今回は,社会福祉法に規定される共同募金の始まりです。
戦後,GHQの指導によって,1947(昭和22)年に「国民たすけあい運動」として始まりました。
その後,1951(昭和26)年の社会福祉事業法によって,法制化されています。
それでは,今日の問題です。
第32回・問題32 日本の地域福祉の歴史に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 隣保館は,日露戦争を契機として国による一元的な管理体制に移行した。
2 中央慈善協会は,全国の主要な都市で展開されていたセツルメント運動の組織化を図ることを目的として設立された。
3 共同募金会は,関東大震災によって被災した人々を援助するために政府の呼び掛けによって設立された。
4 方面委員制度は,岡山県で発足した済世顧問制度を始まりとし,後に方面委員令により全国的な制度として普及した。
5 市町村社会福祉協議会は,戦後間もなく,社会福祉事業法の制定時に法制化された。
正解は,選択肢4です。
4 方面委員制度は,岡山県で発足した済世顧問制度を始まりとし,後に方面委員令により全国的な制度として普及した。
極めて基本的なものが正解になりました。
岡山県で創設された済世顧問制度,大阪府で創設された方面委員制度は,いずれも現在の民生委員の源流です。
1936(昭和11)年の方面委員令によって,法制化され,戦後に民生委員となっています。
それでは,解説です。
1 隣保館は,日露戦争を契機として国による一元的な管理体制に移行した。
隣保館は,セツルメントのことです。
セツルメントは,岡山博愛会やキングスレー館など,キリスト者によるものが有名です。
その後,公的な隣保館が開設されていきますが,国が一元的な管理を行うことはありませんでした。
2 中央慈善協会は,全国の主要な都市で展開されていたセツルメント運動の組織化を図ることを目的として設立された。
中央慈善協会は,全国社会福祉協議会(全社協)の源流の一つです。
活動は,今の全社協のように,慈善事業を行う団体の調整,海外の慈善事業の調査などを行いました。
慈善事業を行う団体の中には,セツルメントも含まれますが,それだけにはとどまりません。
3 共同募金会は,関東大震災によって被災した人々を援助するために政府の呼び掛けによって設立された。
今日のテーマの共同募金です。
共同募金会は,戦後にGHQの呼び掛けによって設立されたものです。
第1回の共同募金のポスターを見ると,募金箱に「コミュニティチェスト」と書かれています。
ネットで検索すると出てくると思いますので,ぜひ一度見てみると良いでしょう。
そのポスターには面白いことが書かれています。
GHQの影響がわかるでしょう。
5 市町村社会福祉協議会は,戦後間もなく,社会福祉事業法の制定時に法制化された。
社会福祉事業法の制定時に法制化されたのは,全国社会福祉協議会と都道府県社会福祉協議会です。
市町村社会福祉協議会は,1983(昭和58)年の社会福祉事業法の改正によって,ようやく法制化されています。
社会福祉協議会もGHQの指導によって設立されたものの一つです。
そのため,全国組織をつくることを急ぐ必要があったようです。市町村社会福祉協議会を整備していくには時間がかかるので,先に全国社会福祉協議会と都道府県社会福祉協議会を法制化したのです。