2021年10月12日火曜日

社会福祉法が規定する「重層的支援体制整備事業」

  

社会福祉法では,市町村は,地域生活課題の解決に資する包括的な支援体制を整備するため,重層的支援体制整備事業を行うことができる,と規定しています。

 

事業のコンセプトは,「つながり続ける支援体制の構築」です。

 

事業の内容は,以下のとおりです。


・包括的相談支援事業

・参加支援事業

・地域づくり事業

・アウトリーチ等を通じた継続的支援事業

・多機関協働事業


 

社会福祉法では,地域福祉計画が規定されていますが,そのほかに,「重層的支援体制整備事業実施計画」の策定を市町村の努力義務として規定しています。

 

詳しくは,厚生労働省の「地域共生社会のポータルサイト」にあるので,一度目を通すと良いと思います。

https://www.mhlw.go.jp/kyouseisyakaiportal/jigyou/

 

それでは,今日の問題です。

 

22回・問題38 地域福祉の推進組織・団体に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 社会福祉協議会は社会福祉法に基づき,「地域福祉」の推進を図ることを目的とする団体として定められ,地域福祉計画策定が義務づけられた。

2 生活協同組合は,厚生労働省所管の消費生活協同組合法に基づいて運営されており,戦後,連合国軍絵司令部(GHQ)が設置した団体である。

3 特定非営利活動法人は,不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とするもので,特定の個人又は法人の利益を目的として事業を行ってはならない。

4 民生委員協議会は,民生委員と福祉協力員から構成されており,地域福祉推進の要となっている。

5 日本赤十字社は,日本赤十字社法により世界の平和と人類の福祉に貢献するよううた努めることが謳われており,会員組織と賛助会員から構成されている。

 

重層的支援体制整備事業に関する問題だったと思ったでしょう。

 

しかし,当然ながら,現時点ではまだ国試で出題されたことはありません。(第34回に出題されました)

 

それでは,簡単に解説します。

 

1 社会福祉協議会は社会福祉法に基づき,「地域福祉」の推進を図ることを目的とする団体として定められ,地域福祉計画策定が義務づけられた。

 

地域福祉(支援)計画の策定は,社会福祉法ができたときに,市町村及び都道府県の任意とされていましたが,現在は努力義務になっています。

 

しかし,今まで,一度も策定が義務づけられたことはありません。

 

当然,民間団体である社会福祉協議会に策定が義務づけられたこともありません。

 

2 生活協同組合は,厚生労働省所管の消費生活協同組合法に基づいて運営されており,戦後,連合国軍絵司令部(GHQ)が設置した団体である。

 

第二次世界大戦後に,GHQの指導により,多くの福祉政策がすすめられました。

 

しかし,生活協同組合の前身は,戦前から存在します。

 

3 特定非営利活動法人は,不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とするもので,特定の個人又は法人の利益を目的として事業を行ってはならない。

 

これが正解です。

 

4 民生委員協議会は,民生委員と福祉協力員から構成されており,地域福祉推進の要となっている。

 

民生委員協議会は,都道府県知事が市町村長の意見をきいて定める区域ごとに民生委員が組織します。福祉協力員は,構成員ではありません。

民生委員協議会は,民生委員の職務に関して必要と認める意見を関係各庁に具申することなどを行います。

 

5 日本赤十字社は,日本赤十字社法により世界の平和と人類の福祉に貢献するよううた努めることが謳われており,会員組織と賛助会員から構成されている。

 

日本赤十字社は,西南戦争のときに組織された「博愛社」が源流です。

 

この問題の中では,最も歴史のある団体です。構成員は会員です。日本赤十字社では,社員と呼びます。賛助会員は社員ではありません。


日本赤十字社が病院を設置していることはよく知られていますが,生活保護法が規定する保護施設の設置主体でもあります。

保護施設は,都道府県,市町村,地方独立行政法人,社会福祉法人,日本赤十字社のみ設置することができます。

重要な位置づけにあることがわかるでしょう。


第34回の問題です


第34回・問題35 次の記述のうち,社会福祉法における地域福祉の推進に関する規定として,適切なものを2つ選びなさい。

1 国及び地方公共団体は,関連施策との連携に配慮して,包括的な支援体制の整備のために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

2 都道府県は,その区域内においてあまねく福祉サービス利用援助事業が実施されるために必要な事業を行うものとする。

3 都道府県社会福祉協議会は,その区域内における地域福祉の推進のための財源として,共同募金を実施することができる。

4 市町村は,子ども・障害・高齢・生活困窮の一部の事業を一体のものとして実施することにより,地域生活課題を抱える地域住民に対する支援体制等を整備する重層的支援体制整備事業を実施することができる。

5 市町村社会福祉協議会は,市町村地域福祉計画を策定するよう努めなければならない。


この問題の答えと詳細はこちら

https://fukufuku21.blogspot.com/2022/12/blog-post_23.html

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