社会保障給付費,あるいは社会支出は,かなり高い頻度で出題されています。
出るか出ないかわからないものを覚えるよりも,出る確率が高いものをきっちり覚えることが優先されます。
しかし,参考書を見ると,細かい数字が出題されているので,覚えるのが複雑で面倒だと思いがちです。
そのため,覚えるのがついついおっくうになってしまいがちです。
しかし,国試には決して細かい数字は出題されないので,おおまかに傾向を押さえておけば十分です。
今日の問題は,傾向を押さえるには,よい問題です。ただし,今となっては正解がなくなっています。
第22回・問題50 社会保障給付費に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 平成18年度における社会保障給付費の規模は,国の一般会計予算規模の1.5倍に達している。
2 戦争犠牲者に対する給付は国の責任で行われるものであり,社会保障給付費には含まれない。
3 平成18年度における1人当たり社会保障給付費の伸び率は,1世帯当たり社会保障給付費の伸び率よりも小さい。
4 社会保障給付費を「医療」,「年金」,「福祉その他」の部門別に見ると,平成12年度から平成18年度にかけて最も伸び率が小さいのは,「福祉その他」である。
5 平成18年度の社会保障給付費の内訳を機能別に見ると,「家族」は4%に満たない。
平成18年とは,2006年です。随分と前の数字が問われていますが,大枠はほとんど変わっていません。
この問題が現在では正解なしになっている理由は,この問題の正解はもともと選択肢5だったからです。
家族に対する給付は,現在でも8%程度しかありませんが,4%よりも多くなっているので,正解ではなくなっています。
家族に対する給付が出題される場合,多くは引っ掛けです。
現時点(2021年)では,「家族に対する給付は,10%に満たない」と覚えます。
しかし,本当はそれほど難しくはありません。なぜなら「高齢」と「保健医療」を合わせると8割にもなるので,ほかの項目はかなり少ないことが推測できるからです。
それでは,ほかの選択肢も見てみます。
1 平成18年度における社会保障給付費の規模は,国の一般会計予算規模の1.5倍に達している。
社会保障給付費は増えていますが,国の予算の1.5倍まではありません。
現在の国の予算は約100兆円,社会保障給付費は約120兆円です。
2 戦争犠牲者に対する給付は国の責任で行われるものであり,社会保障給付費には含まれない。
戦争犠牲者に対する給付は,広義の社会保障に含まれるもので,もちん社会保障給付費にも含まれます。
3 平成18年度における1人当たり社会保障給付費の伸び率は,1世帯当たり社会保障給付費の伸び率よりも小さい。
1人当たり社会保障給付費の伸び率は,1世帯当たり社会保障給付費の伸び率よりも大きくなっています。
4 社会保障給付費を「医療」,「年金」,「福祉その他」の部門別に見ると,平成12年度から平成18年度にかけて最も伸び率が小さいのは,「福祉その他」である。
こんな古いものは,知らないよ,と思う人もいるでしょう。
しかし,そう思う人は危険です。
さまざまな知識を動員して,答えさせる問題は,一定数出題されるからです。
そういった問題は,簡単ではありません。
もしあと数点足りなくて不合格になったという人は,こういった問題を正解できないところに原因があるかもしれません。
さて,ヒントです。
1994年に出された「21世紀福祉ビジョン」では,将来の社会保障給付費の割合を
年金 5
医療 3
福祉その他 2
にすることを提言しました。現在の割合は限りなくこの数字に近くなっています。
21世紀福祉ビジョンが出された当時は
年金 5
医療 4
福祉その他 1
という割合でした。つまり,医療を少なくして,福祉その他を多くするということを提言したのです。
福祉その他の割合は,3つの中では最も少ないですが,伸び率は,
1 → 2
にした関係で,最も大きくなっているのです。
こういったことを国試会場では瞬時に考えて答えを出さなければなりません。
知識がそのまま答えにつながる問題ももちろんありますが,知識に知恵を加えることによってようやく答えがわかるという問題もあります。
社会福祉士の国試は決して難しくはありませんが,知恵を試される問題もあることから,結果的に90点を超える人はわずか30%という国試になるのです。
勝ち組に入りましょう。