2021年10月17日日曜日

地域福祉計画の策定について

地域福祉計画は,社会福祉法で規定されています。

 

全文を紹介します。

 

市町村地域福祉計画


第百七条 市町村は、地域福祉の推進に関する事項として次に掲げる事項を一体的に定める計画(以下「市町村地域福祉計画」という。)を策定するよう努めるものとする。

一 地域における高齢者の福祉、障害者の福祉、児童の福祉その他の福祉に関し、共通して取り組むべき事項

二 地域における福祉サービスの適切な利用の推進に関する事項

三 地域における社会福祉を目的とする事業の健全な発達に関する事項

四 地域福祉に関する活動への住民の参加の促進に関する事項

五 地域生活課題の解決に資する支援が包括的に提供される体制の整備に関する事項

2 市町村は、市町村地域福祉計画を策定し、又は変更しようとするときは、あらかじめ、地域住民等の意見を反映させるよう努めるとともに、その内容を公表するよう努めるものとする。

3 市町村は、定期的に、その策定した市町村地域福祉計画について、調査、分析及び評価を行うよう努めるとともに、必要があると認めるときは、当該市町村地域福祉計画を変更するものとする。


 

都道府県地域福祉支援計画


第百八条 都道府県は、市町村地域福祉計画の達成に資するために、各市町村を通ずる広域的な見地から、市町村の地域福祉の支援に関する事項として次に掲げる事項を一体的に定める計画(以下「都道府県地域福祉支援計画」という。)を策定するよう努めるものとする。

一 地域における高齢者の福祉、障害者の福祉、児童の福祉その他の福祉に関し、共通して取り組むべき事項

二 市町村の地域福祉の推進を支援するための基本的方針に関する事項

三 社会福祉を目的とする事業に従事する者の確保又は資質の向上に関する事項

四 福祉サービスの適切な利用の推進及び社会福祉を目的とする事業の健全な発達のための基盤整備に関する事項

五 市町村による地域生活課題の解決に資する支援が包括的に提供される体制の整備の実施の支援に関する事項

2 都道府県は、都道府県地域福祉支援計画を策定し、又は変更しようとするときは、あらかじめ、公聴会の開催等住民その他の者の意見を反映させるよう努めるとともに、その内容を公表するよう努めるものとする。

3 都道府県は、定期的に、その策定した都道府県地域福祉支援計画について、調査、分析及び評価を行うよう努めるとともに、必要があると認めるときは、当該都道府県地域福祉支援計画を変更するものとする。


 

平成30年改正で,策定が「任意」から「努力義務」になっています。

 

そして,地域福祉計画は,「高齢者の福祉、障害者の福祉、児童の福祉その他の福祉」に関する上位計画に位置づけられました。

 

それでは,今日の問題です。

 

ただし,現在では法改正により,正解はありません。

 

22回・問題45 地域福祉計画についての社会福祉法の規定に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 市町村は,市町村地域福祉計画を策定しようとするときは,市町村議会の議決を経るものとされている。

2 市町村地域福祉計画は,社会福祉を目的とする事業に従事する者の確保又は資質の向上に関する事項を含め,定めるものとされている。

3 都道府県は,地方自治法に基づく基本構想に即して,都道府県地域福祉支援計画を策定するものとされている。

4 都道府県は,都道府県地域福祉支援計画を策定しようとするときは,あらかじめ,住民やその他の者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとされている。

5 市町村地域福祉計画は,社会福祉を目的とする事業の健全な発達のための基盤整備に関する事項を含め,定めるものとされている。

 

この問題に正解がない理由は,選択肢4がもともとの正解だったからです。

 

平成30年改正前では「必要な措置を講ずるものとする」というぼんやりしたものだったこともあり,現在では,以下のように改正して,責任を明確にしたのです。

 

改正前

改正後

必要な措置を講ずるものとする。

住民その他の者の意見を反映させるよう努める。

 

責務がちょっぴり明確になっています。

 

なお,市町村地域福祉計画と都道府県地域福祉支援計画の違いとして,「公聴会の開催」の表現があるのは,都道府県です。

 

それも合わせて覚えておきたいです。

 

それでは,これ以外の解説です。

 

1 市町村は,市町村地域福祉計画を策定しようとするときは,市町村議会の議決を経るものとされている。

 

「議会の議決を経る」とはずいぶん唐突な感じがすることでしょう。

 

しかし,このように出題したのは,元ネタがあるからです。

 

それは障害者基本法が定める障害者計画です。

 

同計画では,「都道府県障害者計画又は市町村障害者計画が策定されたときは、都道府県知事又は市町村長は、これを当該都道府県の議会又は当該市町村の議会に報告する」と規定されています。

 

ただし,議決を経るものではありません。

 

2 市町村地域福祉計画は,社会福祉を目的とする事業に従事する者の確保又は資質の向上に関する事項を含め,定めるものとされている。

 

これは,特徴的なものです。

 

しっかり押さえておきたいです。

 

社会福祉を目的とする事業に従事する者の確保又は資質の向上に関する事項を定めるのは,都道府県地域福祉支援計画です。

 

専門職の確保や資質の向上は,都道府県の役割だからです。

 

市町村には向きません。市町村というとまとめるとわかりにくいですが,「村」では,それを効率的に行える規模はありません。

 

3 都道府県は,地方自治法に基づく基本構想に即して,都道府県地域福祉支援計画を策定するものとされている。

 

かつては,地方自治法では基本構想というものが規定されていましたが,今はありません。

 

5 市町村地域福祉計画は,社会福祉を目的とする事業の健全な発達のための基盤整備に関する事項を含め,定めるものとされている。

 

基盤整備も都道府県地域福祉支援計画で定めます。

 

市町村と都道府県の特徴が何となくでも押さえられましたか?

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