2021年10月27日水曜日

ブース,ラウントリーの貧困調査

イギリスにおいて,19世紀後半から20世紀にかけてブース,ラウントリーらが行った貧困調査は,極めて重要です。


これらの調査によって,それまで貧困の原因は怠惰などの理由によるものだと考えられていたものを社会の構造や環境によるものであることを明らかにしたからです。


つまり,貧困は,資本主義という構造の欠陥によって生じていたのです。


そのことが明らかになったことで,資本主義各国は,社会保障制度を整えて,資本主義の欠陥を修正したのです。その結果,福祉国家となっていきます。


そのきっかけをつくったのが,貧困調査です。


それでは,今日の問題です。


第22回・問題56 貧困に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 エンゲル(Engel,E.)は,家計調査に基づき,飲食物費が家計支支出に占める割合が高いほど最低生活が充足されているとした。

2 ラウントリー(Rowntree,B.S.)は,貧困調査において,貧困をその程度に応じて第一次貧困と第二次貧困に区分した。

3 ウェッブ夫妻(Webb,S.&B.)は,労働調査を通して「貧困の再発見」をした。

4 ルイス(Lewis,O.)は,貧困の多様性・広汎性・複合性を「相対的剥奪」という概念で整理した。

5 セン(Sen,A.)は,人々の社会への関与が遮断されている状態を指して,「社会的排除」という概念を提唱した。


想像がつくと思いますが,正解は,選択肢2です。


2 ラウントリー(Rowntree,B.S.)は,貧困調査において,貧困をその程度に応じて第一次貧困と第二次貧困に区分した。


ラウントリーがヨーク市で行った貧困調査は,マーケットバスケット方式と呼ばれる化学的な方法を用いて,第一次貧困線(生きることがギリギリできる貧困)と第二次貧困線(賭博や飲酒をしなければ生きることができる貧困)を設定して実施しました。


それでは,ほかの選択肢を確認します。


1 エンゲル(Engel,E.)は,家計調査に基づき,飲食物費が家計支支出に占める割合が高いほど最低生活が充足されているとした。


エンゲルは,エンゲル係数で知られます。


飲食物費が家計支支出に占める割合が高いことは,生活に余裕がないことを示します。


3 ウェッブ夫妻(Webb,S.&B.)は,労働調査を通して「貧困の再発見」をした。


ウェッブ夫妻が提唱したのは「ナショナルミニマム」(国家による最低生活保障)です。


貧困の再発見とは,20世紀中盤,豊かさの中に,貧困にあることを見つけたものです。


4 ルイス(Lewis,O.)は,貧困の多様性・広汎性・複合性を「相対的剥奪」という概念で整理した。


ルイスは,貧困になる人には「貧困の文化」があるということを提唱しました。


貧困の文化とは,貧困者は貧困であることを受け入れているというものです。


相対的剥奪を提唱したのは,タウンゼントです。


5 セン(Sen,A.)は,人々の社会への関与が遮断されている状態を指して,「社会的排除」という概念を提唱した。


センが提唱したのは「ケイパビリティアプローチ」です。

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