2022年12月31日土曜日

都道府県社会協議会の業務

社会福祉協議会は,社会福祉法に規定されています。

 

(都道府県社会福祉協議会)

第百十条 都道府県社会福祉協議会は、都道府県の区域内において次に掲げる事業を行うことにより地域福祉の推進を図ることを目的とする団体であつて、その区域内における市町村社会福祉協議会の過半数及び社会福祉事業又は更生保護事業を経営する者の過半数が参加するものとする。

一 前条第一項各号に掲げる事業であつて各市町村を通ずる広域的な見地から行うことが適切なもの

二 社会福祉を目的とする事業に従事する者の養成及び研修

三 社会福祉を目的とする事業の経営に関する指導及び助言

四 市町村社会福祉協議会の相互の連絡及び事業の調整

 

以下の市町村社会福祉協議会と比較するといかにも都道府県レベルの内容になっていることを覚えておきたいです。

 

特に「社会福祉を目的とする事業に従事する者の養成及び研修」は,都道府県レベルの典型例で,地方公共団体の都道府県にも同じことが言えます。

 

専門職の養成や研修の内容なのに,「市町村が行う」という出題があった場合,その多くは誤りです。

 

 

 社会福祉を目的とする事業の企画及び実施

 社会福祉に関する活動への住民の参加のための援助

 社会福祉を目的とする事業に関する調査、普及、宣伝、連絡、調整及び助成

 前三号に掲げる事業のほか、社会福祉を目的とする事業の健全な発達を図るために必要な事業

 

市町村社会福祉協議会の業務は,いかにも市町村らしい内容だと思いませんか。

この違いがわかれば,地方公共団体としての都道府県と市町村の役割について出題されたときは,迷わなくて済みます。

 

市町村は地域住民に対して直接的なサービスにかかわるものを担います。

 

都道府県は,市町村が行うには非効率的なものを行います。それが,専門職の養成であったり,研修であったり,ということになります。

 

それでは,今日の問題です。

 

32回・問題37 市町村社会福祉協議会に関して,社会福祉法に規定されている次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 福祉サービスの苦情を解決するための運営適正化委員会を設置する。

2 生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員)を配置し,制度では対応できないニーズに対応する。

3 役員の総数の3分の1を関係行政庁の職員で構成しなければならない。

4 第一種社会福祉事業の経営に関する指導及び助言を行う。

5 市町村の区域内における社会福祉事業又は更生保護事業を経営する者の過半数が参加する。

 

都道府県社会福祉協議会の問題だと思ったでしょう?

 

それでは,解説です。

 

1 福祉サービスの苦情を解決するための運営適正化委員会を設置する。

 

運営適正化委員会を設置するのは,都道府県社会福祉協議会です。

 

 

2 生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員)を配置し,制度では対応できないニーズに対応する。

 

生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員)の根拠法は,介護保険法です。

 

3 役員の総数の3分の1を関係行政庁の職員で構成しなければならない。

 

109条の5

関係行政庁の職員は、市町村社会福祉協議会及び地区社会福祉協議会の役員となることができる。ただし、役員の総数の5分の1を超えてはならない。

 

この規定は,都道府県社会福祉協議会も同じです。

 

4 第一種社会福祉事業の経営に関する指導及び助言を行う。

 

第一種社会福祉事業の経営に限らず,指導及び助言を行うのは都道府県社会福祉協議会です。

 

5 市町村の区域内における社会福祉事業又は更生保護事業を経営する者の過半数が参加する。

 

これが正解です。これは何度も何度も出題されているので,確実に覚えておきたいです。

2022年12月30日金曜日

地域福祉活動計画とは

地域福祉活動計画は,市町村社会福祉協議会が策定していますが,地域福祉計画のように法的に定められたものではありません。


そのため,地域福祉活動計画が出題されたとしてもおそらく正解になることはほとんどないだろうと思います。


つまり,引っ掛けとして出題されるタイプのものだと言えます。


そうでなかったものは,唯一です。


第28回・問題46 市町村地域福祉計両及び社会福祉協議会が策定する地域福祉活動計画に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 両計画は,共に地域住民,社会福祉を目的とする事業を経営する者,ボランティアなどを地域福祉を推進する担い手として位置づけている。

2 両計画は,共に社会福祉法に根拠を置いている。

3 両計画は,共にその達成を支援するための都道府県による支援計画がある。

4 両計画は,共に計画期間を3年として策定することとされている。

5 両計画は,共にその策定及び事業の実施に関して国庫補助が受けられる。


正解は,選択肢1です。この出題がぎりぎりのところでしょう。地域福祉活動計画は法規定がないので,正解として出題するための根拠に弱いためです。


それでは,今日の問題です。


第31回・問題35 社会福祉法に規定されている社会福祉協議会の活動などに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 市町村社会福祉協議会は,市町村地域福祉計画と一体となった地域福祉活動計画を策定するとされている。

2 市町村社会福祉協議会は,区域内における社会福祉事業又は社会福祉に関する活動を行う者の過半数が参加するものとされている。

3 市町村社会福祉協議会は,主要な財源確保として共同募金事業を行っている。

4 市町村社会福祉協議会は,「社会福祉事業」よりも広い範囲の事業である社会福祉を目的とする事業に関する企画及び実施を行う。

5 都道府県社会福祉協議会は,広域的見地から市町村社会福祉協議会を監督する。


選択肢1に地域福祉活動計画が出題されています。


この問題は,少々厳密さに欠ける問題となっています。しかし,私たちは評論家ではないので,正解できれば良いわけです。


厳密さに欠けるのは,正解となったのは選択肢4だからです。


4 市町村社会福祉協議会は,「社会福祉事業」よりも広い範囲の事業である社会福祉を目的とする事業に関する企画及び実施を行う。


「社会福祉事業よりも広い範囲の事業である」


これがちょっと気になる点です。しかし,市町村社協が行っている事業を思い起こせば,間違いはなさそうだ,と考えることができるはずです。


国家試験合格に必要なことはたくさんありますが,このような柔軟な思考ができるかどうかは極めて重要です。


知識があっても知恵のない社会福祉士は,福祉現場では必要とされません。


それでは,ほかの選択肢を解説します。


1 市町村社会福祉協議会は,市町村地域福祉計画と一体となった地域福祉活動計画を策定するとされている。


今日のテーマの地域福祉活動計画の出題です。


福祉計画を苦手と思っている受験生が多いので,このような問題でも,焦ってしまいミスします。


地域福祉活動計画が出題された場合は,慎重に考えることが必要です。

もちろんこんな規定はありません。


2 市町村社会福祉協議会は,区域内における社会福祉事業又は社会福祉に関する活動を行う者の過半数が参加するものとされている。


これは,びっくりするような引っ掛けが仕掛けられています。


 社会福祉事業又は社会福祉に関する活動を行う者


 社会福祉事業又は更生保護事業を経営する者


過半数のところに目がいくので,その前の部分を見落とすのです。丁寧に読むことが必要です。


3 市町村社会福祉協議会は,主要な財源確保として共同募金事業を行っている。


共同募金を行えるのは,共同募金会のみです。


4 市町村社会福祉協議会は,「社会福祉事業」よりも広い範囲の事業である社会福祉を目的とする事業に関する企画及び実施を行う。


先に書いたように,これが正解です。


ほかのものが消去できれば,正解が残るタイプの問題です。


5 都道府県社会福祉協議会は,広域的見地から市町村社会福祉協議会を監督する。


都道府県社会福祉協議会は,市町村社会福祉協議会の上部団体ではありません。このような権限はもちません。

2022年12月29日木曜日

市町村社会福祉協議会の役員に占める関係行政庁の職員の割合

今回は,市町村社会福祉協議会の役員に占める関係行政庁の職員の割合を学びたいと思います。

 

社会福祉法では,以下のように規定されています。

 

109条の5

関係行政庁の職員は、市町村社会福祉協議会及び地区社会福祉協議会の役員となることができる。ただし、役員の総数の5分の1を超えてはならない。

 

地味な規定ですが,国家都市には忘れた頃に出題されています。

 

過去の出題実績

 

第7回(再試験)
第9回
11
23
32

 

現時点(第35回国試の直前)では,第32回に出題されたばかりなので,もうしばらく出題されないかもしれません。

 

何を言いたいかと言えば,近年の出題は,過去3年間や過去5年間の過去問を解いても,出てこない範囲にあるということです。

 

それに対して,第7(再),9,11回は,1年おきに出題されています。この当時に受験した人は,過去3年間の過去問を解けば対応できました。

 

年を追うごとに覚えるべきものが増えてきているので,参考書にあるものをまんべんなく覚えることが必要です。

 

この勉強がなければ,国家試験に合格することは難しいように思います。

 

なお,第7回(再試験)は,1995年の阪神・淡路大震災で受験できかった人のために,同年7月23日に再試験を実施したものです。

 

これまでの国家試験で再試験が実施されたのは,このときのたった1回です。

 

このくらいのことが起きなければ,再試験は実施されないということでしょう。

 

降雪などで時間が繰り下げられて実施したことはあります。その時は,一般の会場で受験した人も遅く始めた会場が終了するまで会場内で待機させられたらしいです。

 

それでは,今日の問題です。

 

23回・問題36 社会福祉協議会に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 都道府県社会福祉協議会が実施することとなっている日常生活自立支援事業の委託先は,市町村社会福祉協議会に限定されている。

2 地域福祉計画は,市町村社会福祉協議会が中心となって策定する地域福祉活動計画と一体的に策定するよう社会福祉法に義務づけられている。

3 関係行政庁の職員は市町村社会福祉協議会の役員になることができるが,役員総数の5分の1を超えてはならない。

4 市町村社会福祉協議会には,第一種・第二種社会福祉事業の企画及び実施が義務づけられている。

5 市町村社会福祉協議会は,社会福祉を目的とする事業を経営する者を会員にすることができない。

 

正解は,選択肢3です。

3 関係行政庁の職員は市町村社会福祉協議会の役員になることができるが,役員総数の5分の1を超えてはならない。

 

過去の出題は2パターンになっています。

①正しく5分の1として出題されるもの

②5分の1をほかの割合に変えて出題されるもの,またはその派生

 

調べてみたら,「関係行政庁の職員は市町村社会福祉協議会の役員になることができない」という出題はありませんでした。この出題がされないほど,多くの市町村社協では関係行政庁の職員が役員になっていることだということなのだと思います。

 

この出題だと消去しやすいという理由もあるのかもしれません。

 

それでは解説です。

 

1 都道府県社会福祉協議会が実施することとなっている日常生活自立支援事業の委託先は,市町村社会福祉協議会に限定されている。

 

日常生活自立支援事業は,市町村社会福祉協議会以外にも委託することができます。

 

2 地域福祉計画は,市町村社会福祉協議会が中心となって策定する地域福祉活動計画と一体的に策定するよう社会福祉法に義務づけられている。

 

こんな規定はありません。

 

地域福祉活動計画は,根拠法のない民間計画であることを忘れてはなりません。

 

4 市町村社会福祉協議会には,第一種・第二種社会福祉事業の企画及び実施が義務づけられている。

 

社会福祉法で規定されている市町村社会福祉協議会が実施する事業は以下のとおりです。

 

一 社会福祉を目的とする事業の企画及び実施

二 社会福祉に関する活動への住民の参加のための援助

三 社会福祉を目的とする事業に関する調査、普及、宣伝、連絡、調整及び助成

四 前三号に掲げる事業のほか、社会福祉を目的とする事業の健全な発達を図るために必要な事業

 

なお,しゃかい


5 市町村社会福祉協議会は,社会福祉を目的とする事業を経営する者を会員にすることができない。

 

市町村社会福祉協議会は,社会福祉事業又は更生保護事業を経営する者の過半数が参加して構成されています。


2022年12月28日水曜日

市町村社会福祉協議会の構成

市町村社会福祉協議会は,その区域内における社会福祉事業又は更生保護事業を経営する者の過半数が参加しなければなりません。

 

それでは,今日の問題です。

 

 

30回・問題35 社会福祉法の規定に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 市町村は,地域福祉計画の策定において,福祉サービス利用者の意見聴取をしなければならない。

2 地域住民,社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者は,相互に協力して地域福祉の推進に努めなければならない。

3 市町村社会福祉協議会は,地域福祉コーディネーターを配置しなければならない。

4 市町村社会福祉協議会は,社会福祉を目的とする事業を経営する者又は更生保護事業を経営する者の3分の2以上が参加していなければならない。

5 共同募金会は,共同募金を行うには,市町村社会福祉協議会の意見を聴き,配分委員会の承認を得て,共同募金の目標額を公告しなければならない。

 

法制度は知らなければ正解できないので,実は確実に得点するのは結構難しいです。

 

少なくとも「日本語的に」消去しながら正解するということができません。そういった意味で,国家試験の差が生じるのは,こういった問題です。

 

それでは解説です。

 

1 市町村は,地域福祉計画の策定において,福祉サービス利用者の意見聴取をしなければならない。

 

法で規定されているのは,

 

市町村は、市町村地域福祉計画を策定し、又は変更しようとするときは、あらかじめ、地域住民等の意見を反映させるよう努める。

 

これについては,似た出題があります。

https://fukufuku21.blogspot.com/2022/12/blog-post_24.html

 

2 地域住民,社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者は,相互に協力して地域福祉の推進に努めなければならない。

 

これが正解です。

 

地域福祉の推進について,地域住民には,もう一つの規定があります。

 

地域福祉の推進は、地域住民が相互に人格と個性を尊重し合いながら、参加し、共生する地域社会の実現を目指して行われなければならない。

 

 

これはまだ出題されたことはありませんが,覚えておきたいです。

 

3 市町村社会福祉協議会は,地域福祉コーディネーターを配置しなければならない。

 

このような規定はありません。

 

4 市町村社会福祉協議会は,社会福祉を目的とする事業を経営する者又は更生保護事業を経営する者の3分の2以上が参加していなければならない。

 

3分の2以上ではなく,2分の1以上です。

 

5 共同募金会は,共同募金を行うには,市町村社会福祉協議会の意見を聴き,配分委員会の承認を得て,共同募金の目標額を公告しなければならない。

 

共同募金会が意見を聴くのは,都道府県社会福祉協議会です。

 

この規定があるために,共同募金会を設立するためには,「当該共同募金の区域内に都道府県社会福祉協議会が存すること」という規定があります。

 

都道府県社会福祉協議会がなければ,当然のことですが,意見を聴くことができません。

2022年12月27日火曜日

社会福祉連携推進法人とは

社会福祉連携推進法人は,令和2年の社会福祉法の改正で創設されたものです。

 

社会福祉連携推進法人は,社会福祉連携推進業務を行うことを目的として設立される一般社団法人です。

 

制度創設の背景には,事業規模が小さい法人は収益も小さいことがあります。

 

厚生労働省のホームページでは,以下のように書かれています。

 

社会福祉連携推進法人は、社会福祉法人等が社員となり、福祉サービス事業者間の連携・協働を図るための取組等を行う新たな法人制度です。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_20378.html

 

〈社会福祉法の規定〉

(社会福祉連携推進業務)

●地域福祉の推進に係る取組を社員が共同して行うための支援

●災害が発生した場合における社員(社会福祉事業を経営する者に限る)が提供する福祉サービスの利用者の安全を社員が共同して確保するための支援

●社員が経営する社会福祉事業の経営方法に関する知識の共有を図るための支援

●資金の貸付けその他の社員(社会福祉法人に限る)が社会福祉事業に係る業務を行うのに必要な資金を調達するための支援として厚生労働省令で定めるもの

●社員が経営する社会福祉事業の従事者の確保のための支援及びその資質の向上を図るための研修

●社員が経営する社会福祉事業に必要な設備又は物資の供給

 

※社会福祉連携推進法人は,社会福祉事業を行うことができません。

 

※社会福祉連携推進法人の認定を行う所轄庁は,社会福祉法人の所轄庁と同じです。

 

(所轄庁)

第三十条 社会福祉法人の所轄庁は、その主たる事務所の所在地の都道府県知事とする。ただし、次の各号に掲げる社会福祉法人の所轄庁は、当該各号に定める者とする。

一 主たる事務所が市の区域内にある社会福祉法人(次号に掲げる社会福祉法人を除く。)であつてその行う事業が当該市の区域を越えないもの 市長(特別区の区長を含む。以下同じ。)

二 主たる事務所が指定都市の区域内にある社会福祉法人であつてその行う事業が一の都道府県の区域内において二以上の市町村の区域にわたるもの及び第百九条第二項に規定する地区社会福祉協議会である社会福祉法人 指定都市の長

2 社会福祉法人でその行う事業が二以上の地方厚生局の管轄区域にわたるものであつて、厚生労働省令で定めるものにあつては、その所轄庁は、前項本文の規定にかかわらず、厚生労働大臣とする。

 

それでは,今日の問題です。

 

19回・問題6 社会福祉法における社会福祉法人の解散と合併に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 社会福祉法人は,学校法人や宗教法人など社会福祉法人以外の法人とも合併することができる。

2 社会福祉法人が他の社会福祉法人と合併する場合,合併が効力を生じる時期は,合併によって消滅する社会福祉法人の解散を所轄庁が認可した日からである。

3 合併によって設立した社会福祉法人は,合併によって消滅した社会福祉法人の一切の権利義務を承継する。

4 社会福祉法上所轄庁の解散命令は,社会福祉法人の解散事由として定められていないが,破産については,その事由の一つとして定められている。

5 社会福祉法人が解散したとき,定款中に定めがあれば,解散した法人の残余財産は,社会福祉法人その他社会福祉事業を行う者以外の者にも帰属させることができる。

 

社会福祉連携推進法人に関する問題だと思った人もいるでしょう。

 

残念ながら,現時点(202212月)ではまだ国家試験に出題されたことがありません。

 

事業規模が小さい社会福祉法人は収益も小さく経営基盤の弱いことから,合併が推奨された時期もあります。しかし,それほど合併が進まなかったこともあり,社会福祉連携推進法人が創設されました。

 

しかし,合併で経営を安定化する経営手法はもちろん残っているので,この問題を選びました。

 

それでは,解説です。

 

1 社会福祉法人は,学校法人や宗教法人など社会福祉法人以外の法人とも合併することができる。

 

社会福祉法人が合併できるのは,ほかの社会福祉法人のみです。

 

2 社会福祉法人が他の社会福祉法人と合併する場合,合併が効力を生じる時期は,合併によって消滅する社会福祉法人の解散を所轄庁が認可した日からである。

 

合併の効力を生じるのは,登記した日からです。

 

3 合併によって設立した社会福祉法人は,合併によって消滅した社会福祉法人の一切の権利義務を承継する。

 

合併によって新設された社会福祉法人は,合併によって消滅した社会福祉法人の一切の権利義務を承継します。

 

4 社会福祉法上所轄庁の解散命令は,社会福祉法人の解散事由として定められていないが,破産については,その事由の一つとして定められている。

 

社会福祉法人の解散事由には以下のものがあります。

 

●評議員会の決議

●定款に定めた解散事由の発生

●目的たる事業の成功の不能

●合併(合併により当該社会福祉法人が消滅する場合に限る。)

●破産手続開始の決定

●所轄庁の解散命令

 

5 社会福祉法人が解散したとき,定款中に定めがあれば,解散した法人の残余財産は,社会福祉法人その他社会福祉事業を行う者以外の者にも帰属させることができる。

 

定款中に残余財産の帰属すべき者の規定を設ける場合は,社会福祉法人その他社会福祉事業を行う者であることが必要です。

 

なお,厚生労働省の調査によると,合併の理由で最も多かったのは,「業績不振法人の救済のため」だったそうです。

 

積極的な理由は少なかったようです。

社会福祉連携推進法人の運営等について(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000817539.pdf

2022年12月26日月曜日

市町村社会福祉協議会

全国社会福祉協議会と都道府県社会福祉協議会は,1951年(昭和26)年の社会福祉事業法によって法制化されたのに対し,市町村社会福祉協議会は,1983年(昭和58)年の社会福祉事業法の改正によって法制化されました。

 

社会福祉法の規定

(市町村社会福祉協議会及び地区社会福祉協議会)

 第百九条 市町村社会福祉協議会は、一又は同一都道府県内の二以上の市町村の区域内において次に掲げる事業を行うことにより地域福祉の推進を図ることを目的とする団体であつて、その区域内における社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者が参加し、かつ、指定都市にあつてはその区域内における地区社会福祉協議会の過半数及び社会福祉事業又は更生保護事業を経営する者の過半数が、指定都市以外の市及び町村にあつてはその区域内における社会福祉事業又は更生保護事業を経営する者の過半数が参加するものとする。

一 社会福祉を目的とする事業の企画及び実施

二 社会福祉に関する活動への住民の参加のための援助

三 社会福祉を目的とする事業に関する調査、普及、宣伝、連絡、調整及び助成

四 前三号に掲げる事業のほか、社会福祉を目的とする事業の健全な発達を図るために必要な事業

2 地区社会福祉協議会は、一又は二以上の区(地方自治法第二百五十二条の二十に規定する区及び同法第二百五十二条の二十の二に規定する総合区をいう。)の区域内において前項各号に掲げる事業を行うことにより地域福祉の推進を図ることを目的とする団体であつて、その区域内における社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者が参加し、かつ、その区域内において社会福祉事業又は更生保護事業を経営する者の過半数が参加するものとする。

3 市町村社会福祉協議会のうち、指定都市の区域を単位とするものは、第一項各号に掲げる事業のほか、その区域内における地区社会福祉協議会の相互の連絡及び事業の調整の事業を行うものとする。

4 市町村社会福祉協議会及び地区社会福祉協議会は、広域的に事業を実施することにより効果的な運営が見込まれる場合には、その区域を越えて第一項各号に掲げる事業を実施することができる。

5 関係行政庁の職員は、市町村社会福祉協議会及び地区社会福祉協議会の役員となることができる。ただし、役員の総数の五分の一を超えてはならない

6 市町村社会福祉協議会及び地区社会福祉協議会は、社会福祉を目的とする事業を経営する者又は社会福祉に関する活動を行う者から参加の申出があつたときは、正当な理由がないのにこれを拒んではならない。

 

それでは,今日の問題です。

 

22回・問題37 社会福祉法における地域福祉の推進等に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 地方社会福祉審議会とは,都道府県知事又は指定都市若しくは中核市の長の監督に属し,その諮問に答え,関係行政庁からの意見を踏まえて行政計画等を策定する機関である。

2 社会福祉法第4条では,地域住民,社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者が,相互に協力し,地域福祉の推進に努めなければならないとされた。

3 厚生労働省社会・援護局長の通知により,社会福祉法第107条に規定された地域福祉支援計画の策定に当たって,都道府県は要援護者支援方策を盛り込むことが義務づけられた。

4 市町村社会福祉協議会は,社会福祉事業又は更生保護事業を経営する者の三分の一以上が参加するものとする。

5 共同募金を行う事業は,第二種社会福祉事業であり,社会福祉協議会以外の者は共同募金を行ってはならない。

 

古い問題です。

 

しかし,今でも十分に使える問題です。

 

それでは,解説です。

 

1 地方社会福祉審議会とは,都道府県知事又は指定都市若しくは中核市の長の監督に属し,その諮問に答え,関係行政庁からの意見を踏まえて行政計画等を策定する機関である。

 

地方社会福祉審議会とは,都道府県知事又は指定都市若しくは中核市の長の監督に属し,その諮問に答え

 

ここまでは適切です。

 

関係行政庁からの意見を踏まえて行政計画等を策定する機関である。

ここがでたらめです。

 

正しくは,「関係行政庁に意見を具申する」です。

 

2 社会福祉法第4条では,地域住民,社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者が,相互に協力し,地域福祉の推進に努めなければならないとされた。

 

これが正解です。

 

〈地域福祉の推進主体〉

・地域住民

・社会福祉を目的とする事業を経営する者

・社会福祉に関する活動を行う者

 

この3つを合わせて「地域住民等」といいます。

 

3 厚生労働省社会・援護局長の通知により,社会福祉法第107条に規定された地域福祉支援計画の策定に当たって,都道府県は要援護者支援方策を盛り込むことが義務づけられた。

 

このような規定はありません。

 

地域福祉(支援)計画の策定は,義務ではありません。そこから考えても盛り込むものが義務になることはないとだろうと推測することが可能です。

 

4 市町村社会福祉協議会は,社会福祉事業又は更生保護事業を経営する者の三分の一以上が参加するものとする。

 

三分の一以上ではなく,二分の一以上です。

 

これまでに何度も出題されています。確実に押さえたいです。

 

5 共同募金を行う事業は,第二種社会福祉事業であり,社会福祉協議会以外の者は共同募金を行ってはならない。

 

この選択肢は,2か所の誤りがあります。

 

1つめ

誤 第二種社会福祉事業

 

正 第一種社会福祉事業

 

2つめ

誤 社会福祉協議会以外の者は共同募金を行ってはならない。

 

正 共同募金会以外の者は共同募金を行ってはならない。

2022年12月25日日曜日

地方社会福祉審議会とは

社会福祉法に規定される地方社会福祉審議会は,都道府県(指定都市,中核市)に設置され,都道府県知事(又は指定都市若しくは中核市の長)の監督に属し,その諮問に答え,又は関係行政庁に意見を具申します。


それでは,今日の問題です。


第32回・問題22 社会福祉法の内容に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 福祉サービス利用援助事業は,第一種社会福祉事業である。

2 市町村は,地方社会福祉審議会を設置しなければならない。

3 市町村は,社会福祉事業等に従事する者の確保に関する基本指針を定めなければならない。

4 都道府県は,都道府県地域福祉支援計画を策定しなければならない。

5 共同募金は,都道府県を単位として毎年1回実施される。


社会福祉法は,社会福祉の基本法とも言えるものなので,複数の科目で出題されています。


何が出題されても良いくらいには,なっておきたいものです。


正解は,選択肢5です。

5 共同募金は,都道府県を単位として毎年1回実施される。


共同募金は,社会福祉法で第一種社会福祉事業に規定され,社会福祉法人である共同募金会が,都道府県の区域を単位として,毎年1回,厚生労働大臣が定める期間に限って実施するものです。


配分は,その区域内において社会福祉事業,更生保護事業その他の社会福祉を目的とする事業を経営する者(国及び地方公共団体を除く)に配分しますが,現在は,災害の発生その他厚生労働省令で定める特別の事情がある場合に備えるための準備金を他の共同募金会に拠出することができます。


正解以外のものを解説します。


1 福祉サービス利用援助事業は,第一種社会福祉事業である。


福祉サービス利用援助事業は,第二種社会福祉事業です。


第一種社会福祉事業は,基本的には,入所系サービスです。

第二種社会福祉事業は,基本的には,通所系・居宅系サービスです。


これらの基本に当てはまらないのは,共同募金の第一種社会福祉事業です。だから狙われます。


2 市町村は,地方社会福祉審議会を設置しなければならない。


地方社会福祉審議会を設置しなければならないのは,都道府県(指定都市,中核市)です。


3 市町村は,社会福祉事業等に従事する者の確保に関する基本指針を定めなければならない。


社会福祉事業等に従事する者の確保に関する基本指針を定めるのは,厚生労働大臣です。



4 都道府県は,都道府県地域福祉支援計画を策定しなければならない。


地域福祉計画の策定は,努力義務です。

平成30年の法改正で,それまでの「任意」から「努力義務」に変更されています。


2022年12月24日土曜日

運営適正化委員会

都道府県社会福祉協議会に設置される運営適正化委員会は,社会福祉法の成立の2000(平成12)年に創設されています。

 

運営適正化委員会

(運営適正化委員会)

第八十三条 都道府県の区域内において、福祉サービス利用援助事業の適正な運営を確保するとともに、福祉サービスに関する利用者等からの苦情を適切に解決するため、都道府県社会福祉協議会に、人格が高潔であつて、社会福祉に関する識見を有し、かつ、社会福祉、法律又は医療に関し学識経験を有する者で構成される運営適正化委員会を置くものとする。

(運営適正化委員会の行う福祉サービス利用援助事業に関する助言等)

第八十四条 運営適正化委員会は、第八十一条の規定により行われる福祉サービス利用援助事業の適正な運営を確保するために必要があると認めるときは、当該福祉サービス利用援助事業を行う者に対して必要な助言又は勧告をすることができる。

2 福祉サービス利用援助事業を行う者は、前項の勧告を受けたときは、これを尊重しなければならない。

(運営適正化委員会の行う苦情の解決のための相談等)

第八十五条 運営適正化委員会は、福祉サービスに関する苦情について解決の申出があつたときは、その相談に応じ、申出人に必要な助言をし、当該苦情に係る事情を調査するものとする。

2 運営適正化委員会は、前項の申出人及び当該申出人に対し福祉サービスを提供した者の同意を得て、苦情の解決のあつせんを行うことができる。

 

確実に覚えておきたいのは,

 

福祉サービス利用援助事業を行う者に対して必要な助言又は勧告をすることができる。

 

指導などのような強制力はありません。

 

そのために,以下のような規定があります。

(運営適正化委員会から都道府県知事への通知)

第八十六条 運営適正化委員会は、苦情の解決に当たり、当該苦情に係る福祉サービスの利用者の処遇につき不当な行為が行われているおそれがあると認めるときは、都道府県知事に対し、速やかに、その旨を通知しなければならない。

 

必要な場合は,都道府県知事が指導や指定の取り消しなどを行います。

 

それでは,今日の問題です。

 

26回・問題36 社会福祉法における地域福祉に関係する規定についての次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 地域住民には,「社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者」の事業や活動を代替する役割があると規定されている。

2 福祉サービスの利用に際して苦情があるとき,利用者は都道府県社会福祉協議会に設置された運営適正化委員会に申し立てることができるとされている。

3 地域福祉計画の策定に当たっては,要援護者への意見聴取をしなければならないと規定されている。

4 市町村社会福祉協議会の業務は,「社会福祉を目的とする事業の企画及び実施」や「社会福祉に関する活動への住民の参加のための援助」であり,「社会福祉を目的とする事業の調査,普及,宣伝,連絡,調整及び助成」は含まれない。

5 共同募金において寄附金を募集する区域は都道府県を単位とし,募集期間は都道府県知事が定めるとされている。

 

知識がなくても消去できそうな選択肢もあるので,実質は4つの選択肢の中から答えを選ぶ問題となっています。

 

それでは,解説です。

 

1 地域住民には,「社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者」の事業や活動を代替する役割があると規定されている。

 

地域住民は,社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者とともに地域福祉の推進主体です。

 

地域共生社会の時代,地域住民は重要な役割を果たしますが,「社会福祉を目的とする事業を経営する者」の事業を代替することはできません。それだと福祉のプロフェッショナルは必要ないことになってしまいます。

 

2 福祉サービスの利用に際して苦情があるとき,利用者は都道府県社会福祉協議会に設置された運営適正化委員会に申し立てることができるとされている。

 

これが正解です。

 

3 地域福祉計画の策定に当たっては,要援護者への意見聴取をしなければならないと規定されている。

 

市町村地域福祉計画を策定する際には,「市町村は、市町村地域福祉計画を策定し、又は変更しようとするときは、あらかじめ、地域住民等の意見を反映させるよう努める」と規定されています。

 

都道府県地域福祉支援計画を策定する際には,「都道府県は、都道府県地域福祉支援計画を策定し、又は変更しようとするときは、あらかじめ、公聴会の開催等住民その他の者の意見を反映させるよう努める」と規定されています。

 

いずれも意見聴取しなければならない,という規定はありません。地域福祉計画の策定は努力義務なのに「意見聴取しなければならない」という義務があるはずがありません。

 

4 市町村社会福祉協議会の業務は,「社会福祉を目的とする事業の企画及び実施」や「社会福祉に関する活動への住民の参加のための援助」であり,「社会福祉を目的とする事業の調査,普及,宣伝,連絡,調整及び助成」は含まれない。

 

知識なしでも消去できそうなのは,この選択肢です。

 

この選択肢の文章

 

「〇〇は▲▲であるが,□□は▲▲ではない」といったものが,正解になったことは今までに一度もありません。

 

5 共同募金において寄附金を募集する区域は都道府県を単位とし,募集期間は都道府県知事が定めるとされている。

 

募集期間を定めるのは,厚生労働大臣です。地域によって募集期間が異なっている,という話は聞いたことがないでしょう。

 

募集期間は誰が定めるのか覚えていなかったとき,焦ってしまいます。しかし,そうであっても落ち着いて知っている知識を活用して答えを考えることがとても重要です。

 

合否を分けるのは,国試当時にいかに柔軟な思考ができるかにかかっていると言っても決して過言ではないと思います。

 

「落ち着いて考えれば正解できた,その問題が正解できていたなら,合格できた」というのでは悲しすぎます。

2022年12月23日金曜日

重層的支援体制整備事業とは

社会福祉法では,市町村は,地域生活課題の解決に資する包括的な支援体制を整備するため,重層的支援体制整備事業を行うことができる,と規定しています。

 

事業のコンセプトは,「つながり続ける支援体制の構築」です。

 

事業の内容は,以下のとおりです。

 

・包括的相談支援事業

・参加支援事業

・地域づくり事業

・アウトリーチ等を通じた継続的支援事業

・多機関協働事業

 


社会福祉法では,地域福祉計画が規定されていますが,そのほかに,「重層的支援体制整備事業実施計画」の策定を市町村の努力義務として規定しています。


それでは,今日の問題です。


第34回・問題35 次の記述のうち,社会福祉法における地域福祉の推進に関する規定として,適切なものを2つ選びなさい。

1 国及び地方公共団体は,関連施策との連携に配慮して,包括的な支援体制の整備のために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

2 都道府県は,その区域内においてあまねく福祉サービス利用援助事業が実施されるために必要な事業を行うものとする。

3 都道府県社会福祉協議会は,その区域内における地域福祉の推進のための財源として,共同募金を実施することができる。

4 市町村は,子ども・障害・高齢・生活困窮の一部の事業を一体のものとして実施することにより,地域生活課題を抱える地域住民に対する支援体制等を整備する重層的支援体制整備事業を実施することができる。

5 市町村社会福祉協議会は,市町村地域福祉計画を策定するよう努めなければならない。


今のところ(2022年12月)で,重層的支援体制整備事業が出題された唯一の問題です。


今後は,事業の内容も出題されてくることが予測されます。


そでは解説です。


1 国及び地方公共団体は,関連施策との連携に配慮して,包括的な支援体制の整備のために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。


これがまず1つめの正解です。


義務規定なのか,努力義務規定なのか,悩むところですが,消去法でこれが残るように問題が作られています。


2 都道府県は,その区域内においてあまねく福祉サービス利用援助事業が実施されるために必要な事業を行うものとする。


第二種社会福祉事業である福祉サービス利用援助事業は,日常生活自立支援事業として,都道府県社会福祉協議会が実施します。


3 都道府県社会福祉協議会は,その区域内における地域福祉の推進のための財源として,共同募金を実施することができる。


共同募金を行うことができるのは,共同募金会のみです。


4 市町村は,子ども・障害・高齢・生活困窮の一部の事業を一体のものとして実施することにより,地域生活課題を抱える地域住民に対する支援体制等を整備する重層的支援体制整備事業を実施することができる。


これが2つめの正解です。これも実施は,義務なのか,努力義務なのか,任意なのか,悩むところです。


しかし,消去法で残ります。


5 市町村社会福祉協議会は,市町村地域福祉計画を策定するよう努めなければならない。


市町村地域福祉計画を作成するよう努めなければならないのは,市町村です。


ということで,正解となった,選択肢1と4が残ります。


正解するのに重要なことは,持っている知識を使って,消去できるものは確実に消去することです。


消去できないと正解することができません。

2022年12月22日木曜日

社会福祉法における地域福祉の推進の規定

社会福祉法は,地域共生社会の実現に向けて,近年は頻繁に改正を重ねています。

 

現在の地域福祉の推進については,以下のように規定されています。

 

(地域福祉の推進)

第四条 地域福祉の推進は、地域住民が相互に人格と個性を尊重し合いながら、参加し、共生する地域社会の実現を目指して行われなければならない。

 2 地域住民、社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者(以下「地域住民等」という。)は、相互に協力し、福祉サービスを必要とする地域住民が地域社会を構成する一員として日常生活を営み、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されるように、地域福祉の推進に努めなければならない。

 3 地域住民等は、地域福祉の推進に当たつては、福祉サービスを必要とする地域住民及びその世帯が抱える福祉、介護、介護予防(要介護状態若しくは要支援状態となることの予防又は要介護状態若しくは要支援状態の軽減若しくは悪化の防止をいう。)、保健医療、住まい、就労及び教育に関する課題、福祉サービスを必要とする地域住民の地域社会からの孤立その他の福祉サービスを必要とする地域住民が日常生活を営み、あらゆる分野の活動に参加する機会が確保される上での各般の課題(以下「地域生活課題」という。)を把握し、地域生活課題の解決に資する支援を行う関係機関(以下「支援関係機関」という。)との連携等によりその解決を図るよう特に留意するものとする。

 

この中で注意すべきなのは,2点あります。

 

①地域福祉の推進主体

 ・地域住民

 ・社会福祉を目的とする事業を経営する者

 ・社会福祉に関する活動を行う者

 

これらは「地域住民等」と表記されます。

 

②地域住民等は,生活課題を把握し,支援関係機関との連携等によりその解決を図るよう特に留意するものとする。

 

地域住民等と表記されると違和感がありますが,これで良いのです。

 

それでは,今日の問題です。

 

32回・問題36 社会福祉法に規定されている地域福祉に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 地域住民等は,地域生活課題の解決に資する支援が包括的に提供される体制の整備に努めなければならない。

2 市町村は,市町村地域福祉計画を市町村社会福祉協議会が策定する地域福祉活動計画と一体的に策定しなければならない。

3 都道府県は,福祉サービスを必要とする地域住民の地域生活課題を把握し,支援関係機関と連携して解決を図るよう留意しなければならない。

4 社会福祉を目的とする事業を経営する者は,地域福祉の推進に係る取組を行う他の地域住民等に助言と指導を行わなければならない。

5 国及び地方公共団体は,地域福祉の推進のために必要な各般の措置を講ずるよう努めなければならない。

 

知識がなければ,正解するのはかなり難しいと思うかもしれません。

 

しかしおかしな内容の選択肢もあるので,落ち着いて問題を読めば,正解できなくもないでしょう。

 

この問題の正解は,選択肢5です。

5 国及び地方公共団体は,地域福祉の推進のために必要な各般の措置を講ずるよう努めなければならない。

 

迷うのは,義務なのか,努力義務なのか,だと思いますが,丁寧に読んでいけば,消去法でこの選択肢が残ります。

 

それでは,消去していきたいと思います。

 

1 地域住民等は,地域生活課題の解決に資する支援が包括的に提供される体制の整備に努めなければならない。

 

体制の整備は,国あるいは地方公共団体が行うものです。

 

この場合(域生活課題の解決に資する支援が包括的に提供される体制)の整備を行うのは,市町村の役割です。

 

2 市町村は,市町村地域福祉計画を市町村社会福祉協議会が策定する地域福祉活動計画と一体的に策定しなければならない。

 

市町村によっては,地域福祉活動計画は,市町村地域福祉計画と一体のものとして作成しているところもあります。

 

しかし,だからといって,法で規定されていると考えるのは浅はかです。こんな規定はありませんし,地域福祉活動計画は根拠法はない民間計画です。かなり重要なことだと思いますが,意外とこの視点が抜け落ちるみたいです。

 

3 都道府県は,福祉サービスを必要とする地域住民の地域生活課題を把握し,支援関係機関と連携して解決を図るよう留意しなければならない。

 

地域住民に対して,直接的なサービスを行うのは,市町村です。

 

都道府県が行うのは,広域的な立場から行うものや専門性の高いものなどです。

 

この基本を押さえておくと何かと役立つと思います。

 

4 社会福祉を目的とする事業を経営する者は,地域福祉の推進に係る取組を行う他の地域住民等に助言と指導を行わなければならない。

 

このような規定はありません。

 

ということで,選択肢5が残ります。

 

こういった問題を解く際,重要なことは慌てて答えを選ばないことです。

どこかにヒントはあるものです。試験委員もそのように作っている様子が問題からうかがえます。

2022年12月21日水曜日

住民参加型在宅福祉サービスとは

住民参加型在宅福祉サービスは,地域住民の自発的なものであり,非営利性,有償性,互酬性,会員制等を特徴とした団体が提供するものです。


1980年代に登場し,現在は,NPO法人などの法人格を取得して,独自事業や介護保険サービスなどを提供する団体もあります。


それでは,今日の問題です。


第21回・問題36 「住民参加型在宅福祉サービス団体」(以下,「団体」という。)の特徴に関する次の記述のうち,適切なものを一つ選びなさい。

1 団体には「行政関与型」,「社協運営型」,「生活協同組合型」,「住民互助型」などがあるが,その中で最も数が多いのは「社協運営型」(2005年時点)で,全体の約半数を占めている。

2 団体のサービスは,第二種社会福祉事業に該当するので,団体は社会福祉法人,特定非営利活動法人などの法人格を,団体を設立してから3年以内に取得することが義務づけられている。

3 団体の協力会員(サービス提供者)には,社会福祉従事者として一定の専門性が求められるので,社会福祉法で協力会員の半数は,介護福祉士などの有資格者を含むこととされている。

4 団体の活動は,住民による地域福祉活動であるので,介護保険制度における介護保険事業は行えない。

5 団体の活動は,地域住民の自発的なものであり,非営利性,有償性,互酬性,会員制等を特徴とする。


正解は,選択肢5です。

5 団体の活動は,地域住民の自発的なものであり,非営利性,有償性,互酬性,会員制等を特徴とする。


もう1問です。


第32回・問題33 地域福祉における住民の参加を促進する仕組みや制度に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。

1 1960年代に徳島県社会福祉協議会等に設置された善意銀行は,住民が支援を必要とする個人・団体に対して労力・技術・金品等を提供した場合に,銀行が費用を助成する仕組みである。

2 1970年代に開始された学童・生徒のボランティア活動普及事業は,学童•生徒のボランティア活動の促進を目的として,全国全ての公立小・中学校に助成を行う事業である。

3 1980年代以降全国に広がった住民参加型在宅福祉サービスは,有償性・非営利性・会員制を主な特徴とし,地域で支援を必要とする人々に対して家事援助・外出支援等のサービスを提供する活動である。

4 1990年代に全国で実施されたふれあいのまちづくり事業は,障害者等の社会参加を保障することを目的として,市町村が公共施設などにおけるバリアフリー化を促進するための事業である。

5 2000年代に道路運送法の改正により法制化された福祉有償運送は,社会福祉施設が所有する福祉車両を要援護者等に有償で貸し出す仕組みである。


正解は,選択肢3です。

3 1980年代以降全国に広がった住民参加型在宅福祉サービスは,有償性・非営利性・会員制を主な特徴とし,地域で支援を必要とする人々に対して家事援助・外出支援等のサービスを提供する活動である。


住民参加型在宅福祉サービスは,地域共生社会における福祉サービス提供の担い手として期待されるので,これからも出題されると思います。

住民参加型在宅福祉サービスの「互酬性」が地域共生社会に求められるからです。

今までは以下で出題されています。

第9回
第15回
第21回
第23回
第24回
第30回
第32回

第32回の問題は出題が上手です。歴史の問題に見せかけて,今に求められるものを正解にしているからです。

文脈から読み取れないのは,正解になりにくいものです。これが国家試験です。

2022年12月20日火曜日

特定非営利活動法人の活動分野で最も多いもの

特定非営利活動法人の活動分野は,20分野あります。

 

そのうち,最も多いのは保健,医療または福祉の増進を図る活動で,6割を占めます。

 

今まで何度出題されたかわからないくらいに繰り返し問われています。

 

それでは,今日の問題です。

 

30回・問題33 地域福祉への参加に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 住民主体の地域福祉活動は,専門機関の支援を求めないで進めることが望ましい。

2 福祉公社などの住民参加型在宅福祉サービス団体は,介護保険制度を補完することを目的に設立された。

3 共同募金は,地域福祉の推進に関わる第一種社会福祉事業である。

4 特定非営利活動法人の活動分野は,「まちづくりの推進を図る活動」が最も多い。

5 介護保険制度の地域密着型サービスの運営推進会議は,都道府県が設置する。

 

これは確実に正解したいです。

 

正解は,選択肢3です。

3 共同募金は,地域福祉の推進に関わる第一種社会福祉事業である。

 

共同募金が第一種社会福祉事業であることは,これまでに何度出題されたのか数えるのも面倒なくらいに繰り返し出題されてきました。

 

それでは,ほかの選択肢も確認します。

 

1 住民主体の地域福祉活動は,専門機関の支援を求めないで進めることが望ましい。

 

これはないでしょう。

 

2 福祉公社などの住民参加型在宅福祉サービス団体は,介護保険制度を補完することを目的に設立された。

 

現在ではだんだん数が少なくなってきた福祉公社は,もともとは,福祉関係八法改正で第二種社会福祉事業となった老人福祉法で規定されるホームヘルプサービスやデイサービスを提供するために多くが設立されました。

 

つまり,介護保険制度を補完することを目的として設立されたのではなく,介護保険が始まる前の在宅福祉を支えるためのものだったのです。

 

4 特定非営利活動法人の活動分野は,「まちづくりの推進を図る活動」が最も多い。

 

今日のテーマが登場しました。

 

特定非営利活動法人の活動分野のうちで最も多いのは保健,医療または福祉の増進を図る活動です。

 

5 介護保険制度の地域密着型サービスの運営推進会議は,都道府県が設置する。

 

地域密着型サービスの運営推進会議がわからなくても,都道府県が設置するものではないことはわかると思います。

 

なぜなら,地域密着型サービスは,市町村が担当するものだからです。

 

地域密着型サービスの運営推進会議 

〈設置〉

指定地域密着型通所介護事業所及び認知症対応型通所介護事業者が自ら設置します。

〈目的〉

利用者,市町村職員,地域住民の代表者等に対し,提供しているサービス内容等を明らかにすることで,事業所による利用者の「抱え込み」を防止し,地域に開かれたサービスとすることで,サービスの質の確保を図ることです。

 

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