2021年10月25日月曜日

傷病手当金について

医療保険は,医療の現物給付だけではなく,所得補償の制度もあります。


労働力を商品化している労働者にとって,病気で働けなくなることは貧困に直結するからです。


我が国の代表は傷病手当金です。


傷病手当金とは・・・


医療保険の被保険者が,けがや病気のために仕事に就けないために,給与が支払われない場合に給付されるものです。


ただし4日目からという条件があります。


傷病手当金は,健康保険と共済は法定給付で,国民健康保険は任意給付です。


それでは,今日の問題です。


第22回・問題54 事例を読んで,次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 健康保険の被保険者であるCさんは,自動車を誤って電柱にぶつけてしまい,けがをしたので,治療のため病院に行った。

1 Cさん自身の過失でけがをしたのだから,健康保険は通用されず,治療費は全額自分で負担しなければならない。

2 Cさんの交通事故については,自動車損害賠償責任保険(自賠責)が適用され,健康保険は適用できない 。

3 Cさんは,けがのため1週間仕事を休まざるを得なかったが,休んだ間の貸金については健康保険からは何の保障もない。

4 Cさんが会社の業務を行っている最中に自動車を電柱にぶつけてしまったとすれば,健康保険は適用されない。

5 その事故でCさんの眼鏡が壊れてしまったが,眼鏡代も健康保険から支給される。


この事例では,どんな時にけがをしたのかが書かれていません。


業務上のけがであれば,労働者災害補償保険(労災保険)が適用されます。


それ以外のけがには,医療保険が適用されます。


健康保険法では,以下のように規定されています。


〈健康保険法の目的〉

この法律は、労働者又はその被扶養者の業務災害(労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)第七条第一項第一号に規定する業務災害をいう。)以外の疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関して保険給付を行い、もって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。


それでは,解説です。


1 Cさん自身の過失でけがをしたのだから,健康保険は通用されず,治療費は全額自分で負担しなければならない。


健康保険が適用されないのは,犯罪行為によってけがをした場合,故意にけがをした場合です。


過失だったとしても,給付されます。


2 Cさんの交通事故については,自動車損害賠償責任保険(自賠責)が適用され,健康保険は適用できない。


自動車損害賠償責任保険(自賠責)は,民間保険ではありますが,法で規定されている制度です。


自賠責保険が保障するのは,対人保障と対物保障です。


運転者のけが,くるまの修理は,任意保険に加入しなければ給付されません。


3 Cさんは,けがのため1週間仕事を休まざるを得なかったが,休んだ間の貸金については健康保険からは何の保障もない。


これが今日のテーマの「傷病手当金」です。けがによって労務不能になった日から連続した4日目以降の所得を保障します。


4 Cさんが会社の業務を行っている最中に自動車を電柱にぶつけてしまったとすれば,健康保険は適用されない。


これが正解です。業務災害は,労災保険が適用されるので,健康保険は適用されません。


5 その事故でCさんの眼鏡が壊れてしまったが,眼鏡代も健康保険から支給される。


眼鏡代は,保険給付されません。そのくらいは,自分で直しましょう。

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