金)

 

2階部分が厚生年金

 

かつては,2階部分に共済年金がありましたが,現在は厚生年金に一元化されています。

 

それでは,今日の問題です。

 

 

22回・問題52 年金制度に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 国民年金の第3号被保険者は,第2号被保険者に扶養されている妻のための制度であり,夫は対象とならない。

2 国民年金の第1号被保険者は農業者,自営業者のための制度であり,被用者は加入することができない。

3 厚生年金と共済年金の一元化を図るための法案が,2007(平成19)年の通常国会に提出されていた。

4 共済年金は公務員のためだけの制度である。

5 国民年金の第1号被保険者の保険料は,労働者の場合は報酬比例である。

 

現在見ると,この問題はおかしなものとなっています。

 

正解は,選択肢3

3 厚生年金と共済年金の一元化を図るための法案が,2007(平成19)年の通常国会に提出されていた。

 

今は,既に一元化されているので,わざわざ廃案になった法案を出題する必要がないからです。

 

しかし,歴史的にみると貴重なものでしょう。

 

一元化は,すぐできたことがわかるからです。

 

あと,意味がないのは,選択肢4です。

 

4 共済年金は公務員のためだけの制度である。

 

共済は,公務員が中心でしたが,私学共済というものもありました。

 

それでは,このほかの選択肢も見ていきましょう。

 

1 国民年金の第3号被保険者は,第2号被保険者に扶養されている妻のための制度であり,夫は対象とならない

 

国民年金の第2号被保険者とは,厚生年金加入者です。

 

第3号被保険者は,第2号被保険者に扶養されているところまでは正しいですが,妻ではではなく「被扶養配偶者」正しいものです。

 

専業主婦でも専業主夫でも第3号被保険者となります。

 

 

2 国民年金の第1号被保険者は農業者,自営業者のための制度であり,被用者は加入することができない。

 

国民年金は,無業者,自営業者などが加入しますが,厚生年金が適用されない被用者も加入します。

 

5 国民年金の第1号被保険者の保険料は,労働者の場合は報酬比例である。

 

報酬比例とは,収入に応じて,保険料率が変わることをいいます。

 

多く払った分,多く給付を受けることができます。

 

報酬比例になっているのは,厚生年金です。

 

国民年金の保険料は,定額制です。

 

現在は,月額16,610円です。

 


2021年10月22日金曜日

児童手当の財源

児童手当の支給に要する費用の一部には,事業主からの拠出金が充てられています。


また,公費負担の割合は,


国:3分の2

地方:3分の1


となっています。


それでは,今日の問題です。


第22回・問題51 我が国の社会保障制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 民間被用者に関する児童手当には,事業主の拠出金がある。

2 健康保険及び国民健康保険には,事業主の負担がある。

3 児童扶養手当の支給は,婚姻を解消した父等が児童に対して履行すべき扶養義務の程度を軽減する。

4 児童手当制度は,所得制限が設けられていない普遍的給付である。

5 児童手当制度は,第2子から支給される。


知識がなければ,正解するのは簡単ではない問題ですが,今ならすぐわかるでしょう。


答えは


1 民間被用者に関する児童手当には,事業主の拠出金がある。


児童手当の財源は,事業主の拠出金のほかに公費(国:3分の2,地方:3分の1)が充てられています。


それでは,ほかの選択肢もみてみましょう。


2 健康保険及び国民健康保険には,事業主の負担がある。


健康保険には事業主の負担があります。


しかし,国民健康保険には事業主の負担がありません。



3 児童扶養手当の支給は,婚姻を解消した父等が児童に対して履行すべき扶養義務の程度を軽減する。


婚姻を解消した父等が児童に対して履行すべき扶養義務の程度を軽減する


とはわかりにくい表現だと思います。


簡単に言えば,児童扶養手当を受給すると養育費の支払い額を少なくしても良い,という意味です。


そんなことはありません。


10万円の養育費を払っている場合,児童扶養手当4万円を受給すると6万円になるということではありません。


なお,児童扶養手当は,物価によって変更される物価スライド制が取り入れられています。


それに対して,児童手当は,金額が固定されています。


4 児童手当制度は,所得制限が設けられていない普遍的給付である。


児童手当には,所得制限があります。


5 児童手当制度は,第2子から支給される。


児童手当は,制度ができた当初は第三子から支給されましたが,現在は,第一子から支給されています。


児童手当に関する問題をまとめた記事

https://fukufuku21.blogspot.com/2019/12/blog-post_29.html


こちらも合わせて,整理してすると良いと思います。

2021年10月21日木曜日

社会保障給付費

社会保障給付費,あるいは社会支出は,かなり高い頻度で出題されています。


出るか出ないかわからないものを覚えるよりも,出る確率が高いものをきっちり覚えることが優先されます。


しかし,参考書を見ると,細かい数字が出題されているので,覚えるのが複雑で面倒だと思いがちです。


そのため,覚えるのがついついおっくうになってしまいがちです。


しかし,国試には決して細かい数字は出題されないので,おおまかに傾向を押さえておけば十分です。


今日の問題は,傾向を押さえるには,よい問題です。ただし,今となっては正解がなくなっています。


第22回・問題50 社会保障給付費に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 平成18年度における社会保障給付費の規模は,国の一般会計予算規模の1.5倍に達している。

2 戦争犠牲者に対する給付は国の責任で行われるものであり,社会保障給付費には含まれない。 

3 平成18年度における1人当たり社会保障給付費の伸び率は,1世帯当たり社会保障給付費の伸び率よりも小さい。

4 社会保障給付費を「医療」,「年金」,「福祉その他」の部門別に見ると,平成12年度から平成18年度にかけて最も伸び率が小さいのは,「福祉その他」である。

5 平成18年度の社会保障給付費の内訳を機能別に見ると,「家族」は4%に満たない。


平成18年とは,2006年です。随分と前の数字が問われていますが,大枠はほとんど変わっていません。


この問題が現在では正解なしになっている理由は,この問題の正解はもともと選択肢5だったからです。


家族に対する給付は,現在でも8%程度しかありませんが,4%よりも多くなっているので,正解ではなくなっています。


家族に対する給付が出題される場合,多くは引っ掛けです。


現時点(2021年)では,「家族に対する給付は,10%に満たない」と覚えます。


しかし,本当はそれほど難しくはありません。なぜなら「高齢」と「保健医療」を合わせると8割にもなるので,ほかの項目はかなり少ないことが推測できるからです。


それでは,ほかの選択肢も見てみます。



1 平成18年度における社会保障給付費の規模は,国の一般会計予算規模の1.5倍に達している。


社会保障給付費は増えていますが,国の予算の1.5倍まではありません。


現在の国の予算は約100兆円,社会保障給付費は約120兆円です。


2 戦争犠牲者に対する給付は国の責任で行われるものであり,社会保障給付費には含まれない。


戦争犠牲者に対する給付は,広義の社会保障に含まれるもので,もちん社会保障給付費にも含まれます。


3 平成18年度における1人当たり社会保障給付費の伸び率は,1世帯当たり社会保障給付費の伸び率よりも小さい。


1人当たり社会保障給付費の伸び率は,1世帯当たり社会保障給付費の伸び率よりも大きくなっています。


4 社会保障給付費を「医療」,「年金」,「福祉その他」の部門別に見ると,平成12年度から平成18年度にかけて最も伸び率が小さいのは,「福祉その他」である。


こんな古いものは,知らないよ,と思う人もいるでしょう。


しかし,そう思う人は危険です。


さまざまな知識を動員して,答えさせる問題は,一定数出題されるからです。


そういった問題は,簡単ではありません。


もしあと数点足りなくて不合格になったという人は,こういった問題を正解できないところに原因があるかもしれません。


さて,ヒントです。


1994年に出された「21世紀福祉ビジョン」では,将来の社会保障給付費の割合を


年金 5

医療 3

福祉その他 2


にすることを提言しました。現在の割合は限りなくこの数字に近くなっています。


21世紀福祉ビジョンが出された当時は


年金 5

医療 4

福祉その他 1


という割合でした。つまり,医療を少なくして,福祉その他を多くするということを提言したのです。


福祉その他の割合は,3つの中では最も少ないですが,伸び率は,


1 → 2


にした関係で,最も大きくなっているのです。


こういったことを国試会場では瞬時に考えて答えを出さなければなりません。


知識がそのまま答えにつながる問題ももちろんありますが,知識に知恵を加えることによってようやく答えがわかるという問題もあります。


社会福祉士の国試は決して難しくはありませんが,知恵を試される問題もあることから,結果的に90点を超える人はわずか30%という国試になるのです。


勝ち組に入りましょう。

2021年10月20日水曜日

社会保障制度の骨組み

今回は,我が国の社会保障制度の骨組みについて考えていきたいと思います。

 

我が国の社会保障制度の範囲と方向性を示したのは,1950(昭和25)年の社会保障制度審議会勧告です。

 

同勧告では,社会保障制度を以下のように述べています。

 

疾病,負傷,分娩,廃失,死亡,老齢,失業,多子その他の困窮の原因に対し,保険的方法又は直接公の負担において経済保障の途を講じ,生活困窮に陥った者に対しては,国家扶助によって最低限度の生活を保障するとともに,公衆衛生及び社会福祉の向上を図り,もってすべての国民が文化的社会の成員たるに値する生活を営むことができるようにすることをいうのである。

 

 

この時には,まだ協議の社会保障である老人保健は含まれていません。

 

それでは,今日の問題です。

 

22回・問題49 社会保障の理念や対象及びその範囲に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 「社会保障制度に関する勧告(1950(昭和25)年)」で示された保険的方法又は公の扶助の対象となる困窮の原因とは,疾病,負傷,分娩,怠惰,死亡,老齢,失業,粗暴,多子その他,である。

2 「平成18年度社会保障給付費」によれば,社会保障財源の収入総額に占める公費負担(国及び地方自治体)の割合はおよそ5割を超えている。

3 その第22条に「すべて人は,社会の一員として,社会保障を受ける権利を有している」と謳ったのは,アメリカ,イギリスによって唱えられ,後に連合国が容認した,いわゆる「大西洋憲章(1941年)」の一文である。

4 社会保障の所得再分配機能のうち,生活保護制度に代表されるように所得の高い者から低い者へ再分配することを,水平的所得再分配機能という。

5 我が国において公的社会保険制度と呼ばれるものは,年金,医療,労働者災害補償,雇用,介護の5つである。

 

 

とても難しいと思うような問題ですが,答えはそれほど難しくありません。

 

正解は,選択肢5です。

 

5 我が国において公的社会保険制度と呼ばれるものは,年金,医療,労働者災害補償,雇用,介護の5つである。

 

何のひねりもないものです。しかし,選択肢5に配置されていることで,受験者は混乱し,ここに至るまでに迷いの道に迷い込みます。

 

一問一答での勉強は,知識をつけることには向きますが,国家試験は5つの選択肢で構成されるために,最終的には,必ず国試問題スタイルになっているもので,解く練習をする必要があります。

 

それでは,ほかの選択肢も確認します。

 

1 「社会保障制度に関する勧告(1950(昭和25)年)」で示された保険的方法又は公の扶助の対象となる困窮の原因とは,疾病,負傷,分娩,怠惰,死亡,老齢,失業,粗暴,多子その他,である。

 

疾病,負傷,分娩,怠惰,死亡,老齢,失業,粗暴,多子その他

 

赤字で示した部分が余計です。

 

2 「平成18年度社会保障給付費」によれば,社会保障財源の収入総額に占める公費負担(国及び地方自治体)の割合はおよそ5割を超えている。

 

我が国の社会保障制度の根幹は,社会保険制度です。

 

なぜなら,大多数を対象とする制度だからです。

 

そのため,社会保障財源は,社会保険料が最も大きくなります

 

そのように制度設計がなされるので,年度が替わってもそれが変わることはありません。

 

3 その第22条に「すべて人は,社会の一員として,社会保障を受ける権利を有している」と謳ったのは,アメリカ,イギリスによって唱えられ,後に連合国が容認した,いわゆる「大西洋憲章(1941年)」の一文である。

 

なになになに と思う問題です。

 

「すべて人は」から始まるのは,世界人権宣言です。

 

大西洋憲章については覚える必要はありません。

 

4 社会保障の所得再分配機能のうち,生活保護制度に代表されるように所得の高い者から低い者へ再分配することを,水平的所得再分配機能という。

 

所得の高い者から低い者へ再分配することは

 

垂直的所得再分配機能です。

2021年10月19日火曜日

社会福祉士国家試験に合格するということ

就職するために資格が必要な人もいることでしょう。

 

しかし,既に職業人として働き,それなりのキャリアがある人は,必ずしも資格取得が必要ではないという人もいます。

 

そういった人が陥りそうになるのが


本当に資格が必要なのだろうか


という迷いの森です。

 

多少の差はあるものの勉強時間が十分に取れないのは社会人共通の悩みです。

 

あきらめることは簡単です。

 

しかし,そうするとおそらく次の年も逃げます。

 

勉強が進んでいないので,とりあえず今年は受験するけれど・・・

 

という弱い気持ちも危険です。

 

不合格になっても悔しくないからです。

 

合格率は高くても30%なのですから,簡単に合格できない試験であることは確かです。

 

しかし,多くの人は逃げの気持ちで受験しているように思うのです。

 

その気持ちを乗り越えることができた時,合格に続く道が開くように感じます。

 

辛い気持ちで勉強すると極端にパフォーマンスが低下します。

 

時間が限られるからこそ,今一度気持ちを整理してみることが必要な気がします。

 

※今日の問題はお休みします。

2021年10月18日月曜日

福祉計画の策定期間

福祉計画にはたくさんの種類があり,覚えるのは大変です。


今回は,策定期間を取り上げます。


策定期間を整理すると,以下のようにまとめることができます。


・期間の規定がないもの。

・3年を一期とするもの。

・5年を一期とするもの。

・6年を一期とするもの。


このポイントを整理しながら,今日の問題です。


第22回・問題47 市町村が策定主体と定められた福祉に関する計画についての次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 市町村は,障害者基本法に基づき,市町村障害者計画を策定しなければならないが,特に計画期間の定めは置かれていない。

2 市町村は,社会福祉法において,5年を一期とする地域福祉計画を策定しなければならないとされている。

3 市町村は,次世代育成支援対策推進法において,3年を一期とする次世代育成支援行動計画を策定するものとするとされている。

4 市町村は,老人福祉法において,5年を一期とする老人福祉計画を作成するものとされている。

5 市町村は,介護保険法において,1年を一期とする介護保険事業計画を定めるもとするとされている。


この問題が出題された時は,難しいと思った人が多かったと思います。


どんな問題が出題されるかが予想できなかったためです。


しかし,その後何度も出題されるようになったので,今なら見慣れたものとなっていることでしょう。


第22回の時は,正解できなかった人が多かったと思いますが,近年の類似問題は,正解できる人とできない人に分かれると思います。


勉強した人が正解できる。

勉強不足の人は正解できない。


国家試験の理想です。


それでは,解説です。


1 市町村は,障害者基本法に基づき,市町村障害者計画を策定しなければならないが,特に計画期間の定めは置かれていない。


これが正解です,


障害者計画は,策定期間の規定がないグループです。


ほかには,地域福祉計画,老人福祉計画などが策定期間の規定がないグループです。


2 市町村は,社会福祉法において,5年を一期とする地域福祉計画を策定しなければならないとされている。


地域福祉計画も策定期間の規定がないグループです。


3 市町村は,次世代育成支援対策推進法において,3年を一期とする次世代育成支援行動計画を策定するものとするとされている。


行動計画は,5年を一期とするグループです。


ほかには,子ども・子育て支援業計画が,5年を一期とする計画です。


4 市町村は,老人福祉法において,5年を一期とする老人福祉計画を作成するものとされている。


老人福祉計画は,策定期間の規定がないグループです。


5 市町村は,介護保険法において,1年を一期とする介護保険事業計画を定めるもとするとされている。


介護保険事業計画は,3年を一期とするグループです。


ほかには,障害福祉計画と障害児福祉計画しか,3年を一期とするものはありません。


この問題が出題された当時は,6年を一期とするものはありませんでした。


平成30年の改正で,医療計画,医療費適正化計画がそれまでの5年を一期から,6年を一期に変更されています。


2021年10月17日日曜日

地域福祉計画の策定について

地域福祉計画は,社会福祉法で規定されています。

 

全文を紹介します。

 

市町村地域福祉計画


第百七条 市町村は、地域福祉の推進に関する事項として次に掲げる事項を一体的に定める計画(以下「市町村地域福祉計画」という。)を策定するよう努めるものとする。

一 地域における高齢者の福祉、障害者の福祉、児童の福祉その他の福祉に関し、共通して取り組むべき事項

二 地域における福祉サービスの適切な利用の推進に関する事項

三 地域における社会福祉を目的とする事業の健全な発達に関する事項

四 地域福祉に関する活動への住民の参加の促進に関する事項

五 地域生活課題の解決に資する支援が包括的に提供される体制の整備に関する事項

2 市町村は、市町村地域福祉計画を策定し、又は変更しようとするときは、あらかじめ、地域住民等の意見を反映させるよう努めるとともに、その内容を公表するよう努めるものとする。

3 市町村は、定期的に、その策定した市町村地域福祉計画について、調査、分析及び評価を行うよう努めるとともに、必要があると認めるときは、当該市町村地域福祉計画を変更するものとする。


 

都道府県地域福祉支援計画


第百八条 都道府県は、市町村地域福祉計画の達成に資するために、各市町村を通ずる広域的な見地から、市町村の地域福祉の支援に関する事項として次に掲げる事項を一体的に定める計画(以下「都道府県地域福祉支援計画」という。)を策定するよう努めるものとする。

一 地域における高齢者の福祉、障害者の福祉、児童の福祉その他の福祉に関し、共通して取り組むべき事項

二 市町村の地域福祉の推進を支援するための基本的方針に関する事項

三 社会福祉を目的とする事業に従事する者の確保又は資質の向上に関する事項

四 福祉サービスの適切な利用の推進及び社会福祉を目的とする事業の健全な発達のための基盤整備に関する事項

五 市町村による地域生活課題の解決に資する支援が包括的に提供される体制の整備の実施の支援に関する事項

2 都道府県は、都道府県地域福祉支援計画を策定し、又は変更しようとするときは、あらかじめ、公聴会の開催等住民その他の者の意見を反映させるよう努めるとともに、その内容を公表するよう努めるものとする。

3 都道府県は、定期的に、その策定した都道府県地域福祉支援計画について、調査、分析及び評価を行うよう努めるとともに、必要があると認めるときは、当該都道府県地域福祉支援計画を変更するものとする。


 

平成30年改正で,策定が「任意」から「努力義務」になっています。

 

そして,地域福祉計画は,「高齢者の福祉、障害者の福祉、児童の福祉その他の福祉」に関する上位計画に位置づけられました。

 

それでは,今日の問題です。

 

ただし,現在では法改正により,正解はありません。

 

22回・問題45 地域福祉計画についての社会福祉法の規定に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 市町村は,市町村地域福祉計画を策定しようとするときは,市町村議会の議決を経るものとされている。

2 市町村地域福祉計画は,社会福祉を目的とする事業に従事する者の確保又は資質の向上に関する事項を含め,定めるものとされている。

3 都道府県は,地方自治法に基づく基本構想に即して,都道府県地域福祉支援計画を策定するものとされている。

4 都道府県は,都道府県地域福祉支援計画を策定しようとするときは,あらかじめ,住民やその他の者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとされている。

5 市町村地域福祉計画は,社会福祉を目的とする事業の健全な発達のための基盤整備に関する事項を含め,定めるものとされている。

 

この問題に正解がない理由は,選択肢4がもともとの正解だったからです。

 

平成30年改正前では「必要な措置を講ずるものとする」というぼんやりしたものだったこともあり,現在では,以下のように改正して,責任を明確にしたのです。

 

改正前

改正後

必要な措置を講ずるものとする。

住民その他の者の意見を反映させるよう努める。

 

責務がちょっぴり明確になっています。

 

なお,市町村地域福祉計画と都道府県地域福祉支援計画の違いとして,「公聴会の開催」の表現があるのは,都道府県です。

 

それも合わせて覚えておきたいです。

 

それでは,これ以外の解説です。

 

1 市町村は,市町村地域福祉計画を策定しようとするときは,市町村議会の議決を経るものとされている。

 

「議会の議決を経る」とはずいぶん唐突な感じがすることでしょう。

 

しかし,このように出題したのは,元ネタがあるからです。

 

それは障害者基本法が定める障害者計画です。

 

同計画では,「都道府県障害者計画又は市町村障害者計画が策定されたときは、都道府県知事又は市町村長は、これを当該都道府県の議会又は当該市町村の議会に報告する」と規定されています。

 

ただし,議決を経るものではありません。

 

2 市町村地域福祉計画は,社会福祉を目的とする事業に従事する者の確保又は資質の向上に関する事項を含め,定めるものとされている。

 

これは,特徴的なものです。

 

しっかり押さえておきたいです。

 

社会福祉を目的とする事業に従事する者の確保又は資質の向上に関する事項を定めるのは,都道府県地域福祉支援計画です。

 

専門職の確保や資質の向上は,都道府県の役割だからです。

 

市町村には向きません。市町村というとまとめるとわかりにくいですが,「村」では,それを効率的に行える規模はありません。

 

3 都道府県は,地方自治法に基づく基本構想に即して,都道府県地域福祉支援計画を策定するものとされている。

 

かつては,地方自治法では基本構想というものが規定されていましたが,今はありません。

 

5 市町村地域福祉計画は,社会福祉を目的とする事業の健全な発達のための基盤整備に関する事項を含め,定めるものとされている。

 

基盤整備も都道府県地域福祉支援計画で定めます。

 

市町村と都道府県の特徴が何となくでも押さえられましたか?

2021年10月16日土曜日

地方の歳出と民生費

 地方財政は,今のところほとんど毎年出題されています。


こういったものを確実に覚えておくことはとても重要ですが,覚えにくいために正解するのは結構難しいものです。


それでは,今日の問題です。


第22回・問題44 「地方財政白書」(平成21年版)に示された平成19年度の我が国の地方財政の状況に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。(解説は最新の数字)

1 国と地方を通じた財政支出(最終支出・約150兆円)のうち,国と地方の割合は,およそ6:4である。

2 地方公共団体の歳出を目的別に見てみると,民生費が最も大きな割合を占め,以下,教育費,土木費の順となっている。

3 地方公共同体の民生費の歳出を目的別に見てみると,生活保護費が最も大きな割合を占め,以下,老人福祉費,児童福祉費の順となっている。

4 地方公共団体の歳入の純計(一般財源と特定財源を含む)において,地方税による歳入は,約6割を占めている。

5 市町村のうち,実質収支が赤字で,いわゆる赤字団体となっている自治体は,全体の約2割を占めている。


古い統計ですが,傾向は一切変わりません。


ポイントを押さえて覚えましょう。


それでは,解説です。


1 国と地方を通じた財政支出(最終支出・約150兆円)のうち,国と地方の割合は,およそ6:4である。


金額は異なっても,国と地方の割合は,現在も4:6で,地方のほうが多くなっています。

歳入は,逆に国が大きくなっています。


2 地方公共団体の歳出を目的別に見てみると,民生費が最も大きな割合を占め,以下,教育費,土木費の順となっている。


これが正解です。


2番目以降に変化はありますが,最も大きいのは民生費です。


面倒ですが,都道府県と市町村に分けると順位が異なります。


都道府県で最も大きいのは,教育費です。


市町村で最も大きいのは,民生費です。


ちょっと複雑ですが,こういったものをきっちり覚えられる人が合格をつかみ取ります。


3 地方公共同体の民生費の歳出を目的別に見てみると,生活保護費が最も大きな割合を占め,以下,老人福祉費,児童福祉費の順となっている。


2番目以降に変化はありますが,最も大きいのは児童福祉費です。


これも都道府県と市町村に分ける順位が異なります。


都道府県で最も大きいのは,老人福祉費です。


市町村で最も大きいのは,児童福祉費です。


4 地方公共団体の歳入の純計(一般財源と特定財源を含む)において,地方税による歳入は,約6割を占めている。3


地方税の割合は,約4割です。


使途が自由な財源

地方税(約40%)

地方交付税(約15%)

使途が特定されている財源

国庫支出金(約15%)


5 市町村のうち,実質収支が赤字で,いわゆる赤字団体となっている自治体は,全体の約2割を占めている。


赤字団体が2割もあったらもっと問題になっているはずです。


1割にも満たない1%未満です。

2021年10月15日金曜日

地方財政(地方交付税と国庫支出金)

地方公共団体の歳入を覚えたいと思います。

 

最も大きいのは,地方税で約40%を占めています。

 

そのほかには,国から地方交付税国庫支出金を受けています。

 

この2つを足しても30%程度なので,地方税のほうが多いことになります。

 

この3つを使途の視点で整理すると以下のようになります。

 

使途が自由な財源

地方税

地方交付税

使途が特定されている財源

国庫支出金

 

使途が特定されている財源とは,介護保険の国の負担などの意味です。

 

それでは,今日の問題です。

 

22回・問題43 地方財政制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 地方交付税は,地方公共団体間の財政力の不均衡を是正することを主な目的として,国から地方公共団体に対し,使途を特定して交付されるものである。

2 地方公共団体の会計には一般会計と特別会計があり,介護保険と国民健康保険に関しては,一般の歳入・歳出と区分するため,それぞれ特別会計が設けられている。

3 市町村が実施する社会福祉事業に必要な軽費について,国・都道府県・市町村が負担する割合は,社会福祉法において,原則として2:1:1と定められている。

4 「三位一体の改革」において,地方公共団体の財政力を強化するため,国庫補助負担金の大幅な拡充が行われた。

5 「地方財政健全化法」に基づき財政健全化計画が定められた地方公共団体は,法律上設置が義務づけられていない公の施設を閉鎖しなければならないものとされている。

(注)1 「三位一体の改革」とは,「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」(いわゆる「骨太の方針2003」,平成15年6月27日閣議決定)などに基づいて行われた一連の地方財政改革をいう。

2 「地方財政健全化法」とは,「地方公共団体の財政の健全化に関する法律(平成19年法律第94号)」のことである。

 

知識が不足していると焦ってしまいそうな問題ですが,答えはそれほど難しくはありません。

 

正解は,選択肢2です。

 

2 地方公共団体の会計には一般会計と特別会計があり,介護保険と国民健康保険に関しては,一般の歳入・歳出と区分するため,それぞれ特別会計が設けられている。

 

特別会計を設けなければならないものは,数多くありますが,社会福祉士の国家試験で出題されるのは,介護保険特別会計国民健康保険特別会計の2つです。

 

それでは,ほかの選択肢も見てみましょう。

 

1 地方交付税は,地方公共団体間の財政力の不均衡を是正することを主な目的として,国から地方公共団体に対し,使途を特定して交付されるものである。

 

地方交付税は,使途が自由な財源です。

 

使途が特定されている財源は,国庫支出金です。

 

 

3 市町村が実施する社会福祉事業に必要な軽費について,国・都道府県・市町村が負担する割合は,社会福祉法において,原則として2:1:1と定められている。

 

このような規定はありません。

 

しかも負担割合は,それぞれの社会福祉事業によって異なります。

 

例えば,第一種社会福祉事業でも,生活保護法の保護施設の場合は,国は7割も負担していますが,そのほかの第一種社会福祉事業の多くは,5割です。

 

4 「三位一体の改革」において,地方公共団体の財政力を強化するため,国庫補助負担金の大幅な拡充が行われた。

 

三位一体改革は,今となっては古いですが,この改革によって,財源を地方に移して,国庫支出金を削減しています。

 

5 「地方財政健全化法」に基づき財政健全化計画が定められた地方公共団体は,法律上設置が義務づけられていない公の施設を閉鎖しなければならないものとされている。

 

このような規定はありません。

 

再建するための方法は,地方がそれぞれ考えます。それを国を支援することになります。

2021年10月14日木曜日

インボランタリークライエントへの対応

援助を求めないインボランタリークライエントに対して,どのように対応するか,とても難しい局面です。


しかし,事例の多くは,初期場面であり,具体的な援助方法を考える前の段階です。


それを忘れてはなりません。


それでは,今日の問題です。


第22回・問題40 事例を読んで,社会福祉士の行動に関する次の記述のうち,最も適切なものを一つ選びなさい

〔事 例〕

 Aさん(80歳)は身体が不自由で引きこもりがちな一人暮らしであるが,介護保険の利用を拒否していた。Aさんの家屋はごみであふれ返っており,近隣住民は迷惑がっていた。そのことを心配していた近隣住民の一人が,社会福祉協議会の職員(社会福祉士)に相談した。社会福祉士は解決に向けて行動を起こした。

1 その近隣住民に,近所で話し合って,ごみを処理するよう依頼した。 

2 近隣の不安や迷惑を考慮して,Aさんに対して早い時期に引っ越しをあっせんすることにした。 

3 専門職で組織される地域ケア会議において,Aさんの円滑な施設入所支援の方針を提案した。

4 Aさんの家屋のごみ回収について,社会福祉協議会として近隣住民や民生委員,役所などと協力して対応することにした。

5 Aさんが要介護認定を拒否したことから,地域包括支援センターへの連絡はしばらく見合わせることにした。


インボランタリークライエントに対しては,見守り体制をつくることが正解になることがよく見られます。


見守りは,何もしないことのように思うかもしれません。



しかし,実際には,ネットワーキングが行われています。見守りは,何もしないことだと思うのは,現場を知らない人です。


何もしない,というのは,選択肢5のようなことをいいます。


この問題の正解は,選択肢4です。


4 Aさんの家屋のごみ回収について,社会福祉協議会として近隣住民や民生委員,役所などと協力して対応することにした。


協力して対応する,という表現の裏には,ネットワーキングがあります。


ネットワーキングは,ソーシャルワークの重要な機能の一つです。


連携のプロである社会福祉士の腕の見せ所だと言えるでしょう。


ほかの選択肢は解説しません。

2021年10月13日水曜日

介護相談員とは

今回は,介護相談員を取り上げたいと思います。

 

介護相談員は,介護保険法の地域支援事業の任意事業である「介護相談員派遣等事業」に基づいて活動を行っています。

 

厚生労働省「介護相談員派遣等事業について」では,以下のように説明されています。

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000114155.pdf


介護相談員は,利用者と介護サービス提供事業者が問題を解決するよう橋渡し役を務めます。

 

任意事業だということもあり,同事業を実施している市町村は3割程度にすぎません。

 

そのため広く知られていないこともあり,国家試験では注意しなければなりません。

 

市町村に登録して活動するボランティアですが,国家試験では重要な役割を担うものとして引っ掛けでよく使われるからです。

 

しかし,介護相談員はボランティアです。利用者の不満を聞いて,それを介護サービス提供事業者に届けることが基本的役割です。

 

それでは,今日の問題です。

 

22回・問題39 地域福祉推進に関連する人材に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 日常生活自立支援事業の専門員は,日常生活自立支援事業の相談から契約までを担当する専門職であり,原則として主任介護支援専門員が任用される。

2 福祉活動専門員は,市町村社会福祉協議会に設置され,民間福祉活動における調査,企画,連絡調整及び在宅福祉サービス提供に従事する。

3 介護相談員は,介護サービス利用者の疑問や不満,不安の相談に応じ,サービス担当者と意見交換等を行うボランティアである。

4 認知症サポーターは,認知症の人や家族の支援を行うことを目的として,市町村長から委嘱されて活動する。

5 任用資格であるボランティアコーディネーターは,ボランティア活動の調整だけでなく,社会組織のネットワーキングや資源開発などの機能も担う。

 

 

正解は,すぐわかるでしょう。選択肢3です。

 

3 介護相談員は,介護サービス利用者の疑問や不満,不安の相談に応じ,サービス担当者と意見交換等を行うボランティアである。

 

珍しく,この時は正解となっていますが,本当に注意が必要です。

 

それでは,ほかの選択肢も確認します。

 

1 日常生活自立支援事業の専門員は,日常生活自立支援事業の相談から契約までを担当する専門職であり,原則として主任介護支援専門員が任用される。

 

日常生活自立支援事業の概要 

実施主体

都道府県社会福祉協議会・指定都市社会福祉協議会(窓口業務等は市町村の社会福祉協議会等で実施)

対象者

判断能力が不十分な方(認知症高齢者,知的障害者,精神障害者等であって,日常生活を営むのに必要なサービスを利用するための情報の入手,理解,判断,意思表示を本人のみでは適切に行うことが困難な方)

本事業の契約の内容について判断し得る能力を有していると認められる方

援助の内容

本事業に基づく援助の内容は,次に掲げるものを基準とします。

福祉サービスの利用援助

苦情解決制度の利用援助

住宅改造,居住家屋の貸借,日常生活上の消費契約及び住民票の届出等の行政手続に関する援助等

 

上記に伴う援助の内容は,次に掲げるものを基準とします。

預金の払い戻し,預金の解約,預金の預け入れの手続等利用者の日常生活費の管理(日常的金銭管理)

定期的な訪問による生活変化の察知

 

日常生活自立支援事業にかかわる専門職は,2職種があります。

 

そのうち,専門員は,社会福祉士,精神保健福祉士,社会福祉主事任用資格をもつ者などから,一定の研修を受けたものが任用され,相談や契約,支援計画の作成などを行います。

 

実際に支援するのは,生活支援員です。生活支援員には任用資格は定められていません。

 

2 福祉活動専門員は,市町村社会福祉協議会に設置され,民間福祉活動における調査,企画,連絡調整及び在宅福祉サービス提供に従事する。

 

福祉活動専門員は,1966(昭和41)年から国庫補助事業(現在は,一般財源化)として,市町村社会福祉協議会に設置されるようになり,民間福祉活動における調査,企画,連絡調整などを行います。

 

しかし,在宅福祉サービス提供は,基本的には行いません。

 

4 認知症サポーターは,認知症の人や家族の支援を行うことを目的として,市町村長から委嘱されて活動する。

 

市町村から委嘱されて活動しているのは,介護相談員です。

 

認知症サポーターは,現在は広く知られているようになっているので,間違える人は少ないと思いますが,講師役であるキャラバンメイトが実施する研修を受講することで認知症サポーターとなります。

 

幼稚園児や保育園児であっても,研修を受けると認知症サポーターとなります。

 

5 任用資格であるボランティアコーディネーターは,ボランティア活動の調整だけでなく,社会組織のネットワーキングや資源開発などの機能も担う。

 

その選択肢は,とてもいやらしいです。

 

ボランティアコーディネーターの役割

・ボランティア活動の調整

・社会組織のネットワーキングや資源開発 など

 

この部分は適切ですが,任用資格ではありません。

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