今回は,介護相談員を取り上げたいと思います。
介護相談員は,介護保険法の地域支援事業の任意事業である「介護相談員派遣等事業」に基づいて活動を行っています。
厚生労働省「介護相談員派遣等事業について」では,以下のように説明されています。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000114155.pdf
介護相談員は,利用者と介護サービス提供事業者が問題を解決するよう橋渡し役を務めます。
任意事業だということもあり,同事業を実施している市町村は3割程度にすぎません。
そのため広く知られていないこともあり,国家試験では注意しなければなりません。
市町村に登録して活動するボランティアですが,国家試験では重要な役割を担うものとして引っ掛けでよく使われるからです。
しかし,介護相談員はボランティアです。利用者の不満を聞いて,それを介護サービス提供事業者に届けることが基本的役割です。
それでは,今日の問題です。
第22回・問題39 地域福祉推進に関連する人材に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 日常生活自立支援事業の専門員は,日常生活自立支援事業の相談から契約までを担当する専門職であり,原則として主任介護支援専門員が任用される。
2 福祉活動専門員は,市町村社会福祉協議会に設置され,民間福祉活動における調査,企画,連絡調整及び在宅福祉サービス提供に従事する。
3 介護相談員は,介護サービス利用者の疑問や不満,不安の相談に応じ,サービス担当者と意見交換等を行うボランティアである。
4 認知症サポーターは,認知症の人や家族の支援を行うことを目的として,市町村長から委嘱されて活動する。
5 任用資格であるボランティアコーディネーターは,ボランティア活動の調整だけでなく,社会組織のネットワーキングや資源開発などの機能も担う。
正解は,すぐわかるでしょう。選択肢3です。
3 介護相談員は,介護サービス利用者の疑問や不満,不安の相談に応じ,サービス担当者と意見交換等を行うボランティアである。
珍しく,この時は正解となっていますが,本当に注意が必要です。
それでは,ほかの選択肢も確認します。
1 日常生活自立支援事業の専門員は,日常生活自立支援事業の相談から契約までを担当する専門職であり,原則として主任介護支援専門員が任用される。
日常生活自立支援事業の概要
実施主体 |
都道府県社会福祉協議会・指定都市社会福祉協議会(窓口業務等は市町村の社会福祉協議会等で実施) |
対象者 |
判断能力が不十分な方(認知症高齢者,知的障害者,精神障害者等であって,日常生活を営むのに必要なサービスを利用するための情報の入手,理解,判断,意思表示を本人のみでは適切に行うことが困難な方) 本事業の契約の内容について判断し得る能力を有していると認められる方 |
援助の内容 |
本事業に基づく援助の内容は,次に掲げるものを基準とします。 福祉サービスの利用援助 苦情解決制度の利用援助 住宅改造,居住家屋の貸借,日常生活上の消費契約及び住民票の届出等の行政手続に関する援助等 上記に伴う援助の内容は,次に掲げるものを基準とします。 預金の払い戻し,預金の解約,預金の預け入れの手続等利用者の日常生活費の管理(日常的金銭管理) 定期的な訪問による生活変化の察知 |
日常生活自立支援事業にかかわる専門職は,2職種があります。
そのうち,専門員は,社会福祉士,精神保健福祉士,社会福祉主事任用資格をもつ者などから,一定の研修を受けたものが任用され,相談や契約,支援計画の作成などを行います。
実際に支援するのは,生活支援員です。生活支援員には任用資格は定められていません。
2 福祉活動専門員は,市町村社会福祉協議会に設置され,民間福祉活動における調査,企画,連絡調整及び在宅福祉サービス提供に従事する。
福祉活動専門員は,1966(昭和41)年から国庫補助事業(現在は,一般財源化)として,市町村社会福祉協議会に設置されるようになり,民間福祉活動における調査,企画,連絡調整などを行います。
しかし,在宅福祉サービス提供は,基本的には行いません。
4 認知症サポーターは,認知症の人や家族の支援を行うことを目的として,市町村長から委嘱されて活動する。
市町村から委嘱されて活動しているのは,介護相談員です。
認知症サポーターは,現在は広く知られているようになっているので,間違える人は少ないと思いますが,講師役であるキャラバンメイトが実施する研修を受講することで認知症サポーターとなります。
幼稚園児や保育園児であっても,研修を受けると認知症サポーターとなります。
5 任用資格であるボランティアコーディネーターは,ボランティア活動の調整だけでなく,社会組織のネットワーキングや資源開発などの機能も担う。
その選択肢は,とてもいやらしいです。
ボランティアコーディネーターの役割
・ボランティア活動の調整
・社会組織のネットワーキングや資源開発 など
この部分は適切ですが,任用資格ではありません。