住民主体の原則は,全国社会福祉協議会が「社会福祉協議会基本要項」(1962・昭和37年)で述べられたのが最初です。
この中で,社会福祉協議会の性格として,以下のように書かれています。
社会福祉協議会は一定の地域社会において,住民が主体となり,社会福祉,保健衛生その他生活の改善向上に関連のある公私関係者の参加,協力を得て,地域の実情に応じ,住民の福祉を増進することを目的とする民間の自主的な組織である。
住民の中には,社協は公的機関だと思っている人も多いようです。
(住民主体の原則) |
この時期に「社会福祉協議会基本要項」が作られたのは,市町村社会福祉協議会がまだ法制化されていなかったこともあったかもしれません。
市町村社協が法制化されるのは,1983(昭和58)年の社会福祉事業法の改正まで待たなければなりません。
この要項から国家試験に出題されたものの中には,社会福祉協議会の基本的機能があります。
これについては次回に改めて取り上げたいと思います。
それでは今日の問題です。
第31回・問題33 地域福祉に関する理念や概念に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。
1 ソーシャルキャピタルとは,地域における公共的建築物や公共交通といった物的資本の整備状況を示すことをいう。
2 住民主体の原則とは,行政の指導の下で地域住民が主体となって行う地域活動の原則のことをいう。
3 ノーマライゼーションとは,障害のある人に,障害のない人と同じような暮らしが可能となる生活条件を作り出していく考え方のことをいう。
4 地域移行支援とは,住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供することで,在宅の限界点を高めることをいう。
5 ソーシャルインクルージョンとは,全ての人々を孤独や孤立,排除や摩擦から援護し,社会の構成員として包み支え合う社会を目指すことをいう。
内容盛りだくさんの問題です。
正解は,選択肢3と5です。
3 ノーマライゼーションとは,障害のある人に,障害のない人と同じような暮らしが可能となる生活条件を作り出していく考え方のことをいう。
5 ソーシャルインクルージョンとは,全ての人々を孤独や孤立,排除や摩擦から援護し,社会の構成員として包み支え合う社会を目指すことをいう。
ノーマライゼーションとソーシャル・インクルージョンのそろい踏みの問題となりました。
こんな問題はめったにあるものではないでしょう。
それでは正解以外の解説です。
1 ソーシャルキャピタルとは,地域における公共的建築物や公共交通といった物的資本の整備状況を示すことをいう。
地域における公共的建築物や公共交通といった物的資本の整備状況を示す用語は何というかよくわかりませんが,社会資本に関連するものです。
ソーシャルキャピタルを訳すと社会資本になってしまうので,社会関係資本と訳されることが多いようです。
互酬性と信頼性に基づくネットワークがソーシャルキャピタル(社会関係資本)です。
2 住民主体の原則とは,行政の指導の下で地域住民が主体となって行う地域活動の原則のことをいう。
今日のテーマの「住民主体の原則」が登場してきました。
前説のように,住民主体の原則とは,地域住民のニードに即した活動をすすめることをねらいとし,それに必要な組織構成を充実することを原則とすることです。
4 地域移行支援とは,住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供することで,在宅の限界点を高めることをいう。
住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供することで,在宅の限界点を高めることは,地域包括ケアシステムのことです。
地域移行支援は,障害者等が病院・施設から地域で生活することを支援することです。
障害者総合支援法が規定する指定一般相談支援事業者が地域相談支援として地域移行支援を行います。