令和3年10月4日,日本では第100代の総理大臣に岸田文雄首相が選出されました。
岸田首相が示した政策の中で,興味深いことがいくつかありますが,その一つには「公定価格の引き上げ」です。
医療,介護,保育は,自由な参入が認められ,競争もありますが,提供するサービスの価格は国が決める「公定価格」です。
こういった市場を「疑似市場(準市場)」といいます。
一般的な市場は,供給と需要によって価格が決まります。
しかし,介護などは,サービスの質が良くても悪くても,提供するサービスの価格は決まっています。
岸田首相が掲げるのは,医療,介護,保育の公定価格の引き上げです。介護,保育はわかるものの医療を含めるのはどうなのかと思います。
それでは,今日の問題です。
第22回・問題30 福祉政策と市場とのかかわりに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 福祉政策における公共財の供給とは,経済社会における「家計の失敗」を原因として概念化されたものであり,あらゆる供給セクターを通じて行われる福祉サービス供給の総称である。
2 公共財は,競合性と排除性によって特徴づけられるので,必要な人があまねく消費するためには各人に公平に分配するための福祉政策が必要になる。
3 価値財は教育サービスのように公的に提供されるものもあるが,基本的には個人の価値観に基づいて消費されるので市場における供給が基本であり,公的供給は二次的である。
4 福祉政策は,必要な人が市場を通じて財やサービスを適正な価格で入手できるように,独占禁止などの必要な税制を行い適正な競争環境を整えることを主な目的としている。
5 公的サービスの提供において部分的に市場メカニズムを取り入れた方式を総称して疑似市場といい,我が国の介護保険制度における介護サービスの提供にはこの疑似市場の要素が導入されている。
なんだか難しい用語が並んでいます。
しかし,答えはわかりますね? 正解は選択肢です。
5 公的サービスの提供において部分的に市場メカニズムを取り入れた方式を総称して疑似市場といい,我が国の介護保険制度における介護サービスの提供にはこの疑似市場の要素が導入されている。
日本の介護保険制度は,自由な参入は認めれていますが,提供するサービスの価格は,事業者が独自に決めることができません。この仕組みが疑似市場(準市場)です。
この公定価格,つまり介護報酬を引き上げることは,財源を必要とします。新しい資本主義を目指す中で実現することを目指すのだと思いますが,多難な道でしょう。
それでは,ほかの選択肢も確認します。
1 福祉政策における公共財の供給とは,経済社会における「家計の失敗」を原因として概念化されたものであり,あらゆる供給セクターを通じて行われる福祉サービス供給の総称である。
「〇〇の失敗」とは,〇〇が思うように機能しないことをいいますが,家計とは,個人のお金のやりくりのことです。「家計の失敗」という用語はありません。
何とでたらめの文章なのでしょう。びっくりです。
公共財は,公的セクター(国や地方公共団体など)が供給するものです。
2 公共財は,競合性と排除性によって特徴づけられるので,必要な人があまねく消費するためには各人に公平に分配するための福祉政策が必要になる。
公共財の例は,道路です。道路は誰かが使ってもほかの人も使えます。このように公共財の特徴は「非競合性」と「非排除性」です。
3 価値財は教育サービスのように公的に提供されるものもあるが,基本的には個人の価値観に基づいて消費されるので市場における供給が基本であり,公的供給は二次的である。
価値材とは,国などが特に重要なものを制度を整えて供給するものをいいます。
価値材の例は,義務教育です。
4 福祉政策は,必要な人が市場を通じて財やサービスを適正な価格で入手できるように,独占禁止などの必要な税制を行い適正な競争環境を整えることを主な目的としている。
福祉政策は,国民の福祉の向上を目的とするものです。
中には,介護保険制度などのように疑似市場(準市場)で供給されるものもありますが,社会福祉制度はそういったものには向きません。それらの供給を行うことも福祉政策です。