2021年10月7日木曜日

岡村重夫の地域福祉論

今回は,岡村重夫先生の地域福祉論を取り上げたいと思います。

 

岡村先生は,地域社会で発生する生活課題の解決を図るために,地域住民の主体的で協働的な問題解決プロセスを重視した地域福祉論を展開しました。

 

具体的には,地域福祉の構成要素として

・コミュニティケア

・一般地域組織化活動と福祉組織化活動

・予防的社会福祉

 を挙げています。

 

このうち,わかりにくいのは,「一般地域組織化活動と福祉組織化活動」でしょう。

 

コミュニティオーガニゼーション(地域組織化活動)の概念に近いものです。今日で言えば,「互助」の概念も含まれます。

 

予防的社会福祉は,住民に対する教育的な活動です。

 

それでは,今日の問題です。

 

22回・問題32 地域福祉の概念に関連する学説についての次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 岡村重夫によれば,地域福祉の構成要素は,コミュニティ・ケア,一般地域組織化活動と福祉組織化活動,予防的社会福祉からなる。

2 ロスマン(Rothman,J.)によれば,コミュニティ・オーガニゼーションのモデルは,伝統的な住民参加を重視するソーシャル・アクションモデルと専門技術過程を重視する社会計画モデルの2つのモデルからなる。

3 三浦文夫によれば,福祉ニーズは貨幣的ニーズと非貨幣的ニーズに大別され,在宅福祉サービスは前者に対応するものとされた。

4 右田紀久恵によれば,自治型地域福祉とは,地域福祉の推進主体をもっぱら自治体に限られるとした。

5 ティトマス(Titmuss,R.)によれば,イギリスではコミュニティケア概念があまりにも拡大したと批判し,対象を高齢者ケアの領域に限定すべきであるとした。

 

正解は,選択肢1です。

 

1 岡村重夫によれば,地域福祉の構成要素は,コミュニティ・ケア,一般地域組織化活動と福祉組織化活動,予防的社会福祉からなる。

 

このまま覚えましょう。

 

それでは,ほかの選択肢も解説します。

 

2 ロスマン(Rothman,J.)によれば,コミュニティ・オーガニゼーションのモデルは,伝統的な住民参加を重視するソーシャル・アクションモデルと専門技術過程を重視する社会計画モデルの2つのモデルからなる。

 

ロスマンのコミュニティ・オーガニゼーションのモデル

小地域開発モデル

住民がグループでの取組を通して問題解決を図れるようにする活動。

社会計画モデル

専門的な機関や専門職が地域の問題について情報を収集・分析し,合理的な取り組み方を決めて実施する活動。

ソーシャルアクションモデル

社会福祉の制度やサービスの創設・改善・維持を目指す活動

 

  

3 三浦文夫によれば,福祉ニーズは貨幣的ニーズと非貨幣的ニーズに大別され,在宅福祉サービスは前者に対応するものとされた。

 

三浦先生が,福祉ニーズは貨幣的ニーズと非貨幣的ニーズに大別したのは正しいですが,在宅福祉サービスは,非貨幣的ニーズに対応するものです。

 

貨幣的ニーズに対応するのは,貧困などです。金銭を給付することで福祉ニーズが充足するからです。

 

4 右田紀久恵によれば,自治型地域福祉とは,地域福祉の推進主体をもっぱら自治体に限られるとした。

 

右田先生の自治型地域福祉とは,自治体と住民の協働です。

 

5 ティトマス(Titmuss,R.)によれば,イギリスではコミュニティケア概念があまりにも拡大したと批判し,対象を高齢者ケアの領域に限定すべきであるとした。

 

ティトマスがコミュニティケアについて,どのように述べたのかはわからないですが,少なくとも高齢者ケアの領域に限定すべきだとは言わないでしょう。

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