さまざまな制度が組み合わさって,社会保障制度を形成しています。
社会福祉士がソーシャルワーカーであるとしたら,社会福祉制度には精通していることが求められます。なぜなら,クライエントはそれを期待しているからです。
そのため,「社会保障が苦手」などとは言っていられません。
それでは,今日の問題です。
第22回・問題53 事例を読んで,Bさんの考えに関する次の記述のうち,制度的に正しいものを1つ選びなさい
〔事 例〕
主婦のBさんは,不況のため夫の給料が下がったので,少しでも家計を補おうと思い,パートで働きに出ることにし,新聞の折込み広告で職を探し,X社(法人)かY社(法人)にしようと考えている。求人欄には,X社は「社会保険完備」,Y社は「社会保険応相談」と記載されている。
この事例において,社会保険とは,健康保険と厚生年金保険のことをいうこととする。
1 X社については,パートでも必ず社会保険に加入できると思った。
2 Y社については,Bさんが希望すれば,その勤務条件にかかわらず,社会保険に加入できると思った。
3 一定の勤務条件を満たせば社会保険に加入できるはずなので,社会保険については特に気にしなかった。
4 Bさんが働いて夫の被扶養配偶者でなくなると,子どもも一緒に被扶養者ではなくなってしまうのが心配だった。
5 パートで働いて自分に少しでも収入があると,夫の被扶養配偶者ではなくなるので,個人で保険料を負担して医療保険制度に加入しなければならないと思った。
この問題が出題されたのは,第22回国家試験です。
新しいカリキュラムでは,このような問題が出題されるのか,と興味深く問題を読んだことを覚えています。
というのは,それまでの国家試験では,事例問題は今と異なり,精神保健福祉士の国試のような長文事例問題であり,このような事例問題で制度を問う問題はなかったからです。
さて,社会保険(ここでいう健康保険と厚生年金)の加入要件は,以下のとおりです。
・週の所定労働時間が20時間以上あること ・雇用期間が1年以上見込まれること ・賃金の月額が8.8万円以上であること ・学生でないこと ・特定適用事業所または任意特定適用事業所に勤めていること(国、地方公共団体に属する全ての適用事業所を含む) |
加入要件は,会社によって違いはありません。
1 X社については,パートでも必ず社会保険に加入できると思った。
2 Y社については,Bさんが希望すれば,その勤務条件にかかわらず,社会保険に加入できると思った。
これらはいずれもそんなことはありません。
因みに,
「社会保険完備」は,適用事業所であることを示しています。
「社会保険応相談」は,
社会保険に加入せず,被扶養者の範囲で働きたい
あるいは,
社会保険に加入できる程度の時間で働きたい
などの要望に応じます,ということを示しています。
正解は,選択肢3です。
3 一定の勤務条件を満たせば社会保険に加入できるはずなので,社会保険については特に気にしなかった。
一定の勤務条件とは,前述のように以下のとおりです。
・週の所定労働時間が20時間以上あること
・雇用期間が1年以上見込まれること
・賃金の月額が8.8万円以上であること
以前は,9.8万円だったものが,加入しやすいように8.8万円に引き下げられています。
4 Bさんが働いて夫の被扶養配偶者でなくなると,子どもも一緒に被扶養者ではなくなってしまうのが心配だった。
子どもが被扶養者の要件を満たしていれば,被扶養者から外れることはありません。
5 パートで働いて自分に少しでも収入があると,夫の被扶養配偶者ではなくなるので,個人で保険料を負担して医療保険制度に加入しなければならないと思った。
加入要件を満たしていなければ,被扶養配偶者のままです。